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第1章.図書館の現状分析

 戦後の日本の図書館の歴史を大まかにみると、学生の勉強部屋時代、貸出サービス中心時代、滞在型時代と推移するとともに、図書館数や来館者数、貸出冊数は時代とともに飛躍的に増えてきています。最近ではインターネットの普及で、情報通信技術を取り入れたサービスを実施している図書館もあります。ビジネス支援、健康・情報サービスなどに取り組む課題解決型図書館というものも出てきています。

 議論の中で、私たちのメンバーは図書館勤務年数が短いためか「課題解決型図書館」を標榜しているわりには、現在の図書館界が抱えている課題を解決していないのに課題解決を掲げるのはおこがましいのではないかという意見が出ました。

 身近なところでは、サービス対象の偏り、新規サービスがなかなか現れない、施設の老朽化、IT技術への対応の遅れ、資料費削減など、図書館が抱えている問題を列挙するだけでため息が出ます。

 

 このような現状を踏まえ、今回は以下のように設定しました。

 ある自治体で4年後に開館する図書館(小規模な地域館)の館長公募があり、20代のA氏が応募したところ、抜擢人事で図書館長に就任することになりました。A氏は準備室を立ち上げてチームを作り、1週間後、関係者に対して館長としてのビジョンとプランを示すことになりました。

2章以降は、チームが1週間後に関係者に示すプランです。

 

【ある自治体の概要】

人口:13万人。

就業構造:工場や研究所が近隣の自治体より多く、住んでいる人の就業率が高い。

年齢特徴:年齢別人口は35歳から39歳までが最も多い。

地理的・歴史的な特徴:城跡や古墳などがあり、土器や石器が出土することもある。

交通:鉄道やバスなどの公共交通機関が充実している。東京(新宿)には40分程度で着く。

環境:開発が進んでいるが、できるだけ自然を残そうとしている。

財政力指数:1.5

経常収支比率:88%。

図書館の現状:中央図書館と5つの地域館の6館で構成。年間図書館利用者数はのべ25万人、蔵書数55万冊。画一的な蔵書構成になっており、それぞれの地域性がアピールされていない。地域資料、寄贈資料の収集、保存、提供体制が整っていない。今回は蔵書数10万冊予定。

利用者の特性:ビジネスマン、主婦の利用で占められている。


子どもたち対象のゲーム

 おはなし会、読み聞かせ、ブックスタート等、図書館ではおなじみとなっている催しがありますが、乳幼児を対象にしたものが多い気がします。これからは小学校高学年から中学・高校生に図書館を利用してもらうことも大切であり、サービスの質を高めていくべきであると考えます。

 とはいうものの、今の小・中学生は習い事等で忙しいですし、高校生になると部活動や受験勉強に時間をとられ、図書館に行く時間や動機はみつけられない。図書館に行くとしたら勉強机が欲しいだけです。赤本や青本などの受験参考書が図書館に置いてあれば口コミで生徒はやってくるでしょう。しかし、それでは図書館に置いてある多くの資料はほとんど使われません。

 そこで、「図書館にあえて行く」最初のきっかけとして、家庭用ゲーム機をできるだけそろえ、決まった時間は自由に使ってよいことにします。ゲームを進めていくうち「あれ、この登場人物ってどこかで聞いたことがある」と思ったら、図書館にある人名事典を引けばいい。「これって、もしかして」と思ったら辞書辞典類を見ればいいのです。

 実は、ゲーム作成にあたっては、ヒントにしているものはいろいろとあります。実在する人物や地名をもじったり、デザインを参考にしていたりします。

 図書館に行けば、ちょっと調べたいことを簡単に調べることができるという体験のきっかけを作りたい。自分で調べられなかったら、図書館員が調べもののお手伝いをし、後々大人になったときに、「図書館で調べよう」と思い出してくれるでしょう。「図書館を使わないと損をする」と体験させるきっかけをつくりたい。


図書館員の貸し出し

 図書館で働いている職員はなんらかの特技を持っています。語学が堪能であったり、パソコンなどの通信機器に長けていたり、特技とまでは言わなくとも何かひとつは趣味があると思います。図書館員ひとりひとりの力を発揮できる機会があれば職員のモチベーション向上、利用者サービスの向上につながります。

 その方法として、たとえば館内に図書館職員の特技などのプロフィールを貼り出します。一定の決まった時間に利用者の求めに応じて図書館員が対応します。これよって利用者は図書館に対して親しみがわきますし、マスコミやウェブ上でちょっとした噂になれば図書館未利用者が図書館に足を運ぶ可能性が高まります。職員と利用者のやりとりがカウンターの本の受け渡しや予約本の受け取だけではもったいない。加えて、カウンター自体が両者に対してひとつの壁のように思えます。この試みは心理的な壁を取り除くきっかけにもなるでしょう。

 具体的な例で言うと、語学の習得には時間がかかり、独学では思うように進まないこともあります。そこで、CD付きの語学参考書の貸し出しが図書館では多いので、「18時から19時の間、語学の学習のお手伝をします」と掲示があれば、そのことについて尋ねる利用者はいるでしょう。他には、釣りが得意な図書館員がいたら利用者と一緒に土日に川釣りに行ってもよいでしょう。釣り好きな利用者が集まれば利用者同士のつながりができます。


次世代の利用者カード

現在の利用者カードは、本やCDなどの資料の貸出・予約状況を管理するだけのものにすぎませんが、ここにもコミュニティ創出の芽があります。

たとえば、ガーデニング関係の本を借りた人たちに、データを抽出してガーデニングや家庭菜園の教室開催のお知らせをメールで伝えます。参加者はお互い初めて会ったり、館内では見かけるけど話したことはないという状況でも、ひとつのテーマをもとに集まったため話をしやすいでしょう。

 利用者カードには名前だけではなく、「ピアノ」や「フランス語」などというように特技も書いてもらいます。図書館員はカウンターのやり取りのなかで「そういえば、この前、楽譜を受け入れましたよ」と利用者に声をかけやすくなります。さらに、「今度、楽器演奏できる利用者が集まって図書館で演奏会でもしませんか」と声をかけることもできます。

 また、利用者が利用者カードを落としたり、なくしたりすることがありますが、名前以外に特技も書くようにしてもらえば紛失しないよう大切に扱ってもらえるでしょう。


自己PRのための掲示板

 近隣施設や図書館の案内掲示板とは別に利用者のための掲示板を設置しますたとえば、「私は将棋ができます。対局相手募集!」と利用者自身がPRを行います。後日、図書館の一角を使用して将棋大会を行いますこのように図書館を同じ趣味や興味を持った利用者同士が集う場所にし、人と人とがつながりを持てる場とします

 自分が読んだ本の感想やお勧めの本を自由に紹介してもらうコーナーを設け、図書館から一方的に情報発信するのではなく利用者も情報発信できる場とします。

 また、ギャラリーを設け利用者が趣味にしている絵や写真、クラフトなど作品発表できる場所を作りますたとえば、図書館未利用者Googleで自分の作った作品を展示できるギャラリーを探していたとします。「図書館に置かしてもらえるのだ」と発見してもらえば、作品を多くの人に見てもらうことができるのと同時に、今までの図書館とは違った一面を見せることができます。

 65スクリーンも用意します。図書館のイベント情報の発信だけではなく、自分をアピールしたい人が映像を作って映したり、地元の会社の商品CMを流したりと、自己PRできる場を提供します。



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