目次
まえがき
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タイトル目次
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第1章 エコ技術と生産技術
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アメリカの新車燃費規制
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公差の魔術
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海賊版対策とIpadの中身
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第2章 資源と環境技術
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リサイクルされるレアメタル
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レアアース戦争
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微生物と植物が地球を救う
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日本が産油国になる日
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第3章 電気社会の到来
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宇宙太陽光発電衛星計画
海洋温度差発電
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直流送電技術
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ワイヤレス送電技術
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電気自動車の可能性
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キャパシタ搭載バス
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ハイウェイトレイン構想
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ギガンティック・トウキョウ
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第4章 食料生産技術
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野菜工場
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CAS冷凍技術
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クロマグロの養殖
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第5章 宇宙科学技術
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小惑星探査機「はやぶさ」
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アブレータ耐熱技術
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イカロスの翼
学術・科学技術予算について
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第6章 軍事技術
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CSMミサイル構想
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F22とF35はガンダムとジムくらいに違う
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自衛隊がF22を持つ意味
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空母型護衛艦「ひゅうが」
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第7章 日本の安全保障と国家モデル
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軍事力による平和
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ODAは肉食動物を太らせた
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アメリカの強さの源泉
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日本がスネ夫になるための2つの条件
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しずかちゃんに成りかけた日本
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かつての日本はノビスケだった
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日本が出来杉君になる日
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あとがき
あとがき

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淡水の生産規模は、海洋温度差発電1MW規模で、一日あたり約1200立法メートル、10MWだと12000立法メートルになるという。現在の一人一日あたりの水使用量は、世界平均で165リットルだから、もし、尖閣諸島に10MW規模の海洋温度差発電プラントを作ることができれば、約6万人分の水を供給できることになる。

 

中国には尖閣諸島で作った淡水を売ってやればいい。日本にとって海洋温度差発電には、いろいろな可能性がある。

直流送電技術

さて、今や、発電のみならず送電についても技術開発が進んでいる。首都大学東京学長の西澤潤一氏は、環境問題の少ないミニダムによる水力発電と、交流より50倍も遠くまで電力を効率よく運べる直流送電の技術を活用した電力システムを提唱している。

 

西沢潤一氏は、現在世界中で主流となっている石油や石炭の化石燃料を用いた火力発電と、その発電電力の交流送電を、この「水力発電と直流送電」に切り替えれば、いま地球規模で危機となっている温暖化の主因である、温室効果ガスのCO2を大きく削減することが可能だという。

 

直流送電は交流に比べて、送電損失が少なく、長距離伝送に向いているとされている。ただこれまでは直流から交流への変換が難しいこともあって中々普及していなかったけれど、半導体技術の進展でこれらの問題が解決されてきつつある。

 

長距離超高圧直流送電は今後の世界エネルギー開発の一つの大きな鍵となると言うことはこれまでも言われてきた。超高圧直流送を行なうことで、実に1万kmもの長距離送電が可能になるとされている。これは、東京からアメリカのナイアガラの滝、アフリカのビクトリアの滝まで届く距離であり、地球の赤道の直径約1万2756kmの8割近くにも相当するから、殆ど地球の端から端まで送電できることになる。

 

現在、世界の全電力消費量は12兆KWhであるのに対して、世界の包蔵水力は電力換算して14兆KWhあると見られている。そのうち開発済みのものは、わずか2.4兆KWhで2割にも満たない。

 

したがって、計算上は、化石燃料を用いた火力発電は全部水力発電に置き換え可能ということになる。

現在、中国では、「西電東送」と呼ばれる、大発電プロジェクトが行なわれている。これは、最大出力6000MWの中国第3の大型水力発電所を四川省宜賓県と雲南省水富県との境界を流れる金沙江の下流に建設し、そこで発電した電気を2000km離れた上海に、80万ボルトの直流送電で送る計画で、発電所は2008年12月26日から正式に着工され,2015年までに完成する予定となっている。

 

中国は水資源に恵まれていて、開発可能な発電容量は3億7800万KW、年間発電量は1億9200KWHに達すると推定されている。だけど、その水資源の分布はアンバランスで、90%の開発可能な発電容量は西南、中南、西北地区に集中しているため、経済の発展に応じて、資源の分布と生産力の配置を最適化させることを主眼として、これらのプロジェクトを行なっている。

 

水資源豊かな日本ならば、水力発電による直流送電技術が普及する素地は十二分にある。

ワイヤレス送電技術

また、送電線を使わずにワイヤレスで送電する技術も開発されている。「Witricity」という言葉を耳にした方もいるだろう。ワイヤーとエレクトリシティをくっ付けた造語として名づけられたこの技術は、磁気の共鳴を利用して、電力を伝送するという技術。一言でいうと、「ワイヤレス充電」のこと。

 

2007年6月7日、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)で、この「ワイヤレス充電」の実験デモが行われ、電源から7フィート(2メートル強)離れた60ワット電球にワイヤレスで送電、点灯することに成功した。尤も、ワイヤレスで電気を送る技術はこれだけという訳ではなくて、現在実用化が検討されているワイヤレス送電技術には、電磁誘導方式・磁気共鳴方式・マイクロ波放電方式の3つがある。

 

だけど、それぞれ原理が異なり、送れる電流の大きさや到達距離が異なる。宇宙太陽光発電で衛星から地上に送電する技術は、この中のマイクロ波放電方式に当たる。この技術は、日本ではMILAX(MIcrowave Lifted Airplane eXperiment)と名づけられ、1992年の8月22,23,29日の3日間にわたって模型飛行機での送電実験が行われ、成功している。この時の実験は、10mを水平飛行する模型飛行機に送電器を装備した追尾送電車から、2.411GHzのマイクロ波を使い、飛行機の飛行に必要な電力を送電するという実験だった。MILAX飛行機実験は、時間にして約30秒間、上空10m~15mを、約400m飛行した。

 

この実験で、飛行機を飛行させるのに十分な電力が送電できることが確認され、マイクロ波から直流への変換効率は約40%という結果が得られている。また、現在、電動歯ブラシや電動シェーバー、ゲーム機のリモコンなどの小型機器の充電に使われている方式は、主に電磁誘導方式。きわめて短い距離で高効率の送電が可能な半面、伝送距離がきわめて短く、送受信器の向きもきちんと合わせる必要があり、専用の充電台が必要になるなどのデメリットもある。

それに対して、MITがデモに成功した「磁気共鳴方式」は、数メートルから、理論上は、数百メートル程度までの送電が可能で、送受信器の向きも、電磁誘導方式ほどシビアにしなくてもよいという利点がある。

 

伝送効率も送電距離が2mの場合で40%、1mでは、実に90%の伝送効率を得られるという。この「磁気共鳴方式」による送電の原理は、一言でいうと、音叉の共鳴現象と同じ。同じ周波数の音叉を近くに置いて、一方を鳴らすと、音波による空気の振動がもう一方の音叉にも伝わって、もう一方の音叉も振動し始めるけれど、同じように、磁気共鳴方式では、2つのコイルを「共振器」として利用する。

 

給電側のコイルに電流が流すと、そこに発生した磁場の振動は、同じ周波数で共振する受電側の共振回路に伝わって、受電側にも電流が流れる仕組み。供給側からは無指向性の電力の波が広がっている性質から、有効範囲内であればどこでも電力の供給を受けることができるという。MITは、今回の実験結果からノートパソコン程度の充電は可能だと結論づけている。

 

こうした、送受信器の向きをそれほど気にしなくてよいという特徴は、新しい製品の可能性を広げる。たとえば、複数の携帯デバイスを置くだけで充電ができる、「充電トレイ」のような製品も開発可能になる。2009年2月に、スペインのバルセロナで開かれた「Mobile World Congress 2009」において、このようなワイヤレス充電装置のデモ展示が行われている。

 

この、磁気共鳴方式によるワイヤレス送電技術は、既にいくつかの企業で実用化に向けての取り組みが始まっていて、MITから技術ライセンスを受けた、ベンチャー企業の米WiTricity社や、米Intel社、米Qualcomm社、日本では、長野日本無線や昭和飛行機工業といった企業がそれぞれ研究開発を進めている。電流の変換効率と高めることと、送電距離を延ばすことが目下の課題のようだ。

 

今のところ、実用化の時期は明らかにされていないけれど、こうした技術が実用化されれば、またいろいろな製品が開発されることになるから、また新たな成長分野が拓かれることになる。

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