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3.3 文書力教育について

業務において,毎日のメールのやり取り以外に,報告書や議事録,見積もり依頼や作業依頼書,提案書,作業指示書,マニュアル,仕様書さらに取引先にお礼状や案内状と,文書作成の仕事は多い。

しかしながら,近年,文章を書くことが苦手だという人は多い。

ことに若い年代に多くなっていると言われている(8。学生時代の作文及びレポート,また社内におけるビジネス文書について体系立てて,学ぶ機会がなかった人,もしくは,学んだ事はあるが,入社直後に座学で学んだだけで,身につかなかった人は多い。また,過去の社内文章を見よう見まねで文書作成し,先輩,所属長が,個人にかかりきりになり添削指導し,承認することが多い。



組織が固定的な以前の体制なら問題は無いが,事業統一や,プロジェクトの発足よって組織がまとめられる場合,ノウハウやスキルの相違から作業ロスが生じる可能性がある。例えば,これまで配属されていたAグループでは,簡潔に要点をまとめるよう文章作成をしていたが,新たに配属されたBグループでは,詳細に記録を残すように再提出を要求された等,指導内容は,指導者の資質,能力,環境等により大きく左右される。その為,添削指導時間の増加,文章の見直し,作成やり直しが多く,無駄な作業が発生する。その為,文章スキルや指導についても統一する必要がある。



上述第2章の通り,業務文書は,公共性を持ち,公式文書としての役割が大きく,その為,文書形式,構成上のルール,慣用句や用語等,基本形式というものが存在する。ゆえに,業務文書は,決められた手順とルールに基づけば,新人でも十分作成できる(9。その為,日本語の文体知識,文書作成の手順とルールを整理し,実務に役立つ文書作成能力育成が必要となる。



日本語の文体には,文末の述語となる助動詞に応じて,です-ます調 (敬体),である調 (常体),だ調 (常体)等がある。

主に現代日本語口語文では常体である,です-ます調,を使用することで,相手を敬う気持ち,等を読む手に与える。したがって,メール,お礼状,案内状等には,です-ます調が好まれる。

一方,技術文書や,記録文書において,表現手段として敬いや謙遜の気持ちを表すことは不要である。

したがって研究報告書,議事録として相応しいのは,である調,である。しかし意外と,新人の執筆した報告書において,敬体と常体の混在が多い。


例えば,

「誤:・・・・ですので・・・・である。」,

「正:・・・・であるので,・・・・である。」

 

「誤:・・・・だが,・・・・である。」,

「正:・・・・であるが,・・・・である。」

 

のような文体である。

 

 

他にも体言止めの使われ方も間違いが多い。

体言止めは,簡潔であり,書き手,読み手ともに間違いが少なくなる。

余分な文字を排除することによる読みやすくなる。見た目に単純でメリハリがある等,メリットも多い。タイトル,章節項タイトル,プレゼンテーション等の項目列挙に有効である。

しかし,体言止めは,文法上は名詞句,名詞節であり,単独の文章としての体裁を持たない。

このため,列挙する要素としては使用可能であるが文章の集合としての本文等で使用してはならない。

また本文ではないので,箇条書き等で体言止めの直後に句読点は不要である。

このような,例に見られる日本語の文体知識について,先輩,所属長が,業務進行の必要に応じて,各若手社員に添削指導している。育成が日常的に行われ,費用が安い反面,基礎教育を個別対応する為,指導者の時間が大きく奪われる等のデメリットもある。このような業種に関係無く,すべての業務基盤となる基礎知識においては,体系的に習得できる集合研修,講習会の方が,メリットが大きい。



文書作成手順の教育も重要である。どの企業も,企業内には様々な文書や規定をもっている。そして各部門で調整し,既存の文書を共通化及び標準化し,運用をしている。



例えば,ISO(International Organization for Standardization)文書を規格規定しているISO10013では,文書の階層を3段階に分けている(10

それぞれの段階をレベル1,レベル2,レベル3として,品質マニュアルまたは環境マニュアルが上位文書にあたり,その下に規定類,作業手順書が順に下位文書として定められている。また文書階層構成におけるレベル1のマニュアル構成についても,その作成手順は共通化されている。

マニュアルは,①表紙,②目次,③改定履歴,④序文,⑤文書管理規定,⑥用語の定義,⑦要求項目,⑧添付資料の8つの項目内容を必ず記述しなければならない。このように,報告書や議事録,見積もり依頼や作業依頼書,提案書,作業指示書,仕様書,及びビジネスメールに至るまで,業務で使う文章は,ある程度の基本形式というものが存在する。

その為,文書形式,構成上のルールを把握することで文書作成スピードは大きく向上する(9



また業務で取り扱う文書は,A4判の用紙に出力することが現在では一般的である。

A4判に情報をまとめ,的確に表現し,短時間で自分の主張を明確に伝えるかが重要となる。また手書きからワープロへと時代は変わり,いかに見やすくきれいに仕上げるかが要求される。業務スピードが求められる現在では,A4判の中に,図や写真等も利用しながら,定められたフォーマットにて,意見,事実等を,いかにすばやく作成できるスキルが必要である。さらにマイクロソフトオフィス製品は,バージョンごとに新しい機能が追加及び改良されている。ゆえにその機能活用能力が,文書作成効率に大きく効いてくる。



例えば,営業日報や,研究開発データを一つ取り上げてもワープロソフトと表計算ソフトの取り扱い方で内容や業務スピードが大きく異なる。

機能活用能力が高い社員は,例えば,自分の思考を文書に組み立てていく時に,ワープロソフトのアウトライン機能を活用し,文章の仕上げに使うというだけではなく,思考をどう発展させるのかをデジタル的にサポートする。

文書レベルでの情報化の効果を導き出し,次の段階で表計算ソフトの持つ統計解析機能を駆使した情報化の効果を短期間で導き出すことが出来る。

 

業務における文書の位置づけと文書作成の基本技術,文書構成,表現,図表の利用方法及び,パソコンスキルを教育することは,より高度レベルのビジネス文書作成ができるようになるだけでなく,業務スピードを向上させることができると考える。

また,所属長の添削指導時間の軽減,文書力の底上が期待される。


4. 教育効果測定の重要性

これまで,人材育成について,調査結果及び提案を述べた。人材育成の実務において,最も重要であり,困難であるのが,導入した人材育成プログラムが,人材の教育効果の測定である。

育成プログラムは,その導入に社員の協力が必要である。

また機会費用(社員の時間,労力)を支払い成立する。さらに研修やセミナー講師等,人材育成を社外にアウトソースする場合は,金銭的なコストも発生する。

その為,人材育成を計画する場合,その育成プログラムが支払い労力やコスト以上の価値を生み出すか,教育効果を測定することが重要である。

教育コストに対して,教育結果が良ければ,より人材育成計画を進め,結果が悪ければ,改善,もしくは計画を断念する必要がある。しかし現状としては,教育直後のアンケートの良し悪しだけを評価の判断材料としている場合が多い。



尚,定量的な評価項目には表3のような指標(KPI:key performance indicator)を設定し,管理すれば良いという報告例がある(3

この指標は,米国のTraining Magazineが人材育成における優良企業ランキングを作成する際に参照しているパラメータをベースにしている(3

これら項目において高い点をとることができるならば,世界レベルで認められるということになる。教育効果測定に力を入れることで,人材育成費用の無駄を洗い出すことが出来る。



また教育効果の測定は,目標の見える化につながる。例えば,「自己啓発として語学習得に取り組んでいるか。」「自己啓発としてコーチング,マネジメント等の学習に取り組んでいるか。」等を測定項目として質問した場合,社員に対して,語学や,業務スキルの重要性を再認識させるきっかけになる。また全社統計を示すことで,社内における自分のレベルを確認することができる。人材育成は,大きく二分すると,社員に対して仕事を行う能力をつけさせる教育と,社員の精神面に変化を与えさせる為の2種類になる。そして前者の能力をつけさせる教育は,知識や方法を外部からインプットさせる教育と,元から持っている能力や知識を表面に出す為の教育に分けられる。研修やOJT制度により,仕事を行う能力をつけさせる教育が充実し,その教育効果を測定することで,社員の精神面に変化を与えさせることができると考えられる。



尚,教育効果測定は,他の企業内推進活動にも適用できる。

活動成果を定量化することで,活動コスト,業務フローをより最適化できると考えられる。


3 人材教育効果の測定指標(3




5.1 まとめ

不況期において,企業は多くの人員を抱えることはできず,逆に,人材の質は今まで以上に重要となる。

現在,組織のスリム化や人員の削減,再配置による適正化が進んだ結果,少数精鋭型で,数少ない人員が第一線で活躍しているケースが多い。

そんな状況下において,団塊世代の大量退職,少子化の進行,また転職市場の活性によって,中堅社員が他社や海外に流出している。その為,優秀な人材の確保及び人材育成は,企業の競争力維持において,経営課題の一つであると考えられる。

そこで人材育成をテーマに,社内の現状及び各種記事の調査から以下の改善案を提案した。


(1) OJT制度のメリットを最大限に引き出すにあたり,人材育成基本コンセプト及び指導者条件の明確化、組織全体の育成の仕組みの整備、能力の把握、計画性が揃って無くてはならないことを提案した。

また整備,計画を立案するにあたり,基本骨格となる,企業理念を実現する人材育成コンセプトを明確化が重要であることを述べた。またV字回復を実現する人材育成基本コンセプトの提案として,9つの基本技能を修得が必要であると提案した。



(2) 第3章では,人材育成の設計思想として,対話の機会を創出する取り組みと,文書力教育についてまとめた。

コミュニケーション法を育成するために,定期的な教育と日常業務における実践を繰り返し,対話機会を創出することが必要である。

そこで,対話機会の創出目的として,ミーティング,ブレインストーミング等,低階層の会議,打合せもオープン化し,異なる部門及びグループ員も自由参加することを提案した。

また対話機会が大幅に増えるため,上記9つの基本技能に関連した思考法及び,コミュニケーション法が習得されていくと考えられる。

さらに,3.3節では文章教育の重要性について述べた。現在社内においては,先輩,所属長が,個人にかかりきりになり添削指導していた。これでは,作業ロスが生じる可能性がある。

そこで,文書力の基礎教育を行うことを提案した。業務における文書の位置づけと文書作成の基本技術,文書構成,表現,を教育することは,より高度レベルのビジネス文書作成ができるようになるだけでなく,業務スピードを向上させることができると考える。また,所属長の添削指導時間の軽減,文書力の底上が期待される。



(3) 第4章では教育効果測定の重要性について述べた。

人材育成評価は,教育直後のアンケートの良し悪しだけを評価の判断材料としている場合が多い。

人材育成を計画する場合,その育成プログラムが支払い労力やコスト以上の価値を生み出すか,教育効果を測定することが重要である,そこで定量的な評価項目として,米国のTraining Magazineが人材育成における優良企業ランキングを作成する際に参照している項目例を紹介した。教育効果測定に力を入れることで,人材育成費用の無駄を洗い出すことが出来る。





5.2 今後の課題

人材の重要性を強調する企業は多い。


しかし,個々の社員のパフォーマンスについて踏み込んで教育するのは容易ではない。

なぜなら,人材育成業務は,組織に横断的であり,現場における実作業よりは重要性は低い。

そして教育コストは目に見えるが,教育効果は見えにくい。

もしくは教育効果確認を最初から放置している。このような状況において,人材育成の責任は曖昧なものになる。

アメリカのクリエイティブ・リーダーシップ・センターの元研究員マイク・ロンバルト氏は,組織には学習能力という観点から見て,「積極的学習者(全体の10%)」「消極的学習者(全体の60%)」「学習拒否者(30%)」の3種類の人材がいると述べている(3

好景気時は,新人社員達を現場に放置しておいても,一部積極的学習者が成長して企業業績に貢献し,残り70%の人員をカバーしていた。

しかし経済不況期において,このやり方は,企業成長の大きなロスとなる。

消極的学習者及び学習拒否者の可能性を引き出すことは重要であり,人材育成において,他企業の差別化による競争優位性を確保できる。



経済不況期においては,人材育成が手薄になってしまい,質の面からも後々の人材不足の原因となりかねない。

今後,全社的に人の質を上げていく為,中長期の事業構想と実行する組織や人材のあり方,教育コスト面から,人材育成戦略を描き,それを全体に示していく必要があると考える。



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