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2.2 企業理念を実現する人材育成基本コンセプトの提案

営業,企画,総務,設計,製造,品証,開発等各部署によって,また各グループによって,求められる人材は異なる。その為,社内の人材育成において厳格に指導要綱を標準化することは極めて困難である。



企業が求めている企業理念,行動指針を実現する研修の実現や,会社が直面している問題に対して直接,間接的に貢献できる人材育成教育は難しい。この問題は,人材育成業界の中でも,度々取り上げられている。求められる人材を言語化するのは困難であり,また言語として定義できないものは,測定も管理もできない。その為,研修によって習得された知識やスキルの80%は実務に活用されていないといった報告例もある(2-3



昨今の不景気の中,多くの企業ははこれまで,下降線をたどっていた企業収益を急激に上昇基調に転じる,いわゆるV字回復を目標として度々あげてきた。これには顧客ニーズを競合他社よりいち早く理解し,他社に先んじた事業開発を行うことが不可欠である。つまりこの不況期においては,仕事を早い人を育て上げる人材育成に特化すれば良いと考えられる。



そこで,本提案では「スピード」「仕事の成果」「汎用性」をキーワードに企業理念を実現できる人材育成基本コンセプトを以下に提案する。



 表1にIT教育コンサルトである芦屋広太氏が提唱する仕事を早い人の特徴について示す(4
 芦屋広太氏は,著書「ITエンジニアのための仕事を速くする9の基礎力と7のエクササイズ」の中で,仕事を早くするために必要なのは,9つの基本技能を修得し,実務で実践することと結論付けられている。この技能を習得することで,V字回復に大きく貢献できる人材を確保できると考えられる。

1 仕事を早い人の特徴(4


以下に内容を具体的に説明する。

① 論理的思考力がある。業務目的,効果,実現策が硬く,理にかなって納得感がある。このため,他人からの反論を受けにくく,サポートしてもらえる可能性が高い。


② 深い理解力がある。本質を理解しているの,作業漏れ,対応や考察漏れ,勘違いによる無駄な作業が少なく,仕事を最短で完了できる。


③ 構造化できる力がある。原因と結果等物事の因果関係を解明できる。仕組みを立案でき,効率の良いシステム選択できる可能性が高くなる。

④ 目的達成への行動力がある。目標を設定し,計画を作成し,そのシナリオを達成するための最適な行動をとれる。この為,行動が合理的で無駄がなく,最短で仕事ができる可能性が高い。


⑤ わかりやすく説明する力がある。自分の意見を最短の時間で,誤解なく相手に説明できるので,作業ロス,見直し,やり直し等のロスが少なく,合理的に行動を取れる可能性が高い。


⑥ 他人を説得する力がある。自分の意見,業務計画に従って,他人に交渉し説得できるので,反論,反対,追加調査等の作業が少ない。また,知識,ノウハウをもった他人の協力も受けることができるため,個人の持つ能力以上に成果をあげることができ,仕事を最短で完了できる可能性が高くなる。


⑦ うまく断る力がある。どのような要求に対しても,立場の上の人間の厳しい依頼に関しても,情報をうまく与え,相手をあきらめさせ,有利な方向へ誘導できる。


⑧ 意見を通す力がある。意見の論理性が高く,また他人の立場,感情に配慮したアイデア,企画,業務計画を立案できるので,反論や,意見,また反感を受けることが少なく,常に最短の時間で完了できる。


⑨ 論理的でわかりやすい文書を書く力がある。意見,事実等文章に表現でき,その内容が最短時間で,相手に伝わる構造である。作業ロス,見直し,やり直しが少なく,無駄な作業が発生しにくく,最適な指示,報告ができる。


 

 この9つの技能を習得するためには,どのように人材を育成すべきか考察する必要がある。表2に,この9つの基本技能を修得するための教育計画概要について示す。

2  9つの基本技能を修得するための教育計画概要

この中で,目的達成行動力の教育について,近年,多くの企業で目標管理制度や,トヨタ方式をはじめと知るVM(Visual Management:業務の見える化及び管理)活動による進捗管理を導入し,社員が,時間指向型アプローチを身につける為の活動を全社的に取り組み始めた。



論理的思考力,理解力,構造化力等の思考法は,業務活動の基本であるが,完全に身につけるのは極めて難しく,また教育にも時間及びコストがかかる。

これは学問体系として経営手法,一般工学,哲学と幅が広い為である。セミナー,研修を開催し,各階層別に必要な業務知識やスキルを社員にインプットするが,得られた知識,ノウハウを実践に適用するまで時間がかかる。

定期的な教育と日常業務における実践を繰り返さなくてはならないと考えられる。説明力,説得力,断る力,意見通し力も同様であり,教育とともに,社員から教育の成果を十分に引き出すには,ディベート,ディスカッション,プレゼンテーション等を重ね,中長期的に習得していかなくてはならない。

また社員同士の対話の機会を創出することが重要である。



文書力の教育についても,完全に身につけるのは極めて困難であるが,短期的な教育で十分な教育成果をあげられる。

なぜならビジネスの実務上で使われる文書は,公共性を持ち,公式文書としての役割が大半を占める。

その為,文書形式,構成上のルール,慣用句や用語等,ある程度の基本形式というものが存在する。

またビジネス文書は,業務の記録を持たせるという役割もある。その特性上,文書は日々,データベースとして蓄積される。

その為,簡単な基礎教育によって,基本骨格となる形式,ルールを習得し,かつ蓄積された過去文書を文例として活用することで,得られた知識で,実践にも十分対応できると考えられる。

 


3.1 対話の機会を創出する取り組み

論理的思考力,理解力,構造化力等の思考法及び,説明力,説得力,断る力,意見通し力等のコミュニケーション法を育成するために,定期的な教育と日常業務における実践を繰り返し,さらに対話機会を創出することが必要である。



しかしながら,定期的教育は極めてコストがかかる。セミナーのような集合教育や研修は,一時仕事を離れて多数の受講者を一室に集め行うため,講師の準備や段取り,業務スケジュールによっては,手配する時間や仕事量に対して思うような効果が得られない場合がある。

また,セミナー及び研修の講師は大きく内部講師と外部講師に分けられる。

前者は社内より指導者を抜擢するもので,後者は外部団体より講師として招くものである。

前者は,社内事情や業務内容に精通しているものが教壇に立つという揺るぎの無いメリットが得られるが,担当する講師により指導の展開に極端な差が出る。

また内部の人によるため社内雰囲気に流されることもある。

 後者は,指導要綱がまとまっており,安定した指導及び研修を実施してくれる。

しかし当然のことながらコストがかかる。またプロだからといって,発注する雇用者側のリクエストに応じた内容に必ずしもなるわけでもない。



その為,コストをかけず,コミュニケーション法を育成するには,日常業務おいて対話の機会創出することが極めて重要である。

尚,ここで言う「対話」とは「雑談」ではなく,「自由なムードで議論される情報のやり取り」を指す。

企業の経済的な成長を達成するために,人材育成は,日々社内にて生まれては消えていくアイデアを,具体的なビジネスモデル,技術,ノウハウに結びつけるものでなくてはならない。

その為には,現在置かれている業務遂行,問題点に対して。身近なロールモデルとなる部署,人物等の対話機会を増やすことが望ましい。

また,業務の中で,黙っていても何も生み出さないことが多い。ゆえに,価値ある情報やアイデアを周りに知らせ,人から見える仕事を心がけることが重要である。



これまでのように,組織が固定的で,部門ごとのメンバーが大きく変わらなければ,それぞれの業務内容や進捗,またノウハウや技術情報は同僚たちの中で共有される。

しかし現在は,組織も業務の進め方も決して規則的ではない。

部門を横断したプロジェクトチームの増加や,事業の最適化による頻繁な組織改正,事業統一による人事異動により,個々の業務や各チームの業務を把握するのはかなり困難となり,対話環境も乏しくなり,閉じた組織になりやすい(5



各事業所における定期的な報告会(生産会議,品証会議,研究討論会等)については,予め報告内容,議題が明確化されており,積極的に参加することで,現在必要とされる業務知識,課題,技術等の情報が,詳細に得られる。

しかし,通常,各事業所における定期報告会は月報,季報,もしくは期末報告等の情報であるため,リアルタイムな生情報は得られないことが多い。

また,事業部別,部門別の報告会は規模が大きい。

そのため,報告サイクルを短くし頻繁に会議を行うことは,手間がかかり,上述したセミナー同様,仕事の効率的な時間利用を阻害する可能性がある。

VMボードは,各事業所,テーマ,グループ,チーム単位で生データが随時更新され,業務進捗や情報を適時に得られる。また比較的低コストで実施することが出来る。しかしながら,まだ運用に関して多くの企業が導入段階であり,明確な成果としてはまだ見えて来ないのが現状である。



それでは,社員の対話機会をどのように増やすか,技術,ノウハウ,知識をどう上げていくのか。どのような教育,知識の習得をすべきか。コストと有効性を考えて選択する必要がある。



そこで,事業所単位の定例会議に加え,部門別,階級別の会議,打合わせ,グループ報告会,非定期な問題解決ミーティング,ブレインストーミング等,低階層の会議,小さな打合せもオープン化し,各部門,グループの社員も自由に参加できるようにすることを提案する。


これまで,業務の中で日々行ってきた会議に対して,予め「日程」,「主催」,「主な議論内容とトピック」を公開し,全社単位で可視化し,参加者を募集することで,個々の社員が興味を持った内容を聞くことができ,また業務の必要に応じて情報収集ができる。また業務の問題に対して,参加者が対策や解決案等の意見を出し合う会議においては,別部門の参加者を募集することで,多面的に問題解決に導くことができ,会議主催側のメリットも大きい。



また低階層での会議にて,グループ間や部門間コミュニケーションが活発となり,予め情報が共有されることで,部門を跨いだより大規模な会議を行う際,問題経緯の資料や説明の割愛,さらに議論が重複されにくく,会議時間の短縮が期待できる。また対話機会が大幅に増えるため,論理的思考力,理解力,構造化力等の思考法及び,説明力,説得力,断る力,意見通し力等のコミュニケーション法が実務を通じて,習得されていくと考えられる。



また,このように常日頃行っている会議,打合せに対して,外部から参加者を募集した場合,日ごろ話したことも会ったこともない人と会う機会が得られる。

グループ間や部門間コミュニケーションが図られるというのは,会社の大きなメリットの1つである。もちろん,取り扱う連絡事項や議題によっては,会議及び打合せをクローズさせなくてはならない。この場合は,関係者のみの参加と表明する。会議,打合せに対してオープン,クローズを使い分けることで,極秘プロジェクトや部門間機密情報に対するセキュリティ意識が高まると考える。



例えば,社内の特定メンバーで極秘プロジェクトを進めている場合,プロジェクトの情報がメンバー以外に漏洩しないようにしながら,必要な情報はスムーズに共有できるように管理する必要がある。

しかし,どれだけ緻密にルールやポリシーを作り上げ明文化しても,参加者のセキュリティ意識が低ければ意味がなく,それだけに,社内における日頃の啓発,教育,訓練等が重要となってくる。

通常の会議のオープン化が,当然の状態を社内に作ることで,あえてクローズされた特殊な会議の情報に対して,取り扱いの重要さが参加者レベルで強調,意識されると考える。




3.2 社内ネットワーク構築と活用例について 

他にも対話機会を創出する為に,社内Webシステムを構築し,有効活用することを提案する。


コミュニケーション,特に他部門との異文化コミュニケーションにおいて,自分の存在感,自分が何者であるかアピールすることが重要である。例えば,IBM東京基礎研究所では,自分の仕事を人から見えるように,研究者の個人写真,プロファイルを社内Web電話帳及び外部向けサイトに掲載し,閲覧できるようになっている(6


社員が誰かにアクセスする時に使うのが,社内Web電話帳である。この時,連絡先,所属等の基本情報の他に,この人物はどのような仕事に携わっていて,どのような業績があるのか,専門知識,関係するコミュニティー等がわかるようになっている。IBM東京基礎研究所の研究者は,見えないのはいないと同じと考えており,自分の業績をまとめ,また,それを他人の目に留まるようにすることで,人のネットワークを繋いでいる。



また2008年1月に,オープンソースのSNS(Social Network Service)エンジンOpenPNEを用いた,日立グループ内SNS「COMOREVY(こもれび)」が発足した。図2にSNSの概念図を示す。Social Networkとは,社会科学系の研究分野で人間関係の概念として用いられる用語であり,これをWebで応用し,社会的ネットワークをWeb上で構築し,人間関係を可視化するサービスをSNS(Social Network Service)という。日立グループ内SNS「COMOREVY」は国内の日立グループ26万人が,誰でも登録できるシステムであり,プロフィール機能,ユーザ検索機能,記事作成(ブログ)機能,コミュニティー機能等,メッセージ送受信機能等,SNS基本機能を持っている。



積極的に情報発信,共有を行うことで,人的ネットワークの拡大と,コミュニケーションの活性化が期待される。例えば,プロフィール機能によって,社員は目的の問題やプロジェクトに適した人材を容易に検索ができる。情報を共有したり交換したりするための簡単な手段として,コミュニティーの作成,検索,参加を簡単に実現することができる。



図2 SNSの概念図


また,日立グループ内SNS「COMOREVY」は,コンテンツを公開してフィードバックを受け取ることができる。この為,主題の専門家同士でアイデアを共有したり,質疑応答をすることで,価値あるフィードバックを受け取ったりすることができる。

さらに,このように,既存の社内Webシステムを利用し,人材検索,ディベート,ディスカッション,プレゼンテーション等を重ねる事で,社員の思考能力及び,コミュニケーション能力が向上されると考えられる。

 


このように,種々の企業が社内コミュニケーションシステムを導入している例もある。


3.3 文書力教育について

業務において,毎日のメールのやり取り以外に,報告書や議事録,見積もり依頼や作業依頼書,提案書,作業指示書,マニュアル,仕様書さらに取引先にお礼状や案内状と,文書作成の仕事は多い。

しかしながら,近年,文章を書くことが苦手だという人は多い。

ことに若い年代に多くなっていると言われている(8。学生時代の作文及びレポート,また社内におけるビジネス文書について体系立てて,学ぶ機会がなかった人,もしくは,学んだ事はあるが,入社直後に座学で学んだだけで,身につかなかった人は多い。また,過去の社内文章を見よう見まねで文書作成し,先輩,所属長が,個人にかかりきりになり添削指導し,承認することが多い。



組織が固定的な以前の体制なら問題は無いが,事業統一や,プロジェクトの発足よって組織がまとめられる場合,ノウハウやスキルの相違から作業ロスが生じる可能性がある。例えば,これまで配属されていたAグループでは,簡潔に要点をまとめるよう文章作成をしていたが,新たに配属されたBグループでは,詳細に記録を残すように再提出を要求された等,指導内容は,指導者の資質,能力,環境等により大きく左右される。その為,添削指導時間の増加,文章の見直し,作成やり直しが多く,無駄な作業が発生する。その為,文章スキルや指導についても統一する必要がある。



上述第2章の通り,業務文書は,公共性を持ち,公式文書としての役割が大きく,その為,文書形式,構成上のルール,慣用句や用語等,基本形式というものが存在する。ゆえに,業務文書は,決められた手順とルールに基づけば,新人でも十分作成できる(9。その為,日本語の文体知識,文書作成の手順とルールを整理し,実務に役立つ文書作成能力育成が必要となる。



日本語の文体には,文末の述語となる助動詞に応じて,です-ます調 (敬体),である調 (常体),だ調 (常体)等がある。

主に現代日本語口語文では常体である,です-ます調,を使用することで,相手を敬う気持ち,等を読む手に与える。したがって,メール,お礼状,案内状等には,です-ます調が好まれる。

一方,技術文書や,記録文書において,表現手段として敬いや謙遜の気持ちを表すことは不要である。

したがって研究報告書,議事録として相応しいのは,である調,である。しかし意外と,新人の執筆した報告書において,敬体と常体の混在が多い。


例えば,

「誤:・・・・ですので・・・・である。」,

「正:・・・・であるので,・・・・である。」

 

「誤:・・・・だが,・・・・である。」,

「正:・・・・であるが,・・・・である。」

 

のような文体である。

 

 

他にも体言止めの使われ方も間違いが多い。

体言止めは,簡潔であり,書き手,読み手ともに間違いが少なくなる。

余分な文字を排除することによる読みやすくなる。見た目に単純でメリハリがある等,メリットも多い。タイトル,章節項タイトル,プレゼンテーション等の項目列挙に有効である。

しかし,体言止めは,文法上は名詞句,名詞節であり,単独の文章としての体裁を持たない。

このため,列挙する要素としては使用可能であるが文章の集合としての本文等で使用してはならない。

また本文ではないので,箇条書き等で体言止めの直後に句読点は不要である。

このような,例に見られる日本語の文体知識について,先輩,所属長が,業務進行の必要に応じて,各若手社員に添削指導している。育成が日常的に行われ,費用が安い反面,基礎教育を個別対応する為,指導者の時間が大きく奪われる等のデメリットもある。このような業種に関係無く,すべての業務基盤となる基礎知識においては,体系的に習得できる集合研修,講習会の方が,メリットが大きい。



文書作成手順の教育も重要である。どの企業も,企業内には様々な文書や規定をもっている。そして各部門で調整し,既存の文書を共通化及び標準化し,運用をしている。



例えば,ISO(International Organization for Standardization)文書を規格規定しているISO10013では,文書の階層を3段階に分けている(10

それぞれの段階をレベル1,レベル2,レベル3として,品質マニュアルまたは環境マニュアルが上位文書にあたり,その下に規定類,作業手順書が順に下位文書として定められている。また文書階層構成におけるレベル1のマニュアル構成についても,その作成手順は共通化されている。

マニュアルは,①表紙,②目次,③改定履歴,④序文,⑤文書管理規定,⑥用語の定義,⑦要求項目,⑧添付資料の8つの項目内容を必ず記述しなければならない。このように,報告書や議事録,見積もり依頼や作業依頼書,提案書,作業指示書,仕様書,及びビジネスメールに至るまで,業務で使う文章は,ある程度の基本形式というものが存在する。

その為,文書形式,構成上のルールを把握することで文書作成スピードは大きく向上する(9



また業務で取り扱う文書は,A4判の用紙に出力することが現在では一般的である。

A4判に情報をまとめ,的確に表現し,短時間で自分の主張を明確に伝えるかが重要となる。また手書きからワープロへと時代は変わり,いかに見やすくきれいに仕上げるかが要求される。業務スピードが求められる現在では,A4判の中に,図や写真等も利用しながら,定められたフォーマットにて,意見,事実等を,いかにすばやく作成できるスキルが必要である。さらにマイクロソフトオフィス製品は,バージョンごとに新しい機能が追加及び改良されている。ゆえにその機能活用能力が,文書作成効率に大きく効いてくる。



例えば,営業日報や,研究開発データを一つ取り上げてもワープロソフトと表計算ソフトの取り扱い方で内容や業務スピードが大きく異なる。

機能活用能力が高い社員は,例えば,自分の思考を文書に組み立てていく時に,ワープロソフトのアウトライン機能を活用し,文章の仕上げに使うというだけではなく,思考をどう発展させるのかをデジタル的にサポートする。

文書レベルでの情報化の効果を導き出し,次の段階で表計算ソフトの持つ統計解析機能を駆使した情報化の効果を短期間で導き出すことが出来る。

 

業務における文書の位置づけと文書作成の基本技術,文書構成,表現,図表の利用方法及び,パソコンスキルを教育することは,より高度レベルのビジネス文書作成ができるようになるだけでなく,業務スピードを向上させることができると考える。

また,所属長の添削指導時間の軽減,文書力の底上が期待される。


4. 教育効果測定の重要性

これまで,人材育成について,調査結果及び提案を述べた。人材育成の実務において,最も重要であり,困難であるのが,導入した人材育成プログラムが,人材の教育効果の測定である。

育成プログラムは,その導入に社員の協力が必要である。

また機会費用(社員の時間,労力)を支払い成立する。さらに研修やセミナー講師等,人材育成を社外にアウトソースする場合は,金銭的なコストも発生する。

その為,人材育成を計画する場合,その育成プログラムが支払い労力やコスト以上の価値を生み出すか,教育効果を測定することが重要である。

教育コストに対して,教育結果が良ければ,より人材育成計画を進め,結果が悪ければ,改善,もしくは計画を断念する必要がある。しかし現状としては,教育直後のアンケートの良し悪しだけを評価の判断材料としている場合が多い。



尚,定量的な評価項目には表3のような指標(KPI:key performance indicator)を設定し,管理すれば良いという報告例がある(3

この指標は,米国のTraining Magazineが人材育成における優良企業ランキングを作成する際に参照しているパラメータをベースにしている(3

これら項目において高い点をとることができるならば,世界レベルで認められるということになる。教育効果測定に力を入れることで,人材育成費用の無駄を洗い出すことが出来る。



また教育効果の測定は,目標の見える化につながる。例えば,「自己啓発として語学習得に取り組んでいるか。」「自己啓発としてコーチング,マネジメント等の学習に取り組んでいるか。」等を測定項目として質問した場合,社員に対して,語学や,業務スキルの重要性を再認識させるきっかけになる。また全社統計を示すことで,社内における自分のレベルを確認することができる。人材育成は,大きく二分すると,社員に対して仕事を行う能力をつけさせる教育と,社員の精神面に変化を与えさせる為の2種類になる。そして前者の能力をつけさせる教育は,知識や方法を外部からインプットさせる教育と,元から持っている能力や知識を表面に出す為の教育に分けられる。研修やOJT制度により,仕事を行う能力をつけさせる教育が充実し,その教育効果を測定することで,社員の精神面に変化を与えさせることができると考えられる。



尚,教育効果測定は,他の企業内推進活動にも適用できる。

活動成果を定量化することで,活動コスト,業務フローをより最適化できると考えられる。


3 人材教育効果の測定指標(3





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