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能力について
- セカンドサイト:
いわゆる千里眼。能力の強さによって映像をえられる距離が変わる。一般的には数十メートル以内であればある程度はっきりと見られる。また能力の強弱によってその距離が変わる。一方で、ミシェルのように、意図的ではないが地球の裏側の出来事を見ることができる者もいる。ミシェルの場合は数キロ以内なら自由に見ることができる。 - プレコグ:
プレコグニション、つまり予知。数日から数ヶ月の範囲で予知を行う。数分程度で、かつごく身近に起きる出来事ならある程度自らの意志で予知を行えるが、たいていは自分の意志とは無関係に予知が訪れる。その頻度、具体性、明晰さによって能力の強弱を判定されている。 - テレパス:
いわゆる読心術。目を見ることで相手の思考が言葉として聞こえてくる。高度な能力者になると目を見ずとも自分に注意を向けさせるだけで聞こえたりする。さらに高度な場合は近くにいるだけでも読心が可能となるといわれている。またこの能力を持つ能力者は天使やヴァーチュズのテレパシーを受信できるが、発信できるのはごく少数。 - サイコメトリー:
思念を感知する能力。場所や物、人に残るイメージを五感で体感できる。能力の強い物ほど過去の思念にさかのぼれるし、より具体的なイメージをえられる。 - ヒュプノ:
催眠能力。他の能力者に比べると少数。 - テレパシー:
天使とヴァーチュズ、一部のテレパス能力者にのみ使える能力。テレパス能力者のように考えが読めるというのではなく、もう一つの音声、もう一つのチャンネルのようなもの。彼ら以外には聞こえない。 - テレキネシス:
いわゆる超能力。物を動かしたりする。 - 瞬動:
印を結んでオーラを集中させることでテレポートを行う。目視できる範囲でのみ有効。この速さがヴァーチュズ間の地位を決定する。 - 瞬現:
サタンのみが使えるテレポート。一度行った場所ではっきりとイメージできる場所なら、いつでも思い浮かべるだけで移動できる。 - 結界:
オーラによるバリア。下記のバリアと本質的には一緒だが、複数人で広範囲に張るものを結界と呼ぶ。 - バリア:
自分の身のまわりに張り巡らせることで防御能力を上げる。ミサキはこの能力に秀で、一人で複数人を守ることができる。
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組織について
- IAA:
デーモンやサタンの情報、または天使に敵対する者たちの情報を探る機関。天使が管理をし、能力者が実務に当たる。 - VA:
天使界の軍事力。平時は米軍などの旧人の軍隊や傭兵となっている。 - アルシング:
天使の議会。上院と下院に別れ、様々な下部組織がある。
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主要登場人物
- ヒロト: ♂ サタンの一人。絶世の美男子。首都圏同時爆破テロの実行者。
- レナ: ♀ サタンの一人。絶世の美女。
- ヌジャ: ♂ ヴァーチュズ。階級は少佐。
- ホーマー: ♂ ヴァーチュズ。ヌジャ隊のサブリーダー。フロントマン。
- エリカ: ♀ ヴァーチュズ。爆弾、トラップの専門家。
- シンゴ: ♂ ヴァーチュズ。狙撃手。
- ミサキ: ♀ ヴァーチュズ。ヌジャ隊の新入り。
- 高原: ♂ 主天使。IAA東京支部の副支部長
- 藤井: ♂ 能天使。
- 羽賀: ♀ 権天使。
- 広瀬: ♀ 権天使。
- 田中: ♂ 大天使。
- 村上: ♂ ヒュプノ能力者。
- 鳥居: ♂ プレコグ能力者。
- ミシェル: ♀ セカンドサイト能力者。
- ダン: ♂ 座天使。米国国防長官。
- ベイツ: ♂ 権天使。少佐。
- エメ: ♀ 主天使。IAAチューリッヒ支部の副支部長
- ソギル: ♂ 座天使。IAAチューリッヒ支部の支部長
- ルイーズ: ♀ プレコグ能力者。
- ユーニス: ♂ 旧人。精神科医。
- アリ・フセイン: ♂ 旧人。
- 菅野: ♂ 主天使。VA極東大将。
- ボルツマン: ♂ 能天使。VAドイツ中将。
- 廣本常次: ♂ 日本国総理大臣
- 室井: ♂ サイコメトリー能力者。
- 坂下: ♂ テレパス能力者。
- 井上: ♂ サイコメトリー能力者。
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あらすじ
イラク戦争終結から四ヶ月後、何の前触れもなく日本の首都圏が爆撃された。
死者は二万人を越え、政治、経済、日常生活のインフラが一瞬にして機能不全に陥る。
犯行声明などはなく、犯人とその意図は不明だったが、実行犯ヒロトはその姿を藤沢市の中学生榎本修一とIAAチューリッヒ支部のセカンドサイト能力者ミシェルに目撃されていた。ミシェルはヒロトが伝説のサタンだと気づき、天使界の最高議会であるアルシングにもその情報が伝えられる。
一方、横田基地からヌジャ少佐率いるヴァーチュズ隊が天使の命にしたがって米軍から離脱し、IAA東京支部へと向かう。が、功を焦るVA極東大将の菅野が東京支部に現れ、独断でヌジャ隊を自身の拠点へと移動させる。
翌日、チューリッヒ支部によってサタンが神奈川県の湘南平に現れると予知され、菅野は協力者のボルツマンからそれを知らされる。菅野は無謀にもサタン捕獲という殊勲をたてるためヌジャ隊と共に湘南平に向かうが、作戦会議で敵は通常の標的であるデーモンだと偽る。同じ頃、高原たちもサタンの情報を収集し、無駄な犠牲を防ぐために飯田橋を出発する。
だが、高原たちは間に合わず、ヒロトとその恋人であるレナはヌジャ隊が待ち受ける湘南平に現れ、サタンとヴァーチュズの絶望的な戦いが始まってしまう。
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イントロ: ヴァーチュズ - 1
二十一世紀初頭、米国がイラクに侵攻、イラク戦争が勃発した。
当初、戦争は際限なく拡大し、諸大国間の緊張を高め、周辺地域にも飛び火するかに見えた。が、勝敗は宣戦布告から七十二時間というまれにみる速さで決し、第四十三代アメリカ合衆国大統領コンラッド・エヴァンスによって勝利が宣言され、占領が完了した。つまり二十一世紀最初の戦争はあまりにもあっけなく終結し、他の諸大国、あるいは周辺諸国家間の緊張も速やかに解消した。そして中東の状況は戦後処理の利権を巡ったいざこざが発生する、いわば平時と変わらないものへと収束し、再度の戦争、あるいは三度目の世界大戦という、多くの人々が脳裏に描いていた最悪のシナリオは回避された。
一方で、どう考えても早すぎる決着、あっけない前イラク大統領ハキームの拘束、そして拍子抜けするほど迅速に行われた軍部の掌握などがどのように達成されたのかという疑問を持つ人々もいた。それは例えば、各国の軍部官僚やタカ派の政治家、あるいは軍事アナリストからアマチュアの軍事マニア、さらには国際関係を専門とする記者、そして政治や国家について語るのを喜びとするブロガーや軍事シミュレーションゲームのマニアたちなどだった。このようにさまざまな人々によってこの戦争の経過についての情報がTVや雑誌やインターネットに流され、コピーされ、改変され、議論を巻き起こした。ここでそれらの議論すべてを取り上げるわけにはいかないが、まとめれば次のようになる。
まず少し広い視野での議論から紹介するが、最も多かったのは戦争勃発に至るまでの十数年に及ぶ厳しい経済制裁によって、イラクは軍のみならず経済も文化も何もかもが疲弊しきり、虫の息になっていたことを挙げるものである。その次に二国間の圧倒的な軍事力の差を生み出した技術力とそれを支える経済力の差に根本原因を求める立場が続く。さらに中東のみならずロシアや中国といった諸大国の協力をも取り付けた米国の外交力を主因としてあげる者もいる。ただしこれらはどれも、ごく大雑把に言えば、「国力の差」という言葉で表せることでもあり、特にこれといって意外なものでもない。
逆にもっとミクロな視点、あるいは戦術的な視点からの意見としては、戦争前の情報戦による勝利であるとするものが最もメジャーだった。これは具体的には、個体認識が可能なほどの超高精度偵察衛星に代表される技術力、そしてそこから帰結する情報収集能力の差によるとする考えである。これにGPS誘導弾やレーザー誘導弾などの新兵器と無人偵察機などのハイテク兵器を絡めた新たな戦術を駆使し、空爆によって早期にイラク軍の指揮系統を破壊したことによるとするものが続く。これは要するに純粋な意味での軍事力の差が決定的だったとするものである。さらには戦争前に既に米国のスパイが侵入し、あらかたの破壊工作が済んでいたとする意見があり、最後に、どの意見よりも陰謀論的に、イラクの軍部が戦争前に既に寝返っていて開戦と同時にクーデターを起こした、というものまであった。
これらの考察は最後のものを除けば、ある程度の真実を含んでいる。むしろすべてが合わさって今回の結果を導いたとも言える。だが一つ、それがなければこのような例を見ない短期間での占領完了までには至らなかった、と言えるだけの決定的な戦術的要因が欠けている。
では、十分に防衛体制が敷かれたイラクの主要都市を陥落させ、アメリカへの憎しみで団結し、士気も高く戦争慣れしていた軍隊をたった四十八時間で壊滅させ、さらには開戦の数年前から非常時に備えて準備していた極秘の避難先へと逃れたハキームを一日で見つけ出すことができた理由は何だったのか? また長年の統治体制が崩れたにもかかわらず、さまざまな勢力による内戦状態といったベトナム戦争のような最悪のシナリオには至らず、粛々と占領を完了させられたのはなぜだったのか? その決定的な要因が、事前の情報戦でも超高精度偵察衛星でもなく、あるいは新兵器や新戦術やスパイやクーデターでもないとしたらそれは一体何なのか?
それは「力天使(ヴァーチユズ)」部隊、米軍最高幹部内での通称「TOV」が最前線に投入され、危険の芽をことごとく摘んでいたからである。
ここで「ヴァーチュズ」とは何なのかという疑問に答える前に、この時点でヴァーチュズについて知っているのはごく少数の例外的な立場の者しかいなかったという事実を指摘しておく。だからこそ、アル・ナジャフのアリ・フセイン・サディールと米軍に同行した精神科医でイラク移民二世のユーニス・アクラムはヴァーチュズの情報、すなわちユーニスによるアリへのインタビューを後世に伝えたことで歴史に残る存在となると言える。以下にそのインタビューを紹介するが、その前にユーニスについて少し書いておこう。
ユーニスは当初、アリの状態を戦闘あるいは殺人の目撃による精神的ショックに起因した譫(せん)妄(もう)状態と診断した。だがアル・ナジャフの状況、特に敵の損害についてのレポートを入手した後、彼はアリの訴えていたことが事実かもしれないという疑いを持つようになる。そして帰国後、アリを主要なケースとして、自身の診断への疑問を残した形の論文を執筆し、アメリカ精神医学会に発表しようとした。だが論文には、譫妄状態という診断に疑いの余地はなく、ユーニスが呈した疑問は修正されるべきというコメント、あるいは端的に言えば掲載の条件がつけられた上で返却された。
それは逆にユーニスの疑問を確信に変えてしまったが、そのことを自身のブログに書いた二週間後、彼は研究者として勤務していたニューイングランドのとある大学を追われる。ユーニスは二、三年後には終身在職権*を取得するとみなされていたほどに有能な研究者であったにもかかわらず、である。
さらにそれに追い討ちをかけるように、ユーニスは二、三度言葉を交わしただけの司書に身に覚えのないセクハラ疑惑で告訴され、婚約者に去られてしまうという悲劇に見舞われる。その司書は裁判開始から一週間後に行方不明となり、訴訟自体が取り消しとなったが。
以上がイラク戦争後にユーニスの身に起ったことである。現在彼は両親が暮らすカリフォルニア州に戻り、とある病院に鬱病の治療に通いつつ、社会復帰への道を探っている。
* 終身在職権(テニュア、Tenure)とは、教員の自由な教育研究活動を保障するため、心身に障害を負い、教育研究活動の継続が不可能になった場合を除いて、終身(定年まで)、当該大学の教員としての身分を保障するもの。

じのん