目次
著者紹介
グラフ特集・草津市ゴージャス隣保館見学記
グラフ特集・草津市ゴージャス隣保館見学記
熱と光と
解放新聞
あの人の写真
解放同盟の名簿流出事件
社会福祉施設
同和対策事業の後始末
舛添要一(新党改革代表)一族に見る外国人参政権問題
中曽根、福田、森ら歴代の首相も参政権賛成派
舛添要一氏の父親の選挙ポスターにハングルのルビが
国籍を尊重? 帰化が促進? やっぱりバラバラ民主党
同和地区住民でなくても貰える! 米子市“同和限定子ども手当”
同和地区住民でなくても貰える! 米子市“同和限定子ども手当”
“部落民”であれば同和地区に住んでいなくても受け取れる
“部落民証明書”を行政が発行することになる
奨励金を受けることが部落民の証!?
ワイド特集 これからの「不正義」の話をしよう
ワイド特集 これからの「不正義」の話をしよう
日韓無法地帯宣言 菅談話で文化財返還狩りが始まる!?
「慰安婦」にかみつかれた故・土屋公献元日弁連会長の思い出
尼崎・朝鮮学校幼稚園補助金廃止にカン違いプロ市民が大挙
人民は石にかじりつき将軍様は絶品グルメ!? 金正日の大好物ベスト5
言ったモノ勝ちの戦後補償 「シベリア特措法」って何?
お騒がせ疑似科学 北朝鮮もはまった「EM菌」の正体
法務省「検察の在り方検討会議」は昭和の疫病神・社会党の墓場
滋賀県同和行政バトル日記②
滋賀県同和行政バトル日記②
第1回口頭弁論
高島市は同和対策関係の過去の条例を廃棄!?
法務省との2正面作戦

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著者紹介

鳥取ループ
ジャーナリスト。信州大学工学部物質工学科卒。
鳥取県鳥取市出身。同和行政を中心とする、地方行政のタブー、制度の矛盾を奥深くまで追求する。
公式ブログ http://tottoriloop.miya.be/

三品《みしな》純《じゅん》
フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。
月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。
公式ブログ http://soukeidehanaika.blog2.fc2.com/

グラフ特集・草津市ゴージャス隣保館見学記


隣保館に設置された健康器具。館によって違うが、血圧計、ルームウォーカー、乗馬マシン等があり、誰でも無料で利用できる。

 同和対策事業とあまり縁のなかった地域の人々と話をすると、「隣保館《りんぽかん》」という言葉さえ知らないと言われることがあり、逆に私が驚いてしまうことがある。隣保館とは、一言で言えば社会福祉施設である。社会福祉といえば雇用支援や、医療などの援助、施設で言えば保育所や老人ホームといったものを思い浮かべるであろう。それらの多くが「自分から役所に出向いて援助を申請する」というものであるのに対し、隣保館は逆に行政の方から、社会福祉上の問題を抱える地域に入り込み、積極的に支援を行うという点が特徴だ。そのような社会福祉事業は「隣保事業」あるいは「セツルメント」と呼ばれる。
 日本では、ほとんどの隣保館は同和地区に設置されている。隣保館の呼び方は各地域によって、○○隣保館、○○会館、○○センターと様々な呼び方がされる。各地域の隣保館には調理場や集会室等、地域住民のための施設が備えられ、行政職員が常駐して地域住民に対する施策を行なっている。
 そのような隣保館の中でも、最近改修されて“ゴージャス”になったという滋賀県草津市にある4つの施設を訪れた。

熱と光と


常盤東総合センターの看板。ハートアンドライトは、地元芦浦地区のNPO法人の名前でもある。

 草津市においても、それぞれの隣保館の正式名称は○○会館、○○センターといった名前なのだが、それとは別に愛称が付けられている。滋賀県において全ての隣保館は同和地区に設置されている中で、「隣保館=同和地区施設」というイメージを少しでも払拭し、同和地区に限らず多くの市民に気軽に利用してもらおうという趣旨である。
 西一《にしいち》会館は「You I センター」、新田《しんでん》会館は「ほほえみの館」。そしてこの常盤東《ときわひがし》総合センターは「Heat&Light」だ。賢明な読者の皆様であれば、“あのフレーズ”がすぐに浮かんでくることだろう。そう、「人の世に熱あれ、人間に光りあれ」という水平社宣言の結びの言葉である。本来は「ヒートアンドライト」と読みたいところ、写真の通り幸せへの熱い心を込めて、「ハートアンドライト」と読むそうだ。もう1つの隣保館、橋岡《はしおか》会館の愛称は日本語で「熱と光の館」である。
“名は体を表す”とはよく言ったもので、それぞれの隣保館の愛称は、それぞれの隣保館の特徴を非常に的確に表している。
「You I センター」の友愛を英語で語呂合わせした名前は、保守系労働組合の“UIゼンセン同盟”を思わせる。両者には何かしら通ずるものがあるのかも知れない。
「ほほえみの館」は他の隣保館の個性的な名前とは一線を画した無難な名前であり、誰でも利用しやすい隣保館を目指そうという意気込みが感じられる。
「Heat&Light」は、本当は“熱と光”という部落解放を表すキーワードを入れたいところ、直訳した英語でぼかしているところに、ちょっとした配慮が感じられる。
「熱と光の館」はまさにそのまんま、直球勝負である。

解放新聞

「Heat&Light」の「ふらっとサロン」に置かれた新聞、冊子。同和対策や人権関係の冊子やポスターは、隣保館では定番のものだ。

 芦浦《あしうら》地区にある「Heat&Light」は2009年に約3億円をかけて増改築された。改築前は「芦浦会館」という名前であったが、芦浦地区以外の住民にも利用してもらおうという意図から、小学校区名を冠した「常盤東総合センター」という名前に改められた。
 玄関のすぐ近くにある「ふらっとサロン」には、解放新聞(全国版と滋賀版)と「狭山差別裁判」関係の冊子が置いてあった。部落解放同盟が組織されている地域の隣保館では定番のものである。ふらっとサロンにはいくつかの小さな円卓と、健康器具が置いてあり、市民であれば誰でも無料で自由に使えるようになっている。休日に電気あんまで足をほぐしながら、のんびりと解放新聞を読むにはもってこいの施設である。
 館内にある食堂、調理室はカフェテリアのような雰囲気で、地元サークルの会食や料理教室によく利用されているという。奥には小さめの体育館があり、毎週地元のグループが和太鼓の練習に使っているということで、和太鼓が整然と並べられていた。
 印刷室にはリソグラフがあり、マスター作成に100円、印刷に1面あたり0.5円、用紙代1枚あたり1円を支払えば、誰でも使えるということだった。例えば4面構成のミニコミ紙を1000部刷るのであれば、たった4100円で作れる計算である。ちなみに今年の8月まではタダ(!)だったそうだ。今でも町内会や部落解放運動に関するものであればタダになることもあるようなので、職員に聞いてみるといいだろう。

「熱と光の館」の廊下に掲げられた、部落解放運動の歌「母は闘わん」の歌詞。1992年と言えば、広島で「結婚差別事件」があり、教育や行政に対する「部落解放運動」が最も活発に行われた時期である。

 この勇ましい言葉が並んだ額縁は、橋岡地区にある「熱と光の館」の廊下に掲げられているものだ。作田《さくた》晃《あきら》作詞作曲の「母は闘わん」というこの歌は、今年の11月14日に開催された「草津市部落解放女性のつどい」でも歌われた。ちなみに、作田晃氏の代表作には、他に狭山事件を歌った「差別裁判うちくだこう」という歌がある。
「熱と光の館」も2007年に改築した、真新しい施設である。設備は「Heat&Light」と大差なく、規模も同程度だ。
 橋岡地区は「混住率」が20%程度であるという。つまり80%は同和関係者ではない、よそから来た住民なのである。それにしても、何も知らずに橋岡に来た住民があの額縁を目にしたらドン引きしてしまうのではなかろうか。
 実は「熱と光の館」に行こうとしたところ、道に迷ったので近くの住人に「熱と光の館」(もちろん、橋岡会館あるいは隣保館はどこですか? と聞いた)の場所を聞いた。ところが3人が3人とも「知らない」と答えた。しかし、実際に現地についてみると、さきほどの3人に聞いた場所から「熱と光の館」は目と鼻の先である。
 職員の説明によれば「熱と光の館」では、社員寮のようなところを除いて各家にお知らせを配っており、施設のことは住民には知られているはずだという。また、市によれば「熱と光の館」は最も利用者が多い隣保館で、次に「You I センター」「ほほえみの館」「Heat&Light」と続くのだという。率直なところ、最も気軽に利用しにくい雰囲気を醸し出しているにも関わらず、利用者が一番多いことは意外であった。


「Heat&Light」の「学びの部屋」。ここでは地元出身の研究員が郷土史を研究している。ガラスケースの中には地区の航空写真がある。

「Heat&Light」には「学びの部屋」という郷土資料室がある。ここには芦浦地区の航空写真が展示されており、単にここが「被差別部落」であるということだけではなく、具体的な「被差別部落」の範囲についても全く隠す様子はない。資料によれば、「Heat&Light」がある芦浦地区でも「一般地区」である本村と「被差別部落」である地区は「差別の壁」と言われる竹やぶにより隔てられていたという。地区の変遷を追った航空写真を見ると「一般地区」はほとんど昔のままなのに、「被差別部落」は何倍にも広がっており、芦浦でも「混住」がすすんでいることが伺えた。
 それにしても、自分の“ムラ”の歴史を伝える専用の施設が税金により作られているというのは稀有なことあろう。世の中には、自分自身のルーツすら知らない人がほとんどではないだろうか。読者の皆さんも、故郷の歴史について、一度は関心を持ってみるのもいいかも知れない。

あの人の写真


「熱と光の館」の玄関に掲げられた写真。中央の人物は地元橋岡出身で県議会議長にもなった田中高雄氏である。

 写真が下手なため、電灯が写りこんで後光が差しているようになってしまったが、ご覧の通り、この人は組坂《くみさか》繁之《しげゆき》部落解放同盟中央本部委員長(写真右側)だ。「熱と光の館」の玄関に掲げられていた。片田舎の隣保館で、今は亡き地元の偉人と共に額に入れて掲げられているのだから、偉くなったものである。

「熱と光の館」で見つけた松本治一郎の肖像。

 この人は部落解放運動に関わる人々の間では組坂氏よりもはるかに有名な、部落解放運動の父、松本《まつもと》治一郎《じいちろう》である。本誌先月号で特集した松本《まつもと》龍《りゅう》環境大臣の祖父でもある。松本治一郎の写真は各地の隣保館や、部落解放同盟の事務所でよく目にする。松本治一郎は生前、部落民を堕落させるものとして、同和対策事業特別措置法に反対していたと言われる。そんな彼の写真が同和対策事業の拠点である隣保館に掲げられていることは、何とも皮肉なことではないだろうか。

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