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滋賀県同和行政バトル日記⑦

第3回口頭弁論 裁判官の交代

 4月21日、大津地方裁判所で第3回口頭弁論が開かれた。今回の大きなポイントは3つある。
 1つめは、県が戸籍の不正取得により部落差別が行われているという趣旨の主張をしたことである。そこで、私の戸籍謄本を提出した。戸籍が部落差別に使われるというのであれば、私の戸籍からどうやって部落出身を判別できるのか、県側に説明してもらおうという考えだ。私の場合、本籍地は実家の住所(鳥取県鳥取市|下味野《しもあじの》)のままで、近くに隣保館がある。しかし、同和減免を申請してみたところ受け付けてもらえなかった(本誌2010年11月号「同和対策固定資産税減免を申請するとどうなるか」)ので、多分同和地区ではないと思うのだが、正確なところは未だに不明である。
 探偵や興信所が部落出身かどうかを調査しているのかどうか、これも実際に滋賀県内の探偵社に聞いてみた。「ガルエージェンシーびわ湖」と「総合探偵社シークレットジャパン滋賀」によれば、やはり部落出身かどうかを調査することはしていないということである。理由は、実際に調査できるのかどうかという以前に「人権問題になってしまうから」ということなのである。最初は客を装ってたずね、裁判のために調べているということは後で告げた結果なので、少なくとも探偵社がどこでも部落出身かどうかを調査しているということはあり得ないだろう。
 2つめは、住居表示の変更前と変更後の新旧対照表が個人に関する情報であるとされた、過去の判例との関係である。この判例は、大阪府堺市が保有する文書に対する情報公開訴訟の判決の中で出てきたものである。
 そこで、堺市の担当者に問題の新旧対照表とはどのようなものだったのか聞いてみた。住居表示の新旧対照表は、単に過去の地名と新しい地名が書かれたものではなく、1つ1つの土地に対する詳細なものであり、地番だけでなく土地の所有者も書かれていたものだったという。つまり、もとは名簿のようなもので、文字通り個人情報である。しかし、個人名だけ消せば公開情報ではないかということが裁判で争われたのである。
 堺市の同和地区といえば協和町《きょうわちょう》で、1957年に現在の名前になる前は耳原《みみはら》、または|ちぬが[#圏点 ﹅]丘[#圏点 ﹅]と呼ばれていた。堺市が危惧していたのは、住居表示の変更履歴により特定の土地が過去に被差別部落の地名を称していたか調査されるということである。もちろん、被差別部落の地名が分からなければそのような調査はできないので、被差別部落の地名は知られているということが前提なのである。つまり、滋賀県のように同和地区の地名が知られるかということが問題なのではなくて、問題となった情報は漠然とした地域名ではなく特定の個人が所有する土地の住所だったのである。
 3つめは、情報公開法の立法趣旨として、個人に関する情報に同和地区名が含まれているかどうかだ。県の説明によれば、政府の第45回情報公開部会において「特定の個人が識別され得ない状態で開示することによっても個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある情報」とは具体的にどのようなものかという塩野《しおの》宏《ひろし》東京大学名誉教授の質問に対し、角田《つのだ》禮次郎《れいじろう》元内閣法制局長官が「地域改善対策等に関する情報」が含まれる旨を答えている。
 おそらく、県がいう通り情報公開法を制定する際に同和地区名が分かる情報は非公開にするということは念頭にあったのだろう。ただ、そのような規定を法律に盛り込むことが困難であったことから、諦めてしまったのではないかと思われるフシがある。それが県も指摘している第51回行政情報公開部会で佐藤《さとう》幸治《こうじ》京都大学名誉教授が大阪府の情報公開条例の制定に関わったことについて触れた次の発言だ。

条例を作るときに、なぜ地名がプライバシーの保護なのかということでいろいろ議論して、大変表現が難しかったことがあった。ここも趣旨はよく分かるが、もう少しうまく書けないかなという非常に虫のよい注文をさせてもらった。

それに対する角田禮次郎氏の感想がこれである。

地域的な集団の話だって絶対にできないし、「病気」というのもいかがなものかという気がしている。それを落としてしまって開示されると、ある特定の集団に属する全ての人に対して不当な偏見差別を引き起こすなどという話も、何を考えているんだと言われると嫌らしいので、この辺のところはもう少しあっさり書いた方がよいのかなという気はしている。代わりの言葉を考えるくらいならもうやめてしまった方がよいのではないかという気もする。

 そして、佐藤幸治氏も角田禮次郎氏に対して「私もその方がよいと思う」と同意した。つまり、「同和地区の場所は非公開ですよ」ということを法律に盛り込もうとしたものの、どんな表現であろうとそれのような規定を入れること自体が「嫌らしい」ものになってしまうため断念したのである。
 私はこれらの点を中心に県に対して反論した準備書面を提出した。
 去る4月1日付で石原《いしはら》稚也《ちがや》裁判長が大阪地方裁判所に異動になったため、今回からは長谷部《はせべ》幸弥《ゆきや》裁判長に交代した。交代から日も浅いため、まだ完全に引継ぎが終っていないと見えて、裁判長が書類を確認しながらの裁判となった。そのため、石原裁判長の時のような鋭い突っ込みもなかった。
 ただ、現在のところ私は東近江市と近江八幡市など一部の地域の条例しか証拠として提出していなかったので、これを全部提出するかどうかを裁判長から確認された。私は一度は今のままでいいと言ったものの、また次回口頭弁論があるということだったので、全て提出することにした。そこで、6月9日13時20分に開廷されることになった第4回口頭弁論に向けて、滋賀県下の地域総合センターがあった全ての町の条例を集めているところである。


全ての隣保館と教育集会所の名称をコンプリート

 こうして、滋賀県内各地の市役所、町役場に電話して地域総合センターの設置管理条例を請求したわけだが、一部をのぞいて、比較的スムーズにすすんだ。
 いちばん楽だったのはファックスで送付してくれた自治体で、日野町《ひのちょう》、湖南《こなん》市、長浜《ながはま》市、米原《まいばら》市である。ちなみに長浜市の旧|虎姫町《とらひめちょう》では地域総合センターの設置管理条例が存在せず、代わりに「虎姫町総合センター設置運営規程」という“規則”を制定していた。担当者によれば、地域総合センターは「施設」ではなく「機能」であるという解釈でそのようにしていたそうだ。ただ、例規集に掲載されていることから、条例に準ずる方法で公布されており、内容が公になっていたことは変わりないだろう。
 次に楽だったのは送料・コピー代負担で郵送してくれた自治体で、豊郷町《とよさとちょう》、甲良町《こうらちょう》、野洲《やす》市である。豊郷小学校の校舎取り壊し問題以降、あまりよい噂を聞かない豊郷町であるが、意外にも送料コピー代負担なしで送ってもらえた。県内一の同和地区人口率を誇る甲良町も、非常に丁寧な対応であった。
 愛荘町《あいしょうちょう》、彦根《ひこね》市、近江八幡《おうみはちまん》市には情報公開請求を行った。愛荘町には手続きなしで送ってもらえないか一度電話で問い合わせたものの、例の同和地区問い合わせ問題があったのであまり関わりたくないためか連絡が途絶えたので、一方的に情報公開請求書を送った。まだ情報公開請求の結果は出ていないのだが、さすがに非公開ということはないと思われる。
 残りの草津《くさつ》市、大津《おおつ》市は市役所の情報公開室にある公報を取得しないといけないので、次回の口頭弁論の前に直接出向くつもりである。
 こうして着々と手元に情報が集まっているわけであるが、ついに地域総合センター要覧に掲載された、滋賀県内54ヶ所の地域総合センターと、44館の隣保館、41所の教育集会所の名前が明らかとなった。次がその全リストである。

センター名所在地所属施設
坂本市民会館坂本六丁目33-19坂本市民会館
坂本教育集会所
昭和会館昭和町15-25昭和会館
下龍華会館伊香立下龍華町584-157下龍華会館
田上会館稲津一丁目10-20田上会館
皇子が丘市民会館皇子が丘一丁目9-10皇子が丘市民会館
東山会館里根町163-1東山会館
広野会館犬方町848-1広野会館
広野教育集会所
長浜市地域総合センター西上坂町1204千草文化会館
長浜市教育集会所
末広地域総合センター武佐町27末広会館
末広第1教育集会所
末広第2教育集会所
八幡地域総合センター出町63-1八幡会館
八幡教育集会所
八幡教育集会所別館
住吉教育集会所
桐原地域総合センター中小森町1178桐原会館
大森教育集会所
掘上教育集会所
野口地域総合センター野口町60野口会館
野口教育集会所
小脇町宮地域総合センター小脇町1435小脇町宮会館
小脇町宮教育集会所
平田町駅前教育集会所平田町128平田町駅前教育集会所
新田会館木川町898-3新田会館
新田教育集会所
橋岡会館橋岡町76橋岡会館
橋岡教育集会所
西一会館草津町1446-1西一会館
西一教育集会所
芦浦会館芦浦町319-8芦浦会館
芦浦教育集会所
守山市地域総合センター矢島町3091守山市同和対策集会所
十里会館十里401十里会館
有隣館北比江85有隣館
野洲町総合センター小篠原1780野洲町立地域総合センター
和田集会所
松籟会館石部2655-1松籟会館
岩根会館岩根中央1-18岩根会館
夏見会館夏見1505夏見会館
三雲会館三雲729三雲会館
三雲教育集会所
柑子袋会館柑子袋868柑子袋会館
宇川会館宇川1143宇川会館
泉教育集会所泉827泉教育集会所
牛飼教育集会所
新城教育集会所新城557新城教育集会所
甲賀町地域総合センター相模165-1大久保教育集会所
大原中教育集会所
相模教育集会所
上野教育集会所
梅田会館大野3988梅田会館
清和会館北土山2747-2清和会館
かえで会館森尻670かえで会館
信楽町地域総合センター西349-4西教育集会所
さつき会館桑実寺173さつき会館
石塔会館石塔36石塔会館
日野文化会館豊田304日野文化会館
日野町教育集会所
愛東町地域総合センター梅林217愛東町人権啓発センター
梅林会館
秦荘町総合センター長塚159長塚会館
長塚教育集会所
川久保保愛館川久保164-1川久保保愛館
川久保教育集会所
山川原会館山川原126-1山川原会館
山川原教育集会所
大町地域総合センター大町155豊郷町隣保館
大町教育集会所
三つ池地域総合センター三ツ池43-1三ツ池教育集会所
呉竹地域総合センター呉竹168-1呉竹住民センター
長寺地域総合センター長寺432長寺福祉館
三吉会館三吉1101三吉会館
上多良文化センター朝妻筑摩38-1上多良文化センター
一色教育集会所一色685一色教育集会所
虎姫町総合センター酢280-1虎姫町文化館
虎姫町教育集会所
木之本町地域総合センター田部542木之本町文化センター
木之本町教育集会所
今津町社会教育会館浜分387-1今津町社会教育会館
安曇川町文化会館三尾里375-2安曇川町文化会館
音羽上教育集会所音羽632音羽上教育集会所

 この表は要覧内に出てくる地域総合センターの順序通りである。現在施設名地名などが黒塗りで開示されている要覧は、ほぼ丸裸になったと言え、要覧を非公開とすることは無意味化しつつある。
 ただ、そのことと裁判で正式に公開との判決が出るかどうかは別問題だ。ひょっとすると、条例に記載されていた施設名と位置は公開で、要覧に記載された同和地区名は非公開という落とし所があるかも知れない。ただ、そうするとなぜ地名が個人情報なのかという「嫌らしい」説明を裁判官がしなければならなくなるので、それはないのではないかと、個人的には思う。
 さらに、今回は準備書面と一緒に提出した追加の証拠がある。滋賀県の同和地区一覧が掲載された「滋賀の部落」は県立図書館で利用制限がかけられており、私が利用を申請したところ拒否されてしまったのであるが、実は県立図書館には他にも同和地区名が書かれた本がある。例えば「同和と在日文献の旅」で採り上げている「近江八幡の部落史―くらしとしごと」がそれだ。他にも草津市の新田《しんでん》地区、旧|中主町《ちゅうずちょう》、旧野洲町、旧|栗東町《りっとうちょう》の同和地区を紹介した図書があるので、いずれ本誌でもご紹介したい。(鳥)


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