閉じる


試し読みできます

プロローグ

「ゆうねぇ、どこなの、どこに隠れたの?」
「ここよ、さやか、ここにいるの。はやく来て」
「真っ暗で、なんにも見えない。ライトを付けてくれないかしら」
 声が反響するだけで、視界に写るものはなかった。
「そのまま真っ直ぐ、そっと歩けば出口に出られるから。すぐ、そこなのに」
「見えない。ゆうねぇ、なんにも見えない」
「さやか。しっかりして、ほら、私だって、ここまで来られたんだから」
「そうね。ゆうねぇには、見えないのね」
「ほら、外で音がした。彼がまっているわよ。私がちゃんと話をしておいたから、もう外にいるはずよ」
「ゆうねぇ、姉さんには黙っていてね」
「大丈夫。さやかのことをつげ口するなんて、絶対にしないから。さやかは……、いいよね。私も彼氏がほしいな」
「そんなこと。ゆうねぇだったら、どんなに素晴らしい人だって」

「……、彼は違ったわ」
 女は聞こえないほどのつぶやきをもらした。
「えっ?」
「さあ、手を出して。ほら。ちょっと階段だから、引いてあげる」
「ああ。冷たい風。助かった。じゃ、先にでるね」
「ほらね、彼がそこにいる」
「どこ? 星しかみえないわ」
「もうすぐ、ほら、逢えるよ」

 女はかたわらの石棒を押し下げた。
 地響きがした。ざわざわと木々がなった。巨大な物が動いた振動だった。悲鳴さえ聞こえなかった。
 しばらくして、樹木の折れる余韻も消えた。
「おわった」
 女は、出口の細工された岩の戸を閉め、手をはらい、元の浄闇に身体を滑り込ませた。

試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。

この本は有料です。閲覧するには購入する必要があります。
購入するにはしてください。
有料本の購入に関しては、こちらのマニュアルをご確認ください。
販売価格400円(税込)

読者登録

浅茅原 竹毘古さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について