目次
ユークリッド-Eukleides-
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2
3
4
5
ピエール・ド・フェルマー-Pierre de Fermat-
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ピタゴラス-Pythagoras-
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ルネ・デカルト-René Descartes-
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アルキメデス-Archimedes-
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レオナルド=フィリオ=ボナッチ-Leonardo Fibonacci-
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ブレーズ・パスカル-Blaise Pascal-
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ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ-Gottfried Wilhelm Leibniz-
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アブラーム・ド・モアブル(Abraham de Moivre
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ヤコブ・ベルヌーイ-Jakob Bernoulli-
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ジャン・ル・ロン・ダランベール-Jean Le Rond d'Alembert-
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ジョゼフ=ルイ・ラグランジュ-Joseph Louis Lagrange-
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ピエール=シモン・ラプラス-Pierre Simon Laplace-
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ジャン・バティスト・ジョゼフ・フーリエ-Jean Baptiste Joseph Fourier-
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ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス-Johann Carl Friedrich Gauss-
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ゲオルク・フリードリヒ・ベルンハルト・リーマン-Georg Friedrich Bernhard Riemann-
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アンドリュー・ワイルズ-Andrew John Wiles-
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ジュゼッペ・ペアノ-Giuseppe Peano-
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オーガスタス・ド・モルガン-Augustus de Morgan-
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ダフィット・ヒルベルト-David Hilbert-
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レオンハルト・オイラー-Leonhard Euler-
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最終定理-the Last Theorem-
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 僕は渡された鍵を持って鳥居の足元へと戻った。ぐるりと一周まわって確認し、昨日見つけた小さな扉の鍵穴を睨んだ。まるで中から何か漏れだしているんじゃないかとチェックするように。

 僕は鍵を差し込んで右に回した。重いごろりとした音が鳴って、鍵が外れたのがわかった。

 取っ手がないから扉のふちに指をかけて手前に開く。かがみこんで中を見る。内部は小さなコンクリート壁の部屋になっていて、中央にきれいにラッピングされた包みが置いてあった。

 僕は小部屋から顔をそらしてまわりの様子をうかがった。じつに奇妙なことに、行きかう人は誰も僕に気を留めない。絶対傍から見たらおかしな光景だと思うんだけど、誰ひとり、足を止めて僕を叱る人はいない。こんなことってあるんだろうか。

 いや絶対ない。

 有里が関わっていないかぎり。

 気づくと、有里が僕の背後に立って、僕を見下ろしていた。数歩進んで僕のとなりにかがみこむ。

「開けてみてよ」まるで知らない人の声みたいだった。それくらい優しく感じたんだ。

 部屋の中に両手を入れてみる。ひんやりと冷たい空気が収められていて、冷蔵庫みたいだった。これなら包みの中身が生ものでも大丈夫だろう。

 包みを取り出して、僕は地べたに正座してひざの上に置く。スカイブルーのリボンをひも解いて、白の下地に黒の幾何学模様の入った包みを破かないようにしながら中身を取り出した。

真っ白な本が出てきた。

 僕はとなりにいる有里の顔を見た。

 となりにいる有里の顔は、

 笑っていた。

「これって」思っていたより落ち着いた声が出て、自分で少し驚いた。

 有里の顔が近づいてくる。

 僕の耳元で有里は、

「誕生日おめでとう、正宗」

 と言った。

 それはとても甘く、ふんわりとしていた。

 その言葉は一瞬だったけど、間違いなく、その瞬間は、僕が座っているこの場所が、世界で一番優しい瞬間だったに違いない。

 有里は顔を離しても笑顔のままだった。頬にかすかに赤みが差している。

 僕は動揺も狼狽も感動もしなかった。

 ただ、優しさにくるまれて、暖かくて、素直に思ったことを口にした。

「ありがとう。これからもよろしく」


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 帰り道。僕と有里はずっと話し続けた。三条のバス停までの道のり。信号待ち。人混みのバス停。車内でのふたりがけの座席。

 有里はすべて説明してくれた。はじめて校舎の屋上で会ったときのこと。巧との友情。手紙のこと。窓ガラスを割ったこと。神社で僕の焼き餅を食べたこと。おばあちゃんのこと。お父さんの仕事のこと。どこでプレゼントを買ったのか。どうやって鳥居に仕掛けをつくったのか。僕をどう思っているのか。ききたかったこと全部だ。

 レオンハルトの近くまで戻ってきたときには、あたりはとっぷりと夜に沈んで、静寂の海を漂う水泡のように、僕たちは歩いていた。

「ガラスを割ったのはそういう理由だったの。言ってくれたらよかったのに」

「誤解されたくなかったから」

「結果として、僕は命を救われたよ」

「そうなの? その点ではよかったわ。でもちょっとだけ反省してるの」

「それはとてもいいことだね。まあ事故みたいなもんでしょ。ただ精神的不安定だったのは有里の責任だけど」

「そこまで頭がまわるやつだとは思ってなかったからね」

「僕が授業を重ねて成長するのを待ってたってわけだね」

「そんな感じかな」

「手紙は面白かったよ。有里は理科の知識もあるんだね」

「あんなの簡単よ。洗剤とかレモン汁とかでいいんだから」

「有里は本当に魔法使いみたいだね」

「そうよ、私は魔法使い。魔女っ子なの」

「杖とかケープとかはいらないの?」

「そのかわりに呪文書を持ってるわよ」

「いつも読んでる本は呪文書だったの?」

「小説にはたくさんの呪文が載ってる。私はそれを読むといつも違う世界に引き込まれて、たくさん素敵な体験をするの」

「本が好きなのは、そういう理由なんだ」

「そうよ。楽しいから。楽しいこと以外、なんにもしたくないし、しなくてもいい」

 それはもっともだと僕は思った。また、これこそが、有里の正義の根源なんだと、このとき理解した。

「今も楽しい?」僕はちょっと意地悪くきいてみた。

「そうね」僕の顔を見てちょっと笑顔になり、そのあとすごく意地悪な顔をして有里は答えた。

「でも三人一緒のほうがもっと楽しいわね」

「それは、そうだね」心に小さな傷ができたけど、すごく小さな傷だし血も流れない。くすぐったいくらいの痛みだった。

「これからも三人一緒にいられるといいね」

 僕は本心からそう言った。


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 レオンハルトの談話室に入ると、巧と老先生が座ってお茶を飲んでいた。

 巧が僕の肩に腕をまわして、「それで、何があったんだよ」と珍しくいやらしい顔をしながらしつこくきいてきたから、僕は全部話してやった。最後のところだけ有里の顔を確認して、視線からなんとなく同意の表明を感じたから、ありのまま話すと、巧はやや興奮して、

「お前も好きものだよなあ。そういうの、好事家っていうんだぜ」

とやっぱりいやらしい顔をして笑っていた。

 それから、いつか見た巧と有里のケンカがはじまって、僕は老先生のとなりに避難してお茶を飲んだ。「どこへ行っていた?」ときく老先生に、僕が「ちょっと青春しに」と答えると、「それはよきこと」と感心してくれた。


110

 三人からそれぞれ素敵なプレゼントをもらい、僕は家に帰った。笑顔で待っていた母さんのエプロン姿が印象的だった。

「それで?」母さんがきいた。「どうだったの?」

「楽しかったし、うれしかった」僕は感想を言った。

「それプレゼント? 何もらったの?」

 僕は有里の真っ白な本を母さんに見せた。「あら素敵ねえ。これどうするの?」

「これはね」

 僕はちょっと照れながら言った。

「僕たち三人で使うものなんだ」

 それは、有里と巧と僕、三人で決めたことだった。

 

おわり


奥付



正宗少年、レオンハルトに出会う -Mathematical Friendship-


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著者 : Kyoji
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発行所 : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社paperboy&co.


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