目次
まえがき
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タイトル目次
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第1章 エコ技術と生産技術
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アメリカの新車燃費規制
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公差の魔術
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海賊版対策とIpadの中身
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第2章 資源と環境技術
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リサイクルされるレアメタル
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レアアース戦争
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微生物と植物が地球を救う
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日本が産油国になる日
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第3章 電気社会の到来
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宇宙太陽光発電衛星計画
海洋温度差発電
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直流送電技術
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ワイヤレス送電技術
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電気自動車の可能性
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キャパシタ搭載バス
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ハイウェイトレイン構想
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ギガンティック・トウキョウ
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第4章 食料生産技術
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野菜工場
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CAS冷凍技術
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クロマグロの養殖
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第5章 宇宙科学技術
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小惑星探査機「はやぶさ」
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アブレータ耐熱技術
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イカロスの翼
学術・科学技術予算について
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第6章 軍事技術
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CSMミサイル構想
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F22とF35はガンダムとジムくらいに違う
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自衛隊がF22を持つ意味
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空母型護衛艦「ひゅうが」
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第7章 日本の安全保障と国家モデル
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軍事力による平和
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ODAは肉食動物を太らせた
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アメリカの強さの源泉
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日本がスネ夫になるための2つの条件
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しずかちゃんに成りかけた日本
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かつての日本はノビスケだった
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日本が出来杉君になる日
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あとがき
あとがき

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第1章 エコ技術と生産技術

 

 

 

 

 

 

 

第1章 エコ技術と生産技術


アメリカの新車燃費規制

2010年3月31日、アメリカ米政府は新車の燃費規制を2012年型から段階的に引き上げ、16年型までにガソリン1ガロン当たり34.1マイル(1リッター当たり約14キロ)とする強化策を発表した。

 

この規制は、年平均で5%の改善を求め、最終的に平均燃費を現状より3~4割引き上げるもの。これを実現するための環境技術を巡って自動車メーカーの競争が活発になると見られている。

 

さぞかし、アメリカの自動車会社も困るのかと思いきやそうでもないらしい。ベンチャーキャピタリストのBilal Zuberi氏によれば、ほとんどの世界的な自動車メーカーは、もっと効率の良いモデルを欧州で既に販売しているため、新しい基準を満たすことは可能であるという。

 

EUは、地球温暖化問題に対して、早い時期から高い関心を寄せていて、欧州自動車工業会(ACEA)がCo2自主規制を導入している。対象は、乗車定員9人以下の乗用車で、その目標値は2008年にガソリン車でリッター16.6Km、ディーゼル車ではリッター18.8kmとなっている。なるほど、この自主規制をクリアできるのであれば、今回のアメリカの燃費規制なぞ、問題にならないだろう。

 

だけど、中小型車ならいざ知らず、3L、5Lといった高排気量の車種となると、この基準を満たすのはガソリン車のままでは難しい。

 

たとえばレクサスの3.5LカーであるGS350の燃費はカタログスペックでは、9.6(km/L)。これが、ハイブリッドの450hとなると、同じ3.5Lでも14.2Lに跳ね上がる。日本車であっても、大排気量となるとガソリン車のままでは、この燃費規制をクリアすることは厳しくなる。

 


従って、遅かれ早かれ、全てのガソリン車はハイブリッドに移行すると予想される。事実、中小型では、日本を始め、どこのメーカーでもハイブリッド車を開発し、販売している。

 

今はまだ、日本のハイブリッド車が優勢だけれど、あと10年もすれば、外国産の車もみんなハイブリッド車になって日本の優位性は無くなっているかもしれない。自動車産業の復活に、アメリカが本気を出してきたとするならば、日本もうかうかとしていられない。

 

では、燃費規制対象となる新車ではなく、中古車の分野ではどうだろうか。アメリカでは、1~2年乗ったくらいでは、日本の様に値段ががくんと下がることもなく、いい値で取引されている。

 

今回の燃費規制にしても、中古車は対象外だから、こちらの分野では日本の中古車がまだしばらくは幅を利かせるかと思いきや、一概にはそうとも言えなくなっている。というのも、「アメ車」が燃費の悪い車の代名詞であったのは昔の話で、今や中・小型のガソリン車では、もう日本車と遜色ないレベルにまで燃費が向上しているからだ。

 

国土交通省は、自動車の燃費性能を評価し、毎年「燃費一覧」として公表しているけれど、平成22年度版から、日米自動車の燃費を比較すると次のようになっている。

 

トヨタ マークXジオ:2.4L 燃費 12.012.8 (km/L)

フォード エスケープ:2.3L 燃費 10.0 (km/L)

 

アメリカ車の1.5Lクラスのデータがないので、2.5Lクラスでの比較だけれど、このクラスでも、さほど巷で言われるほど、日本車とアメリカ車の燃費差はないように思われる。

とはいえ、リッター2Kの差は、積み重なれば馬鹿にならない。燃費がリッター10Kと12Kとでは、100Km走ったときには、1.7Lの差。リッター100円なら170円の差となって跳ね返ってくる。すると、やはり、中古車や中小型のガソリン車だと日本車の独壇場なのか。

 

オバマ大統領は2010年3月に、大西洋岸とメキシコ湾沿岸などでの石油・天然ガス探査を拡大する方針を発表した。この中には、過去20年間禁止されていたバージニア州沖での掘削も新方針に含まれるものとみられている。要は石油や天然ガスも自給しようということ。

 

注目すべきはこの発表が、新車の燃費規制の発表と同じ日だという点。筆者はこれを燃費規制とセットの政策ではないかとみている。石油が自給できるようになると、中東の原油価格にガソリン価格が影響されることも無くなるし、輸送費も要らなくなるから、今よりも更にガソリンが安くなる可能性がある。

 

ガソリンの値段そのものが安くなると、多少の燃費の差は関係なくなってくるから、アメリカ車でも売れる余地が増えることになる。こうしてみると、オバマ大統領ははっきりとアメリカの自動車産業の復活を狙っていると見ていいように思われる。

 

事ほど左様に、アメリカは戦略的に動く。

公差の魔術

では、アメリカの企業や政府が本気を出して自身の製造業の立て直しを行ってきたら、日本は絶対立ちうちできないのか。

 

日本の製造業の強みの一つとして、個々の部品の精度が挙げられる。これはなかなか他国では真似できないところ。部品の精度は製品の信頼性に直結するから、まだまだこの分野で戦える余地はある。

 

部品の精度を表す目安として「公差」というものがある。公差(こうさ)とは、機械工学に代表される工学において許容される差のことで、基準値に対して、許容される範囲の最大値と最小値の差を公差という。

 

たとえば、基準寸法50mm、公差±0.3mmと設定された部品があったとしたら、その許容寸法は、50mm-0.3mmから50mm+0.3mmの間、即ち、49.7mm以上50.3mm以下ということになる。

 

設計寸法は理論値だから、実物の寸法はどうしても少しはズレる。そのズレ分を考慮しながら、設計をするのだけれど、そのズレ分をどこまで許すかが公差の値となる。部品の公差を厳しくすればするほど、製品の組み立て工程でも使用時にも、問題は発生しにくくなるけれど、部品の単価はうんと高くなる。逆に公差を甘くして、単価を下げ言おうとすればするほど、組み立て後に装置が動かなかったり、トラブルの原因となる。

 

ここの公差に対する出来上がり寸法の精度が日本の製造業の強み。

 

公差±0.3mmと設定された部品を作るとき、海外メーカーだと、公差指定が±0.3mmなのだから、それを満たしてさえいれば、問題なし、として納品してくる。図面通りの出来上がり。契約どおりで何の問題もあろう筈がない、と。


だけど、日本の製造業、特にその道の""がいるようなところは違う。たとえ、公差±0.3mmと設定されていたとしても、匠はど真ん中を狙って、公差±0.1mmくらいの部品を作ってしまう。それも、殆ど全数にわたってその精度で仕上げて納品してくる。

 

だから、同じ公差±0.3mmの図面を渡しても、方や公差ギリギリの何時トラブルかも分からない部品が納められ、もう一方は、同じ値段、同じ納期で、本当は何倍もの値がするであろう超高精度の部品が納められることになる。

 

中には、あまりにその加工精度が凄くて、世界でその人しかつくれない匠だって、日本には沢山いる。たとえば、埼玉で辻谷工業を営む、世界一の砲丸作り職人である辻谷さんが作る"辻谷砲丸"もそのひとつ。辻谷さんの砲丸づくりに掛ける情熱には、日本の匠のプライドがある。

 

辻谷さんは13歳で働きはじめ実に60余年のキャリアを持つ超大ベテラン。その探究心にはすごいものがある。辻谷さんは、16歳から4年間夜学に通い、機械・製図・実習を学ぶ傍ら、同級となった30代、40代の大人から社会のいろいろな話を教わったという。そして、26歳で独立。東京オリンピックでは障害走用のハードル作りで頭角を現し、やがて砲丸づくりに取り組むことになる。

 

砲丸の国際規格は直径110~130mm、重さ7.265~7.285Kg。ところがこのとおりに作るのは実に難しい。砲丸を作り始めた頃は、重さをターゲットに作ると直径が収まらず、直径に狙いをつけると今度は重さが合わない。夏と冬では大きさが違ってくるし、作る度に違った出来になると述懐している。

 

辻谷さんが偉かったのは、鋳物工場に作り方が悪いんだというのではなくて、逆に鋳物工場に修行に出たこと。鋳物づくりから見直してみようという思いからだった。


鋳物工場で修行するうちに、溶かして湯状にした鋳鉄の底に沈んでいる部分には比重の重い不純物がたくさん混じっていることに気づく。

 

そこからがまた凄かった。150個の砲丸を吹いてもらい、ひとつひとつに番号をつけて、同じ大きさに削ると片端からデータをとっていった。すると最初から30個くらいまでは重さに変化がなかったのだけど、40個、50個と次第に重くなり、100個から150個でははっきりと重くなっていったことが分かった。

 

こうした研究を延々と続け、砲丸の砂型に流し込む湯口と底とではかすかな違いがあるとか、熱された鉄球の冷却速度によっても違いが生じるとかのデータを集めていったという。更に、砲丸を削りだす作業においては、砲丸の中心と重心がずれないように、ひとつひとつ削り方を変える。その加減は、削るときの音や削った表面の金属のツヤで判断しているという。機械ではまったく対応できない匠の技。こうして砲丸の中心と重心が一ミリも狂わない世界最高唯一の辻谷砲丸が出来上がる。

 

唯一というのは、他の誰にも同じことはできないということ。

 

辻谷砲丸は他のメーカーのようにペンキなど塗っていない無色の仕上がりなのだけれど、これが唯一無二の砲丸の証明になっている。他のメーカーは砲丸は、砲丸の中心と重心をのズレを最終的に合わせこむために一度作ってから、中をくり抜いて鉛を詰めて調節している。ペンキはそれらを隠すために塗っている。

 

そんな辻谷さんの技術をアメリカの大手スポーツメーカーが買いに来た。技術を教えてライセンスをくれといってきたのを辻谷さんはきっぱりと断った。そこには職人の探究心とプライドがあった。「この砲丸をつくる技術はわたしだけのものじゃない。砲丸づくりにはたくさんの人が協力してくれました。それをお金で売ることはできません。」と。


こうした匠たちが作り出す部品精度に支えられた日本製品の信頼性が低かろう筈がない。日本で実績十分の部品の図面をそのまま海外に持ちこんで、現地のメーカーに作らせても、そりがあったり、バリがあったりして、後で問題になることも多いという。同じ図面を使って、同じ部品をつくって、同じ機械を組み立てたとしても、同じ性能が出ないというマジック。その秘密とは何だろうか。

 

一個の部品だけをみれば、公差の範囲内であったとしても、公差ギリギリの部品が何万個と集まれば、全体の歪みは相当なものになる。だから、部品1個の公差といっても、その値は、装置全体を組み上げたときを想定した上での値でなくちゃいけない。

 

ところが、今や、その公差の値が必ずしも装置全体の動作を保証するものとは限らなくなってきているという。その理由の一つとして、激しい競争の中、コストダウンを迫られる設計者が、少しでも設計コストを安くあげようと、公差の検討時間を端折って、既存製品の公差の流用を行なうケースが増えている実態がある。

 

確かに、既存製品の設計公差を流用すれば、その分だけ設計期間は短縮できることは間違いない。だけど、それをいつまでも繰り返していたら、どういう理由でその値に公差が決められたのかという根拠が失われ、技術力の低下を招くことになる。

 

何年も前の公差を、今でも何の検証もなく当たり前のように使い続け、その結果、出来上がった製品の性能が出ないなどのトラブルに見舞われることだってある。

 

また、年々進歩する加工技術に対して、加工現場と設計者との間で、公差に関する情報の交換・共有がうまくいかなくなってきている問題もあるという。

 

ある加工メーカーの技術者によると、昔と違って、今はCADデータだけを送ってきて、一言の説明を受けることもなく加工しなくてはならない状況になっているそうだ。

現代の製品は、何十枚何百枚もの図面が集まって漸くひとつの製品になるのが普通。だから、部品単体の公差とて、その製品全体の設計を把握した上での値でなければならない筈なのだけれど、今では、個々の部品を担当する設計者がそれぞれ別になっていて、誰が公差を検討すべきなのかが明確にならないという問題を抱えている。

 

今や、日本の製造業においてさえ、不十分な公差設定であっても、それがまかり通っている現実に直面している。

 

あるメーカの設計者は、公差について、「出来上がってきた部品の精度が悪いと、発注先の技術力が低いんだと決めつけていた。しかし実は、図面通りの部品である場合も多かった。国内の優秀な加工業者のおかげで、不十分な公差設定でも物が出来上がっていたため、勘違いしていた。」と述べているところをみると、これまで難なく製品が動いていたのは、実際の部品を作る日本の加工業者が、図面の公差以上の精度を持つ部品を納めていた部分に追うところが大であったのだと思われる。

 

この公差でいいのだと設計者に勘違いさせてしまう程の日本の「匠」な加工業者達。彼らの存在なくして日本の製造業はない。

 

公差の魔術は日本人だからこそ使うことができる。


海賊版対策とIpadの中身

公差は使い方によっては、海賊版対策にもなる。海賊版、所謂コピー商品は、普通、コピー対象にした製品を手にいれて、分解し、中の構造や部品を調べ上げて、それぞれの部品をそっくりに作って組み立てることになるのだけれど、当然それらの部品の寸法は入手した製品を実測した値を基準にすることになる。

 

だけど、いくら実測したからといって、その値はその部品単独の値に過ぎず、設計寸法に対してどれだけズレているのかまでは分からない。コピーする者が手にいれられるのは買えば手に入る実物製品のみであって、図面ではないから。図面がないと設計寸法も分からないし、無論、公差なんて分かる筈もない。

 

そこで、公差設計をきちんとして、各部品それぞれが公差をきちんと守らないと、動かないような設計をした製品があったとしたら、その製品のコピーは非常に難しくなる。公差を守らないと動かない製品をコピーしようとしたら、図面を盗み出すか、入手した製品の部品の寸法に対して、公差ゼロの部品を作るしかない。

 

唯一、統計的に大よその公差を割り出すという手がなくは無いのだけれど、公差を統計的に出そうとしても、何百何千と同じ製品を買っては片っ端から部品寸法を測るしかない。折角海賊版を作って一儲けしようと企んでいるのに、そんなことをしないと作れないようでは全く割に合わない。

 

長野県諏訪市に本社を置く、半導体製造装置メーカーのアスリートFAは、それまでの誤差補正用の調整機構を取り外し、公差設計をきちんとやることで目標性能を出せる目処をつけ、コピー製品の被害を防ごうとしている。


コンビニや自販機で売られているコカコーラは、元となる原液を炭酸水で割ったものなのだけれど、その原液の製法について特許出願を出していない。なぜかというと、製法を特許として開示してしまうことで、誰にでも真似できてコピー商品を作られてしまうから。公差も同じ。公差図面さえ流出させなければ、現物があっても公差は分からない。

 

どんなに正確にコピーした積もりでも、公差をきちんと守らないと全く動かないという設計の仕方は、作るほうにとっては大変なところもあるだろうけれど、十分に海賊版対策になる。また、そうして、設計時にきちんと公差を考え、それを実現する部品を揃えるということもまた技術の継承に繋がってゆく。

 

ハイブリッドや電機自動車の性能が、公差の厳密さに大きく左右されるような設計をすることができるのなら、コカコーラのようにどんなコピーが出てきたところで怖くない。あとは、ソフトの部分、デザインであるとか見た目をコピーされることへの対策。このあたりの対策が最後まで頭を悩ませることになるだろう。

 

さて、日本のメーカが気をつけるべきことは海賊版対策だけかといえば、今はそうでもなくなってきている。確かに、日本の部品メーカーの凄さのひとつは、彼らが作り上げる部品精度なのだけれど、今やそれが牙を剥いて日本に襲いかかってきている。アップルのIPADには、日本企業の部品がほとんど使われていない。中小企業の部品技術が海外に流出した結果がこうした事態を招くことになった。


米調査会社のアイサプライは、iPadの使用部品に関するリポートとして、主要14部品の名称と部品を供給した企業名、部品ごとのコストをまとめた「部品表」を自社のサイトで公開している。主要部品の供給企業には、韓国や台湾のメーカーがずらりと並び、日本の大手メーカーの名前はゼロ。唯一、TDK子会社の香港企業アンペレックス・テクノロジーが、バッテリー供給会社として名を連ねているだけ。

 

これを何時までも放置すると、競争力を失った企業からバタバタと潰れ、税収は減り、結果として日本の経済繁栄は終わりを告げることになる。当然失業者は益々増大し、どんどん貧乏になる。

 

だから、今政府がやることは、しっかりとした成長戦略を示して、国内産業を立て直すこと。日本を守り、経済成長路線をしっかり敷くこと。成長戦略を示さないまま、既存技術の海外流出を加速を放置してはいけない。

 

今や、オバマ政権の政策シフトによって、アメリカの産業が金融からものづくりにシフトしていこうとしている。更に競争相手が増えることは確実だろう。