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2.13 ポリエステル
ポリエステル・ベースのフィルムはマイラー、またはエスターとも呼ばれます。1950年代に初めて登場し、近年では16mmのネガと上映用プリントへの使用が急増しました。コダック社は撮影用ネガフィルムにはポリエステルを使用していません。

2.3 リバーサルVSネガ

アマチュア映像作家および個人コレクションの16mmと、おそらくすべての8mmはリバーサルフィルムです。つまり、撮影に使用したのと同じフィルムが現像されて上映用プリントになります。ネガがないわけですから、リバーサルフィルムは唯一無二のオリジナルとして慎重に扱う必要があります。ネガ/ポジ工程に比べてリバーサルの優れている点は、フィルムの量が半分で済む、つまりコストが低く抑えられることです。欠点は、上映のたびに(上映回数は時に100回を越えることもあるでしょう)あらゆるリスクを負うことです。リバーサルフィルムを複製するには、同じくリバーサルフィルムに密着焼きすることになります。その場合、画像はオリジナルに比べて鮮明さを欠き、コントラストも高くなってしまいます。16mmネガが手元にある場合、同時期に焼いたポジと同様にネガも劣化(例えば褪色)することを忘れてはなりません。しかし、物質的にはネガのほうが上映用ポジより劣化の可能性が低いといえます。

2.4 サウンド・トラック


古いフィルムや自主制作のフィルムには、光学録音(オプチカル)と磁気録音(マグネ)という2種類の録音方式があります(商業映画の世界では現在、光学録音に加えてデジタルトラックが使用されています)。光学録音は細い光線をフィルムにあて、異なる濃度の光のセンサーを電気信号に変換し、さらにその信号を音声に変換するという仕組みです。一方、磁気録音はフィルムのエッジに沿った酸化帯に記録され、映写機の再生ヘッドで読み取るものです。磁気録音のシステムはカセットテープと同じです。見た目も同じく艶のない茶系色をしていて、これがフィルムのエッジに塗布されています。 とくに自主制作の音付フィルムの場合、スーパー8より16mmのほうが広く普及しました。音声をオープンリール、カセットテープ、近年ではDAT等に別録音することもよくあります。ミキシングの後、音声は光学録音(現像所に依頼した場合)、またはフルコートの磁気トラックとして処理され、音付プリントになります。


2.41 スーパー8&レギュラー8
スーパー8または16mmには、光学録音も磁気録音も両方あり得ますが、音付のレギュラー8の場合は、現像後に加える磁気録音のトラックがほとんどです。当時、録音にお金をかけたのはとくに熱心なアマチュア作家に限られたため、実際、初期のホームムービーで音付のものは珍しい存在です。録音機材自体は1930年代から入手可能でした(プロ仕様で、光学録音・磁気録音切替式の機材があったようです)。1973年、コダック社がスーパー8のサウンド・オン・システムを発売すると次第に撮影用カメラにもマイクが装備されるようになりました。スーパー8は現像後に音を加えることもできました。録音や音声を付ける装置を備えた映写機もありました。音声を加えるとフィルムの片側だけに厚みが増しますが、これを避けるため、磁気録音フィルムはサウンドトラックの反対側に「バランスストライプ」と呼ばれる何も記録されていない磁気ストライプを持っています。これによって、リールに巻いても両側のバランスが保たれます。スーパー8の磁気録音カメラには18fps[FPS=frames per second(フレーム数/秒)]と24fpsがありますが、中にはこれとは違った速度のものもあり (たいていは1フレーム分速いか、あるいは遅い)、再生時に注意が必要です。 

2.42 サウンドと画のずれ
映写機のサウンドヘッドは、画像を投影するレンズより後部に設置されているので、サウンドはフィルム上で本来対応している画像のすぐ隣に並行しているのではなく、若干先行しています。この差はレギュラー8の磁気録音(希少)の場合56コマ分、スーパー8の磁気録音で18コマ分、スーパー8の光学録音で22コマ分、16mmの光学録音で26コマ分、16mmの磁気録音で28コマ分に相当します。
2.43 磁気録音
磁気録音の音付フィルム(とくに独立したフルコートの磁気録音)は、ビネガーシンドロームにかかりやすく、音の付いていないフィルムや光学録音の音付フィルムよりも注意が必要です。劣化の兆候があらわれた時点で、できるだけはやく再録音するのが最善策です。湿気を帯びるとサウンドトラックが粘着性を持ち、部分的にはベースが隣接するフィルムにくっついてしまうこともあります。こうなると、トップ(作品のはじまり)を外側にして保管している場合、再生時にこもった音が聞こえることがあります。画像と同様にエンド(作品のおわり)を外側に保管すれば、さほど耳障りにはならず、エコーのように聞こえる程度で済みます。

3.敵を知ろう:ダメージと劣化

フィルムの傷みは三つのカテゴリー(機械的・生物学的・化学的)に分けて考えることができます。ここではダメージや劣化の原因について述べ、劣化をくい止める技術を紹介します。
 
3.1 フィルム年齢の確定
フィルムの状態は必ずしもその製造年によるものではありませんが、フィルム年齢を調べるに越したことはありません。まずはフィルムの製造番号を確認してください。コダック社製のフィルムにはエッジに沿って小さく製造コードが印字されているので、このコードから製作年を割り出すことができます。ただし製造から数年を経て撮影に使用される場合もあるので、これがそのまま製作年にあたるとは限りません。またコダックのコードは20年周期で同じものが使用されています。したがって1955年のコードと1975年のコードはまったく同じなわけです。そうなると、画像から年代を推察する必要も出てきます。オリジナルではなく、複製を所蔵している場合は、どの世代のフィルムの製造コードなのかを判断する必要があります。現像所でプリントの際に前世代のコードが焼き込まれる場合(プリントスルー)もあります。すべてのコードを書き出して、もっとも新しいものからそのフィルムの年齢を判断してください。 

3.2 裂け/破れ
フィルムが裂けたり破れたりするのは、たいてい巻き取り時か映写時の不適切な取扱いが原因です。また、古いスプライスが剥がれてきたときにも同様の問題が起こります。すべての裂け、破れ、スプライス壊れは、テープ・スプライサーかセメント・スプライサーで補修しなくてはなりません。



3.21 パーフォレーション壊れ
パーフォレーション破損もよく起るダメージの1つです。これは映写機へのセットの仕方が不適切な場合に起こります。フィルムのトップ/エンドや悪質なスプライスの前後にとくに著しいので、トップにもエンドにも十分な長さのリーダーを付けて悪化を防ぎましょう。古いスプライスはすべて補修し、フィルムはメンテナンスの行き届いた映写機に正しくセットしてください。縮んだり脆くなったりしているフィルムは絶対に上映しないでください。

3.22 傷
映写機のローラーの傷や埃が原因となって、上映中にフィルムの両サイドに傷がつくことがあります。すり傷は映写機だけが原因ではなく、フィルムの巻きがきつすぎたり緩すぎたりするだけでも起こります。現像所、撮影現場、あるいは編集段階でも傷がつく可能性はあります。傷の原因になるので、フィルムの端は決してきつくコアに巻つけないでください。フィルムの「若返り」方法としてのコーティングやラッカー塗布はおすすめできません。害のある化学薬品が含まれていないとも限らないからです。ベースの傷は複製の際に(フィルムからフィルムへの複製でも、テレシネでも)ウェットゲート・プリントによって目立たなくすることができます。これはフィルムを一時的に溶剤に浸すことで、溶剤が傷を埋める役割を果たし、新しいプリントに傷が焼き込まれることを防ぐ方法です。

3.3 生物学的ダメージ
フィルムは保管中に傷んでしまうことも十分考えられます。とくに高温多湿の気候において、あるいは地下室や車庫のような湿気の多い場所においては、フィルムのエマルジョンにとって致命的なダメージとなるカビや菌類の発生が懸念されます。カビは徐々にエッジ近くからフィルムに被害を与え、最終的には全体に広がります。ときには艶のない水玉のようなシミとして残ったり、画面全体にうっすらとカビが生えたりすることもあります。生物学的劣化を防ぐためには、適切な保管場所を用意しなくてはなりません。とりわけ夏期は湿度が長時間にわたって高くなる場所を避け、換気をよくしてください。

3.4 化学的ダメージ
ナイトレートやアセテートのようなフィルムを構成する物質や色素の化学変化は、避けようがありません。 

3.41 ナイトレートの劣化
ナイトレートの化学変化は時の経過とともに起こります。今日残存するナイトレートの状態はつまるところ、そのフィルムの製造と保管の歴史をありのままに体現しているのです。劣化段階はその特徴的な変化に沿って5段階に分類されます。以下にあげるのはもっとも広く利用されている劣化5段階の判断基準です。

○ ナイトレートの劣化
ステージ1:画像がアンバー系に変色または褪色する。微かな有毒臭を発する。フィルム缶の輪状のサビがロール上に転移する。
ステージ2:エマルジョンが粘着化し、巻き取りの際にフィルムとフィルムがくっついてしまう。
ステージ3:フィルムの一部がぐにゃぐにゃになり、ガスを発生して泡状に膨れ、刺激臭を放つ。
ステージ4:フィルム全体が柔らかくなり、一つの塊となる。表面が粘り気のある泡で覆われる場合もある。とても強い刺激臭を発する。
ステージ5:フィルムのかたまりが崩れるか、あるいは完全に茶系色の粉末になる。この粉が何らかの刺激によって発火する可能性もある。

3.42 アセテートの劣化:ビネガー・シンドローム
アセテート・ベースのフィルムはいわゆる「ビネガーシンドローム」の脅威にさらされています。劣化段階で発生する酢酸(ビネガー)臭からこう名付けられたビネガーシンドロームは、分子レベルで起こる化学変化に由来し、取り返しのつかない深刻なダメージをフィルムに与えます。水分・熱・酸が混ざるとベース面は酢酸を発生しはじめます。この過程は自己破壊的ともいえるものです。というのも、いったん分解がはじまると自ら分解を促し、劣化はさらに増幅するからです。フィルムが自己破壊点に達したとき、発せられる酢酸の量は急激に増加しはじめます。アセテートが先天的に持つこの性質には、気候が大きく関与しています。なぜなら、フィルムが取り込む水分の量は気温によって決まり、さらに熱が化学反応に必要なエネルギー源となるからです。ここで重要なのは「マイクロ/ミクロ環境」です。この用語はフィルム缶の内部の環境を指して使われます。ビネガーシンドロームは伝染のおそれがあるので、この病にかかったフィルムは「健康」なフィルムから隔離しなくてはなりません。ビネガー臭はアセテートフィルムの劣化の兆候として、もっとも顕著なものです。しかし、兆候はそれだけではありません。フィルムの状態は酸を検出する試験紙によって調べることで、フィルムの保存状態を客観的に判断し、必要な処方を把握できます。エッジの白い粉はプラスチック・ベースの分子が脆くなることによって発生し、ベースの破壊を意味します。さらに劣化が進行すると、フィルムは縮んでボロボロになります。1%以上縮んだフィルムは映写機にかけることによってさらに傷んでしまうので、上映しないでください。(「5.映写」参照のこと) 

※ ビネガーシンドロームを検出する試験紙
IPI=イメージ・パーマネンス・インスティチュート(所在地:米国NY州ロチェスター)が開発・販売している「A-D Strips」のこと。http://www.imagepermanenceinstitute.org/


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