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(勝手に)イメージソング設定

■(勝手に)イメージソング設定

(現在の勝手にテーマソング)FLOWの歌ならなんでも。
(制作中期テーマソング)約束の橋/佐野元春(歌詞
(制作初期テーマソング)愛しき者よ/渡辺美里(歌詞
(制作当初テーマソング)なつかしい海/さだまさし(歌詞

なんと言いますか、とにかく疾走感のある歌です。

(これにぴったりな歌があったら、どうか教えてください)


3
最終更新日 : 2020-01-04 17:08:27

小麦畑でつかまえて(1)

 ここは、ビザリナ共和国最東端の州、リズアーモ州。州都、リズアーモに近い、小さな農村の中に、なぜか、巨大な滑空式空母が一台……。

 

「ビザリナ準正規軍、リップスの始まりだ!」
「うむ!! まあ、ただの民兵とも言うがな」
「……伯父さんの軍人恩給が役に立ったな、クルク」
「そうだなあ、まあ、僕にはこんな船を買う余力なんか、ないもんねえ」
「ふう、退職金が、ほとんど滑空式空母に消えたわい」
「無茶な買い物したものねー」
「誰が無茶じゃリーム! お前にはクリームのような可愛らしく素直な女の子に育って欲しいと願って名づけたというのに!」
「あー、はいはい、お説教ならまた今度~」
「すばらしい空母ですわ。ね、お姉さま」
「お、お姉さまぁ? 気色の悪い言い方やめて、レマーユ!」

 

 ピッツリー7570(Pittrie 7570)、滑空式航空母艦搭載の、ナローバンドレーダーが、ひとり滑空母艦に駆けてくる人影を発見した。(もちろん、民間に払い下げてあるので、重火器の類は、必要最小限にとどめているが)。

 

「リズアーモ駅より、麦畑を、誰かがここへ向かって駆けて来ます!」

「む! 誰じゃ。識別信号を発信せよ。身元確認じゃ。IDを持っていない奴なら、相手にせずに、飛び立つべきじゃ」

「レマーユ、識別信号を!」

「はいっ! あ、確認取れました! ファビオ国籍の女性、外交官IDです!」

「何だって?」

「離陸やめい! 離陸中止じゃ、クルク!」

「了解! って、外交官?」

「相手から、識別信号のリクエストが来ました!」

「リクエストを許可する。あくまでキャラバンとしてのレスポンスじゃ」

「詳細情報入りました。チャタ・ファーナ、十八歳、女性。麦わら帽子をかぶって、トランクを持っています。コード909、政治亡命信号受信!」

「何じゃと、政治亡命……ああ、面倒くさそうな雰囲気になって来おったわい……まあ、許可は出すが……コード910……」

「女の子で、政治亡命で、外交官特権~? やばーい、超やばーい」

「ディスプレイに写します。音声着信あり。リーダー、交信を!」

 ナバス・クルクは、コックピットから、音声映像モニターを介して、無線通信を試みている。「こちら、キャラバン、リップス! 元陸軍大尉、セペル・チェルダードの名において、政治亡命を認める」「こちら通信員、ナバス・クルク! ハッチの鍵を開けるので、急ぎ右舷の最後尾にあるハッチを開け、閉めてください」

 女の子の声で、返信が帰って来た。息が切れている。「ビザリナ共和国に、政治亡命を求めます! 助けて! 追っ手に追われているの! 誰か!」クルクが、後ろのハッチから入って、3階の応接室で待つように命じた。追っ手は武器を持っていて、盛んに銃撃して来た。がしかし、ピッツリー7570の後部バーニアの火力は、すさまじいものだった。

 

 チェルダードが、クルクに命じた。VTOL(垂直離陸機)機能で上昇するらしい。最大火力を噴出したピッツリー7570は、勢いで上昇し、ついでに、そのへんの麦わらまで焼いて、追っ手を散らした。


小麦畑でつかまえて(2)

 チャタ・ファーナは、自動ロックのかかる応接室に隔離されていた。このキャラバンにとって、まずは「お荷物」「厄介者」「早く帰らせよう」「拾った子猫は元のところに戻そう」……そんな反応、そんな空気だった。チャタ・ファーナに、ナバス・レマーユが言った。「お怪我はありませんか」。すると、ファーナは「大丈夫、ちょっと疲れているだけだから」と応じた。

 レマーユは、遠隔操作で、とりあえず冷たい水を用意した。モニター越しに会話する。グラスの水は、応接テーブルの中央がパカッと開いて、グラスの水がせり上がって出てきた。用意をしておけば、たとえば、チェルダードの葉巻とか、そういったものもせり上げることができる。

 

「ありがとう……はっ! まさか、毒を盛ってないでしょうね!」

「じゃあ、引っ込めます」「いや、ちょっと、待って、わかった、わかりましたからお水を頂戴」

「まずは、一息ついてください」「ふー、危なかったー」

 

     ◇ ◇ ◇

 

「ところで、チャタ・ファーナさん、どうしてこのキャラバンに?」レマーユが続ける。「父が、ファビオの外務政務次官をしていて、鉄道を使う時は、通関のために、いつもリズアーモ駅で休憩していました。そして、まだ動き始めていない、キャラバン、リップスさんのお店の様子を見たり、食べ物を買ったりしているうちに、なんだか、ここの売り子さんをやってみたくて……」

 チェルダードが遮る。「待て小娘。理由は本当にそれだけだろうな……スパイ行為ならば、こちらも容赦せんぞ」。

 あわててファーナが取り繕う。「いやいやいや、他の理由……強いて言うならば、もう一つの理由は、私を溺愛する、父が大嫌いで逃げて来たのです」。

 応接室のモニター画面は、ナバス・クルクに切り替わった。「本気でここで働く気ですか?」

 ファーナが応える。「ええ、そうよ。一度やってみたかったんだあー、キャラバン生活」。

 コックピットの一同が、溜息をついた。「お前ら、船の操縦は、カイザルとワシでやるから、そいつを武装解除してくれや。何か持っとったらいかんのでな」。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 ナバス・クルクが、妹二名、リーム、レマーユに向かって、一緒に来るように命じた。クルクはレーザーソードを構え、リームが短銃を構えた。レマーユは呪文の書の上に、十字架をかざした。そして、三人は曇りガラス張りの待合室へ飛び込んだ!

 

「おとなしく、武器を全部出せ!」

「少しでも隠してたら、姉ちゃん、アンタの命はないね! 蜂の巣になるぜ」

「あなたは段々眠たくなーる……。眠くなーる……」

 ファーナは、ちょっと面倒くさそうな態度で「仕方ないわね、全部出せばいいんでしょ?」と案外素直に応じた。

 脚からは、短刀が各一本づつ。カバンからは、金メッキの短銃が一丁。金メッキのレーザーソードが一本。そして手榴弾一個。ティーンが持つには、いささか重装備だ。まるで、どこかの傭兵のようだ。

「うわ、武器多いぞこの子!」「顔に似合わず、結構な武器じゃねえか」「誰と戦うつもりだったのかしら……」

 レマーユの睡眠誘導に連れて、ファーナが本音を語り出した。

「父です。お父様です。お父様が私を監禁するので、自由が欲しくて、部下の方にこっそりお願いして、武器の類は揃えたつもりです。あなたがたと、戦う意志はありません」

 しばらくすると、睡眠誘導が本格的に効いてきたのか、こっくりと首をうなだれて、そのまま眠ってしまった。


小麦畑でつかまえて(3)

 客人「チャタ・ファーナ」は、個室寝台に外から鍵をかけてベッドで眠ってもらうことにした。リームとレマーユが、ファーナをかついで客室に閉じ込めた。

 

 一方、滑空式航空母艦、ピッツリー7570のコックピットでは、次の行き先についてちょっとした議論になった。

「メルグヴィッツはどうかなあ……。折角南西に針路を取っているんだし……」

「そうだな、そこで商品を仕入れて……」

「ビザリナ第三の都市だしな」

「ジェンツは遠いし、国境沿いの公国軍の治安がね、悪いし、装備も何だし」

「よし、では、今回はメルグヴィッツに決まりじゃ!」

 

 クルクとチェルダードとカイザルの話し合いは終わった。ところが。金ぴかのライト・ムーヴァーに乗って、誰かがやって来た。クルクが、識別IDを確認した。

 

「うげ!」

「どうした、クルク?」

「何かあったのか」

「あったも何も、あの娘のお父さんだよー! 外交官IDで、しかも、外務政務次官だってさー」

「おお……チャタ・ディルジアと書いてある……」

 

そして、チェルダードが、東部軍管区司令部を呼び出した。モニターの向こう側には、イエラ・ミラルディ准士官(女性)が顔を現した。

 

「どうも、チェルダードぢゃ。ミラルディ准士官、元気しとったかね?」

『もうっ、上官でもなんでもなくなったんなら、気安く話しかけないでくれます?』

「まあ、そう堅いことを言うな。実は、国境近くの街で、迷子の子猫を拾った。ほれ」

 データは転送されて行き、ミラルディ准士官の顔色が変わった。

『ど、どういうことです? 女の子と、外交官?』

「とまあ、ここでどうしても働きたい女の子、チャタ・ファーナさんが、政治亡命をお願いしているわけじゃがのう……あのうるさい親父を何とかしてくれんか?」

『はー……。チェルダード元大佐に関わると、頭痛がします』

「まあ、お嬢さんの希望は、そういうわけじゃ。じゃ、後の事は頼む」

『丸投げ……ですか。はー……。分かりました。チェルダード元大佐のお名前も使いますが』

「わしゃ、一向に構わんぞ、来る者は拒まず、ぢゃ」

『じゃあ、そう致します、では』プツンと、モニターの切れる音が。

 別なモニターには、ムーヴァーに乗っているカイザルとリームが、暴れるディルジアを押さえつけようと必死だ。


『む、娘を帰せー! 今すぐにだー!』

『くそ! 少しはじっとしろ! 暴れるな!』

『そうよ、どこの野蛮人? おとなしくしなさい、ってば!』


 チェルダードが呼びかけた。「カイザル、リーム、もう軍の皆さんが来られたので、後の事はこの東部軍管区司令部の方々にお任せして、旅を続けようじゃないか、のう?」

『じゃあ、退却すっかー!』

『そうだな』

『金ぴかのオッサンじゃあね!』

『どこへなと行け、勝手にしろ』


 ディルジアが怒りをむき出しにして盾や矛を振り乱すが、ビザリナ軍当局のムーヴァーに取り押さえられてしまう。軍関係者は彼をなだめるのに必死だ。


『どうか、本国へお帰りください』

『お嬢さんは政治亡命を希望なさっております』

『くそっ、この馬鹿力ムーヴァーがっ! わしゃ認めんからな!』


 とか何とか言いながら、チャタ・ディルジアは、リズアーモの国境を越えて、本国ファビオ側に一旦逃れた。……ここで問題になって来るのは、首都ジェンツ行きの特別列車だ。駅員、運転手、車掌は口々にこう語るのだった。


「主賓が逃げちゃダメだろ……」

「ビザリナ鉄道としては、ここからカラで走る訳にも……」


 というわけで、ファビオ鉄道は、特別列車の折り返しをしたのだった。


ようこそ、チャタ・ファーナさん!

 滑空式航空母艦の針路は、順調にメルグヴィッツを目指して進んでいる。何しろ、リズアーモから6000キロメートル向こうにある街で、そこで、キャラバンのためのキャラバンとして、商売を続けるのだ。そのためには、大口の仕入れをしなければならない。なにせ、商材がないと、キャラバンとしては保たないからだ。また、国土がすごく大きいため、6000キロメートル向こうと言っても、東京から名古屋、ぐらいにしか感じていないらしい。

 

 その頃、リップスの船内では、長老、セペル・チェルダードが、チャタ・ファーナに、ビザリナ風の普段着に着替えるように命じ、クルクの妹たちが別室で手伝っている。どうやら、お着替えが終わったようだ。

 

「うむ、これでビザリナ市民じゃ」

「そのへんの子と区別つかないなあ」

「ああ」

「あ、あの……こんな感じでいかがでしょう」

 カチューシャに手をやり、恥ずかしそうにしている。

「ファーナさんや、これで、リップスへの仲間入りだ」

「はい、ありがとうございます!」

「随分、うちららしくなったんじゃない?」

「最初、お貴族でしたからね」

 

 早速、メルグヴィッツに着陸する態勢を取り、ナバス・クルクが器用に操縦桿を操って、メルグヴィッツ国際空港に着陸姿勢を取り、無事着陸した。

「あんた、剣術は苦手なのに、こういう運転は得意ね」

「そうだよリーム。剣の技は、上には上がいるんだから」

「ふえー、着きましてよ、神様」

「随分眠たそうだな、レマーユ」

「だって、徹夜で、ひとりで礼拝堂を日曜大工したんですから!」

「そ、それもそうか……って言うか、オレも手伝ったんだけどね。主に木材加工でね」

「忘れていました、お兄さま!」

「……忘れんなよ……さて、ボーディングブリッジに着けて……あ、誘導のお兄さんが旗振ってる……」



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