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 そんな鬱々とした毎日が続いていた二十歳の夏のある日。生まれてから一貫して転がり続けてきた僕の人生は、毎日休まずにチクタクチクタクと刻まれてきたカウントダウンのアラームは、「チーン」と音を立てて鳴った。
 決心したのである。死を。
 「今まで二十年間、自分を騙し続けてここまでやってきたけれど、日々状況は悪化するばかり。もう耐えられん。いい事は何もない。ただ苦しいだけ。夢に魘され現実にも魘される。もう疲れた。やめよう。」そう思った訳だ。
 早速遺書を書いた。
 「愛するお父様、お母様。先立つ不幸をお許しください。生んでくださった事、感謝しています。あなた方はこんなしょうもない僕に全力の愛を注いでくださいました。ありがたいことです。でも、その愛が裏目に出たようです。毎日が地獄でした。息をするのが困難でした。もうやめます。僕がいなくなっても、どうか幸せに生きてください。一足先に天国で待っています。それでは、さようなら。」
 うん、なかなかの出来だ。これで何の悔いもなく死ねる。
 で、肝心の死に方であるが、これはもうずっと前から決めてあった。洗面器自殺である。僕は洗面器に水をはり、思いっきり息を吸ってから顔をつける。水の冷たさが気持ちいい。「ああ、これでやっと楽になれるんだな。思えば、俺の人生って本当にいいこと無かったなあ。せめて一回くらいセックスしたかった。でも、まあいいか。水のひんやり感が気持ちいいし。何となく、幸せかも。」
 50秒後。
 「っ、ブハァ。ゲホッ、ゲホッ。ギいやぁぁぁぁぁぁ。苦し!苦し!無理無理。こんなんしたら死ぬし。」
失敗。
 予想外であった。まさかこんなにも自分には忍耐力がないとは。これじゃあ子供の我慢比べでも勝てないわ。うむ。考えなければ、新しい方法を。我慢せず、コロッと、しかも痛くなく死ねる方法を。
 思案の末、思い至ったのが醤油自殺。致死量が分からなかったので、とりあえず家にあった未開封の500mlのペットボトルを使用する事にした。
 さあ今度こそ。キャプを開け、内蓋を取り外す。準備は整った。深呼吸を一つ。「エイ!」
 勢いをつけて口一杯に醤油を含んだ。
 「っ、ブハァ。ゲホッ、ゲホッ。ギいやぁぁぁぁぁぁ。しょっぱ!しょっぱ!無理無理。第一醤油って飲み物じゃないし。」
 失敗。

 その後も、僕はありとあらゆる自殺方法を試みた。首にタオル巻きつけて両手で引っ張る自殺(五秒で何故か自然と手の力が緩んだ)、逆立ちからの一人パイルドライバー(ベッドの上でやったが首を痛めた)、コーラ一気飲み自殺(300ccでリバース)、飛び出して轢かれる自殺(交通量の少ない小道で一時間待って車が来なかったので断念)、マヨネーズ自殺(醤油と同様)、熱湯ぶっかけ自殺(人差し指を火傷)、金槌で頭割り自殺(ホームセンターで購入、たんこぶが出来た、1300円の出費)、リストカット自殺(すね毛を除毛)、鼻の穴に洗濯バサミでショック死自殺(涙が出た)、パッション式「ンーッ!」で心停止自殺(ンーッ!)・・・・・・。
 結論、死ぬの恐い。
 死にきれなかった僕は打ちひしがれ、絶望のあまりにとりあえず酒を飲む事にした。
 部屋に転がっていた焼酎をロックで3杯。僕は気持ちよく眠りに落ちた。