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販売価格100円(税込)
作者 じのん 状態 完成
カテゴリー 小説・ノンフィクション 恋愛 価格 100円(税込) ページ数 17ページ (Web閲覧)
25ページ (PDF)
タグ 短編写真黒猫
評判 ブクログ
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写真が趣味の大学生・麻衣とその恋人の和也、そして麻衣の飼い猫のゴエモンのお話です。少し長めです。
この本には試し読みページが 4 ページあります。
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特典について

お買い上げいただいた方には特典としまして、

「縦書きのPDF」

をもれなく差し上げます。

入手方法はご購入後、次のページに表示されます

タイプは以下の二つをご用意しており、どちらもお送りいたします。
  • Kindle 4 用
  • プリントアウト用
横書きは嫌だという方、また Kindle やプリントして読みたいという方はぜひお申し込みください!

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最終更新日 : 2011-11-30 21:48:14

試し読みできます

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 麻衣が和也と出会ったのはありがちな偶然のせい。
 それは麻衣が池袋駅のメトロポリタン出口、Lush というお店の前の柱に寄りかかって写真を撮っていたとき。和也がこっちを向いた瞬間に麻衣がシャッターを切ったから。そして和也が写されたことに気づき、麻衣に近づいて来たから。
 麻衣は一瞬、怒られるんじゃないかと怖くなったけど、和也はこう言った。
 「それ、ネットとかに載せる気?」
 麻衣は首を左右に三回勢いよく振って、
 「そんなことしない、自分用」
 と返した。
 すると和也は、ならいいけどさ、もし載せるんなら連絡して、と言って財布を取り出し、自分の名刺を渡した。
 その名刺には、
 株式会社 ***デザイン事務所
 チーフデザイナー 高田和也
 とあり、携帯の番号と会社の電話、メールアドレス、それに個人用のメールアドレスも載っていた。
 顔を上げると和也は既に背中を向けて歩き出し、すぐに人込みに紛れ、その場に残ったのは彼の低い声と名刺、そして名前のわからない気持ちのよい香水だけだった。

 麻衣はアパートに戻るとPCをつけて写真を取り込み、和也が映っているファイルをフォトショップで開く。少しアンダーだったからレベル補正し、色合いをちょっとだけ黄色がかったようにして、ほんの少しぼかしをかけ、ロモ風味に仕上げる。それを画面から一メートルくらい離れて眺め、他の色合いや切り抜き方を試した後、結局最初のものに決める。それからブラウザを起動してGmailにアクセスし、あぐらをかいた足の上で丸まっているゴエモンの頭を撫でながら、和也へのメールを書く。彼の写真を自分のフォトブログに公開していいか、尋ねるのが口実。でも本当は彼にもう一度会いたかったから。麻衣自身、その気持ちにはっきりと気づいていた。

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最終更新日 : 2011-11-30 21:48:14

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 メールを出してから二週間後。
 麻衣は和也の胸に顔を押し付け、彼の体臭とブルガリのプールオムエクストリームが混じったこの世界で彼だけの匂いを、ゆっくり深く吸い込み、指先まで幸せに満たされ、我慢しないと意味もなく笑ってしまいそうな自分に気づく。今まで一度もそんな気持ちにはなったことがなかった気がして、からかうように、男臭い、と和也に笑いかける。和也は麻衣の柔らかい髪を撫で、ウルセと言って笑う。二人の笑いを追いかけるようにゴエモンが鳴いて三人のハーモニーになった瞬間、二週間前の自分が今までで一番正しいことをしたんだと、麻衣は確信する。

 麻衣が一人暮らしを始めて半年経ったとき、つまり三年前の秋、生後一月も経ってないくらいの二匹の黒猫が、アパートの一階の階段の裏に捨てられていた。
 その日の午後、麻衣はバイトを休んで子猫たちを獣医に連れて行ったが、着いたときには弱っていた子は既に息がなく、ゴエモンだけを連れて帰った。
 近くのスーパーで子猫用のミルクや猫缶を買ってアパートに戻り、ゴエモンを洗ってタオルでゴシゴシ拭き、ベッドの上にそっと置いて隣に寝そべる。ふと、この子にはゴエモンという名前がぴったりだね、私と同じで兄弟を子供の頃に亡くしたんだね、ずっと一緒にいてあげるからね、と考えている自分に気づき、「お前の名前はゴエモンだよ、すごくぴったりでしょ?」と声に出して言う。
 するとゴエモンはまだよく見えていなそうな目を開けて一声鳴いてよちよち歩きで麻衣に近づき、麻衣の鼻に頭を擦り付け、頭を撫でてやると指をくんくんと嗅ぐ。麻衣は起き上がってゴエモンをそっと抱きかかえ、きっとこれから一生、ゴエモンは私のそばにいるんだ、もう二度と独りにしないからね、と涙ぐみながら思う。

 だから今、ゴエモンが和也の膝の上で静かに、満ち足りたように眠っているのに気づいて、麻衣は少し落ち着かない。上手く言葉にできないけど、何かこれまでと全然違うことが起きてしまったように感じる。もちろん初めて和也と寝た二回目のデートの後だって、人生がちょっとだけ方向を変えたように感じはした。けれど自分ではなく和也の手に頭をこすり付けているゴエモンを、二人から少し離れてまるで仲間外れにされているように感じながら見ている今の方が、ずっと強く、自分の生活がこれまでとは違ったコースに入ったんだと感じさせる。


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最終更新日 : 2011-11-30 21:48:14

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奥付



嗅覚

2007/10/30 脱稿
http://p.booklog.jp/book/25352


著者 : じのん
公式サイト:http://jinon.jp/
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/jinon/profile

表紙写真・デザイン: browneyes

発行所 : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社paperboy&co.


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最終更新日 : 2011-11-30 21:49:03

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