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「箱」


ドアが開いた。

「箱」から、一斉にあふれ出していく、

人。

ひと。

ヒト。

 

みんな、どこに向うのだろうか。

きっとロクなところじゃないんだろう。

きっとそうだ。

 

そのうちの1人と一瞬、目が合う。

全然知らないヒトだ。

でも、きっと、

今まで何度も会ったことがあるだろうし、

何度も目が合ったことがあるだろうし、

何度もこうやってすれ違っているヒトだ。

 

はじめまして。

さようなら。

僕はそう心で呟き、みんなが出た後の「箱」に入る。

 

右手に空いた椅子がある。

僕はそこに座る。

 

見上げると、頭上に「輪っか」がぶら下がっていた。

首を吊ってヒトが死なないように、頭が入らない大きさの「輪っか」がぶら下がっている。

 

突然、僕の目の前にヒトが立ち、その「輪っか」を引っ張った。

彼は、にやりと笑いながら言った。

「これを引っ張ると、世界が消滅するんだぜ」

同時に、ブザーが鳴った。

僕は、とてもワクワクした。

 

プシュー、ガチャン。

 

けれど、僕の1秒間の妄想は、ドアが閉まる音で現実に引き戻された。

追い討ちをかけるように、車内アナウンスが僕の望まない未来を告げた。

 

「次は、○×駅、○×駅」

 

僕を入れた鉄の箱は、今日もまた、敷かれたレールの上を走っていく。

 

<END>

 

 

 


この本の内容は以上です。


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