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いつもはバス停でメモ書きをしているホームレスのおじさんが、地下鉄の出口でメモを取っていた。計画停電と節電の影響で、アーケードの街灯が半分になったため、明るい地下鉄出口に引っ越してきたのだろう。節電と食糧買占めは、ホームレスの生活をも圧迫している。
夜の東京。ネオンは灯らず、ビルの入り口は真っ暗で、停電でもしているかのよう。セブンイレブンの店内も暗い。飲食棚の半分はからっぽ。共産主義時代末期の東欧を歩いているような気持ちになる。
「都内の乳幼児は水道水を飲むな、入浴は大丈夫、胃に入らなければ大丈夫と言うけれど、食品や食器を水道水で洗う必要がある。水道水を飲まないようにしていても、食事の都度、ヨウ素やセシウムが体内に入ってくるんじゃないか」「子どもはただちに逃げましょうってことでしょ、このニュース」

テレビ局はCM自粛で収入が減少する。芸能人も困窮する。「あの頃は享楽にふけっていたな」そう思い出されるようになる東北関東大震災前の日々・・・そう、あの頃の僕たちは、フランス革命前の貴族のように享楽にふけっていた。豊かさと富の過剰。懐かしい日々だ。

外国人が帰国した。富裕層は東京を離れた。水道水をひねれば放射性物質が出てくる。ガソリン、水、パンは売り切れ。出版印刷が滞る、テレビ広告は集まらない、夜は共産主義社会のように暗くなる。首都圏の経済は落ち込んでいる。希望の光は、ツイッターの情報網が灯し続ける。

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