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4.3 インスペクションと補修
指先でフィルムの両側のエッジをはさんで持ち、ゆっくりとフィルムを巻き取っていくと、エッジの傷みを感じることができます。マスキングテープやセロテープ(フィルムアーカイブ仕様ではないテープは酸性の接着剤を含み、フィルムと化学反応を起こして劣化の原因となります)、クリップやホチキスなどの付着物を丁寧に取り除き、接着剤の残りはフィルムクリーナーで拭きとります。エッジが滑らかであることを確認してください。エッジのトリミングには新品のはさみか剃刀の刃を使用してください。古いスプライスでテープの素材が不明のものは貼りかえます。古いテープを剥がすのは難しいこともありますが、クリーナーを多量に使用して少しずつテープを柔らかくして剥がしていってください。 

磁気録音のトラックで、とくに湿気の多いところに保管してあったものは、くれぐれもゆっくりと巻取ってください。サウンドトラック部分が剥がれて、フィルムの裏側にくっついてしまうことがあります。巻き取りのペースが速過ぎると、中央でフィルムが割けることもあります。万一このようなことが起こったら、スプライシングテープで補修してください。割け目がないかぎり、パーフォレーション(スプロケット穴)はテープで塞がないようにしてください。テープは両面に貼り、フィルムはエンドが外側にくるようにして保管してください。 
古いスプライスは両側に少し湾曲させて強度を調べてください。古いスプライスを剥がすときは、クリーナーを染み込ませた毛羽立たない綿布や綿棒などを使用してくさい。フレーム破損もスプライシングテープで補修することがあります。ライトボックスの上にフィルムをテープで固定してからテープ補修をして、最後にスプライサーで穴をあけます。簡単ではありませんが、スクリーンにこの避け目が映らないように補修するのが理想です。パーフォレーション壊れは、スプライシングテープを小さく切ってエッジのみをカバーし、後で穴をパンチする方法で補修することもできます(画像をテープで覆うことはできる限り避けるべきです)。最初から穴のあいているエッジ幅のテープを使用することもあります。こういったテープは16mm、35mm用などが販売されています。破損を悪化させないために、切れ目にV字型のカットを入れることもあります。

褪色の兆候は目視で判断してください。褪色は取り返しのつかない問題で、劣悪な収蔵環境、フィルムストックの品質の問題、不適切な現像処理などが原因と考えられます。70年代に製造されたカラーフィルムはとくに褪色しやすく、収蔵場所の問題や劣化の兆候というわけでもなく、ただひたすら褪色が進んでいきます。このクロモジェニック・カラーフィルムは化学的には安定しているものの、もっとも褪色しやすい種類のフィルムとして知られ、保存方法が悪ければ、その速度は信じられないほどです。フィルム保存には適切な環境が不可欠なのです。

※ クロモジェニック・カラーフィルム
カラーネガなど、発色成分(カプラ̶)がエマルジョンに含まれているフィルムのことで、内式発色フィルムとも呼ばれる。

有機体のフィルムベースは経年劣化によって縮むことが頻繁にあり、わかめ状に波打っているフィルムやお椀型にカールしているフィルムであれば、間違いなく縮んでいるといえます。しかしそうでない限り、目視だけでは縮んでいるかどうかわかりにくいこともあります 。スプライサーに固定されたピンにフィルムが合わないときは縮んでいると判断できますが、より正確に縮みを測定するために、同じフィルム幅の新しいリーダーと重ねて比べてみましょう。もしパーフォレーションがぴったり合わなければ縮んでいることになります。8mmの場合、ちょうど100フレーム分の新品のストックと重ねてみて、もし1フレーム分短ければ1%縮んでいるということになります。1%以上縮んでいるフィルムは上映できません。映写機のスプロケットや掻き落としでフィルムが傷む恐れがあるからです。縮みを測定する計器もありますが、とても高価です。

フィルムが劣化している場合、あるいは縮んでいて上映できない場合は、複製してフィルムを救う必要が出てきます。すぐにプリントを複製する予算が無ければ、冷凍して劣化の進行を最小限に留め、これを応急処置とします。(「8.家庭での収蔵」参照) 

効果としての着色や、わざと傷を付けたフィルムなどには細心の注意を払ってください。それが意図的な効果であることがわかるよう、ラベルに表示しましょう。このようなフィルムにはフィルム・クリーナーを使用しないでください。複製のために現像所に送る時などは特に配慮が必要です。どういった作品なのかをきちんと説明しないと、せっかくのフィルムが台無しになってしまうこともあります。

4.4 クリーニング(完璧なインスペクションを終えてから) 
フィルムの汚れやカビは、毛羽立たない綿布に専用クリーナーを含ませて丁寧に拭きとります。ただしパーフォレーション壊れがある場合、布は使わないでください。クリーナーを布に染みこませ、折った布の間にフィルムを挟んで巻き取ってください。このときフィルムを指でしっかり押さえ、リールに巻き取るまでの間にフィルムクリーナーが乾く程度のゆっくりした速度で巻き取ってください。エマルジョンが剥がれる恐れがあるので、水などの液体は一切使用しないでください。フィルムクリーナーは肌に悪いので、ゴム手袋(ラテックス素材や医療用のパウダーのかかったものではなく、食器洗いに使うようなタイプ)を使用します。クリーニングは換気の良い部屋でおこなってください。フィルムを傷つけることがないよう綿布は柔らかいものを使用し、汚れがひどくなったら、すぐに新しい布に取り替えてください。 

フィルムはローラー式の埃取りできれいにすることもできます。ポリウレタンのローラーが、35mm映写機などの機器とセット、あるいは別売品として販売されています。フィルム表面の大きめの埃や髪の毛がローラーの表面にくっついてとれ、ローラーは水洗いもできます。ただし高価なので小規模なコレクションには向かないでしょう。 

5.映写 
 
映写機なしでは役に立たないのがフィルムですから、その長期保存を考えるとき、映写機の不調を見逃すわけにはいきません。そもそもフィルムを雑に扱うなどというのは許されざるべき行為です。巻き取りリールや軸棒の反り、破損などはエッジを傷める原因となり、フィルム全体をも台無しにしてしまいます。映写機部品用のオイルはフィルム表面に堆積することがあります。フィルムがゲートに詰まると高熱に晒されてあぶく状に膨れ、フレーム焼けを起こすことがあります。映写中に起こるダメージの代表格で、もっとも腹立たしいのは、ひっかき傷とすり傷でしょう。

毎回、使用前にリーダー(黒味)をループにして家庭用映写機にかけ、数分まわしてから傷がついているかどうか調べてください。傷がつくようなら映写はできません!ベース面の傷はディフューズをかけるか、またはウエットゲートを使用するなどして複製すれば消すこともできます。しかし、乳剤面の傷はその部分の画像情報を永遠に消し去ってしまいます。いずれにしても、フィルムそのものに一度ついた傷は永遠に消すことができません。機材はかならず清潔に保ってください!! 
 
※ディフューズをかける
フィルターを使用してフィルムを焼き付けることを指し、最近ではほとんど使われることがない。

映写前には必ずインスペクション作業を行ってください。映写機にかけてもフィルムが傷むことがなく、上映にかなう状態であることが確証できないときは上映しないでください。縮みがひどく、スプロケットをスムーズに通らないフィルムは上映できません。フィルムに汚れがなく、スプライス箇所が上映中に剥がれたりしないことも条件です。 

6.複製 
 
6.1 テレシネ 
テレシネ(DVDなどへのメディア変換)の利点は、オリジナル素材を傷めることなく容易に作品にアクセスできることです。しかしDVDで鑑賞するだけというのはおすすめしません。フィルムを上映するのは保存するのと同じくらい重要なことですし、テレシネを「保存」ととらえるべきではありません。古くて縮んでいるフィルムは注意が必要です。すべてのテレシネ取扱店がそのようなフィルムを扱う設備を整えているとは限りません。スプロケットのないドライブを使用するテレシネであれば、費用はかかりますが、縮んだフィルムでも比較的ダメージを与えることなく処置できるでしょう。フィルムを専門業者に送るときは、希望する仕上りを事前に詳しく説明しましょう。

6.2 フィルム → フィルムへの複製 
適切に保管されたフィルムは、ビデオテープやDVDより長持ちします。その理由は、いかにデジタル技術やそのフォーマットが頻繁に変化するかを考えればわかるはずです。フィルムアーカイブは伝統的に「映画保存」という言葉を複製(ネガとポジを焼くこと)と同義で使用してきました。フィルムからフィルムへの複製は高価ですが、大切な作品ならば検討に値するでしょう。近年では16mmや8mmでも、長期保存用(アーカイバル)プリントを焼けるだけの設備を整えた現像所が(欧米においては)増えつつあります。 

7.収蔵準備

収蔵準備とはつまり、フィルムを保護するためにフィルムアーカイブ仕様のケースに入れ、外部の環境から構造上フィルムを守るということです。フィルムアーカイブ仕様の缶やコアは、フィルム素材との間で化学変化を起こさない不活性プラスティックでできています。フィルムアーカイブ仕様の金属缶は、錆防止剤に加えて不活性剤でもコーティングされています。
7.1 コア 
16mmと35mmは、リールよりもコア巻きの状態で保管するほうがおすすめです。リールは錆びる可能性もありますし、湾曲したり壊れたりしてフィルムにダメージを与えるかねません。コアは直径2インチのものより3インチのものが保存に適しています。3インチであれば、コアに近い部分の巻きがきつくなり過ぎないので、カーリングなどの現象も防ぐことができます。巻き取りの際は最後まで同じテンションを維持してください。きつすぎず、緩すぎず、均等に、そして表面が平らになるようにしてください。表面がガタガタでエッジがはみ出すようなことがあると、それが原因でフィルムが傷んでしまいます。フィルムがコア上にきちんと巻かれ、固い円板状になる程度のテンションで巻いてください。誤ってフィルムからコアを抜いてしまわないよう注意してください。フィルムが螺旋状にぱらぱらと落ちて収拾がつかなくなります。フィルムは、できれば素手で扱わないほうが良いでしょう。その代わり、缶(または缶の蓋)やスプリットリールの片側をお皿のようにして、フィルムを乗せるようにすれば比較的安全に扱うことができます。大切なフィルムですから、事前にジャンクフィルムを使って何度も練習してください。後になって、もっと練習しておけば良かった、などということにならないようにしましょう。

しかし、頻繁に使用するフィルムであればリールに巻いた状態のままのほうが便利です。その場合も、ロールの状態が均一かつ水平であることを確認し、エッジが折れたり曲がったりしないよう注意してください。リールが曲がっていないか、錆びていないか、壊れていないかどうかを事前に確かめてください。

7.2 スーパー8 
化学的にも物質的にも、レギュラー8やスーパー8と、そのほかのフォーマットのフィルムに何ら違いはありません。ただし、サイズが小さいことから保管上の問題が生じます。フィルムアーカイブの中には、35mm用コアを糸ノコで削り、オリジナル8mmコアを作っているところもあります。とはいえ、8mmは取扱いがとても難しいので、プラスチックのリールに巻いたままのほうがむしろ便利かもしれません。50フィート・リールの状態で所持している場合は、保存のためにはもっと大きなリールに繋ぐべきでしょう。リールのサイズには何種類かありますが、中でも200フィートまたは400フィート用をおすすめします。保存用リールのハブ(中心)が小さければ小さいほど、フィルムはカールしやすくなります。もし何本かを繋げるのであれば、オリジナルのケースを捨てずに取っておくか、あるいはケースに記されている情報をすべて写し取ってください。そしてその情報は、新しいリールとともに保管してください。また、繋げるときはそれぞれの作品の最初にリーダーを挿入し、タイトルを書き込むことをおすすめします。音声のオープンリールは合成樹脂ゴムを使用しているものが多く、長期保存には適しませんし、映写機にもかけられないことがほとんどなので、兼用は避けてください。 


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