閉じる


<<最初から読む

20 / 25ページ

地域情報

地域情報の収集は、それぞれの図書館が独自性を出すチャンスでもあります。一方で収集や整理が追いつかない面もあります。

 図書館で考え得る地域情報には、大きく次の3点があります。1、従来の図書館資料。2、地域の人。3、まちなみ。

1点目については、当たり前ですが、自治体などが作成する公文書等は、今後もそれぞれの部署から図書館に資料が送られてくる可能性があります。すみやかに検索できるようデータを作成し蔵書とします。

2点目については、地域には有力者をはじめとして、昔から住んでいる住民がいます。図書館を利用している人もいれば利用していない人もいます。まずは、お互いを知るために地域の会合等に積極的に職員は出席し、図書館を知ってもらうようにします。話をする中で、従来の地域資料には記されていないことを聞くことができます。図書館で風習や慣わしを広める講演会や、立派な本とまではいかなくとも、簡易製本機があればタイピングしたものを出力し製本して1冊の本にできます。そして、蔵書登録を行い地域資料のコーナーに配架してもよいでしょう。

「そのような、紙に残っていない昔からの言い伝えを置くのか」という意見があると思いますが、地域資料や地域情報は後世に残すものであり、考現学の視点を持つこともこれからの図書館には必要です。自分の生まれ故郷やルーツを調べるときの手がかりになります。まとまったものにならなければ、電子データとして残しておけばよいのです。

3点目については、図書館の仕事のひとつとして、今現在の地域の写真撮影を行います。都市部では道路拡張工事などで建造物の立退きがあったりします。会話の中で「昔あそこに工場があった」と話題になったとき、写真があれば参考になります。また、自然が残っている場所では定期的に撮影していれば、環境の変化を記録できます。たとえば、「冬に湖が凍ったのは何年ぶりか」について知りたいときに、撮影した写真が残っていれば確実にわかります。

地域資料や地域情報は、図書館員が自ら動いて獲得するものです。地域の祭りやイベントに出向いて記録をとります。逆に地域貢献の一環として、利用者の中でボランティアを募って一緒に行うのも面白いでしょう。このような取り組みは、図書館側はもとより、利用者側の視点も広げることになります。


資料の並べ方

 図書館は、NDC(日本十進分類法)をもとに、ある決まった順番で棚に本が並べられています。たとえば、フランスの歴史は235と数字が振られています。しかし、いくつかの図書館を使っていると、NDCが機能していないように感じます。隣の自治体の図書館に行くと変わった記号が付与されていたり、ある図書館では日本史の分類は細かく小数点以下まで記していたりします。また、別の図書館に行くと日本の中世210.4214というように3桁目のゼロを消して4桁目を繰り上げていたりします。自治体の個性が出ているのは小説でしょう。村上春樹の小説が913.6ムラ、J36ムラ、ムラだけなど、いろいろあります。

 当たり前ではありますが、日本史の本が日本史のところに置いていなければ問題にもなります。

 これまでの図書館は、一般の図書、辞典類、視聴覚資料など、それぞれの媒体別に分け、その中を十進分類順(NDC)で並べてきました。

思い切ってNDCの使用をやめて書架はおおまかなくくりだけにします。一般書と児童書などに分けません。図書には請求記号ラベルをつけず、大きく次のような5つのカテゴリーを設けます。

辞書辞典類:辞書、事典

世の中:宗教、哲学、政治、経済、法律、数学、天文

暮らし:心理学、医学、料理、ファッション、子育て、旅行、パソコン

歴史:日本史、世界史、各国史、地理、地域資料

芸術:芸術、デザイン、言語、文学、小説

 

 資料にはすべてICタグを付け、書架にもアンテナをつけます。館内には携帯電話サイズの小型端末が複数置いてあり、来館者は小型端末を持ちながら検索を行えば、探している棚が反応して求めている資料にたどり着けます。従来のNDCの枠を超えて配架することができます。

棚の貸し出し

 棚の貸し出しには大きく3点の構想があります。

1点目は、寄贈対策です。図書館には利用者からの寄贈が多い。ほとんどの図書館の対応としては、図書館資料として受け入れるかどうかは、図書館の判断に委ねてもらうと思います。寄贈をしたいと思っている側としては、上から目線のように思い寄贈するのが嫌になる場合もあります。受け取った側もたまる一方でなかなか処理しきれないのが現状です。

地域の人の著作物については、収集基準に反しない限り原則図書館の蔵書として受け入れます。一般的な寄贈を申し出た人には、一定期間、館内の一部の棚を貸し出します。その棚に本に置いてもらい、残ったものは引き取ってもらうようにします。これは、よく入り口の端に見かけるリサイクルコーナーを棚に置き換えただけの方法です。利用者が手に取って持ち帰らなかったものは、それだけの価値しかないということです。残ったものは図書館の蔵書とはしない方法です。

2点目は、利用者や地域の団体が自分で用意した資料、館内にある資料を自由に選び、特集展示のように表現するコーナーを設けたい。もし、自分で用意する資料が貴重なものであればICタグを貼ってもらいます。図書館によっては図書館員による特集展示を行っていますが、テーマがなくなっていくのか、次第に内容が薄くなっているようです。

それならばむしろ、利用者や地域の団体が自分の得意分野と図書館資料を結びつけて、ある意味宣伝のためではありますが棚を一部貸し出ししたほうがよいと思います。人参を作っている農家が人参が売れなく困っているとき、人参に関する図書館資料と採れた人参を一緒に置き、誰が作っているのか、どこで購入できるのかを表示するようにします。POPなどは利用者に作ってもらうため図書館員としてはPOPの作り方の本や『店頭手書きボードの描き方・作り方』などの資料を紹介します。

3点目は、出版社との良好な関係を築くために、書店のように新刊書の展示スペースを棚に設けます。

そこで、図書館で購入したものの中から一部同じものを出版社に依頼して借り、館内閲覧用に置きます。たいていの場合、新刊書はすぐに貸し出され、予約も入るので図書館の棚に置かれていることはあまりありません。読み回されてから棚に戻るので、たまたま来館した人が新刊書が置かれていないと思うのは当然でしょう。イメージとしては見本を手に取って読める感じです。


おわりに

 本書を読んでいただいたくと、2つの反応に分かれると思います。笑ってしまった方、ふざけた夢物語であると憤る方。前者は図書館利用者の方だと思います。「こんなことはできないものか」とそれぞれ利用者の視点で思い浮かべたでしょう。図書館勤務年数が長いベテランの方は、冷ややかな目で見られるかもしれません。

 私たちは皆20代と若く、図書館勤務年数も短い。司書資格取得中の学生もこのチームのメンバーにいるため自由に考えていることを提案しました。その中には今すぐ実施できるもの、いくらか経費をかければ実施できるものがあります。

 もし、読者の中で図書館創設に携わっている方がおられたら参考にしていただければ幸いです。

 本書を出すにあたっては、さまざまな方々から助言を頂くことができました。今回限りではなく、今後も皆さんとともに創造する機会が持てたらと思っております。


略歴

吉井 潤(図書館員)

1983年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、内定が出ていた企業に就職する予定だったが、司書資格の図書館経営論の授業を担当していた小林是綱氏と出会い、図書館の世界に入る。特技は料理。

 

伊五沢 麻衣子(図書館員)

1982年生まれ。図書館では新聞雑誌コーナーを担当。切り絵やイラストを描き館内の展示の装飾に活用している。特技は切り絵。

 

久川 竜馬(個人事業者)

1985年愛媛県生まれ。早稲田大学留年後ITコンサル会社に就職し後、起業。専門分野はWEBサイトやiPhoneアプリ制作、WEBマーケティング。特技はコンピュータプログラミング。

 

森谷 亮太(学生) 

1986年東京都生まれ。学部3年次に休学しカナダのリジャイナ大学に留学、文化人類学と経済学を学ぶ。留学中は大学に通うかたわらフライトスクールに通い、これまでの飛行時間は約45時間。帰国後、図書館でアルバイトを始める。特技は飛行機操縦。

 

山川 真央(学生)

1990年生まれ。大学に入学後、20111月まで図書館でアルバイトとして勤め、現在は就職活動中に専念中。特技はイラスト。



読者登録

dekigotokiさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について