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 ここまで読んでいただいた皆さん「全然奇妙でも面白くもないじゃん!」「ただの馬鹿じゃん!」「ふざけんな!」「早く死ね!」とお思いの事でしょう。お気持ち察しいたします。まあ、慌てなさんなって。ここからですよ、ここから。奇妙奇天烈摩訶不思議は今から始まるんです。

 たった3杯の焼酎で泥酔、気持ちよく眠りに堕ちた僕はその晩、とても不思議な夢を見た。その夢の内容とは以下のようなものである。

 まず、俺は夢の中で目覚めた。夜である、真夜中である。そんでもって、夢の中で目覚めた僕は当然それが夢である事に気づいていないわけで、さっきまでのうつつの続きのつもりな訳である。
 「酒飲んで寝ちまったか。」なんて思いつつ、目が暗さに慣れてきたので周囲を見渡す。ここで本来ならば、これは夢であるわけだから、見知らぬ原っぱの真ん中であったりして、でも夢であるがゆえにその異常を全然異常とも思わなかったりするのが定番であるわけなのだが、目の前に広がっていた光景は全くもって普通で、そこはいつも通りの汚らしい僕のアパートの部屋である。床には使用済みのティッシュや使用済みの綿棒やらが転がっている、汚らしい僕の部屋である。
 で、僕は台所に行き、コップに水道水を注ぎ、グビグビ飲み干す。ついでにトイレに入ってションベンをする。夢の中でションベンをするとうっかり本当に膀胱が緩んでしまって、つまり寝ションベンを垂らしてしまい、気づいて飛び起きるが後の祭り、なんて事が僕の場合は高校2年生くらいまでよくあったのだが、今回は大丈夫であった。
 夢だけで用を足し終えた僕は、再び部屋に戻り、布団に潜り込んだ。「明日こそはマジで死のう」なんて思いつつ、再び眠りに落ちていく。という感じでウツラウツラとし始めたその時である。

 「ガダン!!!」
 ものすごい音を立てて部屋の扉が開いた。当然びっくりした僕は扉の先に眼を向けて、扉を開けた主を確認しようとするわけである。
 そこに立っていたのはおっさんである。スーツを着て、髪を七三に分けている。無表情で立ち、じっと僕のほうを見ている。
 理解不能。沈黙、というよりも停止。しばらくの間、無言でおっさんと見つめあう。が、当然見つめ合ったからといって、なぜ僕の部屋の入り口におっさんが無表情で立っているのかは分かるはずもなく、理解不能は依然として理解不能である。
 どれぐらいだろう。二分程であろうか。僕は突然に部屋に侵入してきたおっさんと見詰め合っていた。しかしながら、依然としておっさんは無言を貫き、無表情で僕を見続けている。僕はといえば、ただ理解不能な状況を脱して、これはどうしたものなのであろうかと思案し始めていた。
 まあ、言うなればこんな真夜中にオッサンが勝手に人の部屋に入ってきて、その上無言、無表情だという状況はどう考えても通常ではなく、つまり異常であるわけで、ここで僕が理解不能で何の反応も出来ないでいるのは至極当然の事である。
 僕は、悪くない。が、奴の方はどうだろうか。こんな真夜中に人の部屋に、しかも全然知らない人の部屋に勝手に入ってきたわけで、そうした場合、当然何かそれなりのしかるべき理由があるはずであり、むしろ無いのであればそれはおかしいわけで、それならその理由とやらを部屋の主である僕にまず初めに話すのは道理であろう。が、このオッサン未だに無言、名乗りすらしない。おかしいではないか?
 そこまで考えが至ってくると、僕はだんだんおっさんのその無礼さに腹が立ってきた。ここで俺がこの沈黙に耐えかねて「あのぉ、どちら様でしょうか?」というような、それこそ典型的なリアクションをしてしまったら、それこそ奴の思う壺な訳であり、完全にあちらのペースに持っていかれるのは目に見えている。そうなれば完全に僕の負けである。
 そこで僕は考えた。それではこうしてみたらどうであろう、シカト。無かった事にしてそのまま寝る。うん、それにしよう。そうすれば奴も当然驚くと思っていた俺が無反応で寝たとなれば、あせるだろう。となればペースは完全にこっちのものである。
 で、俺は計画したとおりにオッサンをシカト、何事もなかったかのように再び眠りにつく、というアクションをやってのけた。やってしまうと実際、もうオッサンなんてどうでもよくなったという感じにもなってしまった。
 が、途端。
 寝た途端、である。
おっさんは突然に話し始めた。