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房総の赤と黒

   

 

 県境の橋をわたると、森の顔つきがかわる。

 のっぺりとした表情から、彫りの深い表情に。

 したしみやすく、誘惑的ですらある森が前方にみえてくる。

 

 わが町から、東へ、海まで五十キロ走ってもほとんど標高差ゼロの道のりだが、同じ関東平野で、南へ直線距離にして十キロほど走れば、おおぶりな坂道をうねっていく異国であり、ライダーのわたしは異邦の旅人になる。 

 

 

■房総風土記の丘

 

 黒いサクランボはきいたことがあるけれど、それが赤い実といっしょに同じ木になるものなのかどうか。


 

 

 赤い実は、やがて、黒へとかわるのだろうか。

 直径十ミリほどの固い実からは、そうした兆しはうかがえなかったけれど。

      

 資料館のひとにたずねてみればよかった、とあとになっておもった。

 受付のひとと、話はしたのだ。サクランボの話ではなく、館の前庭に栽培されているホトトギスについて。

 

 メタセコイヤの木の下で、そこから落ちるしずくが、ホトトギスによからぬ影響を与えているのではないか、とそのひとはいう。

 

 さらに、ここでは自生しているのがほかにあって、そのひとも、ことしこそ、その花をみたい、という。

 

 ことしは、だから、龍ケ崎と、もしかすると成田市でも、自生のホトトギスがみられるかもしれない。


びわの毛皮

 

 

 花びらが落ち、びわの毛皮が残る。

 いや、毛皮のなかでは、つぎの夏へ向けて、実りへのいとなみが絶えることはない。

 ただ外気は冷たく、毛皮はいよいよ毛ぶかく、いのちを包む。


枯れ野に在り

 

 

森のほとりのユズは
実るにまかせ
落ちるにまかせ
ふたつみっつ、ひろって

くたびれたコートのポケットにしのばせ


わたしのふるまいに

森がさざめき
やせた白い花が

こつぶの赤い実が

しんとした冷たい空気をやぶって

かがやきはじめる



 

 

 

わたしは ちいさなけもののように
おののき
ふるえ
枯れ草のふりをする



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