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12月30日

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点呼

「シファ、ミスフィ両名、任務飛行点呼お願いします」
 シファが当直室で声を上げる。
 当直士官の熱海二尉が応対する。当直室の隣の仮眠室の入り口で、非番のはずの戸那美三佐が、アイスクリームを食べながら熱海の当直ぶりをチェックしている。
 当直士官として一人前になるのは、艦と部隊の全てについて一人前になることであり、将来の指揮官として乗り超えなければならない関門である。
 熱海は緊張している。
 戸那美は眼鏡を直した。『あれ、戸那美さんコンタクトじゃないの?』とシファが聞くと、戸那美は『昔は眼鏡のまま任務やってたけどね』と答えた。
『戸那美さん眼鏡似合ってる』
『野暮ったいわよ』
『それがいいんじゃない』
 戸那美は笑った。
『鳴門君とキャラ被っちゃうからコンタクトだったんだけど……。でもそうね。これからは眼鏡で任務やるわ。ちょっと不本意だけど』と言った後、ごほんと咳払いをした。
 シファは始めた。熱海の緊張を少しでも解きほぐしてあげようとシファは気を使ったのだった。
「任務点呼します。本日の任務行路は7811Fです。プランは2211A、使用スコークは34F7、34F8、本日の関係制限は紀州沖の3200、太平洋航路上の4112です。今月の月間目標はリアクションタイムの短縮、減の確認です。時刻整正します。ただいま十時十一分十秒」
「十秒よし」
「ゼロ災でいこう、よし」
「了解です。これで今年の任務は終わりだね」
「ええ」
「私も明日から実家に帰るから、また会うのは新年って事になるね。じゃ、良いお年を」
「はい。では」
 シファたちは点呼を終え、飛行甲板へ向かう。


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地球と月と

「宇津居課長も熱心だね」
 早瀬と氷室、そして鳴門が資料の読み合わせをしている。
「十二号事案が未解決で忙しいのに、新年の松が取れないうちに西ロシアとの課長級会談、ってマジかよと思ってたけれど、ホントらしい。シファとミスフィには新年早々で悪いけど、任務発令だよ」
「大丈夫でしょう。シファたちは強くなりました」
「そうだな。最近、シファとミスフィの線が強くなったように思うよ」
「私もです」
「そうか。いいことだ。シファは一度クドルチュデスにやられたかと思ったけど、あれも経験の一つだったんだな。危なっかしいけど、それも親の覚悟の要るところだと思っている」
 氷室も頷いている。
「じゃ、読み合わせにもどろう。シンガポールのデータセンターに仕掛けられたトラップは?」
「シンガポール警察当局が調査しました。経路遮断に使っただけで、十二号の情報はまったく別のところにありそうです。それと」
「何だ?」
「十二号を検索していたクドルチュデスの報告です。十二号らしき存在の生々しい痕跡を発見、それがすぐに自動消去されたものの、ファイバー接続で遅延時間が六百ミリセカンドかかったそうです」
「経路遮断機を使いすぎて情報が遅延したのか?」
「その線でも考えたのですが、彼女の調べでは経路遮断の程度は余り高くなかったそうです」
「物理的に距離の離れたところか……宇宙立体区か?」
「そうかもしれません」
 宇宙には多数の人工惑星が存在している。
 人類の六分の一はグリッドを建築と組み合わせた新居住システムによって、宇宙に居住している。
 P-1から始まるコードネームを持ち、限定的な自治権を持っていて、実際には西ロシアと親アジア共同体のアメリカ宇宙軍の二陣営に分かれて浮かんでいる。
 ラグランジュポイント付近と火星・地球軌道間の二つに分散しているが、他にも数は少ないが、他の金星側や土星以遠にも居住は行われている。
 その点で、月面開発が大きく進み、第二の母星としての地位を持ちつつあるのだ。
 そこでアジアリフト・アフリカリフト・アメリカリフトの三つの軌道連絡線はもはや欠くことのできない大動脈である。
 当初の軌道連絡線はカーボンナノチューブのケーブルだけだった。
 軌道上から地球と、宇宙側両方に、遠心力と重力をバランスさせながらのばしていく。
 そして、それが地上に達し、軌道連絡線は完成であった。
 だが、それは終わりではなく始まりだった。
 増大する宇宙との往復貨物に、同じ軌道連絡線の隣に一本、また一本と追加され、さらにリニアモーターで上下するゴンドラの代わりに大容量リフト線列車が走り、そして現在ではテロ対策の幅一キロのシールド防護層の内側に六本平行にはしったカーボンナノチューブ製の柱が、リフト線列車やゴンドラの支えとして使われている。
 遠心力で地上からの重力に対抗して塔としての形を保っているので、もし破断されるようなことがあれば、地上に落ちる部分と、宇宙の彼方へ放り出される部分に分かれると計算されているが、しかし未だにそんなことは起きていない。
 軌道連絡線の発展と共に、宇宙都市と宇宙基地が次々と生まれている。
 しかし、その宇宙都市建設は人工生命・虚体によって制御されているのだが、人工生命は悪用されることもある。そこで犯罪も起き、それを理由に人類自身も地球にとどまるべきだという考えがあり、サミットのたびにデモ活動をやって問題となっているのだ。
「宇宙都市の調べはうちの庁でも仕切が違うからな。まあいい。クドルチュデスが動きやすいように話を進めておこう」
 早瀬の言葉に、鳴門は頭を下げた。