目次
まえがき
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タイトル目次
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第1章 エコ技術と生産技術
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アメリカの新車燃費規制
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公差の魔術
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海賊版対策とIpadの中身
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第2章 資源と環境技術
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リサイクルされるレアメタル
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レアアース戦争
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微生物と植物が地球を救う
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日本が産油国になる日
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第3章 電気社会の到来
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宇宙太陽光発電衛星計画
海洋温度差発電
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直流送電技術
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ワイヤレス送電技術
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電気自動車の可能性
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キャパシタ搭載バス
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ハイウェイトレイン構想
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ギガンティック・トウキョウ
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第4章 食料生産技術
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野菜工場
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CAS冷凍技術
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クロマグロの養殖
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第5章 宇宙科学技術
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小惑星探査機「はやぶさ」
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アブレータ耐熱技術
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イカロスの翼
学術・科学技術予算について
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第6章 軍事技術
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CSMミサイル構想
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F22とF35はガンダムとジムくらいに違う
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自衛隊がF22を持つ意味
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空母型護衛艦「ひゅうが」
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第7章 日本の安全保障と国家モデル
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軍事力による平和
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ODAは肉食動物を太らせた
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アメリカの強さの源泉
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日本がスネ夫になるための2つの条件
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しずかちゃんに成りかけた日本
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かつての日本はノビスケだった
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日本が出来杉君になる日
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あとがき
あとがき

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第2章 資源と環境技術

 

 

 

 

 

 

 

第2章 資源と環境技術


リサイクルされるレアメタル

一昨年発売された新型プリウスは爆発的は販売実績を残した。発売直前の時点で先行予約は8万台を超え、発売後1週間で更に受注が伸びて、11万台を突破した。あまりの売れ行きに生産が追いつかないほどだった。エコカー減税の効果ももちろんあったのだろうけれど、ハイブリッド等の環境技術はますます注目され、購買意欲に一役買っているのは間違いない。

 

世界中にハイブリッド車が普及するころには、日本の自動車メーカーは、燃料電池車や水素自動車などで依然として技術的アドバンテージを確保している可能性は高い。

 

電気自動車が普及するのは良いとしても、その肝心の電池を製造するに為の資源もまた必要になってくる。特に電池に必要不可欠の白金、リチウム、レアアースなどのレアメタルなんかは、今後ますます重要が伸びることは確実。たとえば、電池に使われるリチウムは炭酸リチウムとして年間7~8万t産出している。そのうちチリ北部に位置するアタカマ塩原にある塩の鉱床でその多くを生産していて、年間4~5万tにも及ぶ。

 

もしも、世界の自動車年間生産台数にあたる6000万台にプリウス並みの小型電池を搭載するようにしたとしたら、炭酸リチウムの年間需要は現在の生産量の約6倍にあたる45万tになるという試算もある。

 

炭酸リチウムの価格は04年には、1Kgあたり1ドルだったものが05,06年で5ドルを超えている。これからますます資源獲得競争が激化するのは目に見えている。こうした資源獲得にたいする対策として考えられる方法は2つある。ひとつは資源埋蔵場所を新たに探索、発掘すること。もうひとつはレアメタルを回収・リサイクルする技術を開発すること。

 

前者については日本の排他的経済水域(EEZ)と大陸棚延伸可能域内にはレアメタルを含む海底熱水鉱床やコバルト、銅、白金を含むコバルト・リッチ・クラストなどが多数発見されている。海底熱水鉱床では世界第一位、コバルト・リッチ・クラストでは世界第二位の資源量があるという。

コバルト・リッチ・クラストとは深海底に存在する鉱物資源のひとつで、マンガン団塊の一種。コバルトを特に多く含むものをいう。中~南部太平洋などの古い基盤をもつ海山の山頂・斜面に広く発達していることが確認されている。海山の斜面や頂上などの岩盤の露出する場所に形成される特徴がある。

 

政府も、レアメタルなどを採取するための海底探査を行うことを計画していて、2018年度までの試験掘削などを行うことを目指している。

こうした海底資源採掘は、採算性が合わなくてなかなか開発が進んでいなかったけれど、近年の資源価格高騰によって大分採算性も見えてくるようになってきた。

 

2010年7月に、東京大学生産技術研究所の浦環教授らが、日本最東端の南鳥島沖深海底にある高さ5千メートル級の拓洋第5海山のマンガン・クラストの厚さを高精度で計測する海底調査に世界で初めて成功した。その調査で、レアアース(希土類)を豊富に含む巨大な鉱床が確認されている。結果の分析から、周辺の鉱石は2億トンに上ると試算する研究者もいる。政府は、この結果をうけ、商業採掘に向けて2011年度から本格調査に乗り出すことを決めている。

 

また、後者のレアメタル回収技術についても近年研究が進んできている。特に携帯電話や家電の廃棄物の山、所謂「都市鉱山」からレアメタルを回収する話は広く知られるようになってきた。都市鉱山からレアメタルを回収するに当たって問題になるのは、実はリサイクルそのものではなく収集コスト。

 

携帯電話には「モバイル・リサイクル・ネットワーク」という、通信事業者やメーカーがサポートしている回収ネットワークがある。だけど回収して得られた資源の利益は収集コストでほぼゼロになってしまうという。

それでも国内で携帯電話を回収しなければならないのは、中国が安く買い取るから。彼らは買い取った携帯を分解して、組み立て直し、型落ちの携帯電話として使う。それも壊れたらまた分解して、中の部品を再利用する。そして最後に金属資源を取り出す。まるでお茶を出涸らしになるまで使って、最後の葉っぱまで食べてしまうかのよう。

 

そんなことをされたら商売にならないから、たとえペイしなくても国内で回収する仕組みを作っている。それでも国内の回収率は20%前後。思い出として取っておいたり、電話帳やデータバックアップ用として使ったり、個人情報の流出の心配から回収に回さないケースが多いという。このあたりの問題を如何に解決してゆくかが今後の課題になっている。 

 

更には、工業廃水からレアメタルを回収する技術なんかも開発されている。この技術は、名古屋大エコトピア科学研究所の伊藤秀章特任教授らが開発した。レアメタルが入った廃水に、水酸化カルシウムを鉱化剤として混ぜて300℃位にまで熱して、10気圧の圧力を加えると、レアメタルが鉱物化するという。

 

そして、その回収率は実に99%にも及ぶ。この仕組みは自然界の鉱物が地中のマグマ熱で高温高圧化した地下水の中で固まって作られたことをヒントしたというから、実に理にかなった方法だといえる。しかも、工業排水から有害物質を分離しながら、レアメタルを回収できるから、採算性さえ合えば非常に有用な技術になるだろう。

 

今現在、世界のレアメタル資源は中国が握っている。というのも10~20年程前に中国はレアメタルの国内需要がないことを背景に、外貨獲得のためにレアメタルの輸出に補助金を出して安売り攻勢をかけていた。その結果、世界中の鉱山や製錬所が、中国産の安いレアメタルとの価格競争に負けて廃業に追い込まれていった経緯がある。

 

今や戦略資源として見られているレアメタル。ここを如何に抑えていくかが、今後の日本の成長を支える柱となる。

レアアース戦争

資源争奪戦が繰り広げられるのは、レアメタルだけではない。昨年、中国がレアアースの輸出停止措置を、日本だけでなく欧米にも拡大したことが波紋を呼んだことは記憶に新しい。2010年9月26日に、中国がレアアース輸出規制を発表して以来、国際社会では輸出拡大や代替資源開発を求める声がわき上がっていて、米国もWTOに提訴する構えを見せている。

 

特に、欧米諸国は日本ほどレアアースの在庫を保有していないから、輸出停止は欧米各国の経済に深刻な打撃を与える可能性があると報道されている。一部には、中国が「元高」など変革を迫る国際社会に対し、レアアースを外交カードにして揺さぶりを掛けているという観測もある。

 

レアアースとは、希土類元素(きどるいげんそ)のことで、スカンジウム 21Sc、イットリウム 39Y、ランタン 57La からルテチウム 71Lu までの17元素からなるグループのことで、発見された経緯や元素ごとに分離する際の状況によって、軽希土(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム)と中重希土(サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、イットリウム、他)に分類される。

 

レアアースは、1794年にフィンランドの学者J.Gadolinによって、1787年に発見されていた新しい鉱物中の、未知の元素の酸化物として発見された。その鉱物はスウェーデン産の希少鉱物であったことと、その酸化物が、融点が高くて還元されにくい酸化物であったため、“希な土(rare earth)”と名付けたことが、その語源とされている。

 

レアアースの各元素は、その科学的性質が非常に似ていて、高融点で熱伝導性が高いことや、通常の金属類より強い磁気を持つという特徴がある。特に、ランタンからルテチウムまでの15元素については、反応性などの差も殆どなく、元素の周期表の一か所にそれらが納められてしまう形になる。


従って、レアアースは、通常、鉱物中からは、常に一団となって発見され、しかも、科学的性質や反応性が似ているために、各々の元素の分離はもとより、分析することすら難しい。現在、レアアースの各元素は様々な用途に使用されているけれど、最も注目されているのは、磁石としての使い道。

 

ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする、Nd-Fe-B磁石は、永久磁石の中では最も強力とされ、また同性能を持つ、代替材料も見つかっていないそうなのだけれど、これに、中重希土類である、ジスプロシウムやテルビウムを添加することで、Nd-Fe-B磁石の高温域での保磁力や磁束密度が高まるという。

 

日本において、この、Nd-Fe-B磁石を一番使うのは、パソコンなどのハードディスクで、磁気ヘッドの位置決めに用いるVCM(ボイスコイルモータ)磁気回路にレアアース磁石が使われているのだけれど、日本製のハードディスクのほぼ全てに、このレアアース磁石が使用される。

 

更に、レアアースは、ハイブリッド車のモータやエアコンの室外機の駆動素子等や、ガラス研磨剤・添加剤、触媒、蛍光体等と幅広く用いられていて、現在のハイテク産業にとっては無くてはならない物質となっている。

 

世界のレアアース生産は、現在、その90%以上を中国が占めているのだけれど、その理由のひとつとして、他のレアアース鉱山がその生産量を急減させたことがあげられる。1997年時点では、レアアース酸化物の供給量は、中国が53300トンで遭ったのに対して、アメリカが20000トンを産出していたのだけれど、アメリカの最大のレアアース鉱山であるMountainPass鉱山が環境問題等で、1998年に生産量を大きく減少させ、2002年には生産休止となっている。

 

ただ、中国の寡占状態を懸念して、今回の問題が起こる前から、中国以外の供給源を求める動きが世界で様々に行われており、オーストラリアのMt.WeldプロジェクトやカナダのHoidas Lakeプロジェクト、Thor Lakeプロジェクトがあり、アメリカのMountain Pass鉱山も、20099月に採掘再開を発表し、2012年にはフル生産をする見込み。

中国国内最大のレアアース鉱山は、内蒙古自治区にある包頭の白雲鄂博鉱山で、軽希土を中心に生産、現在世界で生産されるレアアースの約半分を供給している。中国は元々、レアアースを国家戦略物資と位置付けていて、中国国内の内需優先と、輸出の高付加価値製品へシフトさせる為の政策を次々と打ち出していた。一覧にすると次のとおり。

 

2002年:外国企業や合弁企業(中国企業と海外企業)のレアアース産業への参入の禁止

2004年:輸出増値税還付制度撤廃(鉱石について撤廃)

2005年:輸出増値税還付制度撤廃(酸化物について撤廃)

2005年:海外から鉱石を中国に持ち込んで中間製品に加工して輸出する貿易の禁止

2006年:輸出税の増税と輸出許可枠の削減

 

このうち、輸出許可枠の削減については、中国は毎年のように行っており、今回の輸出許可枠の削減もそれに従ったものと思われるのだけれど、ここまでくると、はっきりとレアアースを外交カードとして使っていると言っていいだろう。

 

今、問題となっているのは、先ほども述べた、ハードディスクやモータ等に使用される、Nd-Fe-B磁石の高温域での保磁力・磁束密度を高める、ジスプロシウムやテルビウムといった、中重希土類の生産および確保なのだけれど、その量が多く含有されているのは、現在は、中国の江西省、湖南省、広東省、福建省等で生産される花崗岩風化型鉱床だけ。(花崗岩風化型鉱床とは、地表に露出した花崗岩が地表水等により風化され土壌を形成、その風化土壌中に含まれる粘土鉱物に希土類元素イオンが吸着されることにより生成した鉱床のこと。採掘しやすく値段が安い。)

 

従って、新たな、レアアース鉱山開発が期待されているのは、中重希土に富む鉱床の開発。これらについては、独立行政法人産業技術総合研究所が、日本国内のマンガン鉱石の分析によって、海底で噴出した玄武岩とその上に堆積した珪質岩に挟まれた、「層状マンガン鉱床」と呼ばれる鉱床に、中重希土類が大量に含まれている分析結果を発表している。

報告によれば、この鉱床の鉱石は赤鉄鉱を伴う鉄マンガン鉱石の組成を持っていて、これまで希土類元素鉱床開発時にしばしば問題となっていたトリウムやウラン等の放射性元素がほとんど含まていないという利点があるそうだ。

 

これらの鉄マンガン鉱石に含まれる希土類元素含有量、特に重希土類元素含有量は、中国の花崗岩風化型鉱床のそれよりも一桁高いというから、この層状マンガン鉱床が開発されると、その生産量にもよるけれど、中国産レアアースの戦略的価値は大きく減衰する。

 

日本では層状マンガン鉱石は既に終掘しているけれど、同様の鉱床は環太平洋地域や南アフリカ等世界各地に広く分布していて、今後の開発が期待されている。日本も積極的に、層状マンガン鉱床の開発を進め、レアアースの中国依存から脱却していくことも考える必要はあるだろう。

微生物と植物が地球を救う

2010年11月末、NASAが地球外生命に関する発表を12月2日に行なうとアナウンスして、すわ、宇宙人発見の発表か、と一部で騒ぎになったけれど、その内容は、猛毒である「砒素」を食べて増殖する異質な生命体の発見だった。

 

NASAの宇宙生物学研究所に所属するフェリッサ・ウルフ・サイモン氏は去年「リンの代わりに砒素を摂取する生物の可能性がある」との論文を発表していて、サイモン氏のチームは、ヨセミテ国立公園南東の火山渓谷にある、アルカリ性で、塩分濃度が高く、砒素の豊富なモノ湖で細菌を採取した。

 

「GFAJ-1」と名付けられた、この特種な細菌は、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄と並び生物に欠かせない元素「リン」の代わりに砒素を摂取して、DNAとタンパク質を作り出すという。正に砒素を食べる微生物。

 

サイモン氏のチームはモノ湖の細菌をシャーレで培養する過程で、リンの量を徐々に減らして、砒素を増やしていき、放射線トレーサーを用いて化学分析したところ、GFAJ-1は砒素を細胞内に取り込みんで代謝していることが判明した。

 

この発見で、これまでの生物の定義やDNAの基礎概念を覆しただけでなく、地球外生命探査の可能性も広がったという。

 

人体にとって有毒な砒素を食べてくれる微生物が実在するということは、これを培養することが出来れば、砒素に汚染された土地や河川を、浄化できる可能性に繋がる。

 

実は、この「GFAJ-1」のように、砒素を細胞内に取り込みんで代謝している訳ではないけれど、鉛や砒素などの有害廃棄物を「食べる」生物がイギリスで発見されている。

 

それは、ミミズ。

イングランド地方やウェールズ地方などにある鉱区の土壌から発見された、この「ヘビメタ・ミミズ」は、普通のミミズなら死んでしまうような高濃度の重金属を含んだ土壌に生息し、鉛、亜鉛、砒素、銅などの重金属を好んで食べるという。

 

イギリスのレディング大学のマーク・ハドソン氏らの研究チームによると、このミミズは、特別なタンパク質で砒素や鉛を包み込んで不活性化して、体に影響のない安全な状態にしているそうだ。

 

このミミズから排泄された金属は、どの程度の毒性が残っているかはっきりしていないものの、地中から植物が吸い上げやすい状態になっているらしく、将来的には、このヘビメタ・ミミズを汚染地域に放して、更に植物を利用して毒性のある金属を抽出することで土壌の回復や、植物から金属を効率的に取り出せる可能性があるという。

 

この植物を利用して、土壌を浄化したり、金属を回収したりする方法は「ファイトレメディエーション」と呼ばれ、近年色々と研究が進んでいる。ファイトレメディエーション(phytoremediation)とは、ギリシャ語で植物を意味するphyto- とラテン語で治療・修復を意味するremediation と結びつけた言葉で、植物が根から水分や養分を吸収する能力を利用して、土壌や地下水から有害物質を取り除く方法のことを指す。

 

ファイトレメディエーションは植物内での浄化方法の特徴から、大きく次の5つに分類される。

 

1)ファイトエキストラクション(Phytoextraction

2)ファイトスタビライゼーション(Phytostabilization

3)ファイトスティミュレーション(Phytostimulation

4)ファイトボラティリゼーション(Phytovolatilization

5)ファイトトランスフォーメーション(Phytotransfomation


「ファイトエキストラクション」とは、有害汚染物質に高い耐性と蓄積性を持った植物を利用して、土壌や水に含有される重金属等を植物体内に吸収、蓄積させる方法で、使用に際しては、体内に蓄積できる重金属濃度が高く、かつ、たくさん生える植物が好ましい。

 

「ファイトスタビライゼーション」とは、根や根細胞表面および根細胞内に無機、有機汚染物質を沈殿・吸収・固定化させる方法で、主に汚染の拡散を防ぐことが目的で利用され、汚染物質の除去・分解は目的としない。

 

「ファイトスティミュレーション」とは、根から分泌される酵素などによって活性化された根の周りの微生物の働きで、汚染物質を分解、無害化させる方法。

 

「ファイトボラティリゼーション」とは、植物が無機・有機汚染物質を吸収して、大気中に気化させる方法のことで、例えば、インディアンマスタードは、セレンを無機化して、大気中に気化する能力があることが報告されている。また、ユリノキには、有機水銀を金属水銀に還元して、気化放出する作用があると報告されている。

 

「ファイトトランスフォーメーション」とは、植物体内の酵素等で、無機・有機汚染物質を吸収・分解し、無害化する方法で、窒素酸化物や硫黄酸化物などの大気汚染物質を植物体内に取り込んで、窒素源・硫黄源などの栄養素に変換する。

 

また、これら以外にも、向日葵が、放射性物質を吸収することが知られており、セシウム137を根に、ストロンチウム90を花に蓄積することが判明している。何でも、危険性が失われるまで30年以上かかる放射性物質を、わずか20日間で95%以上除去できる能力があるという。

最近では、ファイトエキストラクションの新しい例として、これまで鉛を体内に取り込むことが知られていた「ヒョウタンゴケ」が金をも蓄積することが分かった。

 

理化学研究所と非鉄金属大手「DOWAホールディングス」の研究グループは、平成20年から、コケを用いた重金属廃水処理装置の開発研究をしていたのだけれど、その中で、ヒョウタンゴケが金も取り込むことを発見している。

 

このヒョウタンゴケは、最大で乾燥重量の約10%もの金を蓄積し、鉛なら70%、プラチナでも数%蓄積する。更には、蓄積される場所が大まかに分かれているそうで、回収上のメリットも大きいという。研究グループは、貴金属をわずかに含む廃液から、金を再回収する技術として実用化を目指すとしている。

 

また、先のヘビメタ・ミミズのように、微生物やバクテリアでも同様の現象が発見されている。広島大の高橋嘉夫教授らは、15種類のレアアースが解けた溶液に、大腸菌や桿菌などの6種類の微生物を入れると、微生物の細胞表面にレアアースが集まり、1万倍以上も濃縮されることを報告している。

 

レアアースが集まった微生物を酸にさらせば、レアアースが酸に溶けるので、容易に回収できる。しかも、濃縮率の違いを利用すれば、複数の種類のレアアースが混在した溶液から、狙った種類だけを分離・精製できるというから、元々、科学的性質が似ていて、分離生成そのものからして難しいレアアースにとっては、貴重な技術になると思われる。

 

さらに、鉱石をエネルギー源にしている、バクテリアの一種には、代謝を通じて鉱石を分解する際に、硫化した金属鉱石や精鋼を排出するものがあるという。

 

この「バイオリーチング(生物冶金)」と呼ばれるプロセスは、近年、貴重な鉱石を抽出する重要な方法として注目を集めていて、従来の溶融精錬といった費用のかかる方法に対して、ある程度の規模であれば、溶融精錬の半分程度の費用で済むという。

山形県の慶應義塾大学先・端生命科学研究所の冨田勝氏は、「微生物の中には金属イオンに反応するものがあり、うまく利用すれば低品位鉱石から銅を精製することができる。最終的な目標は、低品位鉱石から銅を精製するバイオテクノロジーを確立することだ」とコメントしている。

 

既に、このバイオリーチングは、世界のおよそ20の銅山で活用されている。もちろん、バイオだから廃棄物も少なく、地球に優しい。環境破壊が問題視されている地球を救うのは、微生物と植物なのかも知れない。


日本が産油国になる日

2010年12月、藻類に「石油」を作らせる研究で、筑波大のチームが従来より10倍以上も油の生産能力が高いタイプを沖縄の海で発見したと発表した。

 

何でも、2万ヘクタール程度の生産施設で、日本の石油輸入量に匹敵する量を生産できるそうだから、日本のエネルギー問題は大幅に改善する。なんとも凄いもの。

 

藻から石油なんて、と意外に思う向きもあるかもしれないけれど、元々、植物類には油脂成分があり、古くは菜種油など、植物から油を取り出すことは行われてきた。

 

これまでも、バイオ燃料として、大豆やトウモロコシ、アブラナなどから燃料を取り出す研究が行われてきたのだけれど、陸の上で生える植物から燃料を取り出そうと思えば、それらの植物を植えるための土地が必要になるから、一定規模以上の燃料を取り出そうとすれば、それなりの面積の土地を必要とする。

 

たとえば、アメリカで利用されている化石燃料を全てバイオ燃料で代替するためにどれくらいの土地が必要になるかを試算したところ、大豆ならアメリカの約2倍の面積、とうもろこしでもアメリカの面積の半分くらい必要になってしまうそうだ。

 

いくら環境にやさしいバイオ燃料とはいえ、その為にアメリカ国土全部の土地が必要となったら、今度は肝心の食糧用の作物が作れなくなってしまう。

 

従って、バイオ燃料として好ましい植物は、陸上でなくても生息でき、また、広大な面積をも必要としないものが求められていた。

 

そこで注目されたのが「藻」。

藻の中には、体内で炭化水素もしくは油脂類を生産する種類があって、高いものでは藻の体重量の60%以上の炭化水素類を蓄積するものもあると報告されている。

 

バイオ燃料として主に使用される藻は、微細藻類と呼ばれる単細胞を単位生命体とする顕微鏡サイズの小さな藻。別名、植物プランクトン。微細藻類は、約30億年前に地球の海洋に出現した最初の生物の1つで、地球最古の生命体とも言われている。

 

微細藻類は、葉緑素を持っているのだけれど、生命活動により得られた脂質を細胞内に多く蓄積することで浮力を得て、海水の表面近くを漂うことで光合成を行い、大気中の二酸化炭素を固定化し、酸素を生成する。

 

数十億年の歳月は、微細藻類の大量の死骸を海底に堆積させ、その体内に含まれていた油脂成分がやがて石油へと変化したと言われている。微細藻類は極端なことをいえば、どこでも生息できる「タフな藻」で、水中はもちろん、雪の上、木肌、果てはガードレールの表面でも生息でき、温泉、空中などからも採取可能だという。

 

しかも、微細藻類は、単位面積あたりの生産性が非常に高く、陸生植物のそれと比較して1桁上のポテンシャルを持っている。1ヘクタールの面積で、1年あたりの油脂生産能力は、トウモロコシが0.2、アブラナが1.2であるのに対して、微細藻類は47から140もある。藻は言うまでもなく、水生生物だから農地を使う必要もない。

 

こうした微細藻類の中でどの種類の藻を使えば、より効率的に石油が生産できるかについて、色々と研究がおこなわれてきたのだけれど、これまで一番有力視されていたのが、「ボトリオコッカス」と呼ばれる種類の藻。

 

これは、淡水に生息する藻類で、緑~赤色で30500μmのコロニーを形成し、細胞内及びコロニー内部に、重油の一種である炭化水素を乾燥重量の約20~75%も蓄積するという。

このボトリオコッカスを使用することで、1ヘクタールあたり、年間で約118トンの油を生産することができるという。だけど、今回、沖縄の海で新しく見つかった微細藻は、このボトリオコッカスの遥か上をゆく生産能力を持つ優れモノ。

 

オーランチオキトリウムと呼ばれる、この微細藻は、球形で直径は5~15マイクロメートル。同じ温度条件での培養でも、ボトリオコッカスに比べて10~12倍の量の炭化水素を作るそうで、国内の耕作放棄地などを利用して大規模な生産施設を作れば、緑の油田となる可能性があるという。

 

この微細藻類による油の生産については、アメリカで大規模な投資が相次いでいて、2008年9月に、ビルゲイツ氏が微細藻のオイル化を進めるSapphire Energy社に90億円投資しているし、石油メジャーのシェブロン(Chevron Corp.)NREL(National Renewable Energy Labs)は、藻類を原料とするジェット燃料の5年間の共同研究を2006年からスタートしている。

 

また、米国のグリーンフーエル社(Green Fuel Corp.)は、藻類の培養設備を発電プラントに隣接して設置し、発電プラントの排ガスのCo2を吸収させながらバイオ燃料の原料となる藻を生産し、温室効果ガスの削減に繋げる一石二鳥のシステム開発を進めている。

 

アメリカ政府は、こうした民間の動きを後押ししていて、アメリカエネルギー省は、2008年度のバイオ燃料産業化開発への投資(約700億円)のうち、45億円を藻類バイオ燃料ワークショップ立ち上げと運営のために投資し、微細藻類由来バイオ燃料に関する研究開発の具体的なロードマップ作成を開始している。

 

オバマ政権のグリーンディール政策が、石油代替エネルギーの開発を強力に加速させていることは間違いない。日本政府にも、今回の発見を機に、バイオ燃料戦略の後押し政策を期待したい。