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8.3 フィルムの解凍:ステージング 
冷凍状態[摂氏3度・相対湿度30%]から通常の室温[摂氏20度・相対湿度50%]へ移すときは、結露を防ぐためにその中間の状態で慣らす必要があります。慣らし室(ステージングルーム)の環境は、 気温、相対湿度ともに、冷凍状態の温度と室内の気温のちょうど中間の値をとるのが理想です。簡単に言えば、冷凍室から冷蔵室、そして作業場へと順に移して、フィルムに結露が起こらなければ問題ありません。 
 
ステージングの時間はフィルムのロールの大きさによります。小さいロールであれば短時間で済むでしょう。例えば400フィート、6巻もの、16mmの場合、25分で使用可能になり、3時間で完全に環境に順応します。水分防止袋を使えば外側が結露してもフィルムには影響がないため、ステージングの時間も若干短くて済みます。しかしながら、最短でも使用する1時間前にはフィルムを慣らしておくべきでしょう。冷凍状態からフィルムを使用するときは、袋を開ける前にフィルムを室温に慣らしてください。

8.4 収蔵場所の選択肢 
冷蔵するのが無理なら、どこにフィルムを保管すべきでしょう?あなたの自宅を見回して以下の可能性を探ってみましょう。 
 
◎ 屋根裏部屋には保存しない。屋根裏は夏になると暑過ぎ、季節による気温の変化が激し過ぎる。 
◎ 暖房器具、配管設備、セントラルヒーティングのパイプ、スプリンクラー、窓、電源、風呂場、台所の近くにフィルムを置かない。 
◎ 直射日光のあたるところにフィルムを置かない。 
◎ 湿気を避ける。地下室はたいていの場合、湿度が高く、カビの温床になりかねないので保存には向かない。地下室は水害の恐れがある。 
◎ 磁気録音のサントラに関しては、ステレオ用のスピーカーや業務用の電気ケーブルなどに使われている磁石に近づけないようにする。 
◎ 化学薬品、排気ガス、ペンキなどの近くにフィルムを置かない。高湿度の中での大気汚染も含む化学ガスは、画像の褪色や劣化を引き起こす。 
 
独立系の映画作家は、オリジナル素材を現像所のフィルム倉庫に預けることが多いようです。預ける前に現像所に保存環境を問い合わせてください。現像所との連絡は密に取るようにしましょう。現像所の倒産、移築、または売却をきっかけにフィルムが失われるケースは決して少なくありません。 

9.災害に備えて 
 
9.1  地理的分散 
オリジナル・ネガと上映用プリントを共に所有している場合(または同じ作品のプリントが2本以上手元にある場合)、火災や洪水などの災害に備えて、それぞれを別の場所に保管しておくのも一つの手です。ハリウッドの大手映画会社がネガとプリントを国内の別の場所に保管するというのは珍しいことではありません。しかし、いずれも湿温度が制御できて、適切な保管場所に限ります。そのような環境が保証されている場合のみ実行してください。 
 
9.2 洪水 
フィルムが洪水の被害にあった場合は、清潔な冷水にフィルムを浸した状態で現像所に持ち込んでください。そして現像所に洗浄と乾燥を依頼してください。 

10.用語解説 
  
[あ]

アーカイバル ARCHIVAL 
広義には、100年単位の長期保存にかなう収蔵庫や空調などの設備が整っている状態のこと。フィルムアーカイブ内で使用する備品(保存容器、梱包材、包装紙など)を指す場合は、所蔵品の長期保存に際して悪影響を及ぼすことのない素材、つまり化学反応を起こさない(不活性)素材を指す。 
    
アーカイバル・プリンティング[フィルム→フィルムへの複製] ARCHIVAL PRINTING 
復元を専門とする現像所(ラボ)でおこなう複製作業。縮みや乾燥など、劣化の兆候がみられる古いフィルムも傷めることなく扱えることが条件となる。通常は、現存するネガからプリントを作成すること、または現存するプリントからネガ(インター・ネガ)と新しいプリントを作成することを指す。現状ではフィルムからフィルムへの複製を繰り返すことが最善のフィルム保存方法とされている。 
 
アウトテイク OUT-TAKE 
最終プリントの段階で結局使われることのなかった場面を撮影したフィルム。 
 
アセテート ACETATE 
フィルムのベースの一種。遅撚性。ナイトレート・ ベース(可燃性)のリスクを回避するため、1920年代にアマチュア用フィルムとして生産が開始された。ナイトレートの製造が中止された1950年代初頭からは、35mmベースの主流を占めるようになる。アセテート系ベースにはダイアセテートとトリアセテート(=セルロース・トリアセテート/トリアセテート・セルロース/3酢酸セルロース/TAC)がある。近年ではトリアセテートが主流で、ポリエステル・ ベースとともに「不燃性(セイフティ)」とも呼ばれる。アセテート系ベースの成分である酢酸はビネガーシンドロームの要因となる。 
   
映画フィルム MOTION PICTURE FILM
薄く柔軟性のある透明な素材で、通常は片側または両側にパーフォレーションがあり、連続する画像を擁している。 

エッジウェーブ/フラーティング EDGEWAVE/ FLUTING 
フィルムの中央部が縮んで(またはエッジが伸びて)、全体がワカメ状になること。

エッジコード/デートコード EDGE CODE 

フィルムの製造番号。エッジに沿って印刷された記号が、製造年やベース素材などをあらわす。 
 
エマルジョン/乳剤 EMULSION 
感光乳剤。映画フィルムにおいてはハロゲン化銀粒子をゼラチンに分散させたものを指し、これがフィルムのベースにコーティングされる。 
 
エンド TAIL 
フィルムの巻末(トップ HEAD参照のこと) 。

オプティカル・サウンド /オプチカル・サウンド/光学サウンド OPTICAL 
光学技術によりフィルムの端に沿って記録される音声。透明なフィルム上に波線のようにみえるのがエリア で、グレーのグラデーションのようにみえるのがデンシティー。音の抑揚に対応するトラック部分の形状が映写機のエキサイターランプによって読み取られ、その光が音声に変換されて再生される仕組み。 

[か] 


シングル・パーフォレーション SINGLE-PERFORATION FILM
片側だけにパーフォレーションのあるフィルムのこと。この場合、パーフォレーションのない側にサウンド・トラックがあることが多い。 
 
カッピング CUPPING 
フィルムの受けるダメージの一種。フィルムがお椀型に反って平らに戻らない状態。フィルムの一部がひどく縮むことで起こる。縮み方によってはバックリング、エッジ・ウエーブ/フラーティングなどの呼び名がある。 
    
カメラ・オリジナル CAMERA ORIGINAL 
撮影時に使用された(現像所ではなく撮影カメラの中で感光した)フィルム。 
 
クレイジング CRAZING 
乳剤面にあらわれるひび割れのようなライン。アセテート・ベースの縮みによって起こる。

形状 GAUGE 
フィルムの幅(単位:ミリ)。 
35mm:プロ仕様。1895年に登場。 
16mm:プロ/アマ兼用。1923年に登場。
8mm:アマチュア用。1932年に登場(コダック社製)。ストックは16mm幅で、現像段階で半分(8mm)に切断。
スーパー8:プロ/アマ兼用。1965年に登場(コダック社製)。 
シングル8:アマチュア用。1965年に登場(ポリエステル・ベース、カートリッジ、富士フイルム社製)。 このほかに9.5mm、28mm、17.5mm、70mmなどがある。 
   
ゲート GATE
撮影用カメラ、映写機、焼付機などで、アパチャー(開口)部分にフィルムを正確にセットする機構。 
 
現像処理 PROCESSING 
感光したフィルムの現像、定着、水洗など。ネガ現像とポジ現像がある。 
    
コダカラー KODACOLOR 
1920年代に登場した16mmレンチキュラー加色法カラーで、映写時に特別なレンズを必要とする。 直にフィルムを見ると、ラインの入った白黒画像になっている。 
    
コダクローム KODACHROME 
世界でも最初期の多層式カラーフィルム。1935年にコダックが16mmアマチュア用フィルムとして製造を開始した。安定性の高いリバーサルフィルムだった。
    
コンザベーション[保存] CONSERVATION 
フィルムの劣化の進行を遅らせ、その延命につとめること。例えば、フィルムをアーカイブ仕様の缶に入れて低温度に設定した収蔵庫に保管するなど、必要最低限の処方を指す。

[さ] 

サウンドトラック SOUNDTRACK 
フィルムの片側(パーフォレーションとフレームの間)に沿って走っている光学トラック、あるいは磁気トラックのこと。

サプライリール SUPPLY REEL 
映写機のゲートを通過して映写される前のフィルムをかけるリール(テイクアップリール TAKE-UP REEL 参照のこと)。 
    
樟脳 CAMPHOR 
ナイトレートおよびダイアセテートフィルムに使用される可塑剤(加工性、物理的性質を改善するための添加物)で、フィルムに柔軟性と安定性を与える。いわゆる防虫剤の臭いから判別できる。 
    
シングル8 SINGLE 8 
形状 GAUGE参照のこと。 
    
シンチマーク CINCH MARKS 
フィルムや磁気テープ上のタテ方向に走る短いキズ。原因となるのはフィルムの巻きの中に紛れこむ埃やゴミなど。不適切な方法で巻き取られた場合などに起こる(シンチング CINCHING 参照のこと)。 
    
シンチング CINCHING 
フィルムを巻き取るとき、端をきつく引っ張ることによってフィルムの巻きの中に紛れた埃やゴミが擦れ、表面に細かいタテ傷が付くこと(シンチマーク CINCH MARKS 参照のこと)。 
     
スーパー8 SUPER8 
形状 GAUGE 参照のこと。 
 
ステージング・エリア/慣らし室 STAGING AREA 
低温度で保管されているフィルムをすぐに倉庫の外に出すと結露などを起こすため、倉庫の設定よりやや高めの温度でフィルムを慣らす。そのために用意されたスペースのこと。 
    
スプライス/接合/接着 SPLICE 
連続して映写できるようにフィルムとフィルムをつなぐ作業のこと。以下の3タイプがある。 
テープスプライス TAPE SPLICE(ベースの素材を問わず使用できる) 
セメントスプライス CEMENT SPLICE(ポリエステル・ベースには使用できない) 
高周波スプライス ULTRA-SONIC SPLICE(ポリエステル・ベースにのみ使用できる)

スプリット・リール SPLIT REEL. 
コア巻きのフィルムを支えるリール。取り外しのできる2面が合わさって、その中央にコアを挟む構造になっている。 
    
スプロケット SPROCKET 
映写機、カメラ、撮影機などに使用されているフィルム送りのためのローラーに付いている歯。この歯がパーフォレーションとかみ合うことでフィルムを輪動する。


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