| 作者 | じのん | 状態 | 完成 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| カテゴリー | 小説・ノンフィクション (恋愛, 学園・青春・友情) | 価格 | 350円(税込) | ページ数 | 61ページ (Web閲覧) 81ページ (PDF) |
| タグ |
短編集短編ショートショート青春恋愛暴力 |
||||
| 評判 |
|
ブクログ | みんなのレビューをみる | ||
| ダウンロード |
PDF(1.8MB) ePub(1.5MB) 21 ダウンロード(PDF+ePub) |
||||
| 外部連携 | |||||
| ブログパーツ | この本をブログで紹介する | ギフト | |||
小説を書き始めた 2001 年から 2010 年までの短編 8 作を収録しました。
一つずつ買うより 234 円お得です。
以下、収録作品(収録順です)
-In Da Room
-境界
-電車の知り合い
-嗅覚
-れげえのひと
-声/音
-伊織の部屋 *一部、軽めな性的表現あります。
-旅立つものよ、あなたは永遠に若い
* 一部性的描写があります。ご注意ください。
一つずつ買うより 234 円お得です。
以下、収録作品(収録順です)
-In Da Room
-境界
-電車の知り合い
-嗅覚
-れげえのひと
-声/音
-伊織の部屋 *一部、軽めな性的表現あります。
-旅立つものよ、あなたは永遠に若い
* 一部性的描写があります。ご注意ください。
この本には試し読みページが 20 ページあります。
試し読みできます
In Da Room - 1
五日前の土曜の夜、コウタとヒロがアオイを連れて取り壊し間近のビルに入った。
僕もいた。でも行かなかったことになっている。夕方から塾に行ってまっすぐ家に戻って受験勉強していた、僕は行かなかった、そこにはいなかった、ビルの外に出てずぶ濡れになりながら、コウタは僕の肩を何度も揺すって何度もそう繰り返した。ヒロもそばで頷いていた。アオイは白い肩に雨を受け、血が流れた跡をさらし、何も言わずに僕とコウタを見ていた。
コウタとヒロ、そして僕は幼馴染みだ。いつも三人で遊んでいた。今だって学校は違うけど、土日のどちらかは一緒にいる。アオイは五年生の時に転校してきた。女だから学年が上がるにしたがってつるむ時間は減ったけど、幼馴染みと言っていい。少なくとも中学の半ばまでは毎日のように一緒に遊んだ。まるで男の友達のように、僕らは接した。
三人は今、警察で取り調べを受けている。
この界隈では有名な二人組のチンピラ大樹と翔太を殺したという疑いだ。もちろん有名というのは良くない意味でだ。つまりカツアゲ、万引き、ケンカ、そして最近はクスリとレイプの噂があった。そろそろ逮捕されるよ、とコウタが一月前に言ったのを覚えている。
けれどコウタもヒロも、どちらかと言えば大樹や翔太と似た存在だ。つまりケンカやカツアゲに近いことを毎日していた。と言っても僕がいない時に限ってだ。二人の親はもうとっくに諦めていた。高校だけはかろうじて行っていた。辞めそうになる度に僕は説得した。高校中退しても生きるのが大変になるだけだから。
逆に僕はいわゆる優等生だ。多分このまま行けば東大か京大に入れるだろう。可能性は五分五分かそれ以上だと思っている。もちろんコウタもヒロもそれを知っている。アオイはどうか分からない。知っていたとしても彼女にとってはどうでもいいんじゃないかと思う。
そして昨日、三人が警察に呼ばれた。コウタとヒロが同時に、アオイは数時間遅れて。アオイはずっと家に帰らずにいたから身柄を抑えられなかったのかもしれない。その間、アオイは僕の部屋に初めて一人で来て、初めて僕と二人きりでいた。
試し読みできます
境界 - 1
いつのまにか体は冷え、呼吸も落ち着き、汗もひいていた。頭を上げると白い漆喰で塗られた壁の向こうに丈の低い樹の、頂上のシルエットが薄く浮き上がって見えるような気がした。血をべっとりと手のひらに浴びたから、目の前にぼんやりと浮き上がる壁にこすりつけて落とそうとしたが、壁に赤い血が付き、黒ずんだ跡となっても、まだ手には壁についていた砂や何かと混じった血の感触が残ったままだ。さっきまで他人のものだった小さな手鏡を取り出し、顔を見ようとしても、夜には昼の半分ほども目が利かないようで、鏡には顔の輪郭が曖昧に浮かぶだけだった。まったく見えないが頬や短い顎鬚や揉み上げのあたり、そして目のあたりにも血がついているかもしれない。それにここまで来る間に額から流れる汗を手で拭ったような気もする。すると自分のこの顔のいたるところに赤い血が付いているだろう。壁を乗り越えて外を歩いている途中で誰かに見られれば不審に思われ、面倒なことになりかねない。
仕方なく、昼に目にした水のたまった窪みで顔と手を洗っていくことにした。ただそれがどこにあるのかまったくわからない。今、自分がどのあたりに立っているのかわからないせいだ。この白い壁と自分の手についた赤い血は見える。いや、赤く見えるのじゃなく、薄く浮かび上がる手がどことなくくすんで見える。壁にこすり付けた手のひらは生暖かく、鉄錆のような匂いがする。そして薄い一枚の、乾ききって縦横にひび割れた自分のものではない膜を感じる。だからこの手には血がついている。その手を白い壁にこすりつけ、こすりつけた部分の白さがくすんでいる。
男はその場にしゃがみ込んで湿った土を掴み、両手をこすりあわせ、それからもう一度壁に手をこすりつけた。すると手には膜の張った感覚がなくなった。鉄錆のような匂いも消えた。だが男は顔にこの少し腐敗した匂いがする土をこすりつけようとは思わなかった。水で洗うか湿った布のようなもので拭うかしなければ、顔にこびりついて固まってしまった赤黒い血は落ちないと思ったからだ。それに湿った土で顔をこすって服で拭ったとしても、服も顔も汚れたままでは外を歩けない。あの水溜りを見たのは確かここの真ん中あたりだった。壁からはずいぶん離れているはずだ。当然、男の目に見える範囲にはない。






