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館長と職員の距離

 実務経験がなく、図書館に関しては素人の人が図書館長になる場合があります。実務を知らないため職員と話が通じないこともあり、運営に支障を来たしたり、職員からはただ椅子に座っているだけだと思われたり、職員の立場としては話しにくい雰囲気を出していたりと、館長に対するイメージはあまりよくありません。しかし、図書館によっては館長名が広く知られ有名なところもあります。

 館長は雲の上の人ではありません。時間のあるときは積極的にカウンターやフロア出て利用者接し、職員が日々こなしている実務進んで行い理解することで職員の働きやすさや利用者サービス向上に何が必要かを考えることができます。図書館に行ったときに館長がどの人かすぐわかれば、そこの図書館の館長は利用者から広く知られていることになるでしょう。

 館長は職員とともにイベントを企画するなど、共に仕事をすることによって距離を縮める努力をします。また、職員に仕事の支障を来たさない程度に話しかけるようにします。悩みを抱えていないか、困っていることはないか、体調はどうかなど気にかけることによって、職場の良い雰囲気をつくり、一体となってサービスを提供していくことができます。館長になるからには、何かしらの専門知識や技能があるはずです。存分に能力を発揮できると思います。


図書館以外のことを学べる研修に積極的に参加

 図書館の専門家であることは大切ですが、外の様子も知らないと世間の感覚とはずれてきます。

 環境教育のインタープリターは、これからの図書館サービスに参考になります。インタープリターとは、自然と人との仲介となって自然解説を行う人のことです。自然体験型の環境教育活動の企画や指導に当たっています。図書館に当てはめると、一部では実施されている単なる図書館のガイドツアーではなく、図書館資料を紹介するツアーです。インタープリターは、図書館資料と人を結びつけるためのひとつのヒントになります。

 私たちの日常に溶け込んでいるコンビニエンスストアで働いてみることも勉強になります。POSレジスタと物流の流れは、図書館業務に置き換えると、資料選定や図書館システムの再構築のヒントになります。しかも、少数精鋭、接客、お客様対応など学ぶことは多くあります。

 また、自衛隊体験生活は、自衛隊のことを知るきっかけになると同時に、組織として動くことの大切さや帰属意識を高めることができます。こういったことは、一般企業においても新人教育の一環として導入しています。

 図書館業務に直接関係があるものとして書店があります。商品の陳列、売場のPOP作り、在庫確認、返本作業など出版流通の一部を知ることができます。

 外部のことを知り、ノウハウを取り入れることは大切です。そして、他の業界では当然となっていることの後追いであることも自覚する必要はあります。今後はできれば、図書館とは関係ない業界が、図書館の良いところを取り入れるようなことがあってほしいと思います。


電子資料について

これからの図書館は、紙の書籍と電子書籍を兼ね備えていくようにします。最近、電子書籍や電子出版が取り上げられるようになりましたが、すべてが電子化されて紙の書籍がなくなるわけではありません。選択肢が増えたと捉えるのが適切でしょう。しかし、電子書籍はまだコンテンツ量が少ないのが現状です。

電子図書館や電子書籍を考えるにあたっては、大学図書館で電子ジャーナルについてすでに取り組まれています。サイトライセンス、コンソーシアムがひとつヒントになるでしょう。機関リポジトリは、地域資料のデジタル化と提供のヒントになります。

しかし、欧米の図書館の先進的な取り組みや、日本の大学図書館の取り組みの良い部分を取り入れた後追いをただ実施するのでは芸がありません。

たとえば、地域の図書館の取り組みとして、図書館員が地域住民と協力してコンテンツを作る作業を行います。特に、地域の古い写真を住民から集めてデジタル化し、図書館のコンテンツにします。出土した土器や石器をデジタルアーカイブし、電子保存します。ある県立図書館で行っているように、民話などの口承文化をデジタル化します。ローカル色を打ち出し、インターネット上に紹介すことによって、地域を知ってもらうようにします。

すでに一部の人たちの間でよく行われている自炊を、図書館でも行えるようにします。利用者が書籍を持参した場合に限り、裁断機とスキャナー、PCを貸し出します。


書店にないものも収集

 自治体によっては自治体内に書店がない場合があります。その場合、書店で平積みされているようなベストセラーをそろえて、来館者に対して閲覧・貸出を行うことは図書館の役割のひとつです。

 街中に書店がある場合は、書店では扱っていないものも少しは集めてみるようにしてはどうでしょうか。

 それというのも、ほとんどの図書館が似たような品ぞろえであり、特徴がないからです。特徴がないことが特徴であると言われてしまえば、それは仕方ありませんが。

 また、子どもの読書活動推進についてですが、幼児がひとりで図書館に来ることは現実的に少ないので、親子で図書館に来ることができるような工夫が必要です。子育てをしている年齢層の分析を行い、仮に35歳前後とわかれば、35歳前後の男女が興味を示すような図書をそろえます。この方法は、流通しているものを一工夫して品ぞろえの構成を考える方法です。

 書店にないものを収集する具体例として、神奈川県のある図書館は、社史のコレクションで有名で、1室に所狭しと社史が収められています。また、山梨県のある図書館は、国語学者である金田一春彦が、生前所蔵していた2万冊以上の資料が寄贈され、日本語や方言の資料が充実しています。館内には数多く資料が展示され、全国の方言を聞いたりクイズが楽しめるコーナーもあります。新宿区のある図書館では、業界新聞・専門誌・広報誌を400タイトル以上所蔵しています。

そこの図書館に行かないと見られないもがあるか分析を行い、ニーズを把握し、計画を立て実施してみてはどうでしょうか。まず、どのような資料が存在するのかを調査する必要があるでしょう。調査した後、あらたに購入するのか、寄贈の依頼を行うのか検討が必要です。寄贈依頼を行う場合、文言や依頼の仕方にちょっとしたテクニックが求められます。これから図書館で働く場合は、企業の営業のように折衝事も必要なスキルです。研究所や工場の倉庫に眠っている年史や報告書を集めて提供するという例もあります。


地域情報

地域情報の収集は、それぞれの図書館が独自性を出すチャンスでもあります。一方で収集や整理が追いつかない面もあります。

 図書館で考え得る地域情報には、大きく次の3点があります。1、従来の図書館資料。2、地域の人。3、まちなみ。

1点目については、当たり前ですが、自治体などが作成する公文書等は、今後もそれぞれの部署から図書館に資料が送られてくる可能性があります。すみやかに検索できるようデータを作成し蔵書とします。

2点目については、地域には有力者をはじめとして、昔から住んでいる住民がいます。図書館を利用している人もいれば利用していない人もいます。まずは、お互いを知るために地域の会合等に積極的に職員は出席し、図書館を知ってもらうようにします。話をする中で、従来の地域資料には記されていないことを聞くことができます。図書館で風習や慣わしを広める講演会や、立派な本とまではいかなくとも、簡易製本機があればタイピングしたものを出力し製本して1冊の本にできます。そして、蔵書登録を行い地域資料のコーナーに配架してもよいでしょう。

「そのような、紙に残っていない昔からの言い伝えを置くのか」という意見があると思いますが、地域資料や地域情報は後世に残すものであり、考現学の視点を持つこともこれからの図書館には必要です。自分の生まれ故郷やルーツを調べるときの手がかりになります。まとまったものにならなければ、電子データとして残しておけばよいのです。

3点目については、図書館の仕事のひとつとして、今現在の地域の写真撮影を行います。都市部では道路拡張工事などで建造物の立退きがあったりします。会話の中で「昔あそこに工場があった」と話題になったとき、写真があれば参考になります。また、自然が残っている場所では定期的に撮影していれば、環境の変化を記録できます。たとえば、「冬に湖が凍ったのは何年ぶりか」について知りたいときに、撮影した写真が残っていれば確実にわかります。

地域資料や地域情報は、図書館員が自ら動いて獲得するものです。地域の祭りやイベントに出向いて記録をとります。逆に地域貢献の一環として、利用者の中でボランティアを募って一緒に行うのも面白いでしょう。このような取り組みは、図書館側はもとより、利用者側の視点も広げることになります。



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