目次

閉じる


<<最初から読む

1 / 1ページ

角を曲がれば蜜柑蛸
食べ捨てられた黄色い皮が
海へかえるか 山へかえるか
迷いに迷ってただひしめいて
やがてそこから木が生える
木は育ってもまだ迷い
海とも山ともつかぬ実を
枝も折れよと実らせて
やがてそれらも蛸になる


角を曲がれば二本猿
手足が合わせて二本の猿の
欠けているのはどの手か足か
残ったふたつの掌が
覆っているのはどの眼か口か
それで占うだれかの未来
当たらぬかわりに猿が死ぬ


角を曲がれば塗炭飴
塀から突き出す手の上の
苦くて甘いその飴に
そーっとそーっと近づいて
舌が触れるか触れないか
あとはうしろへ一目散
転べば自分も飴になる


角を曲がれば五寸首
首のみじかいキリンの群れが
みじかい草を食んでいる
草を食べると足が伸び
四本いずれも長さが違い
舌が梢に届いても
足元つねに定まらず
気付けば空を飛んでいる


角を曲がれば苦悶蜂
羽音を聞けば痛痒く
姿はどこかおかしくて
飛行の軌跡が雄弁に
生きる不思議をものがたる
水に落ちると火を噴いて
ふり向く前に消えている


角を曲がれば時間鰐
時計をくわえた大きな顎の
あいだに頭をねじこんで
顎が時間を砕くなら
頭も共に砕かれようと
時を忘れて待ち続け
アラーム音で飛び起きて
終わりの列車を乗り逃がす


角を曲がれば絵本橋
ページを開けば飛び出すアーチ
あなたも飛び出し橋の上
流れる水を眺めてる
水は手前に飛び出して
読み手の膝で池となり
あなたがそこへ飛び込むと
水面を突きぬけ床へ落ち
季節知らずの紙吹雪

この本の内容は以上です。


読者登録

倉田タカシさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について