目次
まえがき
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タイトル目次
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第1章 エコ技術と生産技術
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アメリカの新車燃費規制
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公差の魔術
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海賊版対策とIpadの中身
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第2章 資源と環境技術
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リサイクルされるレアメタル
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レアアース戦争
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微生物と植物が地球を救う
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日本が産油国になる日
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第3章 電気社会の到来
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宇宙太陽光発電衛星計画
海洋温度差発電
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直流送電技術
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ワイヤレス送電技術
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電気自動車の可能性
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キャパシタ搭載バス
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ハイウェイトレイン構想
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ギガンティック・トウキョウ
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第4章 食料生産技術
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野菜工場
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CAS冷凍技術
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クロマグロの養殖
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第5章 宇宙科学技術
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小惑星探査機「はやぶさ」
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アブレータ耐熱技術
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イカロスの翼
学術・科学技術予算について
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第6章 軍事技術
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CSMミサイル構想
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F22とF35はガンダムとジムくらいに違う
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自衛隊がF22を持つ意味
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空母型護衛艦「ひゅうが」
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第7章 日本の安全保障と国家モデル
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軍事力による平和
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ODAは肉食動物を太らせた
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アメリカの強さの源泉
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日本がスネ夫になるための2つの条件
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しずかちゃんに成りかけた日本
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かつての日本はノビスケだった
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日本が出来杉君になる日
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あとがき
あとがき

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それでも、いきなり本番でこうしてシステム全体を動かしてみせる日本の技術の高さについて、我々は、認識を新たにすべきだろう。「はやぶさ」のイオンエンジン(μ10)は、NECと米Aerojet-General社の協力を得て、人工衛星向けエンジンとして、2011年の販売を目指しているという。

 

イオンエンジンとは、アルゴンやキセノンといったガスをイオン化させ、電気の力でそのイオンを加速して後方に押し出すことで推進力を得るというエンジンのこと。推進剤がキセノンやアルゴンなどの軽量なため、十分な速度を得るには、長時間の加速が必要で、また瞬間的な推力も低いので、重力や空気抵抗のある地表面での使用には適さない。

 

その反面、従来のロケットエンジンのように「燃焼」をさせる必要がないから、酸素が要らなくて、少ない推進剤ですむという利点から、惑星探査機など長距離・長時間運用する宇宙機のエンジンとして期待されている。通常のヒドラジンを推進剤につかったエンジンだと、その燃焼ガスの放出速度は秒速3km程なのだけれど、「はやぶさ」のイオンエンジンは、秒速30kmでイオン化したキセノンを放出する。

 

プロ野球選手が投げる150キロの速球でも、秒速に直すと41mくらいにしかならないから、イオンエンジンの秒速30kmが如何に凄い速度か分かる。

 

また、イオンエンジンは燃料の重量占有率に対して、軌道変換能力が高く、従来のヒドラジンを使ったロケットと比較して、推進剤の重量は1/4程度にも関わらず、軌道変換能力は4倍もある。イオンエンジンは、プラスに帯電したキセノンイオンを電気の力で加速し放出するためのイオン源と、負電荷を持つ電子を放出してキセノンイオンを中和するための中和器から成り立っている。

中和器とは、イオン源から放出されて、プラスに帯電したキセノンイオンにマイナスイオンをぶつけて中性にする装置のことで、中和しないと、折角放出したプラスイオンが、今度は、プラスイオンを放出することで、マイナスに帯電してしまっている「はやぶさ」本体に引き寄せられてしまい、加速することができなくなってしまう。

 

今回の故障したエンジン同士を繋ぎ合わせた、というのは、イオンエンジンBのイオン源とイオンエンジンAの中和器を繋ぎ合わせてひとつのエンジンとしたということ。凄い裏技である。こうした、「こんなこともあろうかと」という数々のフェイルセーフ機能というのは、実に日本人的は凝り性の賜物のように思える。

 

それは、おそらく、島国で資源もなく、限られたあるもので、兎に角なんとかしようという工夫の精神の発露ではないかとさえ。

 

アメリカなんかのようにアメリカンドリームを求めて、次から次へと人がやってくる国だったら、駄目だったら、出来そうなのに取り替えればいい、なんて簡単にできるけれど、日本のように、人の入れ替えが効かない国だと、そうはいかない。今ある人をやり繰りしてなんとかするしかない。まるで選手交代できないサッカーの試合のようなもので、フィールドプレーヤーの誰もがFWもできればMFもDFも出来るみたいな、マルチロールな使い方をすることを考える。

 

それと同じで、「はやぶさ」の開発チームも、もしこれが故障したら、こうする。ここが壊れたらあっちに切り替えるなど、実に様々なケースを開発段階から、きっちりと考えていたように思われる。これも、一種の日本文化が貢献した結果なのかもしれない。

アブレータ耐熱技術

地球に帰還した「はやぶさ」は、イトカワの入ったカプセルを分離、投下回収までの一連のミッションを見事にやり遂げたけれど、ここで、サンプル投下ミッションについて少し振り返ってみたい。

 

投下ミッションでは、「はやぶさ」は地球に近づくにつれ軌道を微調整しつつ、内蔵のカプセルをオーストラリアのウーメラ砂漠に落下させる。「はやぶさ」は、地球近傍までは、およそ秒速12kmで近づき、月軌道程度まで来たところで、カプセルを分離する。

 

分離されたカプセルは約10時間の単独飛行を行なった後、極超音速で地球に再突する。落下したカプセルは、高度約10kmでパラシュートを開いて降下。パラシュートを開くと同時にカプセルからビーコン信号が発信され、それをキャッチして回収するまでが、サンプル投下のミッション。

 

再突入カプセルは、直径約40cm、重量17kg で蓋のついた中華鍋のような形をしている。カプセルはアブレータと呼ばれる繊維強化型プラスティックの耐熱材料で覆われ、さらに「はやぶさ」の軌道上での熱制御のために、太陽光の反射率と吸収率が正確に管理された、アルミ蒸着カプトンが表面に貼られており、金色に輝いている。

 

高速で地球に再突入するカプセルが曝される空力加熱は、スペースシャトルのノーズの30倍、使い捨てライターの炎の300倍にも達し、表面温度は1万度にもなるという。スペースシャトルの耐熱タイルでもこんな高温には耐えられないし、耐えられる材料も存在しない。したがって、カプセルの耐熱は逆転の発想で「熱に耐えないで溶ける」ことで熱を防ぐ、アブレ―タ耐熱材を使用している。

 

繊維強化型プラスティックであるアブレータ最表面は、再突入時に分解して炭になるのだけれど、表面からすこし内側の繊維層は熱分解してガスとなり、同時にアブレータから熱を吸収する。発生したガスはアブレータ表面に噴出して1万度にもなる空気との間を漂って空力加熱を遮断するという。

勿論、アブレータは最後には、溶けて無くなってしまうのだけど、完全に溶け切る前に地表に落下できれば、カプセルを守るという役目は十分に果たすことになる。実際の「はやぶさ」は2010年6月13日、日本時間午後10時51分ごろ、豪州南部の上空で大気圏に再突入し、約60億キロの旅を終えて7年ぶりに地球に帰還した。

 

心配されていた回収カプセルの分離も問題なく、回収カプセルは、2251分頃大気圏に突入。燃え尽きることなく目標地点に落下した。2378分頃には、オーストラリア・ウーメラ砂漠にて落下したカプセルのビーコン発信を確認。2356分には、ヘリから目視でカプセルの存在を確認できた。

 

回収カプセルは、高度約10kmでパラシュート開傘、前面および背面ヒートシールド分離し、ビーコンを放射しながら緩降下するよう設計され、着地予想地点は、長手方向約200km、幅約20kmの楕円領域を設定していたのだけれど、着地したのは、予想地点のど真ん中だったというから、「はやぶさ」スタッフの運行能力に敬意を評したい。

 

これまで、地球以外の天体から物質を持ち帰ったことは、月の石を持ち帰った旧ソ連のルナ計画と米国のアポロ計画。そして、彗星のチリを回収した米国探査機スターダストと太陽風物質を集めて地球に持ち帰ったジェネシスのカプセル(どちらもNASAによって実施)があるのだけれど、ジェネシスカプセルは大気圏再突入後、パラシュートが開かず、地上に衝突して大破したというから、さぞかし「はやぶさ」運用スタッフも気が気でなかっただろう。

 

現在、太陽系の天体からのサンプルを持ち帰った際には、「宇宙検疫」の問題をクリアすることが義務づけられている。勿論、宇宙から謎の病原体か何かを持ち込んで汚染されることを防ぐため。

 

特に、地球外生命体の存在の可能性がある天体から帰還する探査機や回収サンプルについては、地球-月系への帰還探査機の衝突回避、帰還探査機の完全殺菌、帰還試料の封じ込めが義務づけられている。

イトカワは生命の存在の可能性がある天体と見なされていないから、そこまで要求されてはいないのだけれど、JAXA宇宙科学研究所は、物質をまったく外気に触れない状態で回収・分析できる、「クリーンチェンバー」と呼ばれる世界で唯一の装置を備えている。クリーンチェンバーは、2室構成になっていて、カプセルを開封して、真空環境で一部試料を保管出来るように、超高真空仕様とした第1室と、大気圧高純度窒素雰囲気(不純ガス成分500ppb以下)で試料を扱うグローブボックス仕様の第2室に分かれている。

 

また、チェンバー内面や付属物、チェンバー内に導入される治工具は予め真空環境での加熱処理を行うことで、表面に付着している汚染ガス分子成分を極力取り除いている。クリーンチェンバー内は、粒子・塵発生源を限ることが可能な小さな空間で、内部の地球源微粒子をゼロに近づけることが出来るという。開封せずに日本に運ばれる、「はやぶさ」の回収カプセルは、このチャンバー内で開封される。カプセル内部には、残留ガス(重希ガス)があることも考えられていて、まずはガス質量分析を行なったのち、ガスがあればそれを抜いてから、試料の光学観察を行うことになっている。

 

その後、試料を汚染しないように、クリーンチェンバー外から長作動距離顕微鏡を使って、光学観察データを採取して、試料の粒度分布を解析する。また、試料の重さの測定もクリーンチェンバー内に組み込んだ電子天秤で実施する。もしも、試料が十分に有る場合は、赤外分光観測をして、光学特性を測定する予定もあるという。試料は、顕微鏡で観察しながら「特製ピンセット」で拾い上げるそうなのだけれど、このピンセットは専用に開発された超特製品。材質は、触れた物質を汚染する可能性が極めて低い石英ガラスで、これを加熱して両側から引っ張って、ちぎれた部分をピンセットとして使うという。

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