梅雨末期の集中豪雨
7月に入って、そろそろ夏休みの計画を立て始めた方もいらっしゃるころではないでしょうか? が、その前に、乗り越えなくてはならないお天気があります。
梅雨入りしてからは「カラ梅雨」と呼ばれるような年でも、7月に入ってから梅雨が明ける7月末までのこの時期、狭い範囲に集中して大量の雨が降ることがよくあるものです。
台風や低気圧ならば、(一般的なものは)西から東へと、日本列島2日ほどかけて縦断していきます。これは、上空の偏西風に乗って流されているためなのです。一方梅雨前線は、それぞれ性質の異なる、北の空気と南の空気のぶつかり合いなので、動きがさほど速くないのです。(相撲取りの突き合いのようなものです)
前線の動きが遅いと、同じ地域に同じ方向から風が吹きつける。その風が、大量に湿度を含んだ南風で、その風が山の斜面を強制的に上昇させられたら?
「上昇気流」と言えば、プロ野球チームの調子が良くなってきたなど、いいイメージで使われることばですが、気象の世界での「上昇気流」とは、雲がモクモクと湧いてきて激しい雨をもたらすことを連想させる、とてもゆゆしいことばなのです。
過去で有名なものでは、1982年7月の長崎豪雨があります。このときも、長崎付近に前線が停滞し、南から湿った風が吹き付けて、山の斜面を上昇し、その状態が長時間持続しました。そのために、住宅地では床上・床下浸水、山地では土砂崩れ、あるいは河川の氾濫など、現実には起こって欲しくないほどの大惨事となりました。
決してこれは他人事ではありませんよ! 梅雨時に限らず、台風や低気圧が通過するときでも、山の斜面を風が吹き上がってくるとき(北風でも要注意です!)は、豪雨や土砂災害に注意しましょう!
(文:気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)
梅雨前線のメカニズム
今年の梅雨は例年より降水量が多いと予想されているようですが、実際はいかがでしょうか?
梅雨前線といえば、「北のオホーツク海高気圧と南の太平洋(あるいは小笠原)高気圧がぶつかったところにできるもの」と学校で習った方が多いのではないでしょうか? 確かに、東日本の梅雨前線の形成はこれで説明がつくのですが、西日本や中国大陸のそれの成因は、もっと大規模でずい分違ったもののようです。
春分の日を過ぎて、北半球がだんだんと暖まってくると暖まりにくい海から、暖まりやすい陸に向かって季節風(モンスーン)が吹くようになります。特に顕著なものが、インドの南西モンスーンです。しかしこれは、標高の高いチベット高原を越えられず、高原の南東部を回って中国や東アジア方面へと北上します。この風は海沿いを通るため、暖かく湿っています。
その一方でチベット高原の北には、相対的に冷たくて湿度の低い西風(偏西風)が吹いています。この二つの風が、中国北部から日本にかけたあたりで合流すると、その性質の違いが梅雨前線を発生させるのです。
天気図上ではただの一本の前線に見える梅雨前線も、西日本と東日本では成因が違うように、性質も異なっています。東日本のそれは、いずれも「海育ち」の高気圧が原因なので、どちらも水蒸気を多く含んでいますが、西日本のそれは、いわば「山育ち」と「海育ち」なので、気温の差だけでなく湿度の差もとても大きいです。気温の差だけを見ると、東日本の方が大きいようです。このように梅雨は、アジア全域を巻き込む大きな現象です。雨に文句を言わず、「梅雨だから雨が降るのは仕方がない!」と、腹を括りましょう!
(文:気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)
紫外線を吸収してくれるオゾン
日本では、7月といえばまだ梅雨の末期のところが多い時期です。去年のような大雨による局地的な被害が出ないことを祈ってやみません。
さて、今回は一足早く夏の話題、というより、日焼けについてお話します。
近年、オゾン層が破壊され、地上に降り注ぐ紫外線の量が年々増加してきていることはみなさんもよくご存知のことだと思います。
オゾン層は、私たちが暮らす対流圏(上空約11kmまで)よりはるか上空の成層圏(上空約50kmまで)のうち大体高度20~30km付近にあります。そこで、紫外線のうちで人体に有害とされる波長0.32~0.28μm(マイクロメートル)の「UV-B」と呼ばれるものを吸収しています。
オゾンは、酸素原子が3個が結合した気体です。これらは、約20億年前、海中に誕生した藍藻類が二酸化炭素と紫外線を使って酸素を作り出した際(光合成)、大気中に広がり、上空に安定し、現在のオゾン層を作ったのです。そしてさきほども書いた通りオゾン層が生物に有害な紫外線を吸収してくれるようになったおかげで、生物が陸上に進出することができるようになったのです。
極端に言い換えれば、オゾン層が破壊されて有害な紫外線が大量に降り注ぐようになった現在の地球は、だんだんと生物が生きていくのに適さない環境になってきているといえるわけです。
かと言って、私たちが暮らす対流圏では、オゾンは、二酸化炭素やメタン・フロン・一酸化二窒素などとならんで温室効果気体としての働きがあるので、対流圏でオゾンを撒き散らすのも問題があると思います。
今回はちょっとおおげさな話になりましたが、ともかく、外出時には、日に当たる部分には必ず日焼け止めをしましょう!
(文:気象予報士 チャーリー/絵:吉田たつちか)
夏の健康の味方「スイカ」
スイカのおいしい季節になりました。この時期キンキンに冷えたスイカにかぶりついたときの至福感は何ともいえないものがありますね。実は、スイカは単に渇きを癒しくれるだけでなく、健康に役立つ様々な機能も持っている健康食品なんです。今回はスイカの健康機能について紹介したいと思います。
スイカは、熱帯アフリカのサバンナ地帯や砂漠地帯 が原産地とされていますが、日本には室町時代以降に中国から伝来したようです。中国では、西から伝わってきた瓜ということで西瓜(シーグァ )と呼ばれていて、日本へは漢字も発音もそのまま伝わって来たみたいです。
スイカの学名は、「Citrullus vulgaris」と言います。スイカやキュウリ、ゴーヤなどウリ科植物に含まれるアミノ酸シトルリン(Citrulline)はスイカから初めて見つけられたためにスイカの学名に因んでこのように名づけられました。
実は、このシトルリン、とてもすばらしい健康機能を持っています。まず、シトルリンは尿の素である尿素の材料となる物質であることから利尿作用があります。尿がスムーズに排泄されると尿と一緒に様々な老廃物の排泄も促進されます。
また、この利尿作用とシトルリンのもう一つの作用である血管拡張作用の二つの働きによって血圧を下げる効果も期待されています(なお、利尿作用にはスイカに含まれるカリウムも関わっています)。
さらにシトルリンやスイカの赤色色素リコピンは、がんやその他の生活習慣病の原因になるなど万病の元である悪玉の酸素「活性酸素」を消去してくれる優れた抗酸化作用も持っています。このように、身近な食品の中にもすぐれた健康機能を持つものが数多くあります。それらの健康機能を上手に使い分けながら、上手く食生活に取り入れていきたいものです。
スイカに感謝!
(医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:吉田あゆみ)
2011.07
意外とすごい!?スイカの効用
スイカのおいしい季節になりました。この時期、キンキンに冷えたスイカにかぶりついたときの至福感は何とも いえないものがありますね。実は、スイカは単に渇きを癒しくれるだけでなく健康に役立つ様々な機能も持っています。今回はスイカの効用について紹介したいと思います。
スイカは、熱帯アフリカのサバンナ地帯や砂漠地帯が原産地とされていますが、日本には室町時代以降に中国を経由して伝来したようです。中国では、西から伝わってきた瓜ということで西瓜(シーグァ )と呼ばれているらしく、日本へは呼び名もそのまま伝わって来たみたいですね。
さて、スイカやキュウリ、ゴーヤなどウリ科植物は、シトルリン(Citrulline)というアミノ酸を含んでいるのが特徴です。シトルリンという名前ははスイカから初めて見つけられたためにスイカの学名「Citrullusvulgaris」に因んでこのように名づけられました。
実は、このシトルリン、とてもすばらしい健康機能を持っています。まず、シトルリンは尿の素である尿素の材料となる物質であることから利尿作用があります。尿がスムーズに排泄されると尿と一緒に様々な老廃物の排泄も促進されます。なお、利尿作用にはスイカに豊富に含まれているカリウムも関わっています。
また、シトルリンは血管拡張作用も持っていて血圧を下げる効果も期待されています。さらにシトルリンやスイカの赤色の元になっている色素リコペンは、悪玉の酸素「活性酸素」を消去してくれる優れた抗酸化作用も持っています。活性酸素は、がんやその他の様々な生活習慣病の原因なるものですから万病の予防に役立ちます。 庶民的な果物だけど、意外とすごい!?
(文:医学博士 食品保健指導士 中本屋 幸永/絵:吉田たつちか)