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映画の思い出 キング・オブ・キックボクサー

1990年 香港作品。監督:ルーカス・ロウ。

 

主人公ジェイク(ローレン・アベドン)は、型破りな刑事。

マーシャル・アーツを駆使し、悪人逮捕もお茶の子さいさい。

しかし、そんな彼にも、忘れがたい過去が隠されていた。

その事件は、兄がキックボクシングのチャンピオンになった夜に起きた。

突然、二人の前に現れた黒人の男・カーン。

彼は裏組織に属し、そのビルドアップされた肉体を使って悪事に手を染めていた。

兄を挑発し、闘いを挑むカーン。

圧倒的なパワーの前に、チャンピオンであるはずの兄は防戦一方だった。

そこへ、カーンの究極技『黒い三連キック』(ドムではない)が炸裂する。

兄は殺され、ジェイク自身も重傷を負わされた。

 

運命は、再び動き出す。

刑事となったジェイクのもとに、スナッフ・フィルム(殺人映画)が絡んだ事件の情報が入る。

この映画のマニアックさは、まずこのスナッフ・フィルムにある。

何と、格闘家を俳優として使い、文字どおり死闘を繰り広げさせるのだ。

そして、敗者には死あるのみ。

マニアックすぎるぞ、その設定。

死にゆく者の背後に写るは、あのカーン!!

亡き兄が、天国からジェイクに送ったメッセージなのかもしれない。

復讐の炎を燃やし、ジェイクはフィルムの出所であるタイへと向かう。

 

タイに到着したジェイクは、とりあえず暴れまくる。

腕が立つという噂が流れれば、闇組織の方からコンタクトしてくるはず。

ジェイクは、自ら囮となって捜査を始めた。

 

雑魚相手に自信に満ちたジェイクだったが、カーンの強さはその上を行くことが分かった。

このままでは、カーンに勝つことはできない。

ジェイクは、打倒カーンの方法を知る唯一の男を訪ねる。

男は隠棲し、カヌーでしか行けない川の上流に住んでいた。

なんと、チンパンジーと同棲している。

初めは、ホームレスを装い、酒びたりに見えた男だったが、そこにカーンの手下が襲来。

ジェイクが応戦するも、ピンチを迎えてしまう。

一陣の風が吹き、男の眼に光が宿った。

 

 

その動き、鬼神の如く。

一瞬で数人をなぎ倒すシーンは、間違いなく我が心のシーン上位に入る。

そして、ジェイクは、男の元で修行を開始するのだった。

 

修行シーンも、なかなかアイデアに富んでいる。

木に吊り下げられての開脚。

川に浮かべた二つの筏に跨っての開脚。

弟子入りしたくせに、文句ばかり垂れるジェイクのアメリカンさも一味足している。

タイのジャングルとも等しい舞台設定なのに、ヒロインとの絡みを入れてしまうサービス魂も忘れてはならない。

桶風呂で、束の間のロマンスを楽しむジェイクとモリー。

復讐はどうした、ジェイク。

 

そして、いよいよ囮捜査は、佳境に入る。

ジェイクにお呼びがかかり、撮影が実行されることになった。

ジェイクの不在時に、再びカーンらは師匠の家を襲撃。

師匠は殺され、ヒロイン・モリーは連れ去られてしまう。

全ては、スナッフ・フィルムの完成度を高めるためだった。

怒りの感情が強ければ強いほど、観客へのアピール度が増す。

意外なところで律義であり、職人魂をも持った闇組織であった。

 

何も知らぬジェイクは、撮影の舞台へと現れる。

マッドマックスのサンダードームならぬ竹で作られたバンブー・ドーム。

周囲は、闇組織の用意したエキストラが原住民のカッコして、固めていた。

撮影のノリで始まったカーンとの闘い。

剣を使ってのバトルを繰り広げ、ジェイクが文句をつける。

『真剣じゃないか!怪我しちまうよ。やってらんねぇ。俺は降りるぜ』

不穏な空気が流れる。

そこへ、誘拐されたモリーの姿が!

『彼女を放せ!!』

『それには、闘ってもらわなければ』

 

ここで、ジェイクはカーンに写真を投げつける。

写真を見て、カーンは気づいた。

目前にいるのが、彼が殺した男の弟であることを。

『アイ ノーユウ。ユーアーザ・ブラザー!アイル センド ユー トゥー ヘル フォー ブラザー!!』

中学生でも聞き取れるセリフ回しが印象的だ。

かくして、ジェイクとカーンの命を賭けたバトルが始まる。

 

バトルは、B級テイスト炸裂ながらも、見せ場に事欠かない。

ハヌマーンの仮面を被ってのソード・アクション。

不自然な重力描写ではあるが、バンブードーム利用の立体的動き。

頭部への飛び蹴りを片手でブロックするなど、細部へのこだわりも見せている。

攻撃を喰らい、怒りで筋肉を盛り上げるカーンの迫力も見もの。

なんと、このカーンを演じるのは、ビリー・ブランクス。

そう、数年前にビリー隊長として、ブートキャンプを世に知らしめた、あの御仁だ。

この映画のビリーは、その凄まじい形相から、これ以上はない悪役を演じた。

それが、後にエアロビで一世を風靡しようとは、誰が予測できただろう。

 

熱きバトルを繰り広げ、ストーリーはクライマックスへ。

ジェイクの前に投げ捨てられて布袋。

その中には、ジェイクを鍛えた師の亡骸が!

怒りに震えるジェイク。

そこに、カーンの必殺技、三連キックが火を噴いた。

師とともに、それを防ぐべく積んだ修行が回想される。

全ての蹴りを防ぎ、ジェイクは攻撃へ転じた。

『これは、兄貴の分!』

ジェイクのパンチが、カーンの顔面を捉える。

『これは、モーリーの分!!』

再び、パンチは顔面へ。

『そして、これはオマケだーっ』

もう少し、何とかならぬかという字幕に嘆きつつ、渾身のストレートがカーンの頬を打つのだった。

 

細部はともかく、僕が学生時代に熱中した映画の一つである。

僕は、この映画を格闘映画・心のベストテンにランクインさせている。

ちなみに、この映画は日本ではDVD化されていないらしい。

ビリー隊長がブート・キャンプで有名になった際、秘かにDVD化を期待していたのだが、別の作品に白羽の矢が立ってしまった。

その時、DVDのオマケとして入っていた『エクササイズ・ゴム』をご存知だろうか?

着色された2本の輪ゴムが、僕をあざ笑うかの如く封入されていた。

こんなオマケ、いらねえ。

 


映画の思い出 新・死霊のえじき

1992年アメリカ作品。監督リーフ・ヨンカー。

 

この作品の存在を、僕はタイムリーには知らなかった。

ネット通販でDVDを漁っていたら、偶然に発見したのだ。

ジャケットを見ていただくと解かるが、半身が損壊し、あばら骨まで覗くティーンズらしき男の画が強烈だ。

スプラッター色の濃さが、感じられる。

 

 

映画のタイトルに、『死霊』とか『ゾンビ』という文字が含まれていると、自然と体が動いてしまう。

しかし、その多くが、アタりではない。

低級ホラー映画に免疫のない方は、激しい徒労感を味わい、時間の尊さを悟り、作り手への激しい怒りさえ覚えてしまう。駆け出しの頃の僕も、同じような意見だった。

駄作の宝庫。

 

 

 

ホラー映画界は、そのようなものだと思っている。

しかし、その中に、100分の3くらい財宝が埋もれている。

作品全体で評価すれば、しょうもないものでも、1カットのシーンが良かったり、女優さんが可愛かったり、クリーチャーが素敵だったりする。

僕は、いつのまにかホラー映画を、そういう観方をするようになった。

 

 

さて、話を元に戻すと、本作は『ハズれ』の臭いがプンプンにもかかわらず、しかし鑑賞しないわけにはいかない『何か』を感じさせるものだった。

製作年も1992年なので、スプラッター描写もある程度期待できる。

レンタルできれば良かったが、僕の利用するところでは在庫を置いてなかった。

渋々ではあったが、購入を決断。

DVDは、人気作以外はすぐに廃版になる傾向があるらしい。

そのため、作品との出逢いは、大切にしなければならない。

一期一会の精神が、僕を散財させる。

 

 

 

鑑賞して、即座に画質の粗さが気になった。

『シャッター!』(訳:しまったー)

後悔の念が、奔る。

この粗さ、自主製作映画ではないか?

 

画面には、一人の男が店に駆け込んでくるところから。

男の服には血が付着し、理性を失っているようだった。

店内の人間に、喚き散らす。

『逃げろ!怪物がくる!!』

そこに居合わせた警官が男をなだめ、落ち着かせようとする。

しかし、男は豹変し、警官に喰らいついた。

絶命する警官。

かくして、怪物による地獄絵図が始まった。

 

以下、オーソドックスなゾンビ作品のスタイルとなる。

邦題から、ロメロ監督のゾンビ映画『死霊のえじき』との関連性を匂わせるものの、実は全く関係がない。

それどころか、本作はゾンビ作品でもないのだ。

確かに、噛まれた人間が感染し、いわゆるゾンビ化はする。

感染者は、人間の肉を喰らい、生き血をすするのだ。

画的には、どうみてもゾンビ的描写。

しかし、その正体は、なんとヴァンパイア!!

親玉みたいな男がいて、時々姿を現すのだ。

細部の描き込みが不十分で、イマイチ重要さが損なわれているキャラクターなのが惜しい。

 

俳優陣も、とかくオーラが無い。

というか、素人に毛が生えた程度。

冒頭の犠牲者の友人らしき男が、いつのまにか復讐を誓っていたらしく、突然ヒーロー風を吹かして現れる。

銃を携え、精一杯のクールな口調でナルシスティックに振舞うのだ。

う~ん、俺って超カッコイイという内なる心が全面に押し出される演出に疑問を感じていると、どうやら本作の特殊メイク担当者らしい。これが、自主映画の醍醐味ならぬ大ゴミ。

これと同種の感覚は、グロさが最低の『ボーン・シックネス 最強ゾンビ軍団襲来』でも見ることができる。

監督のブライアン・ポーリンは、最もおいしい役を俳優として演じるが、あまりの臭さにドン引き。セーラームーン然とした金髪をなびかせて、ポーリンの自己陶酔演技は暴走する。ちなみに、ポーリンは男性。言い方を変えれば、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の麗子みたいな髪型。キング・オブ・ウザ!

 

 

はてさて、ここまで書くと、本作も最低の称号が相応しくなってきたが、最後に怒涛のシーンが待っていた。

ストーリーの脈絡としては、全く捻りがないのが残念だ。

主人公たちを追うヴァンパイアたち。

感染したら、脳の思考回路が止まっちゃうのか、自己防衛機能がないのか不明だが、ひたすらに主人公を追って行く。

その先には、夜明けが待っていた。

朝日がサンサン、オハヨーさん。

当然、日光を浴びたヴァンパイアたちは、死滅してしまう。

このシーンの描写に、製作陣は全てを賭けた。

焼け焦げ、ドロドロに溶けていくヴァンパイア。

肉が弾け、腸が落ちる。

溶解と破裂のシーンにたっぷりの時間を取り、怪物たちの阿鼻叫喚図が繰り広げられた。

低予算であることは明白だが、この主張は評価に値する。

ほんの僅かではあるが、『死霊のはらわた』のラストを想起させた。

もちろん、本作のほうが低予算さは勝っていると思うが。

 

 

 

 


奥付



奇怪伯爵のオタ・カル漬け丼 4


http://p.booklog.jp/book/23404


著者 : 奇怪伯爵
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発行所 : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
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