目次
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A
A-1 【釧路湿原国立公園交通事情】 … 概況
A-2 【釧路湿原国立公園交通事情】 ・・・ 道路情報
A-3 【釧路湿原国立公園交通事情】・・・JR釧網本線を利用して①
A-4 【釧路湿原国立公園交通事情】・・・JR釧網本線を利用して・・・②
A-5 【釧路湿原国立公園交通事情】…バスを利用して
A-6 【釧路湿原国立公園交通事情】…その他の交通手段
A-7 【釧路湿原国立公園交通事情】…釧路川堤防の利用について
A-8 【湿原展望地ミニガイド】…①岩保木山・岩保木水門周辺
A-9 【湿原展望地ミニガイド】…②細岡・達古武沼周辺
A-10 【湿原展望地ミニガイド】 …③塘路湖・サルボ周辺周辺
A-11 【湿原展望地ミニガイド】…④シラルトロ沼周辺
A-12 【湿原展望地ミニガイド】…⑤ コッタロ湿原周辺
A-13 【湿原展望地ミニガイド】…⑥キラコタン岬周辺
A-14 【湿原展望地ミニガイド】…⑦宮島岬岬周辺
A-15 【湿原展望地ミニガイド】…⑧北斗、温根内周辺(その1)
A-16 【湿原展望地観にガイド】…⑧北斗、温根内周辺(その2)
A-17 【細岡展望台からの鳥瞰】
A-18 【野営場(キャンプ場)情報
A-19 【公園内外の行事やお祭】
A-20  【タンチョウの給餌場情報】 …その1
A-21 【タンチョウの給餌場情報】 …その2
A-22 【タンチョウの給餌場情報】 …その3
B
B-1 【釧路湿原の生い立ち】
B-2 【釧路湿原のまわりには多くの遺跡がある】
B-3 【釧路川】…①概況
B-4 【釧路川】…②釧路川推計とその流域
B-5 【釧路川】 ③大正9年の大洪水
B-6 【釧路川】 ④釧路川の治水 その1
B-7 【釧路川】…⑤釧路川の治水(その2)
B-8 【湿原の瞳。谷地眼】
B-9 【海跡湖】
C
C-1 【湿原には3つのタイプがある】
C-2 【ヨシとスゲ】 …湿原の主役?脇役?
C-3 【ヨシとスゲの観察】
C-4 【ミズゴケ湿原】 …その発達は年1ミリ
C-5 【湿原景観の演出家・ハンノキ林】
C-6 【湖沼に生活する直物(水草)】
C-7 【マリモの種類と生育地】
C-8 【湿原周辺で見られる樹木は約30種】
C-9 【釧路湿原の花暦】…①
C-10 【釧路湿原の花暦】…②
C-11 【釧路湿原の花暦】…③
C-12 【谷地(野地)坊主はどうして作られる】
C-12 【谷地(野地)坊主はどうして作られる】
C-13 【湿原の植物と人間】…"湿原の植物生産性"と北方民族の知恵①
C-14 【湿原の植物と人間】…"湿原の植物生産性"と北方民族の知恵②
C-15 【湿原と人間社会のかかわり】 …湿原の機能と利用①
C-16 【アイヌ民族における有用植物】…①
C-17 【ヨシはアイヌ民族の大事な建築資材】
C-18 【ヒシの実、ペカンペ】…pe(水)ka(の上)un(にある)pe(もの)
C-19 【ノリウツギ(糊空木)】 …北海道ではサビタ
C-20 【マコモの実は野生の米(ワイルドライス)】
D
D-1 【釧路湿原の動物相】
D-2 【釧路湿原の哺乳類】
D-3 【エゾシカの生活】
D-4 【湿原のエゾシカ】
D-5 【リス】 …齧歯目・リス科の小型哺乳類
D-6 【湿原周辺で見られる鳥の特徴】 …森林・高山の鳥①
D-7 【湿原周辺で見られる鳥の特徴】 …森林・高山の鳥②
D-8 【湿原周辺で見られる鳥の特徴】 …原野、低木林の鳥①
D-9 【湿原周辺で見られる鳥の特徴】 …原野、低木林の鳥②
D-10 【湿原周辺で見られる鳥の特徴】 …河川、湖沼の鳥
D-11 【湿原周辺で見られる鳥の特徴】 …田園、都会の鳥
D-12 【釧路湿原とその周辺で見られる主な野鳥】 …①
D-13 【タンチョウの生活】…①
D-14 【タンチョウの生活】…②
D-15 【タンチョウの生活】…③
D-16 【タンチョウの生活】…④
D-17 【タンチョウの生活】…⑤
D-18 【タンチョウの保護増殖事業】
D-19 【タンチョウの給餌場の条件】
D-20 【タンチョウの被害と事故】
D-21【タンチョウ小史】…①
D-22 【タンチョウ小史】…②
D-23 【釧路湿原で見られるワシ、タカ類】
D-24【シマフクロウ(亜種、エゾシマフクロウ)は神の鳥】
D-25【日本に渡来するハクチョウ】
D-26 【渡りのチャンピオン「オオジンギ」】
D-27【動物たちのメッセージ(足跡)】
D-28 【おしゃれな旅人(カモ類)】
D-29 【森の中は住宅難(巣穴)】
D-30 【動物たちの食事あと(食痕)】
D-31 【釧路湿原にすむ魚】
D-32 【湿原の主「イトウ」】
D-33 【湿原のホタル】
D-34【トンボ─釧路湿原は日本で貴重な生息地】
D-35 【釧路湿原だけにすむ「キタサンショウウオ」】
E
E-1 【釧路地方1年の気象の移り変わり】
E-2 【釧路湿原を作った気候】
E-3 【釧路はなぜ霧が多い】
E-4 【湿原おろし】
E-5 【天気を当てる ─観天望気とは─】
E-6 【釧路地方のお天気・一口メモ】
E-7 【塘路湖の御神渡り】
E-8 【スター・ウォッチングと星座】
E-9 【四季の星座】
F
F-1 【開拓夜話(1)・鳥取士族】
F-2 【開拓夜話(2)・貫誠社】
F-2 【釧路川を五十石船が行く】 ─地名の話─
F-3 【塘路湖のペカンペ祭り】
F-4 【アイヌ民話】 ─釧路湿原にクジラがいた─
【アイヌ民話 ─湿原と丹頂─】
F-5 【アイヌ民話 ─遠矢のチャシとタンチョウヅル─】
【アイヌ民話 ─オオジンギ(白糠に伝わる神話)─】
F-6 【アイヌ民話─蚊の長老の娘とアイヌの英雄─】
F-7 【アイヌ語─地名の話─】
【アイヌ語─地名に出てくる主な単語─】
F-8 【アイヌ語─地名の解釈─】
F-9 【アイヌ語─地名の解釈─】…②
G
G-1 【日本の自然保護制度】
G-2 【日本の自然公園制度の歴史】
G-3 【日本の自然公園制度】
G-4 【世界の国立公園】
G-5 【釧路湿原国立公園の誕生まで】 …釧路湿原保護行政の歴史
G-6 【釧路湿原国立公園】
G-7 【自然公園の保護と利用】…①保護のための規制
G-8 【自然公園の保護と利用】…②保護のための開発規制
G-9 【自然公園の保護と利用】…③保護のための費用負担
 G-10 【自然公園の保護と利用】…④自然公園の利用
G-11 【自然公園の保護と利用】…⑤利用のための施設等の整備
G-12 【国設・釧路湿原鳥獣保護区】
G-13 【天然記念物・釧路湿原】
G-14 【野生動植物保護と国際協力】
G-15 【ラムサール条約】…①
G-16 【ラムサール条約】…②
G-17 【渡り鳥保護の国際協力】
G-18 【渡り鳥保護条約】
G-19 【ワシントン条約って何】
G-20 【昭和60年釧路湿原の火災】
G-21 【釧路湿原の水利用】
G-22 【8月第一日曜日は「自然公園クリーンデー】
G-23 【自然解説の目的と考え方】
G-24 【自然解説(観察)の実際】
エピローグ
[参考文献]
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C

C-1 【湿原には3つのタイプがある】

 湿原に生育する植物群落は他の群落に比較してきわめて生活力の弱い、多湿あるいは、湛水というきびしい自然環境とつりあって生育しています。したがって一面的で厳しい自然環境には耐え得るが人為的影響に対しては敏感で容易に破壊されやすい植物群落です。日本には233箇所、約36000ヘクタールの湿原が分布しますが、北海道サロベツ原野のツルコケモモーミズゴケ湿原から沖縄県西表島の浦内川河口のマングローブ林周辺のミミモチシダ群落までの多様な群落を含んでいます。湿原はその自然環境及び生活形により次の3つのタイプに分けられます。

・高層湿原(Sphagnum bog, reised bog, Hoxhmoor) とは、高位泥炭湿原とも呼ばれ、ミズゴケ類Sphagnumを主とする泥炭(Torf)がその基盤となっている。したがって低温・多湿・強酸性というもっとも厳しい環境条件下に生育する植物群落で代表される。高層湿原の植物群落は主として降水によって生活している。

・中間湿原(Mixed S phagnum bog, sedge bog, Zwischenmoor)は高層湿原の周辺部や山地斜面部あるいは扇状地などスゲ類はイネ科植物を主とした泥炭層を基盤として生育している。中位泥炭湿原とも呼ばれる。したがって泥炭層はきわめて浅く平均10~20センチ程度の厚さの地域もある。その大部分は地下水と降水により生育している。

・低層湿原(sedge bog,wet meadow, Flachmoor)は流水域やその周辺の地下水の高い地域で無機土壌上に生育している植物群落で構成される。
高層湿原、中間湿原、低層湿原ともそれぞれ隣接して生育することが多い。
 (第2回自然環境保全基礎調査報告書より)




C-2 【ヨシとスゲ】 …湿原の主役?脇役?

 釧路湿原を見下ろす展望地から遠望すると、ハンノキ林と平らな草原と曲がりくねった川筋そして小さな水溜りが見えるでしょう。この中の一見平でどこも同じような広がりは、季節をかえて見ることによって、また接近してみることによって一様ではないことが解ってきます。湿原の面積約20000ヘクタールのうちヨシ~スゲ原が多くを占める低層湿原は約80%で、中・高層湿原は約2%とわずかです。ですから平らに見えるところのヨシースゲ原が釧路湿原の代表的な景観としてとらえられます。しかし曲がりくねった旧河川跡や現河川が入り組んでいるため、地下水位(冠水~乾燥化)や土壌条件(富栄養~貧栄養)の差が生じ、ヨシースゲ原と一括してはいても混生する植物の種類は多様になってきます。
 ヨシ(Reed) …自然堤防地や水位の変動が激しい湿地は土壌が堆積して、いくぶん富栄養となり、そこにアシまたはキタヨシともいわれるイネ科ヨシが優占します。葉は7月中旬急に伸長、展開し、草丈は2メートルを越え、8月にはヨシの存在がクローズアップされます。花期は8~9月、茎はそのまま立ち枯れし、スゲ類とともに秋の湿原を黄金色に彩る主役と菜rマス。
 ヨシはよしずやすだれの材料になり、古くは垣根の材料にも使われたといわれます。
 スゲ (Sedge)類…カヤツリグサ科スゲ属のなかまです。花期は5~6月。ヨシと混生する場合は、8月に入ってヨシに草丈が追い越されるまではスゲの緑色が目立ちます。枯れると倒れ、降雪の際は雪原となります。かつての湖沼の中央域や旧河川の淵など、ヨシより水位の高い湿地に多く分布します。最も広く分布するビロードスゲ、ムジナスゲ、大型のオオカサスゲ、冠水する低地を含む過湿地にはヤラメスゲやオニナルコスゲ、プール状の浅い湛水地にサギスゲ、地下水位の低いやや乾いたところにはツルスゲなど多くの種類があります。また湿原の周辺部やそれに続く緩傾斜の沢にヒラギシスゲ、カブスゲ、オオアゼスゲなどの谷地坊主をつくるスゲの仲間が見られます。
 お正月のしめ飾りの材料に使われるのはヤラメスゲ、オオカサスゲなどです。

 (地下水位が高い) …とは地表は冠水または十分湿った状態
 (地下水位が低い) …とは地表は乾燥化に傾いている状態

C-3 【ヨシとスゲの観察】

 ヨシの観察…イネ科の植物を同定するのに大切なのは花です。花は良く観察してみましょう。匂いはどうか、虫は来るか、根茎は地下をはいます。地上をはっていたら別のなかま(ツルヨシ)かもしれません。
 漢字では「葦」とかいてアシともヨシとも読みます。アシは「悪し」に通ずることを嫌って「良し」にちなんでヨシと呼んだものです。
 スゲの観察…スゲ類は実(果胞)とそばにある鱗片の形に特徴があるので実があったら見てみよう。茎は三角形のものが多く、花は雄花と雌花が1本の茎に別別につくものが多いけれど、花を見て名前をあてるのはむずかしい。
 ヨシースゲ原の混生種…ヒメシダ、コウヤワラビ、アカネムグラ、アキノウナギツカミ、ハナタネツケバナ、クシロハナシノブ、カキツバタ、ノハナショウブ、ヒオウギアヤメ、ミゾソバスァギキョウ、ホソバノヨツバムグラ、ヤナギトラノノドクゼリ、ヌマゼリ、他多数。

C-4 【ミズゴケ湿原】 …その発達は年1ミリ

 河川の流氷の影響を受けなくなり,水位の比較的安定したスゲ原にはミズゴケ湿原が発達していきます。ミズゴケは高層湿原の代表的な構成要素です。鱗状の葉に貯水細胞と呼ばれる大型の細胞があり、給水力と貯水に優れています。これらは群生し、ぎっしりと束状に集合し、毛細管現象で水位を上へ上へと引き上げ、また自らも水を引き上げられる限り上へ上へと茎を伸ばしていきます。その結果、他の面より水位が引き上げられ高層湿原が作られるのです。
 ミズゴケの種類は日本に40種あまり、釧路湿原では約20種が見られます。

 ミズゴケの発達は、冠水したスゲ原にまず明るい淡緑色のやわらかいオオミズゴケ、ヒメミズゴケ、ウツクシミズゴケウロコミズゴケなどが登場し、次第に水面から盛り上がってくるとイボミズゴケやムラサキミズゴケに変わり、「ブルト」と呼ばれる小さな凸状地を作ります。さらに種類はチャミズゴケ、アカミズゴケなどに変わっていきます。この種類は非常に小型で細長く、より密に群生し、吸水力はさらに強くなり、ブルトの高さは水面から30~40センチにもなります。

 しかし、限界まで行くと頂部は乾燥し、ブルトは次第に崩壊して域、凹状地「シュレンケ」となります。そして、水位面に高さが近づくと再びミズゴケはその繁茂を繰り返します。
 ミズゴケが繁茂し堆積していくとはいってもそれは年に1ミリ程度というゆっくりとしたペースであり、長い年月をかけてのこと、人が踏みつけて10センチへこませたとしたら100年分の損失(抑圧)を与えたことになります。
 ミズゴケ湿原のブルトとシュレンケ、ここを舞台として約200種の高山植物や寒地性植物が美しい花を咲かせます。しかし、その美しさはとても繊細なもの、大切に守りたいものです。




C-5 【湿原景観の演出家・ハンノキ林】

 周辺の展望台から湿原を見るとハンノキの群落がモザイク模様をつくり、アフリカのサバンナを思わせる風景といわれます。
 ハンノキは一名ヤチハンノキ(ヤチは谷地で湿地の意味)とも呼ばれ、ヨシとともに群落をつくり、低層湿原の代表的植物・樹木です。他の樹木と違って湿原のような過湿で生育条件の悪いところでも成育できるハンノキですが、湿原の中でも、流入河川や周辺丘陵地から運ばれてくる土砂が堆積したところに群落を作ります。常に土砂の流れ込む、釧路湿原では西側の丘陵地に接するところ、河川あるいは今は水のない旧河川の自然堤防上に多く観られます。ハンノキ群落の分布は湿原内の土砂の体積分布を示しているとも見る事が出来ます。また、常に土砂が供給される丘陵地に近いところ、河川の上流部では成長は良く、湿原の中央部など水位の低いところでは成長が遅いなど、土砂の厚さや水位の高低など生育条件の違いによってハンノキの成長の様子も変わってきます。
 ハンノキは、特に湿原中央部や南部のより過湿なところでは、ある程度成長すると立ち枯れて、その根株から新しい芽を出して再び成長を始めるという萌芽更新をします。
 ハンノキは白樺などカンパ類と同じカバノキ科に属します。


C-6 【湖沼に生活する直物(水草)】

 水生植物…体の全体あるいは一部が水中にある植物をさす。一般に大型植物に対して用いられるが、植物性プランクトンなども含めて水中に生活する全植物をさすこともある。生活型や生活場所によって次の4つに分けられる。
 ・挺水(抽出)植物… 根が茎や土中または水中にあって葉や茎が水面より上に出る植物。岸近くに多い。ヨシ、ガマ、マコモ、フトイ、カンガレイなど。
 ・浮葉植物…根が水面下の土中にあり、葉や葉柄をのばして葉を水面に浮かべる植物。ヒシ、オヒルムシロ、ジュンサイ、ヒツジグサ。
 ・沈水植物…根は水底に固着し、葉が水面に出ない植物。ホザキノフモサ、エビモ、クロモ、マツモなど。
 ・浮水植物…水に浮いてただよう植物。ウキクサ、タヌキモなど。
湿生植物…水辺に生育する植物で、水分要因への様々な適応の形態をもっているものもあり、十分な水分供給の立地に耐えうる、あるいは適応した陸上植物をいう。ハンノキ、ヨシ(陸上部分にあるもの)、スゲ類など


C-7 【マリモの種類と生育地】

 マリモ類の分布は、ヨーロッパ北部地方、北アメリカ、北海道とその周辺であり、いずれも北半球の高緯度地方(低緯度では高所)で、寒いところを好み生育しています。

 北海道とその周辺で産するマリモの種類は次の通りです。
・マリモ … 阿寒湖、シラルトロ沼、達古武沼
・チシママリモ … ナイボ湖
・カラフトマリモ … トーバ湖、チミケップ湖、キモマ沼
・フジマリモ … 山中湖、河口湖
・トロマリモ … 塘路湖
・ヒメマリモ … 左京湖、クッチャロ湖小沼
・フトヒメマリモ … 阿寒湖

昭和60年、上記以外に、カムイト沼、ポン沼で新たに発見され、現在詳しい調査がなされています。日本では本州の三湖沼以外はすべて北海道、道東の5、道北の4湖に成育しています。



C-8 【湿原周辺で見られる樹木は約30種】

 湿原丘陵部に成育する樹木の種類は以外に多く、次のようなものがみられるのでFIELDで確かめてみよう。なお、カッコ書きは別名、通称など。
 オニグルミ・ケヤマハンノキ(ヤマハン)・ハンノキ(ヤチハン)・シラカンバ(シラカバ)・ミズナラ・ハルニレ(ニレ・アカダモ)・ヤマグワ・カツラ・コブシ・ホウノキ・ノリウツギ(サビタ)・エゾノコリンゴ(ヒロハオオズミ)・エゾヤマザクラ・シウリザクラ(シウリ)・アズキナシ(カナスギ)・ナナカマド・イヌエンジュ(エンジュ)・キハダ(シロコ)・ヤマウルシ(キウルシ)・ツリバナ(エリマキ)・エゾイタヤ(イタヤカエデ・イタヤモミジ)・ヤマモミジ(モミジ)・シナノキ(シナ)・ハリギリ(セン)・ヤチダモ(タモ)・アオダモ・ハシドイ(ドスナラ・ヤチカンバ)・ヤナギ科はヤマナラシ・ドノロキ・ネコヤナギなどがあります。 上の物はすべて広葉樹ですが、天然に見られる針葉樹はほとんどなく、植林されたものではトドマツ・アカエゾマツ・カラマツなどがみられます。


C-9 【釧路湿原の花暦】…①

4月上~5月上 フクジュソウ
4月~5月 チシマネコノメソウ、ネコヤナギ
4月下~5月中 キバナノアマナ、アズマイチゲ、ザゼンソウ
4月下~5月した エゾエンゴサク、ヒメイチゲ
5月 アキタブキ、ヤチヤナギ、ミズバショウ、レンブクソウ、フツキソウ、キタコブシ
4月~6月 キジムシロ、ハンノキ
5月~6月 ヤチダモ、ニリンソウ、ミドリニリンソウ、フデリンドウ、ヒラギシスゲ、オオバナノエンレイソウ、ミヤマエンレイソウ、コミヤマカタバミ、ワタスゲ、ヒメワタスゲ、オニグルミ、ミズナラ、シラカバ、エゾオオサクラソウ、チゴユリ、エンコンソウ、ホロムイツツジ、オランダガラシ、エゾキケマン、クシロワチガイソウ、ガンコウラン、ツルネコノメソウ、エゾネコノメソウ
5月下~6月 エゾクサイチゴ、マイズルソウ、キジカクシ、エゾノウワミズザクラ、ツバメオモト
5月下~7月した ミツガシワ
6月上~78月 オオヤマフスマニシキギ
6月上~8月 クロユリ
6月中~7月上 エゾニワトコ
6月~7月中 コツマトリソウ
6月下 マユミ
6月下~7月中 ミツバウツギ


C-10 【釧路湿原の花暦】…②

6月 クロハツリバナツリバナヒオウギアヤメ、ヤマグワ、ズダヤクシュ、エゾスグリ、イチイ、ルイヨウボタン、ヤマブドウ、アカミノルイヨウショウマ、オオアマドコロ、スズラン、スミレ
6月~7月 クサノオウ、ユキサギチョウセンゴミシ、ウメガサソウ、オオヤマオダマキ、コンロンソウ、クスロハナシノブ、コケイラン、アオチドリ、ヒメシャクナゲ、コケモモ、ツルコケモモ、クロミノウグイソカグラ、フタマタイチゲコウライテンナンショウ、カラフトイバラ、トキソウ、ハリエンジュ、ギンリョウソウ、フタリシズカ、ヒトリシズカ、ヒメカイウ、クロイチゴ、オオタカネイバラ、
6月中~7月 エゾイソツツジ、、クルマバツクバネソウ、エゾゼンテイカ、
6月下~7月 ハシドイ、カンボク、ベニバナヤマシャクヤク、エゾイチゴ、クマイチゴ
6月~8月 ヤマブキショウマ、コウリンタンポポ
6月 と9月 センボンヤリ
7月 クロバナロウゲ、ニガナ、エゾスカシユリ、サルナシ、オオカサモチ、ミズチドリ、イヌスギナ、セリ
7月~8月 ホロムイソウ、エゾオオヤマハコベ、タマミクリ、ヒシ、エゾノレンリソウ、バイケイソウ、カラマツソウ、エゾイヌゴマ、タチギボウシ、ヤナギトラノオ、エゾノシモツケソウ、オオツメクサ、オニノヤガラ、オオウバユリ、オオダイコンソウ、タラノキ、ヤマトキソウ ヤナギラン


C-11 【釧路湿原の花暦】…③

7月~8月 フトイ、サワラン、ノハナショウブ、クサフジ、ヒメコウガイゼキショウ、エゾヒツジグサ、ネムロコウヒネ、ガマ、エゾタツナミソウ、バアソブ、ヒルガオ、トリアシショウマ、エゾムラサキニガナ、ネジバナ、イケマアカソ、モウセンゴケ、ウメバチモ、ホソバイラクサ、アキカラマツ、コタヌキモ、ムラサキミミカキグサ、トモエソウ、ゴトウヅル、エゾミソハギ
7月~9月 ナンテンハギ、ヒロハマンテマ、ハリイ、ナガボノシロワレモコウ、アレチマツヨイグサ
8月 ウマスギゴケ、ホザキナナカマド、クルマユリ、オニユリ、ドクゼリ、ミズオトギリ
8月~9月 サジオモダカ、ツユクサ、エゾノミツモトソウ、カワミドリ、ミヤマニガウリ、サラシナショウマ、ホザキシモツケ、ハッカ、ハンゴンソウ、ツリガネニンジン、ミツバフウロ、イヌタデ、エゾトリカブト、キツリフネ、ツリフネソウ、ノリウツギ、キンミズヒキ、コメナモミ、エゾノミスタデ、ミゾソバ、ヤマハハコ、サワギキョウ、エゾヤマハギ、ミミコウモリ、クサレダマ、ヨブスマソウ、ヒメハッカ、タカアザミ、イシミカワ、ヨシ、エゾノキツネアザミ、サワヒヨドリ
8月~10月 ヒヨドリバナ、コガネギク
9月 アキノウナギツカミ
9月~10月 エゾノコギリソウ、エゾリンドウ、ウメバチソウ、ナギナタコウジュ


C-12 【谷地(野地)坊主はどうして作られる】

 谷地坊主は道東では知らない人はないほどで、半分は親しみを寄せ、半分はこの利用価値のない谷地坊主に不毛の北国の厳しさを感じ取っていたのではないでしょうか。谷地坊主は、釧路湿原では湿原の周辺部やハンノキ林内に多く見られますが、この逆徳利型に盛り上がってゆく隆起現象がどのようにしてできるのかよくわからないところもありますが次のように考えられています。

 谷地坊主はヒラギシスゲやカブスゲなどのスゲ類が繁茂した株を作りかつそれが隆起したもので「隆起叢株」と呼ばれています。これらのスゲ類は分けつ(分岐)作用が旺盛で、前年の根から地下茎を伸ばし、翌年の根を繁茂させて毎年連続して生長します。そして冬季に土壌凍結で株ごと隆起(しばれ上る)し、やがて春先、まだ土壌が凍結している状態で雪解け水は降雨水などの流水が株の根元の土壌を抉り取る。このような条件が毎年重なり合って谷地坊主になると考えられています。高さは数十年で40~50センチになるといわれており、中にはハンノキの古株が残っているものもあり、これらは古株を取り込んで発達したものと考えられています。大きな株には他の植物、ヒメシダ、エゾオオヤマハコベ、ネジバナなどが共生し、アリが巣を作るなど湿原生物の生活の場ともなっています。


C-12 【谷地(野地)坊主はどうして作られる】

 谷地坊主は道東では知らない人はないほどで、半分は親しみを寄せ、半分はこの利用価値のない谷地坊主に不毛の北国の厳しさを感じ取っていたのではないでしょうか。谷地坊主は、釧路湿原では湿原の周辺部やハンノキ林内に多く見られますが、この逆徳利型に盛り上がってゆく隆起現象がどのようにしてできるのかよくわからないところもありますが次のように考えられています。

 谷地坊主はヒラギシスゲやカブスゲなどのスゲ類が繁茂した株を作りかつそれが隆起したもので「隆起叢株」と呼ばれています。これらのスゲ類は分けつ(分岐)作用が旺盛で、前年の根から地下茎を伸ばし、翌年の根を繁茂させて毎年連続して生長します。そして冬季に土壌凍結で株ごと隆起(しばれ上る)し、やがて春先、まだ土壌が凍結している状態で雪解け水は降雨水などの流水が株の根元の土壌を抉り取る。このような条件が毎年重なり合って谷地坊主になると考えられています。高さは数十年で40~50センチになるといわれており、中にはハンノキの古株が残っているものもあり、これらは古株を取り込んで発達したものと考えられています。大きな株には他の植物、ヒメシダ、エゾオオヤマハコベ、ネジバナなどが共生し、アリが巣を作るなど湿原生物の生活の場ともなっています。


C-13 【湿原の植物と人間】…"湿原の植物生産性"と北方民族の知恵①

 湿原は、北に行くほどその生産性は低くなりますが、元来生産性の高い土地です。湿原そのものは珍しいものではなく、世界の陸地の1/6は湿原と言われています。日本にもかつては平地部に多くの湿原がありました。地名に谷(ヤまたはヤツ)がつくところはかつて湿原だったと考えられ、こういった地名を探すとたくさんあります。湿原は水田に使われる例が多く、歴史始まって以来水田に変わってしまい、平野部の湿原はほとんどなくなりました。釧路湿原をはじめ道東に大面積で残っているのは、年平均気温が全国一低い(富士山頂を覗いて、気象官署の置かれているところでは釧路が最も低く5.6度、:1988年版理科年表)という気象条件によって、稲が育たなかったことによるといえます。それでも育つ耐寒性の強い稲の品種ができていたら釧路湿原もあるいは水田になっていたかもしれません。

 開拓期の湿原では、春早くに芽を出す湿原のスゲ類(それを”やち草”とよびました)を馬に食べさせた、という話を開拓農家の人に聞きました。スゲ類は優良な食草とはいえませんが、厳しい冬をササや木の皮などで飢えを凌いできた放牧場にとっては、やわらかくみずみずしい春一番のごちそうだったのでしょう。
 スゲ類に限らず、また馬だけでなく人間も、湿原に成育する様々な植物を、様々な用途に利用してきました。


C-14 【湿原の植物と人間】…"湿原の植物生産性"と北方民族の知恵②

 北方の諸民族にとって湿原は、"そのまま"でも生産性の高い土地であったようです。
植物だけでみても、例えばカナダインディアンはヨシを原料の一部としてパンを作り、マコモの実、ツルコケモモの実などを食用にしました。また、アイヌ民族においてもその生活と関連する植物は多く、知里真志保博士は472種を挙げています。衣類、燃料、食料、丸木舟、薬、木幣、住居、道具などに利用した植物は、湿原、湿原周辺に限ってみても多数にのぼります。
 アイヌ民族が、ツルコケモモの湿原を「katam-sar」、ヨシ湿原は「sar」、ガマやスゲの多いところを「kina-usi」、林間の湿地を「nitat」、川沿いのものを「perkere」、クマやシカなど大型の獣が水浴びするためのたうちまわるような所(ヌタ場)を「pesa」と呼び分けたと聞くとき、湿原の人々の生活とのかかわりの豊かさを感じるのです。


C-15 【湿原と人間社会のかかわり】 …湿原の機能と利用①

 湿原は、"水面の見えないダム"とも言われますが、ちょうどスポンジに水を十分しみこませた状態と言われるように保水機能を持っています。大正の大水害は別としても、これまで私たちがそれと気づかないうちに、大雨を吸収して洪水被害を防いでくれたことがあったに違いありません。今も釧路湿原は、釧路川水系の遊水地として、災害防除のための重要な機能を果たしています。
 カナダ東部地方五大湖周辺は、湖の存在が気候を緩和していると聞きますが、"水面の見えないダム"湿原も全く同じような効果、機能を地域的な気候に対してもっているはずです。例えばタンチョウが生息することは凍らない水域があることを意味し凍らない水域があるということは湿原のもつ保熱能力をあらわすといえるでしょう。サロベツ湿原のデータでは、水が十分に含まれる湿原では日中の保熱量が大きく、夜間の温度低下量が乾燥した湿原よりもはるかに少ないことが示されています。アメリカはフロリダのエバーグレースでは、地下水位が下げられたため、地域の気温が低下してフロリダで霜が降りるという結果が生じたため、再び水位を上げて気候緩和能力を保持させたという例もあるのです。
 今後、湿原そのものの持つこの保水、保熱機能を生かした新たな利用が考えられるかもしれません。

【湿原と人間社会のかかわり】 …湿原の機能と利用②
 低層湿原を代表するヨシ群落は、近年、水質浄化のための、いわばバイオフィルターとしての効用を認められ、小規模な廃水処理への利用が考えられています。オランダなどで実験的研究が行われているとのことです。
 また、ミズゴケの持つ吸湿性、断熱性を利用して古くから家屋の充填材や断熱材として用いられ、時にはホウタイや脱脂綿の代用品として医療用にも使われました。
 湿原の産物、泥炭の利用で知られるのは燃料としての利用です。東北地方では古くからサルキまたはサルケ(アイヌ語起源で「燃える土」)と呼ばれ燃料として使われ、北海道でも少し前まで泥炭ストーブがありました。ヨーロッパなどでは今でも泥炭発電所があるということです。
 その他泥炭の持つ吸湿、吸着という性質を利用して、オイルフェンスや、栽培漁業用に、余分な飼料を吸着して水質の汚濁を防ぐための吸着剤などとしても使われています。また、中国では土壌改良剤として広く使われているとのことです。

C-16 【アイヌ民族における有用植物】…①

 食用(120種以上) …オオウバユリ、ギョウジャニンニク、ニリンソウ、ヤブマメ、エゾエンゴサク、ヒシなどが著名。
 住居用(20種以上) …屋根、壁、簾(すだれ)、柱、敷物、ゴザとその模様、垣。
 衣類用(20種前後) …織物とその模様、糸、沓下、脚絆、雨具、靴、わらじ、草履、靴の中にいれる保温材、下駄、笠、平紐。
 道具用(80種以上) …盆、木鉢、組、杓子、ひしゃく、へら、臼、杵、手桶、水汲桶、チンキ(小型の容器)など炊事用、食事用の道具、生活上の木工品、火気を扱うための道具、刃物の柄や鞘、弓矢を作るために、また、灯火、燃料、粘着材、矢毒用にと、様々な用途に、多くの植物が利用された。
 遊具用(14種余り) …ヨブスマソウ、ミミコウモリ、タンポポ、オオバコ、イケマ、キツリフネ、エゾムラサキツツジ、ムラサキツリバナ(クロツリバナ)、ハマナス、ナガバヤナギ、サイハイライン、チシマザサ、ヤマドリゼンマイなど。
 タバコ用(6種あまり)…ノブキ、イソツツジ、キバナシャクナゲ、エゾスカシユリ、コタニワタリ、ヤマブドウなど。
 薬用(100種以上) …特にギョウジャニンニクはあらゆる病気に用いた。現在でもその効用が認められている植物もある。

  【アイヌ民族における有用植物】…②
 呪術用(40種以上) …臭気や毒のある植物、味にくせのある植物、棘のある植物に除魔力を認め、木幣、墓標、お守り(人形など)、杖などに使ったり、飲食したり、立てたり、つるしたり、あるいは枕に詰めたり、火をつけたり、撒いたりして魔よけに用いた。臭気のある植物…ギョウジャニンニク、ナナカマド、エゾニワトコ、イブキボウフウ、エゾウワミズザクラ、エゾヨモギ、クルマバソウ、ナギナタコウジュ、エンジュ、エゾハッカなど。毒のある植物…イケマ、ドクゼリなど。味に癖のある植物…センダイカブラ。棘のある植物…タラノキ、ゴボウの実など。

 他に、樹液の出る植物(イタヤなど)は乳が出るように、また、果皮のはじける植物(キツリフネ)、大きく伸びる植物(ハイケイソウ)は子供がはじけるように元気であるように、大きく、すくすく伸びるように祈願するために用いられたとのことです。
 時節などの判断用…アヤメの花が咲けば魚が上がってくる。フクジュソウの花が咲き出すとイトウが上がってくる。エゾヤマハギの花の咲き始めにマス、散ってからサケがあがる。エゾノシシウドの花が咲き出す頃までにマスがとれなければその歳のマス漁は見込みが無い。


C-17 【ヨシはアイヌ民族の大事な建築資材】

 ヨシで葺いた家をアイヌ語で、むンチセ(草・小屋)、きチセ(ヨシ・小屋)といい、ヨシは屋根を葺いたり、壁材に使ったり、すだれも編みました。秋になると鎌と荷縄を持ってヨシを刈りに行くのが婦人たちの重要な仕事でした。
 1989年3月25日の北海道新聞に次のような記事が載りました。 「"チセは省エネ住宅" 高い保温効果(アイヌの知恵を実証)…『アイヌ住居の長期温度測定』 宇佐美道教育大講師が建築学会で発表─
 旭川市郊外に復元されたチセを使って二年前から実施。一方のちせの土間では、氷点下30度にまで下がった厳冬期でも、消えない程度の微弱な火をつけ続け、全く火を使わないもう一方のチセの住居内部の地温、室温を観測記録した。その結果、測定期間中、火を使ったチセの地温は一回も氷点下にならず、1・2月の平均地温は2.1度を保ち、同時期の両チセの地温差は6.6度。時間ごとの地温変動率は火を使わないチセのほぼ1/3にとどまった。また、同期間の室温は火を使った方が氷点下5.6度、もう一方が同12.3度と6.7度の差があり、地温と室温の差はほぼ相関関係にあることも明らかになった。アイヌの伝統的な住居チセの暖房効果がいかに優れているかを研究してきた宇佐美さんは、チセの知恵を今後、現代建築に生かし、省エネ住宅の実現を模索していきたい」という。


 ヨシを壁にした小屋にいると、低気圧がきて天候が変わるときには、茎の中の空気が変化するので音がして天気予報になったといいます。
 他に笹で葺いた「ウらシチセ(笹・小屋)」樺皮で葺いた「たッチセ(樺皮小屋)」などがあります。

 チセ(家) :伝統家屋は、このように母屋に張り出しがつけられることが多い。母屋の横には子熊を飼育するオリ、その隣には乾燥させた食料を保zんする高床の小屋がある。オリをヘベレセッ、高床小屋をブーという。母屋とブー、ヘベレセットの間の奥にヌサ(祭壇)がある。

C-18 【ヒシの実、ペカンペ】…pe(水)ka(の上)un(にある)pe(もの)

 ヒシの実は「kisara(その耳を)・tarara(立てている)・pekanpe(ヒシの実)」というように、見る人に生き物を想像させる何とも奇妙な形をしています。がく片が変化した長く太く丈夫な刺があります。いつ、どこが、どうなってこんな形の実が出来上がるのでしょうか。熟した実は落ちやすく、落ちると水の底に沈み、刺が錨のような役目を果たし、泥に食い込んで固定し翌年芽を出します。茎は水面まで細く長く伸び、その先にたくさんの菱形の葉が集まって広く水面を覆います。長い葉柄の中ほどが膨らんで浮き袋の役目を果たします。8月上旬より白色の花を開き、8月下旬より熟します。「水中にもぐると茎が身体にからみ、実も引き寄せられ、チクチクあたって痛くて大変」という話を聞きました。
 ヒシの実はアイヌにとって最も重要な食料の一つで、採る前に紙に許しを乞い、感謝する儀式"ペカンペ祭"をしました。採取は水に落ちた実を集めたり、沈んだ実は冬、凍った湖面に穴を開け、長い柄のついた手網ですくいあげました。収穫した実は乾燥して貯蔵し、食べる時には、茹でてそのまま皮をむいて食べたり、皮をむいて中の澱粉質の白い実を出して粥を作りました。その中にギョウジャニンニクの干した芽を刻んだものやオオウバユリの根を臼でついて干し固めたものを砕いて入れて炊いて食べたりしました。


C-19 【ノリウツギ(糊空木)】 …北海道ではサビタ

 知里真志保博士によれば「アイヌ語では木や草の部分部分の菜はあるが、その木、その草全体を表す名称は存在しなかった。生活に利害関係を有する植物にのみ名がつき、しかもその利害関係を有する部分にのみ先ず名がつきます。」
 ノリウツギについてもほとんどがその茎に付けられた名です。

・rasupa (槍の柄と穂先を継ぐ棒) ─茎、─胆振、日高、足寄、美幌、斜里、名寄。
・rasupa-ni (ラスパを作る木) ─茎、─長万部、幌別、足寄。
・opsa (op・槍 - sa・前) ─茎、─萩伏、宇原川、様に、屈斜路、常呂。
・kirneni(kir・髄-ne・になている-ni・木) ─茎─真岡。
・kisirini(きせる・木) -茎-真岡。

ノリウツギの材で槍、矛、銛の柄と穂先を継ぐ棒を作り、この木の柔らかい髄(中心部)を抜いて煙管を作ったり、火バサミ、火箸、へら箸、編み針、花矢、矢の柄なども作りました。いずれも茎が使われ、それに対して名が付けられました。
 針金などで簡単に中空になる芯(髄)を持つ木、また和紙をすくための糊がとれるので、”糊空木”。和名の法もアイヌ語の名前の付け方に似ています。
 純白な木質を生かしたペンダント、指輪など民芸土産品として有名なサビタ細工ですが、近年材料の入手難で、余り見ることがないと聞きます。

C-20 【マコモの実は野生の米(ワイルドライス)】

 マコモはイネ科の大型多年草で、高さは1.5~2.5メートルにもなり、ヨシを越え、ヨシに比べ葉も長く幅広で緑も濃く、ヨシの穂は垂れるがマコモは真っ直ぐ立ち、冬は、ヨシは立ち枯れ田ままですがマコモは倒伏します。湿原の湖沼や春採湖に自生し、シラルトロ沼が分布の東限といわれています。
 マコモの実"ワイルドライス"は黒褐色で細長く普通の米の2倍の大きさで、とても硬く、やわらかくするのに時間がかかり、たっぷりの水でじっくり煮るとか、水に一晩つけておくなどの工夫が必要です。
 カナダインディアンはマコモの実を食料にし、アメリカにも輸出され、今でも料理の付け合せやスープなどに使われ、高価なグルメ材料として珍重されているようです。マコモ属はアフリカ、インド、中国など広く分布し、昔から多くの民族が食料として利用して来ました。
 アイヌ民族はマコモ
の実を食用にしたのでしょうか。アイヌ民族がマコモをどの様に呼んでどのように利用したのか明確なことは解っていませんが、120種以上の植物を食用として利用したと言われています。この中に入っていることも想像できます。
 マコモはまた漢方薬として著名で、二日酔いに良く効くそうです。