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角を曲がれば蜜柑蛸
食べ捨てられた黄色い皮が
海へかえるか 山へかえるか
迷いに迷ってただひしめいて
やがてそこから木が生える
木は育ってもまだ迷い
海とも山ともつかぬ実を
枝も折れよと実らせて
やがてそれらも蛸になる


角を曲がれば二本猿
手足が合わせて二本の猿の
欠けているのはどの手か足か
残ったふたつの掌が
覆っているのはどの眼か口か
それで占うだれかの未来
当たらぬかわりに猿が死ぬ


角を曲がれば塗炭飴
塀から突き出す手の上の
苦くて甘いその飴に
そーっとそーっと近づいて
舌が触れるか触れないか
あとはうしろへ一目散
転べば自分も飴になる


角を曲がれば五寸首
首のみじかいキリンの群れが
みじかい草を食んでいる
草を食べると足が伸び
四本いずれも長さが違い
舌が梢に届いても
足元つねに定まらず
気付けば空を飛んでいる


角を曲がれば苦悶蜂
羽音を聞けば痛痒く
姿はどこかおかしくて
飛行の軌跡が雄弁に
生きる不思議をものがたる
水に落ちると火を噴いて
ふり向く前に消えている


角を曲がれば時間鰐
時計をくわえた大きな顎の
あいだに頭をねじこんで
顎が時間を砕くなら
頭も共に砕かれようと
時を忘れて待ち続け
アラーム音で飛び起きて
終わりの列車を乗り逃がす


角を曲がれば絵本橋
ページを開けば飛び出すアーチ
あなたも飛び出し橋の上
流れる水を眺めてる
水は手前に飛び出して
読み手の膝で池となり
あなたがそこへ飛び込むと
水面を突きぬけ床へ落ち
季節知らずの紙吹雪

この本の内容は以上です。


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