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01

むかしむかしあるところに、ネナという名のそれはそれは美しいお嬢(じょう)さんがおりました。

 

ある日ネナが隣町(となりまち)に行った時のこと。

普段(ふだん)は通らない森を通って帰りたくなっちゃいました。

 

そこは、子供頃から「絶対(ぜったい)通っちゃいけないよ。あそこにはコワ〜イ森の主(ぬし)が住んでいるからね」と、口がスッッッパくなるほど両親に言われていましたが、そこはそれ、年頃(としごろ)のお嬢さんは、ダメと言われると、ついやりたくなっちゃうことがあるものですから。

 

その森は昼なお暗く、ランタンなしには歩けないほどでした。

そこへ、ネナは気分だけで入って行きました!

 

「大丈夫よ」

 

根拠(こんきょ)のない理由だけで、勇気100倍な時もあるものです。

 

 

はじめは、鼻歌(はなうた)を歌っておりましたが、やはり暗い森の中、だんだん心許(こころもと)なくなってきました。一人尻取り(ひとりしりと)をしたり、クイズをしたりして自分を励(はげ)ましましたが、根拠のない勇気は、だんだんと根拠のない恐怖(きょうふ)に覆(おお)われ、やがてそれは、確実(かくじつ)な恐怖に変わり、涙がこぼれてきました。

 

「なんで、こんなことしちゃったんだろう」

 

シクシク泣きながら小道を歩いて行くネナの存在に、

 

森の主も気がつきました。


 

「だれだぁ? ワシの森をベソベソしながら歩いてやがるやつは!」

 

ネナを脅(おど)かそうとやって来ると……、主はその美しさに一目で魅了(みりょう)されてしまいました。

 

「おい、そこの娘! 何故(なぜ)泣いておる?」森の主は親切に声をかけました。

 ところが、それを聞いたネナはたまりません。

 

「ひぇぇ! 本当に主が出たぁ! ごめんなさい、食べないでぇぇぇ!」

 

森の主は、ネナが自分を恐れて泣いていること気づきました。

 

「おい娘。この先のいくつ分かれ道があっても、自分を信じて進みなさい。

分かれ道は、間違った方向を選んだと思えば迷(まよ)い、正しい道を選んだと思えば、行きたいところへ繋(つな)がっている。

いいな? そうすれば、やがて森を抜けられるだろう。わかったな。選んだ時には自分を信じるのだぞ」

 

ネナは泣きながら頷きました。

 

「娘。このまま村に帰ったら、森を通ったことを咎(とが)められるだろう。

だから宝物をやろう」

 

そう言って、森の主は《幸せの卵》を差しだしました。

 

娘はそれを受けとると、使い方も聞かずに一目散(いちもくさん)に森を駈(か)け抜けました。


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02

ネナは村に戻(もど)ると、森を通ったことを両親に詫(わ)び、

それから《幸せの卵》を貰(もら)ったことを話しました。

 

それは、とっても小さな卵で、まるで石ころのようでした。

「で、これはどうしたら孵(かえ)るんだい?」お母さんが聞きました。

 

その時、はじめてネナは、卵の使い方を聞いていないことに気がつきました。

 

でも、しょうがないですよね。だって、恐かったんだから、そんなどころじゃありません。

 

「しかしなぁ。卵なんだから、孵らないと幸せは来ないのだろうし」お父さんは考え込みました。

 

3人は1晩考えましたが、いいアイデアは浮かびませんでした。

とりあえず、皮のポシェットに入れてネナが首から提(さ)げていることにしました。


 

翌日になって、ネナは村の人たちの知恵を借(か)りることにしました。

もしかしたら、誰かが使い方を知っているかもしれません。それに、村の宝にすれば、きっとみんなが幸せになれるはずです。

 

ネナは村の広場にみんなを集め、森の主に貰った《幸せの卵》を見せました。

 

村人は卵を見て半分驚(おどろ)き、半分ガッカリしました。だってそれは金色でもなく、大きくもない、石ころみたいなただの小鳥の卵に見えたからです。

 

そして、村人の誰一人として、この卵の使い方を知りませんでしたし、長老(ちょうろう)すらそんな卵のことは聞いたことも見たこともない、と言いました。

 

そこで、村人は一人1案、《幸せの卵》をかえらすアイデアを提出(ていしゅつ)することにしました。


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03

「どうしたら、《幸せの卵》が孵(かえ)るのだろう?」村人はみんなで考えました。

 

誰かが言いました。

「愛が足(た)らないからじゃないかな?」

それで村人は考えました。

誰が村一番、有り余(あま)る愛を持っているか?

 

そして村人は《幸せの卵》を

プロポーズしたばかりのカップルに預(あず)けることにしました。



ふたりは6日7晩卵をふたりで暖めましたが、

それでも卵は孵りませんでした。


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04

「どうしたら、《幸せの卵》が孵るのだろう?」

また、村人はみんなで考えました。

 

誰かが言いました。

「平等(びょうどう)さが足らないからじゃないかな?」

 

それで村人は考えました。

誰が村一番公平(こうへい)か?

 

そして村人は《幸せの卵》を

村一番の偏屈爺(へんくつじい)さんに預けることにしました。



何故なら、偏屈爺さんは村人の誰もを公平に嫌(きら)っていたからです。

 

偏屈爺さんは《幸せの卵》を

6日7晩帽子(ぼうし)中に入れて暖めました。

 

それでも、やっぱり卵は孵りませんでした。


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