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3六歩

清水らくは


傷つけ合うことは基本楽しい
認め合わなければ殺し合いになるから
二人は出会いを歓びに変える
それでも時に
絶望が片側を闇で照らす

盤上で日は暮れる
ぶつかり合う鐙
安心していた心の隙に
見たこともない槍が刺さる
痛みを感じる暇もない
秒は有限を刻々と知らせる
汗も唾も涙も全て
逆流するほどの熱が来た

突き出されたものは
受け止めねば ならない
与えられたものには
答えを返さねば ならない
けれど
時に残酷に痛みは一方的に
覆いかぶさってきて
世界を停止させて
そして
未知の歓びを植え付けていく

二人の逢瀬が過ぎて
戦場は風に飲まれる
3六歩という歴史は
未来の引力を倍増させた
再び傷つけ合う

一番長い日の一瞬

清水らくは

戻れないことも
理解できないことも
後ろ向きになっても
力の限りで
悔いながらでも
没頭するしかない

まだわからない
類似局面の中で
やめてしまえばいいとか
待ってほしいだとか
わかりはしないだろう
たいしたことはない
などと言い捨てても
弁解は見苦しい

ただ、止まれない
逃げても、逃げ切れない
崖っぷちでも
忘れてしまっても
ごくまれにある希望へと
浮かび上がっていく心は
誰だって望むことだろう



楽しんだのは昔のこと
悲しんだのは昨日のこと
儚いのはいつものこと
信じられない全てのこと
不誠実で切り拓いていけ
時間に追われ限界を超えて
今しかない先端を追え

禁じられた扉を開けて
無定型の果てで探す
羅針盤は壊れてしまった
未完成の城壁の手前
受け取った天命
来期へと橋を渡す

灰色を自分色に染める
ぶつかった瞬間の想いを込めて


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