目次
まえがき
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タイトル目次
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第1章 エコ技術と生産技術
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アメリカの新車燃費規制
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公差の魔術
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海賊版対策とIpadの中身
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第2章 資源と環境技術
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リサイクルされるレアメタル
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レアアース戦争
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微生物と植物が地球を救う
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日本が産油国になる日
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第3章 電気社会の到来
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宇宙太陽光発電衛星計画
海洋温度差発電
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直流送電技術
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ワイヤレス送電技術
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電気自動車の可能性
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キャパシタ搭載バス
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ハイウェイトレイン構想
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ギガンティック・トウキョウ
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第4章 食料生産技術
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野菜工場
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CAS冷凍技術
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クロマグロの養殖
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第5章 宇宙科学技術
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小惑星探査機「はやぶさ」
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アブレータ耐熱技術
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イカロスの翼
学術・科学技術予算について
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第6章 軍事技術
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CSMミサイル構想
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F22とF35はガンダムとジムくらいに違う
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自衛隊がF22を持つ意味
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空母型護衛艦「ひゅうが」
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第7章 日本の安全保障と国家モデル
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軍事力による平和
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ODAは肉食動物を太らせた
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アメリカの強さの源泉
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日本がスネ夫になるための2つの条件
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しずかちゃんに成りかけた日本
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かつての日本はノビスケだった
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日本が出来杉君になる日
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あとがき
あとがき

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鋳物工場で修行するうちに、溶かして湯状にした鋳鉄の底に沈んでいる部分には比重の重い不純物がたくさん混じっていることに気づく。

 

そこからがまた凄かった。150個の砲丸を吹いてもらい、ひとつひとつに番号をつけて、同じ大きさに削ると片端からデータをとっていった。すると最初から30個くらいまでは重さに変化がなかったのだけど、40個、50個と次第に重くなり、100個から150個でははっきりと重くなっていったことが分かった。

 

こうした研究を延々と続け、砲丸の砂型に流し込む湯口と底とではかすかな違いがあるとか、熱された鉄球の冷却速度によっても違いが生じるとかのデータを集めていったという。更に、砲丸を削りだす作業においては、砲丸の中心と重心がずれないように、ひとつひとつ削り方を変える。その加減は、削るときの音や削った表面の金属のツヤで判断しているという。機械ではまったく対応できない匠の技。こうして砲丸の中心と重心が一ミリも狂わない世界最高唯一の辻谷砲丸が出来上がる。

 

唯一というのは、他の誰にも同じことはできないということ。

 

辻谷砲丸は他のメーカーのようにペンキなど塗っていない無色の仕上がりなのだけれど、これが唯一無二の砲丸の証明になっている。他のメーカーは砲丸は、砲丸の中心と重心をのズレを最終的に合わせこむために一度作ってから、中をくり抜いて鉛を詰めて調節している。ペンキはそれらを隠すために塗っている。

 

そんな辻谷さんの技術をアメリカの大手スポーツメーカーが買いに来た。技術を教えてライセンスをくれといってきたのを辻谷さんはきっぱりと断った。そこには職人の探究心とプライドがあった。「この砲丸をつくる技術はわたしだけのものじゃない。砲丸づくりにはたくさんの人が協力してくれました。それをお金で売ることはできません。」と。


こうした匠たちが作り出す部品精度に支えられた日本製品の信頼性が低かろう筈がない。日本で実績十分の部品の図面をそのまま海外に持ちこんで、現地のメーカーに作らせても、そりがあったり、バリがあったりして、後で問題になることも多いという。同じ図面を使って、同じ部品をつくって、同じ機械を組み立てたとしても、同じ性能が出ないというマジック。その秘密とは何だろうか。

 

一個の部品だけをみれば、公差の範囲内であったとしても、公差ギリギリの部品が何万個と集まれば、全体の歪みは相当なものになる。だから、部品1個の公差といっても、その値は、装置全体を組み上げたときを想定した上での値でなくちゃいけない。

 

ところが、今や、その公差の値が必ずしも装置全体の動作を保証するものとは限らなくなってきているという。その理由の一つとして、激しい競争の中、コストダウンを迫られる設計者が、少しでも設計コストを安くあげようと、公差の検討時間を端折って、既存製品の公差の流用を行なうケースが増えている実態がある。

 

確かに、既存製品の設計公差を流用すれば、その分だけ設計期間は短縮できることは間違いない。だけど、それをいつまでも繰り返していたら、どういう理由でその値に公差が決められたのかという根拠が失われ、技術力の低下を招くことになる。

 

何年も前の公差を、今でも何の検証もなく当たり前のように使い続け、その結果、出来上がった製品の性能が出ないなどのトラブルに見舞われることだってある。

 

また、年々進歩する加工技術に対して、加工現場と設計者との間で、公差に関する情報の交換・共有がうまくいかなくなってきている問題もあるという。

 

ある加工メーカーの技術者によると、昔と違って、今はCADデータだけを送ってきて、一言の説明を受けることもなく加工しなくてはならない状況になっているそうだ。

現代の製品は、何十枚何百枚もの図面が集まって漸くひとつの製品になるのが普通。だから、部品単体の公差とて、その製品全体の設計を把握した上での値でなければならない筈なのだけれど、今では、個々の部品を担当する設計者がそれぞれ別になっていて、誰が公差を検討すべきなのかが明確にならないという問題を抱えている。

 

今や、日本の製造業においてさえ、不十分な公差設定であっても、それがまかり通っている現実に直面している。

 

あるメーカの設計者は、公差について、「出来上がってきた部品の精度が悪いと、発注先の技術力が低いんだと決めつけていた。しかし実は、図面通りの部品である場合も多かった。国内の優秀な加工業者のおかげで、不十分な公差設定でも物が出来上がっていたため、勘違いしていた。」と述べているところをみると、これまで難なく製品が動いていたのは、実際の部品を作る日本の加工業者が、図面の公差以上の精度を持つ部品を納めていた部分に追うところが大であったのだと思われる。

 

この公差でいいのだと設計者に勘違いさせてしまう程の日本の「匠」な加工業者達。彼らの存在なくして日本の製造業はない。

 

公差の魔術は日本人だからこそ使うことができる。


海賊版対策とIpadの中身

公差は使い方によっては、海賊版対策にもなる。海賊版、所謂コピー商品は、普通、コピー対象にした製品を手にいれて、分解し、中の構造や部品を調べ上げて、それぞれの部品をそっくりに作って組み立てることになるのだけれど、当然それらの部品の寸法は入手した製品を実測した値を基準にすることになる。

 

だけど、いくら実測したからといって、その値はその部品単独の値に過ぎず、設計寸法に対してどれだけズレているのかまでは分からない。コピーする者が手にいれられるのは買えば手に入る実物製品のみであって、図面ではないから。図面がないと設計寸法も分からないし、無論、公差なんて分かる筈もない。

 

そこで、公差設計をきちんとして、各部品それぞれが公差をきちんと守らないと、動かないような設計をした製品があったとしたら、その製品のコピーは非常に難しくなる。公差を守らないと動かない製品をコピーしようとしたら、図面を盗み出すか、入手した製品の部品の寸法に対して、公差ゼロの部品を作るしかない。

 

唯一、統計的に大よその公差を割り出すという手がなくは無いのだけれど、公差を統計的に出そうとしても、何百何千と同じ製品を買っては片っ端から部品寸法を測るしかない。折角海賊版を作って一儲けしようと企んでいるのに、そんなことをしないと作れないようでは全く割に合わない。

 

長野県諏訪市に本社を置く、半導体製造装置メーカーのアスリートFAは、それまでの誤差補正用の調整機構を取り外し、公差設計をきちんとやることで目標性能を出せる目処をつけ、コピー製品の被害を防ごうとしている。


コンビニや自販機で売られているコカコーラは、元となる原液を炭酸水で割ったものなのだけれど、その原液の製法について特許出願を出していない。なぜかというと、製法を特許として開示してしまうことで、誰にでも真似できてコピー商品を作られてしまうから。公差も同じ。公差図面さえ流出させなければ、現物があっても公差は分からない。

 

どんなに正確にコピーした積もりでも、公差をきちんと守らないと全く動かないという設計の仕方は、作るほうにとっては大変なところもあるだろうけれど、十分に海賊版対策になる。また、そうして、設計時にきちんと公差を考え、それを実現する部品を揃えるということもまた技術の継承に繋がってゆく。

 

ハイブリッドや電機自動車の性能が、公差の厳密さに大きく左右されるような設計をすることができるのなら、コカコーラのようにどんなコピーが出てきたところで怖くない。あとは、ソフトの部分、デザインであるとか見た目をコピーされることへの対策。このあたりの対策が最後まで頭を悩ませることになるだろう。

 

さて、日本のメーカが気をつけるべきことは海賊版対策だけかといえば、今はそうでもなくなってきている。確かに、日本の部品メーカーの凄さのひとつは、彼らが作り上げる部品精度なのだけれど、今やそれが牙を剥いて日本に襲いかかってきている。アップルのIPADには、日本企業の部品がほとんど使われていない。中小企業の部品技術が海外に流出した結果がこうした事態を招くことになった。



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