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6.闇金の罠

銀行の支払いも商工ローンの支払いも出来ない会社が闇金に借りたのだから、余計に支払いが厳しくなるのは小学生にだって分かる事。

 

だから当然の如く1社も決済なんて出来やしない。

 

それどころかジャンプ金すら用意出来ない。

 

死んでいるにも関わらず動き回っている。

 

そう、まるでゾンビのような会社だ。

 

そんなゾンビ会社に闇金の決済が翌日に近づいた日の朝。

 

前夜に届いた数枚のFAXの中に

 

「即日融資。担保不要」の文字が。

 

これが闇金の追い込み方だ。自分が貸し出した顧客の決済日の前日に仲間の闇金、若しくは系列の闇金にデーターを流し、別な業者を装ってFAXを流す。

 

そこで新規の借り入れをさせ、翌日に決済をされても取引は続けさせる事が出来る。

 

大概の債務者は借入金の一部で翌日のジャンプ金を支払い、残りを他の資金繰りに回す。

 

そうなれば、2口の借り入れが出来上がる。

 

そしてまた10日後には別の業者を装ったFAXが流れる。

 

これを1ヶ月も続ければアッと言う間に闇金地獄の出来上がりだ。

 

さすがにそこまでなれば気がつくだろうって思った人もいるだろうが、何度も言うように既に冷静な判断は出来ない。

 

借金で首が回らないという人は、その呼び方の通りにある一方の方向しか見えなくなってしまう。

 

その唯一見える方向が「どこか貸してくれるところはないか?」という事なのだ。

 

私も父も一方向しか見えない立派な首が回らない破綻者だった。

 

ウチに貸してくれるトコロなんて闇金しか無いと分かっているのにも関わらず、次々と甘い言葉で言い寄って来るヤツらの罠にハマり、2ヶ月後には4社から600万円の借金が出来上がった。

 

もうこれで闇金地獄から抜け出せなくなってしまった。



7.荒んだ生活~蜘蛛の糸発見

闇金から借り続けている間の生活は、誰が見ても正常ではなかった。

 

ガス・電気は何度も停められ、家に入れるお金など無く、財布の中には数百円なんて当たり前。

 

ロウソクの灯りで夜を過ごしたり、車で30分掛かる親族の家に行ってお風呂を借りたり。

 

カップラーメンなど買えないから特売の5食入りのインスタントラーメンで育ち盛りの子供3人の夕食を済ませたり、バン屋さんからパンの耳を貰い、ソレで1週間の食事を賄ったりと、先進国に住んでいる人間とは思えない生活をしていた。

 

それでもなんとか綱渡り的な生活を続けていたが、さすがに肉体的にも精神的にも参ってしまい、ついに最悪の結末を考えることになる。

 

「オレが死んだらいくらになるのかなぁ?」

 

私は自他共に認める楽天家で、どんな難問にぶち当たっても「何とかなるべっ」っと過ごしてきた。

 

そんな私でさえ、自死を考える程、心も体も病んでいた。

 

しかし、その考えは5秒足らずで諦める事になった。

 

そう。生命保険など既に解約していたのである。

 

子供にパンの耳食わしているヤツが生命保険の保険料など払える訳がない。そんな金があったらちゃんとした飯を食わせている。

 

「なんだオレ、死んでもいくらにもならないんじゃん」

 

生命保険を解約していた事が私の命を救った。

 

余りにも貧乏過ぎると逆に死ねないモノなのだ(笑)

 

そしてコレが私の考えを変えるきっかけとなる。

 

「本当に何も出来ないのか?」

 

私は楽天家でもあるが、ややこしい問題に当たるとソレを解読したくなる悪い癖も持っている。

 

友人の家に行き、事情を話してPCを借りて「借金・地獄・倒産」などのキーワードを検索した。

(当時、インターネットが流行り始めた時代でまだ電話回線でジーッコ、ジーッコっと繋いでた(笑)

 

「借金地獄・倒産危機から、自力で脱出する方法」

 

「吉田猫次郎」

 

いかにも自分で作りました的な素人感満載のHP。しかしその内容に私は驚き、そしてのめり込んでいった。

 

そう、彼がHPに載せていた体験記の内容は、借金の額が違うだけで、銀行・商工ローン・サラ金・親戚・闇金っと全てが同じだった。

 

そして借金地獄の底から這い上がる姿を克明に書いていた。

 

本当にこんな事が出来るのだろうか?

 

私は一気に彼の体験記を読んだ後にそう思った。

 

この地獄から解放される方法がココに書かれている。本当にこの苦しみから解放されるのだろうか?

 

私は友人に頼んで、HPを全てプリントアウトしてもらい、家に持ち帰った。

 

深夜に一人でもう一度読み直した。

 

本当にコレで解放されるんだったら。

 

半信半疑のまま、フッと一番最初のページに目がいった。

 

HPのトップページ。

 

「はじめに」と書いてある文章の最後の行。

 

「私にだって出来たのだからあなたに出来ないはずはありません」

 

そうだ。コイツが出来たんだから私にだって出来ないはずはないんだ。

 

この出会いが私の人生の大きな分岐点となる。

 

 

 


8.それでも掴まなかった蜘蛛の糸

私は翌日、ナケ無しのお金で電話料金を支払い、ネット環境を復活させた。

 

そして彼のHPにあった相談窓口的なモノ(記憶が定かではないが、相談フォーム的なモノだった気がする(笑))に状況と携帯電話の番号などを書き入れ、彼からの返事を待った。

 

書き込んだ事で少しテンションは上がっていたのだが、ソレも数時間しか持たなかった。

 

現実はその瞬間も存在していて、資金繰りに奔走する日々が続いた。

 

れから数日経ったある日。

 

その日は翌日に闇金の支払い期日が迫っていて、未完成物件の売り掛け金の前払いをお願いすべく、顧客先に車を走らせていた。本来なら顧客に先払いなんて頼みたくない。

 

しかし背に腹は変えられない。

 

嫌な思いのまま運転をしていた時、携帯電話が鳴った。

 

車を路肩に停めた。電話の主は父親からだった。


「100万円借りれた」

 

どことなくドヤ声の親父の声。

 

「また闇金か・・・・」

 

「仕方がないだろ!それしか貸してくれるところはない!」

 

私の中から数日前の高いテンションは消え去り、再び借金地獄の底に住み着いた住人になってしまった。

 

まぁ、いいか。コレで客に前払いのお願いをしなくて済む。

 

停車した車を再び出す気力を貯めるタメに、たばこに火をつけた瞬間、携帯電話が鳴った。知らない番号だった。

 

私は何も考える気力も無く、電話に出た。

 

「山本さんですか?メッセージ頂いた吉田猫次郎と言います。」

 

あぁ、本当に居るんだ。

 

「闇金4社は大変ですね。でも何とかなるから大丈夫で゛すよ・・・・・・」

 

それ以降の彼の言葉は正直覚えていない。

 

感動や興奮で覚えていないのではない。

 

再び地獄の底の住人から這い上がる気力が失せていたからだ。

 

「はい・・・はい・・・・はい・・・・」

 

私の気のない返事に彼が気づき、ほんのわずかの沈黙の後

 

「急には理解出来ないと思いますので、お父さんと良く話し合ってみて下さい。但し、闇金は1日でも早く対処しないとダメですよ。何かあったら携帯に連絡下さい。」

 

「ありがとうございます。」

 

ボーッとした夢うつつのような時間に感じた。

 

しかし、ソレは現実で、私は彼にちゃんと相談出来なかった事を後悔していた。

 

でも、あの時はただ、翌日の闇金の期日から解放された安堵感の方が上回ってしまった。

 

大事な事を見失ってしまう程、病んでいた。

 

それが天から降りてきた蜘蛛の糸だと気づかずに、自分からソレを掴む事を拒んでしまった。

 

コレがまた更なる悲劇を呼ぶ事も理解出来ないまま。

 


9.不渡り寸前。闇金の回収方法

借金病とは恐ろしいモノだ。

 

頭では既に返せないと分かっているのに、借金返済日の前日になると

 

「他に貸してくれるトコロはないか?」

 

と、探し回る。

 

決して「仕事をしてソレで返そう」とは思いもしない。

 

冷静になれば誰でも分かることが、多額の借金から守りたいモノがあると冷静な判断が出来なくなってしまう。

 

自分だけなら諦めが付くのだろうが、第三者の連帯保証人がいるとなれば、そう簡単に割り切る事は出来ない。

 

自分の借金で他人の生活まで脅かしてしまうのだから、何が何でも他人に迷惑をかけないようにと、無理をしてしまう。

 

この瞬間に借金病の菌が心に入り込む。

 

折角の救いの蜘蛛の糸を掴まずにスルーした私は、借金病の末期になっていた。

 

4件だった闇金も1ヶ月後には倍の8件に膨れ上がり、闇金からの総借入額も1000万円になってしまった。

 

8件もの闇金があると、ほぼ毎日期日である。

 

ジャンプ金だけでも納めようとしても、最低毎日、20万円は必要になり、1週間だとジャンプ金だけでも200万円が飛んでいく。

 

それでも目が覚めずに9件目の闇金に手を出した時に事件は起きた。

 

翌日が期日だという事で、新規の闇金業者を事務所に呼んで、お決まりの書類を見せている時であった。

 

当座預金がある銀行から手形が取り立てに回ってきて、当座の現金が足りないという事だった。

 

金額と手形番号を確認すると明日期日の闇金業者に渡したモノだった。

 

父はバタバタとし始め、闇金業者に電話した。

 

「明日じゃなかったのか?」

 

「今日ですよ。昨日連絡なかったから回しちゃいました」

 

「今日は無理だから手形を依頼返却してくれ。明日ジャンプ金支払うから」

 

「今日、ジャンプ金振り込んで貰わないと、依頼返却は出来ないですよ」

 

「今日は無理だ。頼むから明日まで待っててくれ。このままじゃ不渡りになってしまう」

 

「上と相談してからまた電話しますから」

 

電話を切った瞬間に新顔闇金が

 

「今の電話、他の業者から手形が回って来たの?隠しても無駄だから正直に言ってよ」

 

若造とはいえ、抜け目のないヤツだった。

 

「兎に角、今日は無理って言えば相手は依頼返却するから大丈夫。だけど、ウチはコレ聞いちゃったらもう貸せないからさ。それに電話で確認したらウチの系列業者から借りてるよね?ウリウリファイナンスから借りてるでしょ?」」

 

父が電話している間に外で仲間に確認を入れていたようだ。

 

「ウリウリさん今からここに来るっていうから、話聞いてもらいなよ。色々と相談に乗ってくれるからさ」

 

父の顔色が変わり

 

「それって取り立てに来るって事か?」

 

「取り立てにきたってお金無いでしょ(笑)でもまぁ車とかは持って行くとは思うけどね」

 

それは十分取り立てだと思うのだが。

 

1時間後にウリウリファイナンスが来た。それも大勢(6人)

 

「回ってきた手形はどうされました?」

 

身なりは思いっきり闇金だが、口調はとても紳士的だ。

 

「なんとか依頼返却してもらった」

 

「それは良かったですね」


ウリウリ君が来る間、手形を回してきた闇金と電話で交渉して、明日ジャンプ金を支払うことで依頼返却に応じてもらった。

 

「んで、ウチは貸したばかりでして、まだ1回も期日来てないんですよ。その状態でこんな事を聞かされてしまうと、普通だったら即回収なんですけどね。調べたらウチの系列系の業者が古くからお付き合いさせてもらっているという事ですので、無理な取り立てはしないようにと上から言われているんです。」


最初に闇金から借りてからもう1年以上経つ。

 

ソイツらが同系列であれば、ウチは上客だ。

 

「でも、社長。このまま何も保全しないで帰る訳には行かないんで、車預からせて下さい。乗用車ありましたよね?」

 

闇金から借りる時は、所有している車の車種やナンバーを書かされるので、誤魔化しようは無い。


「その変わりに、30万円貸しますよ。コレと前にお貸しした50万円で合計80万円が元金となりますけど」

 

「ありがとう。車は持って行ってくれ。本当に助かるよ」

 

父は礼まて言って車を差し出した。


明日になればこの30万円は瞬間的に消えてなくなる。

 

 

父は笑顔で

 

「良かったなぁ。普通なら貸すどころか身ぐるみ剥がされるところだった」


何言ってるんだ、このオヤジは?

 

闇金に車持ってかれているのに良かったって何だ?

 

何で、車持ってかれているのに笑ってるんた?

 

父のこの異常な行動に私は一気に目が覚めた。


何を言っているんだ?闇金から金借りて良かったって何だ?

 

車まで持ってかれているのに良かったってなんだ?

 

そもそも明日以降の支払いはどうするんだ?

 

もう金を用意する力なんて全くない。

 

つーか、もう限界だ。

 

毎日、こんな調子で借り続けて、それで利息だけ支払い続けたって、借金だけ増えるだけで何も変わりはしない。

 

いや、借金が増え続けるからこのままだと毎日、終わりのない地獄の底へと引きずり込まれていく。

 

 

私の借金病はココで回復し始めたようだ。

 

人は目イッパイ、地獄を経験すると目が覚める瞬間があるのかもしれない。


その日の夜。私は携帯電話に登録した彼の電話に掛けた。

 

もう一度、蜘蛛の糸を垂らしてもらう為に。

 


10.救世主との出会い

電話の向こうの彼はとても冷静で暖かかった。

1度は信頼出来ずに、彼の忠告を聞き入れなかった私に彼は何の拘りもなく、全てを受け止めてくれた。

 

「明日、東京ですが勉強会があるので出席しませんか?その上で私を信用してもらえるなら勉強会後に詳しい話を聞きますから。」

 

何も考えずに「お願いします」と即答した。

 

何十年ぶりに電車に乗って東京に出掛けた。緊張と知らない場所に行く事に対して慎重になり過ぎた結果、2時間前に会場に着いてしまった(笑)


電車の中では何も考えなかったのだが、ココに来て時間の余裕もあるせいか、色々な事を考え始めた。

 

ヤクザもんだったらぶん殴って逃げよう。

 

言葉巧みに騙す新興宗教だったら?

 

借金まみれのヤツを新興宗教が狙うワケねーか。

 

新手の詐欺だったら?

 

ソレも金が無いヤツを狙うワケねーだろ。

 

それよりも、もしコレでもダメだったらどうする?

 

そうなったら一家で夜逃げしかねーか・・・・


緊張と不安が余計な時間を数倍にも長く感じさせた。


勉強会まで1時間もある。

 

時計を見て顔を上げた時、一人の男が近寄ってくるのが目に入った。


「山本さんですか?吉田猫次郎といいます」


目の前に現れた男は、ヤクザもんでもチンピラでもなかった。

 

どう見てもオタクっぽい、とっちゃん坊やにしか見えなかった。

 

「はい。山本です。今日はご招待頂き、ありがとうございました」


「勉強会前にお話をと思ったのですが、緊急で対応しないといけないコトが出来てしまったので、予定通りに勉強会後にお話聞きますから」

 

彼はそういうと、彼の相談者で私と同じ経験をされたk氏を紹介し、勉強会までk氏と話してくれと言って足早に去っていった。

 

「猫さんは緊急の闇金相談の為に電話しに行ったんだ」

 

k氏も猫さんと違う系統のオタクっぽい人だった。

 

k氏も私や猫さんと同じ借金のフルコースの経験者で、闇金以外はまだ解決していないとのコトだった。

 

「僕もたった3ヶ月前に相談に行ったんだ。だからアナタと大して変わらないよ」

 

k氏は自身の体験した闇金とのバトルを詳細に話してくれた。ソレは本当にリアルで、壮絶な体験談だった。

 

「でもね、今は闇金とは縁が切れたし、手形・小切手に追われる日々に怯えなくて済むだけで天国のようだよ」

 

彼の話は決して生やさしいモノではなかった。ソレをたった3ヶ月後には笑って人に話せるなんて・・・ソレも見ず知らずのたった数十分前に初めて会った男に。

 

勉強会の参加者の殆どが既に猫さんにアドバイスをもらっている人達で、近況報告と質問が多かった。

 

私と同様に初めて勉強会に参加した人もいたが、私のように何もかも初めてというヤツは居なかった。

 

勉強会は彼の講義などななく、参加者が順番に自己紹介がてら債務状況や抱えている悩み、質問などをして、それに猫さんやベテラン相談者が答えていくという方式だった。

 

私は新参モノというコトもあり、一番最後だった。人の話を真剣にこんなに集中して聞いたのは初めてだった。

 

私の番になり、一気に自分の仕事と債務状況を話した。自分でも信じられないくらい、一気にそして今まで誰にも話せなかった事に対しての反動のように。

 

この姿が後に常連参加者の話題となり、「機関銃のように喋りまくった」という事から、私のニックネーム(HN)「重機関銃」が決まった。


勉強会後の懇親会にも参加させてもらい、猫さん始め、参加者の先輩達の話にも勇気づけられ、私の気持ちは完全に固まった。

 

話が盛り上がり、終電を逃した私は、参加者と夜通し話し、始発電車に乗って家に帰った。


父と家族全員に昨日の出来事を話し

 

「俺は彼らのように借金を自力で整理する。そして心の底から笑うんだ」


渋る父を強制的に説得して、私の債務整理との戦いが始まった。



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