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電子資料について

これからの図書館は、紙の書籍と電子書籍を兼ね備えていくようにします。最近、電子書籍や電子出版が取り上げられるようになりましたが、すべてが電子化されて紙の書籍がなくなるわけではありません。選択肢が増えたと捉えるのが適切でしょう。しかし、電子書籍はまだコンテンツ量が少ないのが現状です。

電子図書館や電子書籍を考えるにあたっては、大学図書館で電子ジャーナルについてすでに取り組まれています。サイトライセンス、コンソーシアムがひとつヒントになるでしょう。機関リポジトリは、地域資料のデジタル化と提供のヒントになります。

しかし、欧米の図書館の先進的な取り組みや、日本の大学図書館の取り組みの良い部分を取り入れた後追いをただ実施するのでは芸がありません。

たとえば、地域の図書館の取り組みとして、図書館員が地域住民と協力してコンテンツを作る作業を行います。特に、地域の古い写真を住民から集めてデジタル化し、図書館のコンテンツにします。出土した土器や石器をデジタルアーカイブし、電子保存します。ある県立図書館で行っているように、民話などの口承文化をデジタル化します。ローカル色を打ち出し、インターネット上に紹介すことによって、地域を知ってもらうようにします。

すでに一部の人たちの間でよく行われている自炊を、図書館でも行えるようにします。利用者が書籍を持参した場合に限り、裁断機とスキャナー、PCを貸し出します。


書店にないものも収集

 自治体によっては自治体内に書店がない場合があります。その場合、書店で平積みされているようなベストセラーをそろえて、来館者に対して閲覧・貸出を行うことは図書館の役割のひとつです。

 街中に書店がある場合は、書店では扱っていないものも少しは集めてみるようにしてはどうでしょうか。

 それというのも、ほとんどの図書館が似たような品ぞろえであり、特徴がないからです。特徴がないことが特徴であると言われてしまえば、それは仕方ありませんが。

 また、子どもの読書活動推進についてですが、幼児がひとりで図書館に来ることは現実的に少ないので、親子で図書館に来ることができるような工夫が必要です。子育てをしている年齢層の分析を行い、仮に35歳前後とわかれば、35歳前後の男女が興味を示すような図書をそろえます。この方法は、流通しているものを一工夫して品ぞろえの構成を考える方法です。

 書店にないものを収集する具体例として、神奈川県のある図書館は、社史のコレクションで有名で、1室に所狭しと社史が収められています。また、山梨県のある図書館は、国語学者である金田一春彦が、生前所蔵していた2万冊以上の資料が寄贈され、日本語や方言の資料が充実しています。館内には数多く資料が展示され、全国の方言を聞いたりクイズが楽しめるコーナーもあります。新宿区のある図書館では、業界新聞・専門誌・広報誌を400タイトル以上所蔵しています。

そこの図書館に行かないと見られないもがあるか分析を行い、ニーズを把握し、計画を立て実施してみてはどうでしょうか。まず、どのような資料が存在するのかを調査する必要があるでしょう。調査した後、あらたに購入するのか、寄贈の依頼を行うのか検討が必要です。寄贈依頼を行う場合、文言や依頼の仕方にちょっとしたテクニックが求められます。これから図書館で働く場合は、企業の営業のように折衝事も必要なスキルです。研究所や工場の倉庫に眠っている年史や報告書を集めて提供するという例もあります。


地域情報

地域情報の収集は、それぞれの図書館が独自性を出すチャンスでもあります。一方で収集や整理が追いつかない面もあります。

 図書館で考え得る地域情報には、大きく次の3点があります。1、従来の図書館資料。2、地域の人。3、まちなみ。

1点目については、当たり前ですが、自治体などが作成する公文書等は、今後もそれぞれの部署から図書館に資料が送られてくる可能性があります。すみやかに検索できるようデータを作成し蔵書とします。

2点目については、地域には有力者をはじめとして、昔から住んでいる住民がいます。図書館を利用している人もいれば利用していない人もいます。まずは、お互いを知るために地域の会合等に積極的に職員は出席し、図書館を知ってもらうようにします。話をする中で、従来の地域資料には記されていないことを聞くことができます。図書館で風習や慣わしを広める講演会や、立派な本とまではいかなくとも、簡易製本機があればタイピングしたものを出力し製本して1冊の本にできます。そして、蔵書登録を行い地域資料のコーナーに配架してもよいでしょう。

「そのような、紙に残っていない昔からの言い伝えを置くのか」という意見があると思いますが、地域資料や地域情報は後世に残すものであり、考現学の視点を持つこともこれからの図書館には必要です。自分の生まれ故郷やルーツを調べるときの手がかりになります。まとまったものにならなければ、電子データとして残しておけばよいのです。

3点目については、図書館の仕事のひとつとして、今現在の地域の写真撮影を行います。都市部では道路拡張工事などで建造物の立退きがあったりします。会話の中で「昔あそこに工場があった」と話題になったとき、写真があれば参考になります。また、自然が残っている場所では定期的に撮影していれば、環境の変化を記録できます。たとえば、「冬に湖が凍ったのは何年ぶりか」について知りたいときに、撮影した写真が残っていれば確実にわかります。

地域資料や地域情報は、図書館員が自ら動いて獲得するものです。地域の祭りやイベントに出向いて記録をとります。逆に地域貢献の一環として、利用者の中でボランティアを募って一緒に行うのも面白いでしょう。このような取り組みは、図書館側はもとより、利用者側の視点も広げることになります。


資料の並べ方

 図書館は、NDC(日本十進分類法)をもとに、ある決まった順番で棚に本が並べられています。たとえば、フランスの歴史は235と数字が振られています。しかし、いくつかの図書館を使っていると、NDCが機能していないように感じます。隣の自治体の図書館に行くと変わった記号が付与されていたり、ある図書館では日本史の分類は細かく小数点以下まで記していたりします。また、別の図書館に行くと日本の中世210.4214というように3桁目のゼロを消して4桁目を繰り上げていたりします。自治体の個性が出ているのは小説でしょう。村上春樹の小説が913.6ムラ、J36ムラ、ムラだけなど、いろいろあります。

 当たり前ではありますが、日本史の本が日本史のところに置いていなければ問題にもなります。

 これまでの図書館は、一般の図書、辞典類、視聴覚資料など、それぞれの媒体別に分け、その中を十進分類順(NDC)で並べてきました。

思い切ってNDCの使用をやめて書架はおおまかなくくりだけにします。一般書と児童書などに分けません。図書には請求記号ラベルをつけず、大きく次のような5つのカテゴリーを設けます。

辞書辞典類:辞書、事典

世の中:宗教、哲学、政治、経済、法律、数学、天文

暮らし:心理学、医学、料理、ファッション、子育て、旅行、パソコン

歴史:日本史、世界史、各国史、地理、地域資料

芸術:芸術、デザイン、言語、文学、小説

 

 資料にはすべてICタグを付け、書架にもアンテナをつけます。館内には携帯電話サイズの小型端末が複数置いてあり、来館者は小型端末を持ちながら検索を行えば、探している棚が反応して求めている資料にたどり着けます。従来のNDCの枠を超えて配架することができます。

棚の貸し出し

 棚の貸し出しには大きく3点の構想があります。

1点目は、寄贈対策です。図書館には利用者からの寄贈が多い。ほとんどの図書館の対応としては、図書館資料として受け入れるかどうかは、図書館の判断に委ねてもらうと思います。寄贈をしたいと思っている側としては、上から目線のように思い寄贈するのが嫌になる場合もあります。受け取った側もたまる一方でなかなか処理しきれないのが現状です。

地域の人の著作物については、収集基準に反しない限り原則図書館の蔵書として受け入れます。一般的な寄贈を申し出た人には、一定期間、館内の一部の棚を貸し出します。その棚に本に置いてもらい、残ったものは引き取ってもらうようにします。これは、よく入り口の端に見かけるリサイクルコーナーを棚に置き換えただけの方法です。利用者が手に取って持ち帰らなかったものは、それだけの価値しかないということです。残ったものは図書館の蔵書とはしない方法です。

2点目は、利用者や地域の団体が自分で用意した資料、館内にある資料を自由に選び、特集展示のように表現するコーナーを設けたい。もし、自分で用意する資料が貴重なものであればICタグを貼ってもらいます。図書館によっては図書館員による特集展示を行っていますが、テーマがなくなっていくのか、次第に内容が薄くなっているようです。

それならばむしろ、利用者や地域の団体が自分の得意分野と図書館資料を結びつけて、ある意味宣伝のためではありますが棚を一部貸し出ししたほうがよいと思います。人参を作っている農家が人参が売れなく困っているとき、人参に関する図書館資料と採れた人参を一緒に置き、誰が作っているのか、どこで購入できるのかを表示するようにします。POPなどは利用者に作ってもらうため図書館員としてはPOPの作り方の本や『店頭手書きボードの描き方・作り方』などの資料を紹介します。

3点目は、出版社との良好な関係を築くために、書店のように新刊書の展示スペースを棚に設けます。

そこで、図書館で購入したものの中から一部同じものを出版社に依頼して借り、館内閲覧用に置きます。たいていの場合、新刊書はすぐに貸し出され、予約も入るので図書館の棚に置かれていることはあまりありません。読み回されてから棚に戻るので、たまたま来館した人が新刊書が置かれていないと思うのは当然でしょう。イメージとしては見本を手に取って読める感じです。



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