9.不渡り寸前。闇金の回収方法
借金病とは恐ろしいモノだ。
頭では既に返せないと分かっているのに、借金返済日の前日になると
「他に貸してくれるトコロはないか?」
と、探し回る。
決して「仕事をしてソレで返そう」とは思いもしない。
冷静になれば誰でも分かることが、多額の借金から守りたいモノがあると冷静な判断が出来なくなってしまう。
自分だけなら諦めが付くのだろうが、第三者の連帯保証人がいるとなれば、そう簡単に割り切る事は出来ない。
自分の借金で他人の生活まで脅かしてしまうのだから、何が何でも他人に迷惑をかけないようにと、無理をしてしまう。
この瞬間に借金病の菌が心に入り込む。
折角の救いの蜘蛛の糸を掴まずにスルーした私は、借金病の末期になっていた。
4件だった闇金も1ヶ月後には倍の8件に膨れ上がり、闇金からの総借入額も1000万円になってしまった。
8件もの闇金があると、ほぼ毎日期日である。
ジャンプ金だけでも納めようとしても、最低毎日、20万円は必要になり、1週間だとジャンプ金だけでも200万円が飛んでいく。
それでも目が覚めずに9件目の闇金に手を出した時に事件は起きた。
翌日が期日だという事で、新規の闇金業者を事務所に呼んで、お決まりの書類を見せている時であった。
当座預金がある銀行から手形が取り立てに回ってきて、当座の現金が足りないという事だった。
金額と手形番号を確認すると明日期日の闇金業者に渡したモノだった。
父はバタバタとし始め、闇金業者に電話した。
「明日じゃなかったのか?」
「今日ですよ。昨日連絡なかったから回しちゃいました」
「今日は無理だから手形を依頼返却してくれ。明日ジャンプ金支払うから」
「今日、ジャンプ金振り込んで貰わないと、依頼返却は出来ないですよ」
「今日は無理だ。頼むから明日まで待っててくれ。このままじゃ不渡りになってしまう」
「上と相談してからまた電話しますから」
電話を切った瞬間に新顔闇金が
「今の電話、他の業者から手形が回って来たの?隠しても無駄だから正直に言ってよ」
若造とはいえ、抜け目のないヤツだった。
「兎に角、今日は無理って言えば相手は依頼返却するから大丈夫。だけど、ウチはコレ聞いちゃったらもう貸せないからさ。それに電話で確認したらウチの系列業者から借りてるよね?ウリウリファイナンスから借りてるでしょ?」」
父が電話している間に外で仲間に確認を入れていたようだ。
「ウリウリさん今からここに来るっていうから、話聞いてもらいなよ。色々と相談に乗ってくれるからさ」
父の顔色が変わり
「それって取り立てに来るって事か?」
「取り立てにきたってお金無いでしょ(笑)でもまぁ車とかは持って行くとは思うけどね」
それは十分取り立てだと思うのだが。
1時間後にウリウリファイナンスが来た。それも大勢(6人)
「回ってきた手形はどうされました?」
身なりは思いっきり闇金だが、口調はとても紳士的だ。
「なんとか依頼返却してもらった」
「それは良かったですね」
ウリウリ君が来る間、手形を回してきた闇金と電話で交渉して、明日ジャンプ金を支払うことで依頼返却に応じてもらった。
「んで、ウチは貸したばかりでして、まだ1回も期日来てないんですよ。その状態でこんな事を聞かされてしまうと、普通だったら即回収なんですけどね。調べたらウチの系列系の業者が古くからお付き合いさせてもらっているという事ですので、無理な取り立てはしないようにと上から言われているんです。」
最初に闇金から借りてからもう1年以上経つ。
ソイツらが同系列であれば、ウチは上客だ。
「でも、社長。このまま何も保全しないで帰る訳には行かないんで、車預からせて下さい。乗用車ありましたよね?」
闇金から借りる時は、所有している車の車種やナンバーを書かされるので、誤魔化しようは無い。
「その変わりに、30万円貸しますよ。コレと前にお貸しした50万円で合計80万円が元金となりますけど」
「ありがとう。車は持って行ってくれ。本当に助かるよ」
父は礼まて言って車を差し出した。
明日になればこの30万円は瞬間的に消えてなくなる。
父は笑顔で
「良かったなぁ。普通なら貸すどころか身ぐるみ剥がされるところだった」
何言ってるんだ、このオヤジは?
闇金に車持ってかれているのに良かったって何だ?
何で、車持ってかれているのに笑ってるんた?
父のこの異常な行動に私は一気に目が覚めた。
何を言っているんだ?闇金から金借りて良かったって何だ?
車まで持ってかれているのに良かったってなんだ?
そもそも明日以降の支払いはどうするんだ?
もう金を用意する力なんて全くない。
つーか、もう限界だ。
毎日、こんな調子で借り続けて、それで利息だけ支払い続けたって、借金だけ増えるだけで何も変わりはしない。
いや、借金が増え続けるからこのままだと毎日、終わりのない地獄の底へと引きずり込まれていく。
私の借金病はココで回復し始めたようだ。
人は目イッパイ、地獄を経験すると目が覚める瞬間があるのかもしれない。
その日の夜。私は携帯電話に登録した彼の電話に掛けた。
もう一度、蜘蛛の糸を垂らしてもらう為に。
10.救世主との出会い
電話の向こうの彼はとても冷静で暖かかった。
1度は信頼出来ずに、彼の忠告を聞き入れなかった私に彼は何の拘りもなく、全てを受け止めてくれた。
「明日、東京ですが勉強会があるので出席しませんか?その上で私を信用してもらえるなら勉強会後に詳しい話を聞きますから。」
何も考えずに「お願いします」と即答した。
何十年ぶりに電車に乗って東京に出掛けた。緊張と知らない場所に行く事に対して慎重になり過ぎた結果、2時間前に会場に着いてしまった(笑)
電車の中では何も考えなかったのだが、ココに来て時間の余裕もあるせいか、色々な事を考え始めた。
ヤクザもんだったらぶん殴って逃げよう。
言葉巧みに騙す新興宗教だったら?
借金まみれのヤツを新興宗教が狙うワケねーか。
新手の詐欺だったら?
ソレも金が無いヤツを狙うワケねーだろ。
それよりも、もしコレでもダメだったらどうする?
そうなったら一家で夜逃げしかねーか・・・・
緊張と不安が余計な時間を数倍にも長く感じさせた。
勉強会まで1時間もある。
時計を見て顔を上げた時、一人の男が近寄ってくるのが目に入った。
「山本さんですか?吉田猫次郎といいます」
目の前に現れた男は、ヤクザもんでもチンピラでもなかった。
どう見てもオタクっぽい、とっちゃん坊やにしか見えなかった。
「はい。山本です。今日はご招待頂き、ありがとうございました」
「勉強会前にお話をと思ったのですが、緊急で対応しないといけないコトが出来てしまったので、予定通りに勉強会後にお話聞きますから」
彼はそういうと、彼の相談者で私と同じ経験をされたk氏を紹介し、勉強会までk氏と話してくれと言って足早に去っていった。
「猫さんは緊急の闇金相談の為に電話しに行ったんだ」
k氏も猫さんと違う系統のオタクっぽい人だった。
k氏も私や猫さんと同じ借金のフルコースの経験者で、闇金以外はまだ解決していないとのコトだった。
「僕もたった3ヶ月前に相談に行ったんだ。だからアナタと大して変わらないよ」
k氏は自身の体験した闇金とのバトルを詳細に話してくれた。ソレは本当にリアルで、壮絶な体験談だった。
「でもね、今は闇金とは縁が切れたし、手形・小切手に追われる日々に怯えなくて済むだけで天国のようだよ」
彼の話は決して生やさしいモノではなかった。ソレをたった3ヶ月後には笑って人に話せるなんて・・・ソレも見ず知らずのたった数十分前に初めて会った男に。
勉強会の参加者の殆どが既に猫さんにアドバイスをもらっている人達で、近況報告と質問が多かった。
私と同様に初めて勉強会に参加した人もいたが、私のように何もかも初めてというヤツは居なかった。
勉強会は彼の講義などななく、参加者が順番に自己紹介がてら債務状況や抱えている悩み、質問などをして、それに猫さんやベテラン相談者が答えていくという方式だった。
私は新参モノというコトもあり、一番最後だった。人の話を真剣にこんなに集中して聞いたのは初めてだった。
私の番になり、一気に自分の仕事と債務状況を話した。自分でも信じられないくらい、一気にそして今まで誰にも話せなかった事に対しての反動のように。
この姿が後に常連参加者の話題となり、「機関銃のように喋りまくった」という事から、私のニックネーム(HN)「重機関銃」が決まった。
勉強会後の懇親会にも参加させてもらい、猫さん始め、参加者の先輩達の話にも勇気づけられ、私の気持ちは完全に固まった。
話が盛り上がり、終電を逃した私は、参加者と夜通し話し、始発電車に乗って家に帰った。
父と家族全員に昨日の出来事を話し
「俺は彼らのように借金を自力で整理する。そして心の底から笑うんだ」
渋る父を強制的に説得して、私の債務整理との戦いが始まった。
11.闇金との戦い方
債務整理の手始めは闇金。
金利の高い順番に手をつけていかないと、一遍にでは手が回らないからだ。
闇金は出資法違反(年利29.2%上限)であり、刑事罰対象になる。
また、民法の不法原因給付の解釈であれば、最初から違法行為目的で支払った(受け取った)金員は元金すら返却しなくても良いという事になる。
この2点から「オメーは犯罪者だから警察に突き出せれたくなかったら、手形・小切手返して借金チャラにしろ」と言えば良い。
まずは、相手がどこの誰だかを出来るだけ調べる。これは相手からもらった名刺に書かれた情報などを貸金業登録を調べられるHPで照会するのがベスト。
全ての情報が名刺通りのケースもあるし、名前は違うが住所や電話電話番号が同じというケースもある。
また、どのデーターも該当なしと出た場合は、無登録業者である。
次に業者別に一番最初の取引から時経列順に受け取ったお金・金利として払ったお金・返したお金を表にする。
これによっていくら借りて、いくら支払ったのか一目瞭然となる。
以下、私が当時使った闇金に出した書面。通称「ご通知」。これに貸し借りの一覧表を添付して相手に送付する。
債権者
〒170-0013 東京都豊島区西池袋0-00-00
ウリウリファイナンス 御中
電話(03)5956-0000
代表者 金 ○○ 殿
登録番号 東京都知事(1)17000号
債務者(通知人)
〒000-0000 神奈川県横須賀市ヤンキー町4-6-49
有限会社 山本不動産
代表取締役 山本 ほか社員一同
電話(00)000-0000
御通知
毎度大変お世話になっております。
さてこのたびは、弊社の資金繰り状況が極めて悪化してきたため、今後のお取引について御相談させていただきたく、このような文書を送付させて頂きました。 大変恐縮ですが、最後までお読み頂き、ご検討くださいますようお願い申し上げます。
私共は、ウリウリファイナンス様より、平成14年2月13日に金120万円(利息先取り20万円、手取り額100万円)を借り受け、その後5月13日に100万円(利息先取り17万円、手取り83万円)を、合計で2口、計183万円を借り受けました。
これに対し、私共は、平成14年2月22日から5月1日までに、計9回に分けて、合計で、約3ヶ月の間に、金280万円を返済してきました。
これは、言うまでもなく、出資法で定める上限金利をオーバーしています
実際の法定金利に沿って計算すれば、受け取り金額183万円に対する年利29.2%の金利を日数分お支払う計算になりますので、法定の上限利息は約13万5千円となります。しかし私共は、現時点ですでに受け取り元金プラス97万円のお利息をお支払いしている計算になりますので、出資法の上限金利と比較して、約83万5千円の過払いが生じていることになります。
つきましては、私共社員一同からのお願いなのですが、ここで債権債務ゼロの和解をお願いしたく、御通知させていただきます。同時に、貴殿にお預けしてある全ての小切手の返却を求めます。 (過払い分のお利息の返還請求などは致しません。あくまでも債権債務ゼロでの和解を求めます。)
貴殿から見れば、このようなお願いは大変図々しいと思われるかもしれません。 しかし、そもそもこの借り入れをした当時は、法定利息に関する知識や貸金業規制法などに関する知識を全く持ち合わせておらず、ただ言われるままに法外な金利での借り入れを受けてしまったものであります。 私共家族としては、借りたものは返すのが当たり前だと認識していますが、上に述べさせて頂いたとおり、計算上は既に元金と法定金利を十分返済したことになっておりますし、法外な金利分に関してはお支払いする余力が全くありませんので、この件につきましてご理解頂けない場合は、やむをえず、民事訴訟などによって法的にきちんと話し合いさせていただきたく存じます。繰り返しますが、借りたものを返すのは当たり前、しかし、法外な金利はお支払いする余力はありません。
ちなみに、弁護士に相談したところ、貴殿が通知人に送金した元金は、上記のような不法の利益を得るために交付された金員ですから、厳密にいえば、民法708条により、不法原因給付として、本来返還義務のないものであります。
(参考: 民法708条本文: 不法ノ原因ノ為メ給付ヲ為シタル者ハ其給付シタルモノノ返還ヲ請求スルコトヲ得ス)
以上ご勘案の上、どうかここで債権債務ゼロの和解、および小切手や重要書類の変換をお願い致します。
もし万一、和解に応じて頂けない場合、あるいは私共社員家族などに違法な督促があった場合、あるいは小切手の返却が無かった場合、あるいは小切手を取り立てに回すようなことがあった場合には、やむをえず、貴殿の貸金業登録、代表者、銀行預金口座、電話契約名義、事務所の賃借名義などを調査の上、出資法違反により、刑事告発をするしかありません。 またこの場合、83万5千円の不当利得返還請求訴訟だけでなく、貸金の数百倍の金額の慰謝料請求権が発生することも考えられますので、ご注意下さい。
このような文書をお送りするのは大変失礼かと存じますが、私共としても、生きていくために必死になって考え抜き、何人かの専門家に相談した結果の結論です。 貴殿には大変感謝しておりますが、会社を存続するためにはこのようなお願いをするしか方法がありません。どうかご理解くださいますよう、重ねてお願い申し上げます。
以上
平成14年5月19日
有限会社 山本不動産 代表者および社員一同より
12.闇金との決戦
闇金8社の内、4社が過払いで、1社がゼロ、3社に残債務が残っていた。
早速、猫さんにアドバイスを貰い、例のご通知を作った。
過払い4社には例のご通知を送り、債務ゼロには内容を少し変えて債務ゼロでの和解の通知を出した。
再計算しても残債務が残る3社には「今まで支払った金額を元金充当した残りの債務を少額の分割支払いで」という内容に変えて通知をした。
8社全てに一気に郵送したので、相手からの反応は一気に来ると予想されたが、直ぐに反応して来た業者は2社だった。
「こんな事言われてもウチは飲む気がないよ」
「そこに書いてある通りに法律的には払い過ぎているので、返せとは言わないからゼロ和解して欲しい。条件を飲んでくれなければ警察に行くだけだよ」
「本当に苦しいの?」
「本当だよ。オタクと同じ業者が他にも7社あるし、銀行や商工ローンだってあるから」
「そうか・・・・本当にゼロ和解したら警察に行かないか?」
「こっちも借りた時は本当に助かったから、ゼロ和解して預けてある小切手を返してくれたらソレでいい」
「分かった。和解書送るからそれに印鑑押して返してくれ。小切手は今日中に郵送する」
「どうもありがとう」
もう1社も同じような感じだった。
電話で話した時間は20分程度。たった20分の電話で200万の借金が消えた。
他の過払いの1社なんぞは、あまりにも何も言ってこないから、こちらから電話をしたら
「良く分かりました。ウチはこれでいいですから」
っと、丁重な口調でゼロ和解に応じた。こちらは5分も掛かっていなかっただろう。
ゼロ和解1社が少し抵抗したが、翌日にはゼロ和解に応じてくれた。
残債務が残る3社は全てが
「今日じゃなくてもいいからもう少し話し合おう。もう無理な取り立ても手形を回すこともしないから」
と、交渉の土台に乗ってくれた。
吉田猫次郎、恐るべし。
私は人生で初めて、本気で人を尊敬し、心から感謝した。
朝から始めて時間は既に夕方だった。外に出てたら本当に綺麗な夕日が目に入った。
こんなにはっきりと夕日を眺めたのは久しぶりだった。
無意識には感じていたのだろうが、心にそんなそんな余裕が無かったのだろう。
真っ暗な暗闇の先から小さな光が見えた。まだ本当に小さな光だけど、それは今までに見たこともない明るさだった。
13.商工ローンとの戦い
闇金が終わっただけで、まだ多くの問題が残っている。
次は商工ローン2社だ。
両方とも手形を預けてあるので、これも早急に対応しないと期日が来る。
当時は商工ローン相手に、利息制限法での引き直しによる過払いを請求するなんて弁護士でさえ、逃げ出す案件だった。
ただ、「腎臓売れ!肝臓売れ!」の事件から、悪質な商工ローンに対して、極少数だが有志の弁護士達が立ち上がっていた。
私は猫さんの知り合いの弁護士から、商工ローン対策弁護団の資料を譲り受け、ソレを元に過払い訴訟に踏み切る事にした。
ウチはこの2社とも、9年のつき合いがある。
コレだけの取引期間があれば過払いの可能性は十分あった。
しかし、当時の商工ローンは過払いを真っ向から否定していた。
よって、今のように商工ローンから取引履歴を取り寄せる事は不可能だった。
だから、自身で9年間の履歴を利息制限法に引き直し、訴状を書かなければならない。
ラッキーだったのは父の唯一の長所である几帳面という事だった。
この2社との取引書面をご丁寧に全て取って置いてあったのだ。
ただ、他の領収伝票と一緒に保存されているので、まずはコレを集めて時経列順に並べる作業が大変だった。
そしてソレを利息制限法での引き直し計算をし直す為に、専用ソフトに入力していく作業も、単純作業だが9年分はさすがに堪えた。
仕事が暇とはいえ、日中は現場で仕事をして夕方~夜に入力するという作業が続いた。
過払いにはなっているだろうと予測は出来ていたけど、それがいくらであるかはっきりしないと次の一手が打てないのである。
そして、利息制限法の金利に引き直した結果、驚く数字がPC画面に映し出された。
S社は過払いが1200万円。
N社の過払いは1400万円。
今現在のS社、N社への債務残高は各1000万円づつ。
2000万円借金があると思ったいたら、2600万円も払い過ぎていたのである。
この過払いには、私が夢見ていた、最高なモノも付いていた。
過払いだという事は、債務が存在しないという事でもある。
債務が無いという事はソレの連帯保証も無くなるという事になる。
この2社の借入に私と父・母の他に弟、義理父、取引先の社長、父の知人が連帯保証人となっていた。
正直、過払い金なんてどうでもよかった。
私の一番の望みは、私と父以外の連帯保証人を外す事だった。
私は猫さんと作戦を練って、まずは特定調停でこの2社の動きを停めて、その間に訴状を作成して一気に過払い返還請求訴訟(不当利得返還請求訴訟)に踏み切る計画を立てた。
コレは手形の期日が迫っていて、訴状を作成する時間がないので、その時間稼ぎをする為に特定調停を利用し、特定調停の事前措置が通れば特定調停期間中は手形を取り立てに回せなくなるという法律を利用する為だった。
ただし、この方法は猫さんも使った事がなく、知り合いの弁護士も理論的には可能だが、実績が少ない為、ある意味、やってみないと分からない状態だった。
しかし私には考えている時間が無かった。
闇金を撃破した勢いも手伝って、商工ローン2社に対して東京簡易裁判所へと特定調停を申請した。
東京簡易裁判所を選んだのは、当時、特定調停自体が始まったばかりで、経験件数の面で東京簡裁を選んだのだ。
闇金は短期間でケリが付いたが、商工ローンは長い戦いになると覚悟はしていた。
しかし、この戦いが非常に困難でこれほどまで長い戦いにになるとは思ってもいなかった。