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手の中で傘が震えた。とうとう、羽化するんだ。透明なビニールを脱ぎ捨てて、新しい羽でくるくる回りながら飛んでいく。雨粒を弾いて雲を突き抜け、見えなくなるまで。ポッカリと空いた青空から日が覗き、後には虹が残った。「新しいし傘、買わなきゃ……」

命の値段

命の商人が命のやり取りをしている。売った命の分だけ相手の命を買うが、命の値段は同じではないので注意がいる。うっかり値段の高いものを買ってしまうと、沢山の命を差し出さなければならない。ただし、買った命は手元には残らない。すべて壊してその場で買い取るからだ。バン!

裁判

「人類がネグレクトと虐待で訴えを起こしています。被告人は何か申し開きがありますか?」「じゃあ、今すぐ絶滅しますか? それで解決でしょ。大体、いつまで子供のつもりですか。生まれて何万年経ってると思います? いい加減父離れしてください!」

信奉者

若き天才少女がその命を散らした時、十数人の信奉者が後を追い、未遂に終わった少女らも嘆きのあまり失踪した。だがあるとき、亡き少女に瓜二つの少女が現れる。多様な分野において、一人の人間に成せるとは思えないほどの功績を残した少女の墓には、名のない石碑が五つあるという。

DV

友達が顔に青あざを作っていた。化粧で隠していてもわかる。「DVなんでしょう? 我慢しないで。警察に言うべきだよ」「大丈夫だから。本当に」「殴った後で泣いて謝ったんでしょう!許したらダメ」「違うの。殴られたから、私にも一発殴らせろって言ったの。そしたら許すって」

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