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門司城攻防戦
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門司城攻防戦 14
門司城攻防戦 結果
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門司城攻防戦 結果
泡姫はいかにして銭を集めたか? その一
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泡姫はいかにして銭を集めたか? その二
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泡姫はいかにして銭を集めたか? 20
泡姫はいかにして銭を集めたか? 21
泡姫はいかにして銭を集めたか? 22
幕間 安芸国 吉田郡山城にて
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守護大名 大友義鎮という父
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守護大名 大友義鎮という父 6
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守護大名 大友義鎮という父 9
守護大名 大友義鎮という父 10
守護大名 大友義鎮という父 11
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秋月騒乱
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彦山川合戦
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彦山川合戦 13
彦山川合戦 結果
彦山川合戦 地図
彦山川合戦 合戦状況
彦山川合戦 結果
彦山川合戦 あとしまつ
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歪んだ父母娘のふれあい
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門司城攻防戦 8

「謙遜するでない。

 お前が宇佐にいたおかげで、宇佐衆が寝返らなんだ。

 それだけでも、十分に功績となろう」

 本来ならば、宇佐八幡宮の巫女として振る舞う以上の事は求められていなかったのだろうが、私はそれ以上の仕事をすでにしていたりする。

 今回の門司城侵攻の前に、大友軍は豊前の反大友勢力を掃討している。

 その筆頭が、実は宇佐八幡宮および宇佐衆だったりするのだ。

 それは、天文三年(1534 年)四月に豊後国勢場ヶ原で行われた合戦に由来する。

 田北鑑生の所でちらりと出したけど、大内軍との間で行われたこの合戦で大友軍が苦戦した理由ってのが、大内軍についていた宇佐衆および宇佐八幡宮の存在だった。

 多くの身内を失って、宿敵大内家の手足となって働いた宇佐八幡宮および宇佐衆は、感情では許すことの出来ない紛れもない敵だったのである。

 それも約三十年という月日と、私という人質のおかげで大友側の掃討リストから外れ、宇佐大宮司である宮成公建(みやなり きみたけ) 及び宇佐衆が裏切らなかった事が大きい。

 もちろん、大友軍が攻め込んだ時には真っ先に私が殺されるのは目に見えていたので、必死に生き残り工作を図りましたが。

 豊前南部、特に山国川以南を親大友側にできたので、門司攻めの前段階として大友軍は香春岳城を攻略している。

 香春は宇佐と同じ豊前一の宮でもあったので、この戦で焼失した香春宮再建を宇佐衆と奈多氏の支援の下で進めている。

 なお、再建後の香春岳城及び近隣の領地を治めるのは私だったりする。

 実際は名貸しで城代を置くのだろうけど、父上ならやりかねんよな。

 この後、立花千代(たちばな ぎんちよ) を城主にする許可を出すし。

 待てよ。このままだと私という前例ができて就任という形か。

 城井谷の宇都宮氏も今は味方だし、敵でも味方でも動いてくれるなと心から思っているのは内緒。

 黒田官兵衛の数少ない汚点とまでいわれる城井谷攻めなんぞ、私もしたくない。

「門司城を見てきたらしいな。

 お前の目にはどう映った?」

 父上の顔に武将としての凄みが滲み出る。

 戦況は芳しくない。

 毛利軍が篭る門司城には兵が三千ほど詰めており、その対岸には一万を越える兵力と、その兵を渡海できるだけの水軍が集結していた。

 水軍衆まで入れたら、多分二万届くかどうか。


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門司城攻防戦 9

 その為に一万の兵で攻めても門司城が落ちず、既に毛利水軍を率いる大将乃美宗勝(のみ むねかつ)の逆上陸で大敗を喫していたり。

 それでも敗走していないのは、私がマスコットとして動いて士気が高く、臼杵鑑速と吉岡長増の両名の将才が優れているからに他ならない。

「爺の受け売りですが、後詰を何とかせねば落ちませぬ。

 既に毛利の後詰は赤間関に集まり、その兵は万を越えると」

 私の言葉を佐田隆居の意見として取り上げてもらう。

 さて、ここからが本番だ。

「問題は、水軍衆にあります。

 毛利についた瀬戸内の水軍が後方で暴れると城攻めに集中できませぬ」 

 居並ぶ諸将から感嘆の声があがる。

 あくまで爺の意見という事なのだが、メッセンジャーが神童だとこうなるわけだ。

 その内、「ようじょつおい」と呼ばれるのは時間の問題だな。

「毛利軍を率いるは、毛利隆元に小早川隆景。

 特に、小早川隆景は、門司城に将旗を移して戦っております」

 毛利両川の一人である小早川隆景。

 まごう事ない、戦国の傑物の一人。

 彼が前線で頑張っているのだから、簡単に門司城が落ちるとは思えない。

 ちなみに、逆上陸をかましてくれた乃美宗勝の上司でもある。

 毛利隆元は早世して歴史的評価は低いが、大内義隆の娘(養女)を娶り、大内の後継者として周防・長門の国人衆を従える事ができる、欠かす事ができない人間である。

「次に、私の手の者から気になる報告が。

 毛利に匿われていた、秋月の忘れ形見が豊前に戻っているとの事」

 これは、さっき麟姉さんから聞いた話。

 こういう話を拾ってくるから、遊女や白拍子達が持ってくる情報網は馬鹿にならない。

 私の報告に諸将だけでなく父上も顔色を変えた。

「まことか?それは?」 

 声に凄みがかかる。

 嘘だったらただではおかない感じだが、この手の噂話を証明できる訳もない。

 そしらぬ顔して私は続きを話す。

「我らの背後を突くなら当然でしょう。

 この戦、かなり厳しいかも知れませぬ」

 秋月の忘れ形見とは秋月種実(あきづきたねざね) の事で、彼の父秋月文種(あきづきふみたね) の時に毛利の手引きで謀反を起こし、父上の攻撃で居城古処山城は落城。

 嫡男の晴種とともに城中にて自刃し滅亡した事になっている。


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門司城攻防戦 10

 だが、次男の種実は毛利に逃亡し、その庇護下において帰還のチャンスをずっと狙っていたのだった。

 私が口を閉じると諸将が皆口を開く。

「背後で秋月が暴れるなら、先に筑前を何とかすべきでは?」

 吉弘鑑理が口に手を当てて、地図上の門司ではなく筑前を眺めて呻く。

「門司を残すのはまずい。

 秋月攻めの背後を今度は毛利が突く事になるぞ」

 その呻き声に田北鑑生が即座に合いの手を入れる。

 長く共に戦場を駆けただけに、互いの呼吸が良く分かっている。

「秋月だけで終わるとも思えぬ。

 原田、宗像、筑紫等筑前の国衆も時同じく蜂起しかねん」

 大友家の謀略担当である吉岡長増は、筑前の国衆の動向を頭に思い浮かべているのだろう。

 枯れた声に苦味が滲んでいる。

 諸将の活発な議論に、私は口を挟まない。

 だから、私と父上は黙って諸将の意見に耳をかたむけていた。

 史実での門司攻防戦の敗退の理由を考えると、戦略面の失敗が大きかったと私は思っている。

 大友の今回の軍事的目的は何か?

 豊前の掌握である。

 では、豊前を押さえる政治的目的は何か?

 領土の拡大もあるがそれは二の次。

 豊前を毛利から切り離す事で、間接的に博多を掌握する事にある。

 この当時、日本有数の貿易港として栄えている博多は町衆が統治しており、誰の支配も受けていない。

 だが、博多に向かう流通を握る事で、周囲の大名は莫大な富を得ていたのだった。

 つまり、博多から堺にぬける瀬戸内交易がその富の源泉であり、馬関(関門)海峡支配が最終目標となる。

 その為には水軍が必要なのだが、豊後水軍だけでは安芸水軍に加えて村上水軍まで押さえている毛利に勝てない。

 戦う前から負けている戦だったりするのだ。実は。

「何か申したき事があるのか?」

「いえ。何もございませぬ」

 考えていたのがばれたのだろう。

 父上が私に声をかけるが、ここはいらぬ口を挟む場所ではない。

 既に、門司よりも筑前の不安定さに皆が気を取られている。


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門司城攻防戦 11

 後は門司から兵を損なわずにどうやって筑前に転進するかだが、それは諸将の仕事だ。

「構わぬ。申してみよ」

 そこまで言われると、何か言わないといけないだろうなぁ。

 さっきまで考えていた、『戦う前から負けている』なんて言ったら機嫌悪くするだろうし。

 少し考えるそぶりをしながら座りなおし、真っ直ぐに父上を見つめて口を開く。

「されば。

 この戦、叩くべきは門司の城ではなく、後詰の毛利水軍衆かと」

 後ろの角隈石宗が反応するが、私はそれを気にせずに続ける。

「水軍衆を叩けば門司の城への後詰はもちろん、我らが筑前を攻める時に彼らは手を出す事はできませぬ」

 私の言葉に諸将の視線が変わる。

 当たり前の事だが、豊前と長門の間には細く狭いとはいえ、海が広がっている。

 そして、海は歩いて渡る事は基本的に出来ない。

 簡単だけど、諸将が見落としていた視点を口にした事で、父上が楽しそうに笑う。

 私を狩りの獲物のような視線で見据えたまま、その方法を父上は尋ねた。

「毛利の水軍は我らより多いぞ。

 それをどうやって叩く?」

 父上の言葉に私は笑ってその策を告げた。

「父上。叩くのは船ではございませぬ」

 と。

 それから三日後、大友軍の門司城総攻撃が開始された。

 攻めるは臼杵鑑速と吉岡長増の二人の大将で兵は九千程度。

 その攻撃は熾烈を極めているように見えた。

 足軽達の喚声に、降り注ぐ矢の雨。

 火矢も混じっているそれを消す指示を出しながら、小早川隆景は陣頭に立って防戦に努めていた為に、その違和感に気づけない。

 火矢まで降り注いでいるのに、どうして鉄砲が出てこないのか?

 何で大友軍が矢戦のみで、足軽を取り付かせようとしないのか?

 毛利軍は門司城の奮戦を横目に、前回と同じく集結していた毛利水軍が大友軍の背後を突くべく、矢鉄砲を陸地に向けて構えながら浜に兵を上陸させた。

 それは私が待ち望んだ瞬間。

 大友軍のほとんどが門司城を向いていて、毛利水軍に目を向けない。

 毛利水軍が次々と船を浜にあげる。

 そこは敵が誰も居ない……はずだった。


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門司城攻防戦 12

「姫様。

 そろそろ合図を」

 爺こと佐田隆居が私に囁く。

 手を上げて下ろすだけなのに、それが途方もなく遠い。

 私は、私の意志で人を殺すのだ。

「姫様。

 ご無理ならば、それがしが手を……」

と言おうとした佐田鎮綱の口を視線で封じる。

 私は何の為にここに来た?

 何の為にここにいる?

 ずっと離れない麟姉さんは私の片方の手を握ったまま。

 もし、この合戦で大友軍が敗北すればどうなる?

 一度だけ目を閉じて口をぎゅっと閉じたまま、手を勢いよく上げた。

「兵士諸君。

 任務ご苦労

 さようなら」

 その言葉が出たのは、狂わないと、遊ばないと、初めての人殺しの重さに耐え切れなかったからだろう。

 私が手を振り下ろすと爺が兵達に命じてかき集めた鉄砲千丁が次々と轟音を響かせ、鉛玉が一斉に毛利兵に襲い掛かった。

 岸近くの毛利軍はこちらの姿を確認する事もできず、大友軍の火力の前に次々と倒れてゆく。

 こちらの兵は穴を掘ってその中に身を隠し、船を下りた毛利兵は遮蔽物の無い海岸上で次々と屍を晒していった。

 どこかのオマハビーチみたいになるかなと思っていたがまさかここまでとは。

 火縄銃は連発ができないから数で補う大友軍。

 そして波と砂で足を取られる毛利兵は格好の的だった。

 とはいえ、射程が短い火縄銃でつるべ打ちにできるとは思っておらず、本格的に上陸しだした毛利兵に私は防ぎ矢を当てる事にした。

「放てぇ!」

 鉄砲隊の護衛についていたのは大友の軍神たる戸次鑑連。

 八百もの弓を毛利兵に向けて放ち、鉄砲隊の弾込めの時間を稼ぐ。

 次々に射られる毛利兵が組織的な攻撃も出来ぬうちに再び轟音が響き、毛利兵が血を流しながら斃れて波に攫われてゆく。

「横槍!突っ込めい!」



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