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10.救世主との出会い

電話の向こうの彼はとても冷静で暖かかった。

1度は信頼出来ずに、彼の忠告を聞き入れなかった私に彼は何の拘りもなく、全てを受け止めてくれた。

 

「明日、東京ですが勉強会があるので出席しませんか?その上で私を信用してもらえるなら勉強会後に詳しい話を聞きますから。」

 

何も考えずに「お願いします」と即答した。

 

何十年ぶりに電車に乗って東京に出掛けた。緊張と知らない場所に行く事に対して慎重になり過ぎた結果、2時間前に会場に着いてしまった(笑)


電車の中では何も考えなかったのだが、ココに来て時間の余裕もあるせいか、色々な事を考え始めた。

 

ヤクザもんだったらぶん殴って逃げよう。

 

言葉巧みに騙す新興宗教だったら?

 

借金まみれのヤツを新興宗教が狙うワケねーか。

 

新手の詐欺だったら?

 

ソレも金が無いヤツを狙うワケねーだろ。

 

それよりも、もしコレでもダメだったらどうする?

 

そうなったら一家で夜逃げしかねーか・・・・


緊張と不安が余計な時間を数倍にも長く感じさせた。


勉強会まで1時間もある。

 

時計を見て顔を上げた時、一人の男が近寄ってくるのが目に入った。


「山本さんですか?吉田猫次郎といいます」


目の前に現れた男は、ヤクザもんでもチンピラでもなかった。

 

どう見てもオタクっぽい、とっちゃん坊やにしか見えなかった。

 

「はい。山本です。今日はご招待頂き、ありがとうございました」


「勉強会前にお話をと思ったのですが、緊急で対応しないといけないコトが出来てしまったので、予定通りに勉強会後にお話聞きますから」

 

彼はそういうと、彼の相談者で私と同じ経験をされたk氏を紹介し、勉強会までk氏と話してくれと言って足早に去っていった。

 

「猫さんは緊急の闇金相談の為に電話しに行ったんだ」

 

k氏も猫さんと違う系統のオタクっぽい人だった。

 

k氏も私や猫さんと同じ借金のフルコースの経験者で、闇金以外はまだ解決していないとのコトだった。

 

「僕もたった3ヶ月前に相談に行ったんだ。だからアナタと大して変わらないよ」

 

k氏は自身の体験した闇金とのバトルを詳細に話してくれた。ソレは本当にリアルで、壮絶な体験談だった。

 

「でもね、今は闇金とは縁が切れたし、手形・小切手に追われる日々に怯えなくて済むだけで天国のようだよ」

 

彼の話は決して生やさしいモノではなかった。ソレをたった3ヶ月後には笑って人に話せるなんて・・・ソレも見ず知らずのたった数十分前に初めて会った男に。

 

勉強会の参加者の殆どが既に猫さんにアドバイスをもらっている人達で、近況報告と質問が多かった。

 

私と同様に初めて勉強会に参加した人もいたが、私のように何もかも初めてというヤツは居なかった。

 

勉強会は彼の講義などななく、参加者が順番に自己紹介がてら債務状況や抱えている悩み、質問などをして、それに猫さんやベテラン相談者が答えていくという方式だった。

 

私は新参モノというコトもあり、一番最後だった。人の話を真剣にこんなに集中して聞いたのは初めてだった。

 

私の番になり、一気に自分の仕事と債務状況を話した。自分でも信じられないくらい、一気にそして今まで誰にも話せなかった事に対しての反動のように。

 

この姿が後に常連参加者の話題となり、「機関銃のように喋りまくった」という事から、私のニックネーム(HN)「重機関銃」が決まった。


勉強会後の懇親会にも参加させてもらい、猫さん始め、参加者の先輩達の話にも勇気づけられ、私の気持ちは完全に固まった。

 

話が盛り上がり、終電を逃した私は、参加者と夜通し話し、始発電車に乗って家に帰った。


父と家族全員に昨日の出来事を話し

 

「俺は彼らのように借金を自力で整理する。そして心の底から笑うんだ」


渋る父を強制的に説得して、私の債務整理との戦いが始まった。


11.闇金との戦い方

債務整理の手始めは闇金。

 

金利の高い順番に手をつけていかないと、一遍にでは手が回らないからだ。

 

闇金は出資法違反(年利29.2%上限)であり、刑事罰対象になる。

 

また、民法の不法原因給付の解釈であれば、最初から違法行為目的で支払った(受け取った)金員は元金すら返却しなくても良いという事になる。

 

この2点から「オメーは犯罪者だから警察に突き出せれたくなかったら、手形・小切手返して借金チャラにしろ」と言えば良い。


まずは、相手がどこの誰だかを出来るだけ調べる。これは相手からもらった名刺に書かれた情報などを貸金業登録を調べられるHPで照会するのがベスト。

 

全ての情報が名刺通りのケースもあるし、名前は違うが住所や電話電話番号が同じというケースもある。

また、どのデーターも該当なしと出た場合は、無登録業者である。

 

次に業者別に一番最初の取引から時経列順に受け取ったお金・金利として払ったお金・返したお金を表にする。

 

これによっていくら借りて、いくら支払ったのか一目瞭然となる。

 

以下、私が当時使った闇金に出した書面。通称「ご通知」。これに貸し借りの一覧表を添付して相手に送付する。

 

 

債権者 
 〒170-0013 東京都豊島区西池袋0-00-00
 ウリウリファイナンス 御中 
 電話(03)5956-0000
 代表者 金 ○○ 殿 
 登録番号 東京都知事(1)17000号

 

債務者(通知人) 
 〒000-0000 神奈川県横須賀市ヤンキー町4-6-49
 有限会社 山本不動産
 代表取締役 山本  ほか社員一同
 電話(00)000-0000

 

御通知


毎度大変お世話になっております。

さてこのたびは、弊社の資金繰り状況が極めて悪化してきたため、今後のお取引について御相談させていただきたく、このような文書を送付させて頂きました。 大変恐縮ですが、最後までお読み頂き、ご検討くださいますようお願い申し上げます。


私共は、ウリウリファイナンス様より、平成14年2月13日に金120万円(利息先取り20万円、手取り額100万円)を借り受け、その後5月13日に100万円(利息先取り17万円、手取り83万円)を、合計で2口、計183万円を借り受けました。

 

これに対し、私共は、平成14年2月22日から5月1日までに、計9回に分けて、合計で、約3ヶ月の間に、金280万円を返済してきました。 

 

これは、言うまでもなく、出資法で定める上限金利をオーバーしています
実際の法定金利に沿って計算すれば、受け取り金額183万円に対する年利29.2%の金利を日数分お支払う計算になりますので、法定の上限利息は約13万5千円となります。しかし私共は、現時点ですでに受け取り元金プラス97万円のお利息をお支払いしている計算になりますので、出資法の上限金利と比較して、約83万5千円の過払いが生じていることになります。

 

つきましては、私共社員一同からのお願いなのですが、ここで債権債務ゼロの和解をお願いしたく、御通知させていただきます。同時に、貴殿にお預けしてある全ての小切手の返却を求めます。 (過払い分のお利息の返還請求などは致しません。あくまでも債権債務ゼロでの和解を求めます。)

 

貴殿から見れば、このようなお願いは大変図々しいと思われるかもしれません。 しかし、そもそもこの借り入れをした当時は、法定利息に関する知識や貸金業規制法などに関する知識を全く持ち合わせておらず、ただ言われるままに法外な金利での借り入れを受けてしまったものであります。 私共家族としては、借りたものは返すのが当たり前だと認識していますが、上に述べさせて頂いたとおり、計算上は既に元金と法定金利を十分返済したことになっておりますし、法外な金利分に関してはお支払いする余力が全くありませんので、この件につきましてご理解頂けない場合は、やむをえず、民事訴訟などによって法的にきちんと話し合いさせていただきたく存じます。繰り返しますが、借りたものを返すのは当たり前、しかし、法外な金利はお支払いする余力はありません。

 

ちなみに、弁護士に相談したところ、貴殿が通知人に送金した元金は、上記のような不法の利益を得るために交付された金員ですから、厳密にいえば、民法708条により、不法原因給付として、本来返還義務のないものであります。

 

(参考: 民法708条本文: 不法ノ原因ノ為メ給付ヲ為シタル者ハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス)

 

以上ご勘案の上、どうかここで債権債務ゼロの和解、および小切手や重要書類の変換をお願い致します。 

 

もし万一、和解に応じて頂けない場合、あるいは私共社員家族などに違法な督促があった場合、あるいは小切手の返却が無かった場合、あるいは小切手を取り立てに回すようなことがあった場合には、やむをえず、貴殿の貸金業登録、代表者、銀行預金口座、電話契約名義、事務所の賃借名義などを調査の上、出資法違反により、刑事告発をするしかありません。 またこの場合、83万5千円の不当利得返還請求訴訟だけでなく、貸金の数百倍の金額の慰謝料請求権が発生することも考えられますので、ご注意下さい。

 

このような文書をお送りするのは大変失礼かと存じますが、私共としても、生きていくために必死になって考え抜き、何人かの専門家に相談した結果の結論です。 貴殿には大変感謝しておりますが、会社を存続するためにはこのようなお願いをするしか方法がありません。どうかご理解くださいますよう、重ねてお願い申し上げます。

以上

 

平成14年5月19日
有限会社 山本不動産 代表者および社員一同より


12.闇金との決戦

闇金8社の内、4社が過払いで、1社がゼロ、3社に残債務が残っていた。

 

早速、猫さんにアドバイスを貰い、例のご通知を作った。

 

過払い4社には例のご通知を送り、債務ゼロには内容を少し変えて債務ゼロでの和解の通知を出した。

 

再計算しても残債務が残る3社には「今まで支払った金額を元金充当した残りの債務を少額の分割支払いで」という内容に変えて通知をした。

 

8社全てに一気に郵送したので、相手からの反応は一気に来ると予想されたが、直ぐに反応して来た業者は2社だった。

 

「こんな事言われてもウチは飲む気がないよ」

 

「そこに書いてある通りに法律的には払い過ぎているので、返せとは言わないからゼロ和解して欲しい。条件を飲んでくれなければ警察に行くだけだよ」

 

「本当に苦しいの?」

 

「本当だよ。オタクと同じ業者が他にも7社あるし、銀行や商工ローンだってあるから」

 

「そうか・・・・本当にゼロ和解したら警察に行かないか?」

 

「こっちも借りた時は本当に助かったから、ゼロ和解して預けてある小切手を返してくれたらソレでいい」

 

「分かった。和解書送るからそれに印鑑押して返してくれ。小切手は今日中に郵送する」

 

「どうもありがとう」

 

もう1社も同じような感じだった。

 

電話で話した時間は20分程度。たった20分の電話で200万の借金が消えた。

 

他の過払いの1社なんぞは、あまりにも何も言ってこないから、こちらから電話をしたら

 

「良く分かりました。ウチはこれでいいですから」

 

っと、丁重な口調でゼロ和解に応じた。こちらは5分も掛かっていなかっただろう。

 

ゼロ和解1社が少し抵抗したが、翌日にはゼロ和解に応じてくれた。

 

残債務が残る3社は全てが

 

「今日じゃなくてもいいからもう少し話し合おう。もう無理な取り立ても手形を回すこともしないから」

 

と、交渉の土台に乗ってくれた。


吉田猫次郎、恐るべし。

 

私は人生で初めて、本気で人を尊敬し、心から感謝した。


 

朝から始めて時間は既に夕方だった。外に出てたら本当に綺麗な夕日が目に入った。

 

こんなにはっきりと夕日を眺めたのは久しぶりだった。

 

無意識には感じていたのだろうが、心にそんなそんな余裕が無かったのだろう。

 

真っ暗な暗闇の先から小さな光が見えた。まだ本当に小さな光だけど、それは今までに見たこともない明るさだった。


 


13.商工ローンとの戦い

闇金が終わっただけで、まだ多くの問題が残っている。

 

次は商工ローン2社だ。

 

両方とも手形を預けてあるので、これも早急に対応しないと期日が来る。

 

当時は商工ローン相手に、利息制限法での引き直しによる過払いを請求するなんて弁護士でさえ、逃げ出す案件だった。

 

ただ、「腎臓売れ!肝臓売れ!」の事件から、悪質な商工ローンに対して、極少数だが有志の弁護士達が立ち上がっていた。

 

私は猫さんの知り合いの弁護士から、商工ローン対策弁護団の資料を譲り受け、ソレを元に過払い訴訟に踏み切る事にした。

 

ウチはこの2社とも、9年のつき合いがある。

 

コレだけの取引期間があれば過払いの可能性は十分あった。

 

しかし、当時の商工ローンは過払いを真っ向から否定していた。

 

よって、今のように商工ローンから取引履歴を取り寄せる事は不可能だった。

 

だから、自身で9年間の履歴を利息制限法に引き直し、訴状を書かなければならない。


ラッキーだったのは父の唯一の長所である几帳面という事だった。

 

この2社との取引書面をご丁寧に全て取って置いてあったのだ。

 

ただ、他の領収伝票と一緒に保存されているので、まずはコレを集めて時経列順に並べる作業が大変だった。

 

そしてソレを利息制限法での引き直し計算をし直す為に、専用ソフトに入力していく作業も、単純作業だが9年分はさすがに堪えた。

 

仕事が暇とはいえ、日中は現場で仕事をして夕方~夜に入力するという作業が続いた。

 

過払いにはなっているだろうと予測は出来ていたけど、それがいくらであるかはっきりしないと次の一手が打てないのである。

 

そして、利息制限法の金利に引き直した結果、驚く数字がPC画面に映し出された。

 

S社は過払いが1200万円。
N社の過払いは1400万円。

 

今現在のS社、N社への債務残高は各1000万円づつ。

 

2000万円借金があると思ったいたら、2600万円も払い過ぎていたのである。

 

この過払いには、私が夢見ていた、最高なモノも付いていた。

 

過払いだという事は、債務が存在しないという事でもある。

 

債務が無いという事はソレの連帯保証も無くなるという事になる。

 

この2社の借入に私と父・母の他に弟、義理父、取引先の社長、父の知人が連帯保証人となっていた。

 

正直、過払い金なんてどうでもよかった。

 

私の一番の望みは、私と父以外の連帯保証人を外す事だった。


私は猫さんと作戦を練って、まずは特定調停でこの2社の動きを停めて、その間に訴状を作成して一気に過払い返還請求訴訟(不当利得返還請求訴訟)に踏み切る計画を立てた。

 

コレは手形の期日が迫っていて、訴状を作成する時間がないので、その時間稼ぎをする為に特定調停を利用し、特定調停の事前措置が通れば特定調停期間中は手形を取り立てに回せなくなるという法律を利用する為だった。

 

ただし、この方法は猫さんも使った事がなく、知り合いの弁護士も理論的には可能だが、実績が少ない為、ある意味、やってみないと分からない状態だった。

 

しかし私には考えている時間が無かった。

 

闇金を撃破した勢いも手伝って、商工ローン2社に対して東京簡易裁判所へと特定調停を申請した。

 

東京簡易裁判所を選んだのは、当時、特定調停自体が始まったばかりで、経験件数の面で東京簡裁を選んだのだ。


闇金は短期間でケリが付いたが、商工ローンは長い戦いになると覚悟はしていた。

 

しかし、この戦いが非常に困難でこれほどまで長い戦いにになるとは思ってもいなかった。

 


14.特定調停と事前措置

特定調停では過払いは請求しない。

 

過払いが認知された今では特定調停でも過払いを請求出きるようになったが、当時は特定調停での過払い請求は認めていなかった。

 

よって、私は少額での分割支払いの請求にした。相手に過払い請求をするという事を隠したかったのと、相手を特定調停の土俵に乗せないと時間稼ぎが出来ないからである。

 

特定調停は「調停」という名の通り、あくまでも双方の話し合いで決める事で、それを裁判所(調停委員)が仲介に立つというシステムだ。

 

よって、相手が特定調停を拒否する事も可能なのだ。

 

そして、特定調停を申請した債務者を債権者は許さない。

 

直ぐに回収に入り、連帯保証人へと手を延ばす。

 

また、手形を渡してある商工ローン相手には特定調停の事前措置という申請もしないといけない。

 

コレは特定調停中に調停を妨げる可能性がある取り立てを裁判所命令で停止出来るというシステム。

 

コレに背いても10万円程度の罰金で済むのだが、金融機関にとって、裁判所の命令に背くという事は、最低でも営業停止の行政処分対象になる為、効き目は十分にある。

 

ただ、事前措置による手形の停止は猫さんも初めての経験で、かなりハードルが高いと聞かされた。

 

しかし迷っている暇は無かった。

 

書類を用意し、霞ヶ関にある東京簡易裁判所へと向かった。

 

特定調停の申請は簡単に済んだが、やはり事前措置は直ぐにOKが出ず、翌日に裁判官との面接後に結果が出るとの事だった。

 

最初の手形の期日は4日後だった。

 

翌日も霞ヶ関まで片道2時間を掛けて、裁判官との面接に望んだ。

 

色々と壁はあったが、何とか裁判官をねじ伏せて事前措置を認めてもらった。

 

帰ってからS社とN社に特定調停の受理書と事前措置の受理書をFAXした。

 

コレは裁判所から書面が相手に届くタイムラグをなくす為で、手形の期日が迫っている対策として必要だった。

 

両社の対応は紳士的だった。「裁判所で会いましょう」という感じで、少し拍子抜けした。

 

私は戦闘開始と共に、つかの間の休息が出来ると安堵した。


しかし、その安堵を恐怖に変える出来事が起きた。


事前措置で止めたはずのN社の手形が取り立てに回ってきたのだ。

 

「オメー、手形は止められるんじゃなかったのか?オマエが大丈夫だからと言ったから信じてやったのに」


父は狼狽え、私に罵声を浴びせた。


「どうにかしろ!不渡りになったらオマエのせいだ」


父も納得しての特定調停であり事前措置だった。


年のせいもあるが、全ての手続きや猫さんとの打ち合わせも私に任せっきりで

 

「俺は年だから、良く分からない」

 

っと、私が仕事終わりから始める書面作りも手伝うそぶりも見せず、毎日18時には家に帰っていた。

 

そんな身勝手な行動も、人任せな言動も、私は受け入れていた。

 

そもそも商工ローンも銀行も私が連帯保証したのは、私が経営の実権を握る前の事で

 

「ここにサインと実印を押せ」

 

の一言だけで、数億円の連帯保証人にさせれた。

 

それでも、私はコレを自分の借金だと思い、自分で何とかしようと考えていた。

 

ソレは父ではなく、私を信用して連帯保証してくれた義理父や取引先の社長に迷惑を掛ける事は出来ないという一心だった。

 

そんな思いも知らず、父は私に責任だけを押しつけ、成功だけを自身の功績としていた。

 

しかし、私は怒って放り投げる事は出来なかった。

 

私を信じてくれた人達の為に。


直ぐにN社に電話をし


「事前措置で手形は取り立て出来ないはずだけど」


っと、抗議をした。


「すいません。こちらの手続き上の関係で手形が回ってしまいました。今、依頼返却の手続きを取っていますから、午後には下げられると思います」

 

後で分かったのだが、コレはN社恒例の脅しだった。

 

「特定調停なんてやったって無駄だよ」

 

っという、手形という零細企業にとっては命を握られている最強の武器を持っているんだぞという脅しだ。


狼狽える父に説明をして、私は現場周りの為に外へと出た。

 

この時、既に私は父と同じ空間にいる事が耐えられなかった。

 

爆発しそうな気持ちを押さえる為には、彼(父)の顔を見ない事が唯一の方法だった。

 



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