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日比野 なるほど。東アジア共同体の実態が今の中国だとすると、実現するとそうとう厳しいことになりますね。

 

K氏  そうだね。東アジア共同体を実際にやろうとすると、貨幣から商習慣から共通のベースになるものをつくらなくちゃいけない。国家同士の貿易ならまだいいけども、道端の商店で、言葉から通じなかったら商売にならないよ。それに貧しいとこから豊かなとこに人がどんどん集まってくるしね。だから、東アジア共同体って、言葉は綺麗に聞こえるかもしらんけども、実際には難しい。人の流入を制限して格差を固定するなら、今の中国そのまんまで、民衆の不満が溜るだけだし、格差をなくしましょうとなったら、日本の富が中国の貧困層へのバラマキに使われる。日本は、妬まれるか貧乏になるかのどっちかの選択になるだろうね。だから鳩山にも言ってやればいいんだよ。「東アジア共同体ですか。日本を中国にするんですね。公用語は北京語ですよ。貴方は英語ができるようですけど、今度は北京語がペラペラにならないといけませんね。」ってそう言ってやればいいんだ。(笑)

 

日比野 そうすると、日本は、中国とは敵対しない程度にうまく付き合うべきということになりますね。今の中国の姿勢からすると中々難しそうに思うのですけれども、上手くできるのかな・・・

 

K氏  外交的には、やはり日米同盟をしっかりしておくのが一番だ。今は日米関係がギクシャクしてるけども、なんとか揉み手、擦り手でもしてだね、ヨリを戻しておくのが安上がりでいいと思うよ。その上で中国とも関係を繋いでおく。そうして世界のバランスを取るという考え方だね。なにも強硬一辺倒だけで上手くいくというわけでもないんだ。

 

日比野 経済的に中国とうまく付き合うというのは分かりますけれども、外交的に上手く付き合うのは難しいのではないですか?今の民主党政権を見てると、特にそう思います。尖閣を見てても、とても外交してるレベルではないですよ。

 

K氏  まぁ、中国だけとは限らないんだけども、外交で必要になるのは、相手が何を求めているかということだ。外交で100%自分の思うとおりなんて中々できるもんじゃない。互いに腹を探り合って、落とし所に持っていくのが普通だわな。だから、まず相手の本音を掴めなきゃいけないよ。尖閣の問題にしても、民主党の問題は、中国の意図が読めていなかったということがひとつ。なぜ読めなかったかというと、やはり中国とのパイプがなかったというのがあったと思うな。だから、原則論で対応するしかなくなってしまう。中国が強硬に出たら、慌てて細野を特使として派遣したけども、外交で相手に先手先手を取られちゃ取り返すのは難しいよね。よく媚中派とか、チャイナスクールとかいうけども、彼らが居ないと、今度は中国の本音が分からなくなるんだよ。表向きは駆け引きとかメンツが先に立つんだけども、その裏の本音をちゃんと引き出してやらないといけない。だから一概にチャイナスクールを全部叩き出してしまうと、尖閣みたいなことになってしまうんだね。

 

日比野 民主党政権は始めのうちは、政治主導だと称して官僚を敵に回してましたからね。その弊害が出たということですか。今頃になってようやくそれに気づいて、政務三役会議に事務次官を参加させるようにするみたいですけれども。

 

K氏  政治家だけで全部こなせるのなら、官僚なんてそもそも要らなくなるわけだからね。


日比野 先ほどの話に戻りますけれども、Kさんは、日米同盟を修復して、中国とも関係を繋げば、日本の国防は大丈夫だと見ていますか?中国だけではなくて、北朝鮮の問題もあります。

 

K氏  日本の安全保障を考えた場合、日米同盟が大きな役目を果たしていたことは間違いないよね。今だってアメリカに喧嘩を売る"ばか"はいないよ。今の日本の安全保障に不安感があるんだとしたら、それは、中国が日本に攻めてくるんじゃなくて、アメリカが東アジアから撤退していくんじゃないかという不安だと思うんだな。日米同盟がしっかりしていた間はそんなこと考えなくてもよかったんだけども、去年、鳩山が日米関係を壊しにかかったので、その辺りが怪しくなったんだね。万が一(まんがいつ)、日米同盟が破棄されたとしたら、それは危ないですよ。日本独自で防衛だなんて勇ましくいうのは、気分はいいかもしれんけども、それに掛かる金と人員、あとは教育だな、それを考えてごらんなさいな、とても簡単にいく話ではないことは誰にでも分かる。それに日本が独自防衛をやると宣言したら、それを口実に中国も更なる軍拡に走るだろう。中国からみたら、日本は怖い国なんだよ。何しろ軍隊が強かったからね。北朝鮮にしたって、日米同盟が堅持されている間は直接日本に手は出せない。この間だって、金正日はF-22の爆撃を恐れて隠れていたんだろう。北朝鮮に対しては、日米韓でがっちりスクラムを組むだけで、抑えることができる。そうしておいて、外資を入れて経済的に北朝鮮を変えていくことが一番いいと思うね。北朝鮮は独裁政権だから、簡単には倒れないと見る向きもあるようだけども、意外と独裁っていうのは脆弱なものなんだよ。独裁者がしっかりしているうちはいいけども、"ばか殿"が世継ぎになったら国が無くなっちゃうからね。それが分からないほど側近達も馬鹿ではない。クーデターを起こすなり、上手く隠すなりして、外からは分からないように集団指導体制に移行するようになる。今は丁度、金正恩を"世継ぎ"にしようとしているよね。金正恩が金正日以上に"切れ者"だったらもう少し時間がかかるかもしれないけども、金正日以下の"ばか殿"だったら、北朝鮮の独裁体制が金正日の代で終わる可能性だってある。特に今は核問題で周りから睨まれているんだから、仮に金正恩が金正日並みに能力があったとしても、これまでのように切り抜けられるとは限らないな。アメリカも空母を3隻もアジアに派遣してるんだろう。北朝鮮にとって、昔よりずっと状況は厳しくなってる。経済にしても食糧にしてもそうだな。

 

日比野 北朝鮮を封じ込めるのは分かりました。けれども、中国を封じ込める事についてはどうでしょう。私はアメリカの戦略として、中国の封じ込めにかかっているのではないかと思っているのですけれども・・・

 

K氏  封じ込めというのは?

 

日比野 あぁ、たとえば、昨年9月に、アメリカとベトナムが合同軍事演習をやったように、軍事的に中国を封じ込めて、領土侵略をさせないという意味です。

 

K氏  軍事的に"封じ込める"って言ったって、あれほどの国土を持つ大国だからね、簡単にはいかないよ。北はロシアとの国境線、南はインド洋から南シナ海、東シナ海まで、常時軍隊を張り付けて置くなんて出来ないしね。だから"封じ込め"というのなら、それは、中国をして、自分達の拡張政策を諦めさせられるかどうかということであって、蟻の子一匹通さないというわけじゃないよな。そんな事とても出来るもんじゃない。昔なら万里の長城があれば、侵入は防げたかもしれんけども、今やあそこは観光地だからな。それに海に長城は作れないしねぇ。


日比野 もちろん、国境封鎖線のようなものを作って、蟻の子一匹通さないようにするのは無理だとは承知してます。ただ、昨今の中国の態度は明らかに領土拡張を志向していると思います。南シナ海の南沙、西沙の両諸島もそうですし、尖閣もそうです。最近は沖縄も自分達の領土だと言いだしてますし。

 

K氏  中国はああ見えてもね、勝てない喧嘩はしない国なんだよ。絶対勝てると思う相手には、嵩にかかってくるけども、彼我の戦力はちゃんと分析できる国だ。その証拠に口ではなんだかんだ言ってもアメリカには絶対喧嘩を売らないよね。だから、日本が中国に対して抑止力を持とうと思えば、アメリカとよしみを結んで、日米同盟をしっかり繋ぎとめておくことがひとつ。もうひとつは、中国にまだ日本とは差があると思わせることも大事だと思うね。

 

日比野 中国に日本と差があると思わせるというのは、やはり、自衛隊を増強するということではないのですか?

 

K氏  そうとばかりとも限らないんだよ。中国がここまで大きくなった原動力はなんといっても経済成長だわな。軍隊より先に経済があるんだ。もちろん軍隊を強くするには金が要るんだけども、大中華帝国をつくろうと思ったら、どうやるのが一番安上がりになるかを考えるといい。それは、なんといっても、自分からは手を出さずとも相手から服従させるように出来れば、それが一番良いわけだね。その為には、先ほどのノーベル平和賞ではないけども、経済的見返りを交渉材料に使う、レアアースなんかの資源を交渉材料に使う。「うちと組んだほうが得ですよ。レアアースがないと困るでしょう。安く売ってあげますよ。貴方の国の品物も一杯買ってあげますよ。」と、経済的な餌をぶら下げて、相手を自分のところへなびかせる。そうしておいて、経済的、文化的、人的交流をどんどん進めていって、相手の国で中国語が通用するくらいにまでになったら、事実上、中華圏に組み込まれてしまうことになる。それはそのまま大中華帝国にもなるわけだね。それだと軍隊を一兵も動かさずに済む。そういうことをあの国はやってくるんだ。だから、中国の経済力が縮小する、又は、日本の経済力が中国を上回ることが出来ていれば、少なくとも経済的には日本は中華圏に入らなくて済むようになる。そして、日米同盟がちゃんとしていれば、軍事的にも中華圏に入らなくて済むわけだね。だから、日本が経済力で中国の上をいくというのは実は大きいんだ。中国にしてみれば、自分達はこんなに大国なんだと思いたいのに、まだその上をいく経済大国が隣にあるんだよ。その国は、自分達の経済圏に組み入れることもできなければ、技術力でも上をいってる。しかも、ほんの少し前までは、戦争しても何処にも負けないくらい強かった。唯一負けたのはアメリカだけで、他には負けてない。それで、アメリカに負けて焼け野原になったかと思ったら、60年やそこらで経済大国、技術大国としてたちまちのうちに復活した。これは怖いよ。化け物みたいに怖い国だよ。今でもハイテク戦争になったら日本には敵わないと思ってるだろう。そんな化け物の国のハイテクの力を削ごうと思ったら、経済的に没落して貰うしかないよ。そうして日本の技術者があぶれたら、皆こぞって中国にきてくれないかとか、そんなことを考えてるよ。

 

日比野 その意味では、日本の対中輸出がGDPの2.8%しかないというのは中華圏に組み入れられないための保障にはなりそうですね。

 

K氏  日中の二国間で考えればそうかもしれないけども、他の国はそうとも限らないな。たとえば、中国は一昨年辺りからASEAN諸国に合計100億ドルを超える直接投資をしているし、ASEANにとっても中国は第1の貿易相手になってるよ。それに去年の1月から、ASEAN・中国FTAが始まってるしね。関税なんかもうとっぱらってるんだよ。さっき言ったように、中国は経済的餌をぶら下げて周辺国を自分のとこになびかせようとしてるわけだね。だから、ある意味、大中華帝国への準備はもう始まっているとも言えるんだ。本当は日本もそうしたことを見越した上で国家戦略を考えるべきだと思うよ。

 

日比野 今の話を聞くと、民主党政権では不安がつのるばかりですよ(苦笑)。でも、せめて良い年であるように、希望だけは失わないようにしたいですね。Kさん、ありがとうございました。今年もよろしくお願いします。

 

K氏  はい。こちらこそよろしく。


あとがき

2009年夏、日本国民は大きな選択をしました。「一回やらせてみよう」という選択です。その結果得られたものは何であったのか。

 

筆者は、それを"安易にイメージだけで軽々に投票してはならない"という痛い教訓ではなかったかと思います。

 

なぜ、イメージで投票できてしまうのか。それは、おそらく、自民党による戦後50年体制が「それなりに」上手くいっていたからなのだと思います。

 

高度経済成長を遂げ、余りにも上手くいった反面、日本国民はある意味で"鼓腹撃壌化"してしまいました。けれども、昨年の尖閣沖衝突事件、ロシア大統領の北方領土視察など、今や、日本は国難を迎えています。

 

これ以上、安易な選択を続けていては、この国難を乗り切ることは難しい。日本は今、そうした岐路にいるのです。


                          2011年3月 吉日  日比野克壽


奥付

 


 

直き真心持ちて 道に違ふことなく 

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著者 : 日比野克壽
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/kotobukibune/profile

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