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受験浪人、就職浪人、結婚浪人の人は、年金のもらえない年金浪人になった。病気になれば、医療従事者人手不足のため、病院に入れない病院浪人になった。介護施設入居待ちの介護浪人になった後、彼女は人生を終えた。縁者のいない浪人続きの彼女は、死後、無縁仏になったという。
大学受験にも、就職にも、結婚にも失敗した彼は、情報技術が発達した現代では、学歴も職歴も結婚も不要じゃんと開き直った。むしろ全部いらない、そんなもの全てなくても楽しく幸せに生きていけると、彼はつぶやいた。彼は学歴、職歴、家柄不問の情報空間に自分の生活を再構築した。
1ヶ月近くお腹を抱えて苦しそうにしていたホームレスのおじさんが、救急隊員と話している場面に出くわした。誰か救急車を呼んでくれたのだろうか。翌日から、毎日座っていたおじさんの姿を見なくなった。おじさんがいた場所には、たくさんの荷物だけが残った。今頃治療中だろうか。
牛さんこんにちは。今日も牛さんのお肉をいただきました。子牛の代わりに、牛さんのお乳もいただきました。いつも命を恵んでいただき、ありがとうございます。あなたを食べた分だけ、あなたの代わりに、明日も精一杯生命活動します。また明日お手紙を書きます。お元気で。
サバイバーズ・ギルト。災害で生き残った人が、抱えてしまう「私は偶然生き残ってしまった」という罪悪感。例えば僕は、牛と鳥と豚と野菜の命を食べて、今日も生き残ってしまった。他の動植物の命を奪って、生き残った僕が抱える罪悪感。罪の意識を払拭するため、食べた分頑張りたい。

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