目次
まえがき
page 2
page 3
page 4
タイトル目次
page 1
page 2
page 3
第1章 エコ技術と生産技術
page 1
アメリカの新車燃費規制
page 3
page 4
公差の魔術
page 6
page 7
page 8
page 9
海賊版対策とIpadの中身
page 11
page 12
第2章 資源と環境技術
page 1
リサイクルされるレアメタル
page 3
page 4
レアアース戦争
page 6
page 7
page 8
微生物と植物が地球を救う
page 10
page 11
page 12
page 13
日本が産油国になる日
page 15
page 16
第3章 電気社会の到来
page 1
宇宙太陽光発電衛星計画
海洋温度差発電
page 4
page 5
page 6
直流送電技術
page 8
ワイヤレス送電技術
page 10
電気自動車の可能性
page 12
page 13
page 14
page 15
キャパシタ搭載バス
page 17
page 18
ハイウェイトレイン構想
page 20
ギガンティック・トウキョウ
page 22
page 23
page 24
第4章 食料生産技術
page 1
野菜工場
page 3
page 4
CAS冷凍技術
page 6
page 7
クロマグロの養殖
page 9
page 10
第5章 宇宙科学技術
page 1
小惑星探査機「はやぶさ」
page 3
page 4
page 5
page 6
アブレータ耐熱技術
page 8
page 9
page 10
page 11
イカロスの翼
学術・科学技術予算について
page 14
page 15
page 16
第6章 軍事技術
page 1
CSMミサイル構想
page 3
page 4
page 5
F22とF35はガンダムとジムくらいに違う
page 7
page 8
page 9
page 10
page 11
自衛隊がF22を持つ意味
page 13
page 14
page 15
空母型護衛艦「ひゅうが」
page 17
page 18
page 19
第7章 日本の安全保障と国家モデル
page 1
軍事力による平和
page 3
page 4
page 5
page 6
ODAは肉食動物を太らせた
page 8
page 9
アメリカの強さの源泉
page 11
page 12
日本がスネ夫になるための2つの条件
page 14
page 15
しずかちゃんに成りかけた日本
page 17
page 18
page 19
かつての日本はノビスケだった
page 21
page 22
日本が出来杉君になる日
page 24
page 25
あとがき
あとがき

閉じる


<<最初から読む

67 / 130ページ

クロマグロの養殖

2010年4月にカタールの首都ドーハで開かれていたワシントン条約締約国会議で、心配されていた大西洋・地中海産のクロマグロの輸出入を全面禁止する提案が否決され、25日に全体会合で正式承認された。

 

国際取引禁止案が否決されたのは、同案に反対する日本などが懸命の多数派工作を繰り広げ、中東やアフリカ、中南米などの途上国を中心に反対票を積み上げたためだとされている。ひとまずは安心といったところだけれど、まだまだ予断は許さない。何れは国際圧力に抗えない時がこないとも限らない。

 

2002年に世界で初めて、人工ふ化から育てたクロマグロの産卵を確認して「完全養殖」に成功したというニュースが駆け巡って以来、マグロの養殖研究は着実に進んでいる。クロマグロは太平洋を横断するほど運動性が高く、飼育しにくい大型魚。 クロマグロは、皮膚が弱く大変デリケート。稚魚は特に皮膚が弱く、手でつかんだだけで死んでしまう。また、光や音にも過敏で、隣の生け簀のタイやハマチは平気なのに、夜間生け簀に自動車のヘッドライトが当たっただけで、パニックを起こし、網に突っ込んで死んでしまう。

 

また、秋の台風などでは産卵を期待していたクロマグロが海上に流れ出た泥水によりって視界を遮られるなどでパニックを起こして、100尾が死ぬこともあった。これまでクロマグロの完全養殖は不可能だとされていた。それだけに、2002年の完全養殖の成功は関係者を驚かせたに違いない。

 

養殖クロマグロは、近畿大学水産研究所大島実験場などで研究が続けられ、「近大マグロ」とも呼ばれている。

今では近大マグロは、一部の百貨店や飲食店などに出荷されるまでになっている。近大水産研究所では、孵化して23年経った40Kg前後のものを多い週には1520匹出荷しているそうだ。

もっとも、週に何度も釣り上げると、釣り上げ船のエンジン音を聞いただけでマグロは海中深くに潜るようになるようで、餌を代えたり、エンジン音を消して近付いたりもするという。近大マグロは、“全身トロマグロ”と呼ばれるほど脂が多く、赤身も中トロ並み。今では脂の多さを売り物にしている。

 

また、餌の履歴がハッキリしていて、水銀濃度が低く抗生物質を使っていない、といった特徴がある。食の安全や食糧安保が叫ばれる昨今。クロマグロの完全養殖が軌道にのり、クロマグロ自給率が100%を超える日がくることが期待される。養殖マグロをビジネス的に採算が合うようにするための課題は、稚魚の生存率を上げること。

 

マグロは1回に数十万個の卵を産むのだけれど、自然界では成魚になれるのは限りなく0に近い。養殖マグロでさえも、孵化して40日目までの生存率がたった0.1%。これを10倍にして始めてビジネスになるという。マグロの稚魚の生存率が低い理由はいくつかあって、まず、孵化後の数日間は浮上死の危険がある。

 

孵化後の一か月は陸上水槽で育つけれど、エアーポンプから出る水泡の流れに乗って水面に浮いたまま下りられなくなるのが出てくる。また、夜の間に動きを止めて水槽の底に沈んで死ぬものも出る。さらに、マグロの稚魚は成長が早く、その分餌が必要で、孵化後2週間もすると共食いを始めるそうだ。

 

養殖の環境ですらこうなのだから、自然界での卵からの生存確率は数十万分の1あるかないかというのも頷ける。これだと流石に絶滅を危惧されてしまうのだろう。量産化の期待が高まるのもむべなるかな。ところが更に問題なのは、稚魚の大量生産ができないこと。近大が1974年に完全養殖の研究を始めて30年以上経っても、産卵はまったく自然にゆだねるしかないらしい。

1979年、初めて畜養マグロが生け簀で卵を生んだのだけれど、孵化した稚魚は47日で死んでしまった。その後も数十日で死ぬことが続いた揚げ句、83年から11年間は卵を生まない年が続いたという。前途は厳しいかと思いきや、なんと、サバにマグロを産ませて増やそうという研究が進んでいる。

 

12年近くこの研究に取り組んでいる吉崎悟朗・東京海洋大学准教授は、7年前、淡水魚のヤマメにニジマスの卵や精子を作らせることに成功。2005年からサバにマグロを産ませる研究に着手している。このサバにマグロを生ませる技術は、生まれたての赤ん坊のサバにまず、サバ自身の卵や精子を作らないよう不妊処理を施す。その後、メスのサバにマグロの卵原細胞を、オスのサバにはマグロの精原細胞を注入するというもの。

 

そのサバが大人になるとマグロの卵や精子だけ作ることになるから、処理されたサバのメスとオスが受精して卵を産めばクロマグロの子になるという仕組み。この技術の凄いところは、マグロの稚魚を作るのに、マグロを使わなくてよいところ。自然に任せるしかないマグロの産卵が、サバの腹を借りることでより確実になる。これは、マグロの大量生産をも可能にする技術となるかもしれない。

 

吉崎悟准教授は、この技術を使って、クロマグロを鮭の放流のように、人間が取る分だけ増やせればそれでいいとコメントしている。クロマグロの放流とは何とも夢のある話。たとえば、瀬戸内海に大量にクロマグロの稚魚を放流することなんてできれば、瀬戸内海全部がクロマグロの生簀になるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

第5章 宇宙科学技術


小惑星探査機「はやぶさ」

200359日に宇宙科学研究所から打ち上げられた小惑星探査機・通称「はやぶさ」は、2005年夏に火星軌道近傍の小惑星イトカワに着陸、サンプルを採集して20106月に見事地球へ帰還した。

 

JAXAは、カプセル内部で確認された微粒子の分析を進め、11月には、微粒子のほぼ全部がイトカワ由来の物質だと発表した。探査衛星「はやぶさ」は小惑星イトカワに接近した際に、様々な観測をおこなっていて、「近赤外線分光器(NIRS)」による、イトカワの地域ごとの反射スペクトルの観測や、「蛍光X線スペクトロメータ(XRS)」による総スペクトルの観測によって、イトカワの組成は、普通コンドライトであると推定されていた。

 

そして更に、「はやぶさ」がイトカワの「ミューゼスの海」と名付けられた、なだらかな部分への降下中に捉えた、イトカワ表面の画像には、表面の殆どで、数cmの大きさに揃った小石が敷き詰められたように存在し、観測の結果、輝石とかんらん石であることが分かっていた。カプセル内の微粒子にも、かんらん石や輝石、斜長石などが含まれ、イトカワの表面観測結果と一致していたことも、回収された微粒子がイトカワのものとする決め手の一つとなったという。

 

JAXAはこれまで、電子顕微鏡による組成分析では「イトカワ由来」と判断するのは難しいとして、より詳細な分析を行ってから結論を出す予定だったそうなのだけれど、上野宗孝・JAXAミッション機器系副グループ長は「大量の微粒子がそろって、イトカワ由来の傾向を示したので、科学的にも間違いない。簡易分析でこれほどはっきりした結果が出るとは、予想していなかった」とコメントしている。

 

小惑星に着陸するのも世界初なら、地球に帰還するのも世界初。そしてとうとうサンプルまで持ち帰っていた。正に快挙と言う他ない。

読者登録

日比野克壽さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について