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アラビア湾の小鳩 《4》

《4》

 夜九時にロンドンを発ったエミレーツ航空は滞空時間4時間ほどでドバイ空港に着陸した。昼間は摂氏40度を超える灼熱のドバイも夜はぐっと気温が下がる。空港内は思いっきり冷房が効いているから寒いくらいだ。免税店の入り口にはラッキードローの景品だという超高級車が飾ってあり、遠来のお客様の度肝を抜く。いかにも急成長したオイルリッチな国の玄関に相応しい。

 二泊三日の旅で、それこそこれで海外出張はジ・エンドとなるから、支店に無理を言って、宿は郊外のリゾートホテルを予約してもらった。翌日、エミレーツ航空との打ち合わせが無事終わると、パームをちょっとだけ覗いてからホテルに戻った。支店との会食までの時間をつぶすため、シャワーを浴びてから2階のメインバーに足を運ぶ。アラビア湾に夕日が傾き始めた頃である。

バーは広いテラスに繋がっている。4脚の椅子がついたほどよい大きさの円卓を1つ占領して、イレーヌとその昔よく飲んだジントニックを注文する。2杯、3杯とグラスを重ね、心なしか涼しい潮風で疲れが癒される頃、小鳩がすうーと近寄ってきた。

 初めこそテーブルの端から小首を傾げてじっと様子を窺っていたが、赤ら顔でうとうとしている初老の男に安心したのか、つつっとテーブルを渡って近寄ってきた。琢哉がつまみのナッツを砕いて撒くとちょこちょことそれを啄ばむ。十分も繰り返すとすっかり安心したのか、ひょいと飛び上がって琢哉の右肩にとまって琢哉の顔を覗き込む。

周りのテーブルのお客さんもそれに気が付いて、びっくりした表情でニコニコしている。

Is it a boy or a girl?(男の子かな、それとも女の子?)」。

アメリカ人らしい男が声をかけた。

Of  course, it’s a girl.(勿論女の子ですよ)」

琢哉が返す。それが分ったのかもしれない。小さい恋人は嬉しそうに右肩から左肩に飛び移った。

20分も遊んだろうか、アラビア湾に夕陽が沈むのを見計らったように、小鳩は琢哉の顔を覗き込んで一瞥すると、さっと飛び去って消えた。束の間の再会を惜しんだイレーヌが今一度別れを告げにきたのかもしれない。

 


奥付

【奥付】

 

企業OBペンクラブとは

 日本が世界に飛躍した頃、内外の第一線で活躍した元企業戦士が20年前に創設した「もの書き集団」です。掌編小説の他、800字文学館、エッセイ・コラム、俳句、川柳、フォト句、写真など活動分野は多様です。今は女性も積極的に参加してさまざまなジャンルで実力を発揮しています。

URL=http://www.obpen.com/

 

 

大人の玉手箱

編著者  企業OBペンクラブ

代表者  西川武彦

発行   2011年3月

 


奥付



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著者 : 企業OBペンクラブ
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/hirosawa-shigeho/profile


発行所 : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社paperboy&co.


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