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『さあ、こっちへおいで。』

 

私の両手の中のビー玉にもう一度手を差し出す。
すると今度はゆっくりと彼の手の中に吸い付いていった。
外側のカプセルを黒い杖で叩くと、シャボン玉のように簡単に割れて消えてしまった。
小さなビー玉だけが、彼の手に残った。

 

「どうするの?」

 

『もう一度焼き直すんだ。
こいつはヒビも傷も入ってないからね、もう一年じっくり焼いたらまた元通りだ。』

 

「小さいけどその子も魂だったのね。わからなかった。」

 

『時々こうやってしぼんで戻ってきてしまうんだ。
でも大丈夫、みんなこうやって元に戻るから。心配しなくていいよ。』

 

そう言って、そっとその小さな魂を舟の下へ落とす。
小さな魂はゆっくりと落下して、細い列の一番後ろへ行儀良く並んだ。

 

『これでいい。君も早く戻らないとね。ベッドまで連れて行ってあげるから。』

 

そう言って、彼はすぐに舟を進めた。


私は返事もせずに見えなくなるまでずっとさっきの魂が並んでいるのを目で追った。


他の魂よりもずいぶん小さいその姿は、ゆらゆらと列を乱しながら少しずつ前へ進んでいく。
私はとても心配になった。


「あんなに小さくて大丈夫かしら。レーンから落ちて割れたりしない?」

 

『大丈夫だよ。僕がずっと見張ってるから。
それにあいつは君が気に入ってるみたいだから、君が呼ぶまで取っておくよ。』

 

私があの小さな魂を呼ぶ?

 

 

 

 

 

 

 

 


ああ、そうか。


あの魂は私がしぼませてしまったのだ。


10

 目を覚ましたのはもうすっかり夕方になってからだった。
麻酔が効いていてぼんやりしている私の部屋には、心配そうな彼と母が来ていた。
一人で大丈夫だから、と言ったのに。

 

「ずいぶん眠ってたから心配したよ。気分はどう?」

 

彼が私に声をかけると、母は気を使って部屋を出た。

 

「ありがとう。大丈夫。」

 

私は神経を澄まして体に違和感がないか確かめる。
右腕にはまだ点滴がついている。
それからとても喉が渇いている。
そして、生理痛のような痛みが体の真ん中にあるのを感じた。


同時にさっきの小さなビー玉のことを思い出した。

 

ああ、そうか。
あの魂はここにいたんだ。
私があんなに小さくしぼませてしまったのだ。
それでも私の手から離れたくない、としがみついていたのだ。

 

急に涙が溢れて止まらなくなった。
子供のようにぐしゃぐしゃに泣きじゃくった。
彼も母も、私が今まで強がっていたのだと思ったことだろう。
でも、そんなんじゃない。

 

 

私はただ、あの小さなビー玉をなくして淋しかった。

 

 

 


 fin.


この本の内容は以上です。


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