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 シークは病気がちな男の子。

 今日もかぜをひいて学校を休んでいます。

「はあ。

今日の遠足、行きたかったなあ。

ジーニーやアスルといっしょに遊びたかったなあ。」

 自分の部屋のベッドから窓の外をながめて、ためいきをつきました。

 ジーニーとアスルは、シークの親友です。

 ジーニーもアスルも、クラスの人気者。

 ジーニーは頭がよくて、テストはいつも100点です。

 アスルは運動神経ばつぐんで、かけっこはいつも一番です。

 3人はおさななじみで、小さいころからいつもいっしょでした。

 シークはそんなふたりのことを思いながら、またためいきをつきました。

「はあ。

ジーニーもアスルも、あんなに人気者なのに、ぼくは病弱で、なんのとりえもないや。」

 シークはますます悲しくなるのでした。

 

 かぜもなおったある日、お母さんがシークに言いました。

「いとこのダニーのところへ行ってくれないかしら。

今、元気がないから、元気づけてほしいんですって。」

 ダニーはシークの2つ年下のいとこなのですが、じつはまだ、会ったことがありません。

 シークは、元気づける自信もなかったので、お母さんに言いました。

「ジーニーとアスルもいっしょに連れて行っていい?」

 お母さんは喜んで言いました。

「まあ、それはいいわね。」

 

 3人はさっそく、ダニーの家へ行きました。

 ダニーは自分の部屋のソファで、しょんぼり下を向いて座っていました。

「ダニー、こんにちは。はじめまして。いとこのシークだよ。」

 シークが声をかけましたが、ダニーは下を向いたままです。

 話が続かずに、シークは困ってしまいました。

 

 すると、元気なアスルが声をかけました。

「ダニー、ぼく、アスル。かけっこがとくいなんだ。

外はとってもいい天気だよ。ぼくといっしょに外に出てかけっこしようよ。」

 シークは、それはいい考えだと思いました。

 でも、ダニーは下を向いたまま言いました。

「ぼく、体が弱いから、かけっこしたくないよ。」

 アスルとシークは、顔を見合わせて困ってしまいました。

 

 すると、今度はジーニーが声をかけました。

「ぼくは、ジーニー。勉強がとくいだよ。

いっしょに宿題しようよ。苦手なところをおしえてあげるよ。」

 シークは、それならダニーも喜ぶだろうと思いました。

でも、ダニーは下を向いたまま言いました。

「ぼく、今、頭が痛いんだ。宿題なんかやらない。」

 3人は顔を見合わせて困ってしまい、部屋はシーンとなってしまいました。

 ダニーはしょんぼりしたままです。

 

 でも、そんなダニーを見て、気の毒になったシークが、思わずもう一度声をかけました。

「…ぼくも体が弱いんだ。」

 すると、しょんぼりしていたダニーが、初めて顔を上げたのです。

 それがうれしくて、シークがニコッと笑うと、それにつられて、ダニーもニコッと笑いました。

 そして言いました。

「ぼく、シークお兄ちゃんと仲良しになりたい。」

 これには、アスルもジーニーもびっくりしてしまいましたが、ダニーがなんとか笑顔になってくれたので、ほっとしました。

 

 その日から、シークとダニーは、よくいっしょに遊ぶようになりました。

 お天気の日には、ふたりで学校のウラ山をたんけんしたり、川で魚つりをしたりしました。

雨の日には、お母さんたちが作ってくれたおかしを持ちよってミニパーティーをしたり、お気に入りの本を読み合ったりしました。

ふたりは本当の兄弟のように仲良くなり、それは楽しい日々でした。

 

 ところがある日、シークが重い病気にかかってしまったのです。

ベッドから立ち上がることもできません。

学校は休み、ダニーとも遊べなくなってしまいました。

 シークは、こんなに弱って元気のない姿をダニーに見せたくないと思いました。たよりになるお兄ちゃんとして、いつもダニーをはげましていたかったからです。

 シークはお父さんに言いました。

「お父さん、ダニーには、『だいじょうぶだからお見舞いに来ないように』って、言ってくれないかな。

お兄ちゃんとして、こんな姿、ダニーに見せたくないんだ。」

 すると、シークのお父さんが言いました。

「シーク、それはちがうよ。

お兄ちゃんだからこそ、ありのままの姿を見せるんだ。」

「…え?」

「今はどんなにつらくても、病気に負けない姿を見せることが、あとできっと、ダニーの役に立つ時がくるよ。」

「そうなのかな…。」

「そうだよ、シーク。」

「…わかったよ、お父さん。」

 

 1週間たったある日、シークを心配したダニーがお見舞いにやってきました。

 シークはベッドの上でウンウンうなっていました。

「シークお兄ちゃん、だいじょうぶ?」

 ダニーが心配そうに話しかけると、シークは答えました。

「うん。とってもつらいけど、ぼく、病気になんか負けないよ。ダニー、見ててね。」

 

 それから、シークの病気は、良くなったり悪くなったりをくりかえしました。

 ダニーは心配で、何度もお見舞いに来ました。

 そのたびにシークは「負けないよ、見ててね。」と言いました。

 

 そして1か月たったある日、シークのしんさつにやって来たお医者さんが言いました。

「シーク、病気は治ったよ。よくがんばったね。」

 シークはベッドの上で、ニッコリ笑顔になりました。

 その笑顔を見たダニーも、

「シークお兄ちゃん、すごいね!本当によかったね!」

と、自分のことのように喜びました。

 

それからふたりはさらに仲良くなって、また毎日のようにいっしょに遊ぶようになりました。

 

 そうして数か月ほどたったある日、シークがいつものようにダニーの家に行くと、ダニーがベッドでウンウンうなっているではありませんか。

今度は、ダニーの病気が悪くなってしまったのです。

「ダニー、だいじょうぶかい…?」

 シークが心配して声をかけると、ウンウンうなっているダニーの横で、ダニーのお父さんが言いました。

「ダニーはね、今までは、病気が悪くなると、『ぼくはもうだめだ』って、いつも泣いていたんだよ。

でも、今度は泣いていないんだ。

それどころか『ぼくぜったいに負けないよ』って言っているんだよ。

シークが病気と戦う姿を見せてくれたおかげだね。

本当にありがとう。」

 

 その話を聞いたジーニーとアスルが言いました。

「シーク、本当にすごいなあ!

ぼくたちには、病気のダニーをそんなに励ますなんて、とてもできないよ。」

 

 シークは毎日のように、ダニーのお見舞いに行きました。ダニーは苦しそうでしたが、

「シークお兄ちゃん、ぼく、負けないよ。」

と言って、病気と戦っていました。

そして日を追うごとに少しずつ顔色がよくなっていったかと思うと、お医者さんもびっくりするほどの早さで病気が治ったのです。

 シークとダニーは手を取り合って喜びました。

 

 ダニーは言いました。

「ぼく、とっても苦しかったし泣きたかったけれど、シークお兄ちゃんが病気と戦っていた姿を思い出したら、勇気が出たんだ。

シークお兄ちゃんのおかげで病気に負けなかったよ。本当にありがとう!」

 それを聞いた時、シークは生まれて初めて、

「こんなぼくでも、人の役に立てるんだ!」

と、心の底からうれしい気持ちになりました。

 

 その後、シークとダニーは同じ夢を持つようになりました。お医者さんになるという夢です。

ふたりではげまし合いながら、たくさん勉強しました。

そして、ふたりともりっぱなお医者さんになったのです。

 

ふたりは、街に、こども病院を作りました。

 病気になって不安でいっぱいのこどもたちを、

「病気に負けずにがんばろうね。君にしかない使命があるんだよ。」

とはげましていきました。

 

 ふたりのこども病院は、「病気のこどもたちが、心から元気になれる」と、どこよりもひょうばんの病院になったのでした。

 


この本の内容は以上です。


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