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1章

それは突然の発表だった



 四方を海に囲まれている日本。海上物流は常に大きな役割を担ってきた。
そう聞くと、外洋を航海する巨大石油タンカーを思い浮かべる人もいるだろう。
 しかし、石油に限らず日本に運び込まれるこれら物資が、その後「国内で」どのように流通するのか迄をイメージする人は少ない。

 石油、鉄鋼、セメント、砂利、石材、化学薬品など、製品を生産する上での材料、いわゆる産業基礎物資の実に8~9割は、国内に入ってからもやはり「船」によって全国へ運ばれている。

「できるだけ大量のものを、一度に遠くまで」
 自動車や飛行機、鉄道が発達した現在であっても、船舶による海上輸送の利点は群を抜いている。
 そう思って周囲を見渡せば、日常の生活で目にするほとんどのモノが一度は船に乗ってきていることに気がつく。
 自動車、ビル、道路、テーブルやキッチン家具、小さな部品にいたるまで、、、

 そう、つまり日本は間違いなく海洋に浮かぶ島国なのだ。

 国内の港と港を結ぶ海運産業を「内航海運」とよんでいる。「国民生活」との関係は意外にも身近でありながら、生活の中でそれが意識されることは極端に少ない。
 まるで私たちの住んでいる島が、大陸と地続きで繋がっているかのように錯覚までしてしまいそうだ。

 しかし、人が生きていくうえで「自身がどういう場所に住んでいるのか」を知ることは、自分の存在や明日の幸せな社会について考える時に、あまりにも基本的な土台である。ましてや、国際物流の時代に、そこがアジア大陸の離島、世界の離島、海洋に浮かぶ島国である場合には、さらに重要な意味をもっているはずだ。
 皮肉なことに、日本社会が「安定的な物流確保」を実現していること自体が、「この島の現実」を覆い隠しているともいえる。
 海運は、そんな島国の市民生活に不安を与えないためにこそ努力してきた産業である。不安定な世界情勢の変化など、事あるごとに市民生活に緊張が走っていては「海運産業」として失格だ。
 安定的な物流確保を実現するために、海運は様々な「時代の変化」を乗り越え、また乗り越え続けなければならない責任を持っている。ただしそれは容易なことではない。そのことは、日本で生活する誰しもが知っておくべき「現実」ではないだろうか。
 そして今、全く新しい重大な「危機」を目の前にしていることも ---