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十五の殻 2

「おう」

いきなり肩を叩かれて振り向くとリキが立っていた。

「リキか。びっくりさせんなよ」

「何だ、おまえら眠そうだなあ」

「まあな」

俺と宏明とリキは連れ立って通学路を歩いた。あちらこちらに制服がいる。

「あーあ。また学校かあ」

「終わっちゃったな、夏休み」

「いろいろあったよな」

学校の前の交差点。信号が赤になる。

「俺はもう東京はいいや。まっぴらだよ。やっぱあそこは住むとこじゃねえな」

宏明が言った。

俺は黙っていた。たしかにひどい街だったけど、それでも俺はあの街が嫌いではない。また行きたいと思う。いや、きっと俺はまた東京に行くだろう。

あれから俺はひそかにホームレス支援のボランティアを始めた。土曜日の夜に炊き出しなんかをして公園を回るのだ。今俺にできるのはこんなことぐらいしかない。でもそれがあのおっさんへの恩返しにつながると信じている。

おっさん。また必ず会おう。それまでどうか元気でいて下さい。

信号が青に変わる。制服がたくさん校門に吸い込まれていく。

「おはよ~」

「おはよ」

俺たちの夏はもう終わる。十五才の夏はもう二度とない。

いつか俺は大人になる。今、俺の身体を包んでいる見えない強固な殻。この殻を破る時期がくる。そしてその日は今からそんなに遠くはないはずだ。何年か先、少年の日々を振り返る時、俺の眼にこの十五の夏は一体どんな色に写るんだろう。

涼しさを含んだ風が俺たちの間を通り抜け、夏の名残の一片が制服と一緒に校門に吸い込まれていった。

 


この本の内容は以上です。


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