目次
もくじ
もくじ
1.新しい文学の形と新しい文章
1.新しい文学の形と新しい文章
2.ライトノベルと識字率
2.ライトノベルと識字率
3.書評:『きらきらひかる』江國香織著
3.書評:『きらきらひかる』江國香織著
4.神とはヒトの口癖である (前編・後編)
4.神とはヒトの口癖である(前編)
4.神とはヒトの口癖である(後編)
5.再現とは、でっちあげること (全5章)
再現とは、でっちあげること (1)
再現とは、でっちあげること (2)
再現とは、でっちあげること (3)
再現とは、でっちあげること (4)
再現とは、でっちあげること (5)
6.ブリコラージュ状思考態って何ですか?
6.ブリコラージュ状思考態って何ですか?
7.「作家デビュー」
7.「作家デビュー」
8.なぜ、江國香織さんなのか?
8.なぜ、江國香織さんなのか?
9.小説か、エッセイか?
9.小説か、エッセイか?
10.書き手の孤独
10.書き手の孤独
11.江國香織さんと夏目漱石
11.江國香織さんと夏目漱石
12.読まなきゃあ、詠めない
12.読まなきゃあ、詠めない
13.短命に終わったブログの復元
13.短命に終わったブログの復元
奥付
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10.書き手の孤独

10.書き手の孤独

2012-08-11 20:02:08
テーマ:小説を書くことについて


   小説を書くという作業は、絶対的な孤独のなかで無から有を産みだすことだと思う。「産みの苦しみ」という比喩的な言い方があるが、的を射た表現だ。  

 

 連日、オリンピックの映像をテレビで見ているが、選手が投げ込まれている絶対的な孤独を思うと痛々しさを覚える。個人競技だけでなく団体競技であっても、競技者一人ひとりが一回の試合や演技のなかで全責任を背負っている。    

 各選手は戦う。戦いの相手は、競技や演技の相手だけではない。自分との戦いがある。彼らは母国の人たちの視線にさらされている。とてつもなく大きな期待が重圧となって身体と心にのしかかる。    

 二重の相手に立ち向かう――。大きな声、怒鳴り声、声援、罵倒、悲鳴のなかで、最終的には自分だけに頼らなければならない。  

 

 ある日のある時刻に、戦いが始まる――。その直前までに、どれだけの時間を練習やトレーニングに費やしたのかもわからない、長い長い日々。        

     *

 話を戻そう。  

 

 書き手は、絶対的な孤独のなかで、無から有を産みだす。  

 

 新人賞をねらって原稿を書いている、無名の書き手たちが全国にいることはまちがいない。誰かに頼まれたわけでもないのに、あえて物を書いている人たちがいる。    

 なぜ、書くのか?    

 小説が好きで書く者もいるだろう。また有名になりたいがために書く者もいるだろう。お金がほしくて書く者もいるだろう。家族を養うために書く者もいるだろう。また、「書かずにはいられないものがあるから(←ほんまかいな?)」という、もっともらしい手あかのついた科白を口にする者もいるだろう。    

 スポーツ選手と、新人賞をねらう無名の書き手との間には大きな違いがある。ほとんどの書き手には、応援してくれる人たちや成功を期待してくれる人たちはいない。応援団も、支援者たちも、スポンサーもいない。    

 絶対的な孤独のなかで、自分自身と、目に見えないライバルとを相手に書く。悲壮な覚悟なしで、夢を実現することは到底できないであろう。         

     *

 夢を実現させるためなら、自分を含む凡人にとっては、書くことと読むことが趣味であってはならない。お遊びであってもならない。    

 オリンピックが終わる――。閉幕のセレモニーの華やかな喧噪を尻目に、4年後の新たな夢をめざして練習やトレーニングに励んでいる人たちがいる。数知れなくいる。これだけは確かだ。    

 数々の文学賞の授賞式がおこなわれ終わる――。その模様を報じる新聞や雑誌を食い入るように見ている人たちが、きっといる。数知れなくいるだろう。目のつかないところに。    

 さあ、今、そしてこれから毎日、あなたも私も、するべきことはわかっているはずだ。(20:01)      


【※以上のエッセイは、3日間というあまりにもの短命に終わった、Amebaブログのバックアップから再現したものです。】