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CVT単体での効率はMTの4割でしかない

 ずいぶん前からクルマのカタログを見ると、スペックに「主要燃費向上対策」という項目があることを知っている人は多いと思う。その内容としては可変バルブタイミングや電動パワーステアリングがあり、そして「自動無段変速機(CVT)」が挙げらる。今回のテーマであるCVTは、まさしく燃費向上の切り札となる技術であり、とくに初代フィットがデビュー時に23km/Lという脅威の燃費性能を実現したキーテクノロジーでもあった。
 ところで「CVTは機械ロスが大きいので燃費に優れるというのはウソ」という主張を見かけることもある。たしかにミッション単体でみれば、それは事実。大雑把に比較すれば、MTの効率を10とすると通常のATが6、CVTが4といったイメージだ。こうした効率の悪さは、基本的に「高圧の油圧」を必要とするCVTの仕組みにある。
 なぜ油圧を要求するのか、それはCVTの仕組みを考えれば明白だ。CVTの構造を単純化すれば、向かい合って置かれたプーリーに金属製ベルトを渡したものとなっている。それぞれエンジンとつながるドライブプーリーとデフ(タイヤ)とつながるドリブンプーリーと呼ばれ、ドライブとドリブンのプーリー幅を変えることで、連続可変の無段変速を実現している。それゆえシフトショックのないスムースな走りができるわけだが、プーリー幅は油圧でコントロールされる。それもエンジンのトルクに対応するにはかなりの高圧が必要となる。それが単体での効率を悪化させている主な原因だ。
 またCVTは最近発展した技術というイメージもあるが、かなり古くからある技術だ。なにしろスクーターに使われている変速装置はまさしくCVT。もっとも原付スクーターに使われるシステムはプーリー幅の制御はスプリングで、ベルトもゴム製の乾式ではあるのだが基本的には同じ仕組みである。ときどき「CVTの走りは不自然だ」という意見も聞くが、スクーターの変速に対する不満は少ない。いや不満があっても「こういうものだ」と捉えているのだろう。そう考えるとCVTに不満を持つのは慣れや先入観に他ならないことがわかる。
 さて四輪車では、ホンダ初のCVT搭載車はミラクルシビックであったが、よりCVTの性質を明確に打ち出したのが1996年に誕生したロゴであろう。その『ハーフスロットル高性能』というキャッチコピーが示したものは常用域での高性能を実感できる走りである。その点で、ホンダマルチマチック(CVT)が示したシームレスな加速性能は斬新であり、また低・中回転域でのトルクを重視したエンジン特性とあいまって当時としては優れた燃費性能(18.0km/L)を実現していた。そうしたキャラクターはジムカーナ最強マシン・シティの後継モデルとしてロゴを見たユーザーを失望させたかもしれないし、またロゴ自体も成功したとは言いがたい。だが『ハーフスロットル高性能』という考え方に、フィットの、そしてホンダマルチマチックの源流があるのは間違いない。
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統合制御で効率アップそれがホンダの解答だ

 ミッション単体としてみればけっして効率に優れるわけではないCVTだが、なぜ「主要燃費向上対策」としてカタログに掲載されるのだろうか? なにしろCVTが燃費向上対策になるということは、ホンダが勝手にうたっているわけではなく、国土交通省が認め、すべての自動車メーカーのカタログに共通して載っているのだ。
 一般的にはCVTは変速比を連続可変することでエンジンの効率のよい部分(燃料消費率に有利な領域)だけを使って走ることができるといわれている。実際、燃費向上対策としてCVTが挙げられるのも、こうした特性によるものだ。もっとも逆に考えれば、MTやATであっても燃料消費率の低い領域だけを使って走ればCVTと同じように燃費向上は可能であり、その時点でミッション単体としての効率で劣るCVTは「実は燃費向上要素ではない」と考えてもおかしくない。実際、CVTの燃費性能を机上の空論として批判する人の多くは、CVT単体での効率の悪さをターゲットとしていることが多い。
 しかし、そんなことはCVTを市販化した直後からホンダは重々承知していた。たとえば1999年に本田技術研究所によって発表された「エンジン・CVT統合制御システムの開発」という論文によれば、結論としてCVTが燃費性能に優れるのは『変速比連続可変特性によるBSFC(正味燃料消費率)のより小さい運転による効果というよりはむしろ、駆動力伝達系での損失仕事をATに比べて非常に小さくできるという特性』のおかげだという。そうした特性を引き出すためにはエンジン単体での効率だけを考えるのではなく『トランスミッションなど駆動力伝達系での損失仕事の低減』もあわせて考える必要があると結んでいる。そのためのキーとなる技術が『ドライバーの要求に足して、燃料消費率を最小とするエンジントルク・変速比を求める演算アルゴリズム』である。
 つまりエンジン、ミッション単体で効率を考えるのではなく、パワートレーン全体として状況に応じて最適な制御をすることで燃費向上につながるというわけだ。そうした考え方は実際に発展している。たとえばステップワゴンに採用される「ECONモード」はスイッチを押すとエンジン、CVT、エアコンの協調制御を行うことで実用燃費の向上を狙ったシステム。まさにボンネットの下に収まるパワートレーン(補機類も含む)全体をマネージメントすることで燃費を向上させるという仕組みは実現しているのである。
 またホンダCVTの進化としてはクラッチ部分の変更にも注目しておきたい。ホンダマルチマチックと名づけられていた時代(ミラクルシビックから初代フィットまで)のCVTはドリブンプーリー側に湿式多板クラッチを使うタイプで、ドライブプーリーを常に回しておくことで停車時であっても常に変速制御が可能だったのが特徴。一方、ステップワゴンやストリーム、新型フィットなどに採用されたCVTはドライブプーリー側にトルクコンバーターを使っている。クラッチ機構としてトルクコンバーターを採用している理由は、ひとつに大トルクへの対応(2.4Lエンジン)という面もあるが、メインはトルク増幅効果による加速性能の向上が挙げられる。もともとCVTは発進加速を鋭くしようと発進時のギア比を低くするとギクシャクする傾向にあった。それをトルクコンバーターによってカバーできるのがメリット。また巡航時にギア比を低くする効果や滑らかなクリープを発生させることができるなどメリットは多い。そのトルク増幅効果により加速性能を鋭くできるのが特徴だ。さらにトルク増幅効果を前提に、ギア比を高く(エンジン回転を低く)することができるのも燃費向上には効いている。またトルコンのロスについてはロックアップ領域を広くすることでカバーしている。

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